『エイリアニスト―精神科医―』上下(ケイレブ・カー/ハヤカワ文庫)
*ネタバレ、結末まで触れています。
『エイリアニスト―精神科医―』上下(ケイレブ・カー/ハヤカワ文庫)
「二十世紀に入る以前には、心の病気に苦しむ人は、
社会全体から「疎外」(エイリアネイト)されているばかりか、
自分の本性からも疎外されているものと考えられていた。
そこで、心の病理を研究する専門家たちまでが
「エイリアニスト」と呼ばれていた。」
ってことだそうで、タイトルはそういう意味なんですね。
舞台は1919年、セオドア・ルーズヴェルトが亡くなった所から始まり、彼を知る
わたし―ムーアの回想が始まる。精神病医ラズロー・クライズラー博士と友に
恐ろしい連続殺人の犯人を突き止めた頃のことが。
ルーズヴェルトって警察にいた時期があったんですかね。ウィキみるとNY市警の
腐敗と戦って名声を得るみたいなことがあったらしく、これは事実なのかなあ。
まあそれはともかく、女装した少年男娼が連続して無惨に殺されるという事件が
続けて起こり、でもそういう社会の下層の人間が殺される事件はまともに捜査
されなかったりという時代だったらしく、それはいけない、と立上がる特捜班、
って感じ。1800年代のNYとか、社会がこんなにも雑然と大変、秩序が守られるのは
ごく一部、って感じだったのかどうか、よくわからないけれども。
ロンドンでは切り裂きジャックが、みたいな時代らしい。
ハイソな世界では芸術だなんだと素敵文化が発展する一方、街は汚く道を歩くのも
危ないみたいな区域もある、という感じか。
まあたぶん現代であってもそういう区域の差みたいなのはあるんだろうけれど、
昔はもっと激しく極端だったのだろう。
街の描写とか、うへえ、こわ、って感じの所がいっぱいだった。
これは1994年の作品だそうで(私が読んだ文庫は1999年刊)90年代って、
あれか。プロファイルだとか猟奇ものだとかが流行ったころかな。
小説の舞台そのものが昔、という設定なのもあって、科学捜査っぽいことの
はしりとか、心理分析みたいなのの走り、とか。そういう感じの描写が、ん~
どうなのかな~という気はした。
あと文章が、なんかこう、もったいぶってる感じが私の好みからいうとどうにも
テンポ悪く思ってメンドクサイ感じがした。読みにくい。
でもキャラクターは面白くて、微妙にハイテンションになりがちなクライズラー
先生とか、ちゃらいんだか真面目なんだかな記者ムーアくんは可愛いなあと思う。
一緒にチーム組むサラ、警察のマーカスとルシアスのアイザックサン兄弟。
昔だから、連絡取り合うのも電報くらいしかないし、とりあえず馬車だし、鉄道は
あるけど時間かかるし、って、そういうじれったさも面白かった。
犯人は、子どもの頃虐待を受けた男、ってことで、犯行から犯人像を推理して
それに該当する人物を探す、というもので。そんなにすっきりぴったり当てはまる
ものだろうか、と、思ってしまうけれどもまあ、小説だからな。
実際の事件をモチーフにしてる所があるらしい。あんまり私はわからないので
単純にフィクションとして楽しみました。
これ、ドラマ化されるというのを知って、クライズラーがダニエル・ブリュール
ムーアがルーク・エヴァンスだそうで、えええ~~~って思って読んでみました。
女装少年男娼が殺されていくという、この感じをどのくらい忠実にドラマに
なるのか、大幅アレンジとかしていくのか、気になるところです。死体残虐さ、
忠実に映像にするとかなり、きつい、テレビドラマ的には無理なのでは。
まあほどよく写さない感じにするんだろうけれども。
何よりクライズラーとムーアがその二人で演じられてる所すごく見たい。
日本で見られるのかなあ。どーなるのかなあ。見たいなあ。
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 『鳥肉以上、鳥学未満。』(川上和人/岩波書店)(2021.02.07)
- 『極夜』(カーモス)(ジェイムズ・トンプソン/集英社文庫)(2021.02.06)
- 『狼の王子』(クリスチャン・モルク/ハヤカワポケットミステリ)(2021.01.25)
- 『パーフェクト・クォーツ 碧き鮫』(五條瑛/小学館文庫)(2020.12.12)
- 『遠い声 遠い部屋』(トルーマン・カポーティ/新潮文庫)(2020.12.08)
Recent Comments