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映画「アダムズ・アップル」

*ネタバレ、結末まで触れています。


映画「アダムズ・アップル」

(2005年 デンマーク・ドイツ合作 監督アナス・トーマス・イェンセン)

トーキョーノーザンライツフェスティバルで上映。12年前の映画ってことだけど
日本初上映なのかな。日本語字幕のソフトもないようで、見に行けてよかった。
ありがとうノーザンライツフェスティバル! 
お願い日本でもブルーレイとかで発売してください。とてもよかった。
(去年は「メン&チキン」見たのだった。これも円盤発売してください;;)


アダムは刑務所から出たばかり。田舎の教会へ世話になることになる。
神父(?)はイヴァン。何事にも明るくポジティブ、でもどんなつまらないこと
でも議論を始めて相手を言い負かす。
教会には他にも前科者が二人いる。パキスタン人。元テニスプレイヤー。
(名前覚えてないごめん)
アダムは教会で暮らすにあたって、何か目標を見つけるように、とイヴァンに
求められる。庭にあった立派なリンゴの木。アダムはケーキを焼きたい、リンゴの
ケーキを焼くんだ、ということを目標にする。


不条理劇なのか? なんだかシュールなコメディなのか?? え? ええっ??
って何回もびっくりして笑っちゃっうんだけど。さらっと凄いことが言われたり
行われたりしてそうそう笑ってもいられない。

アダムはネオナチ、ってことで頭スキンヘッド。部屋にはヒトラーの写真を
飾り、イヴァンに渡された聖書も放置。教会の鐘が鳴る朝にその振動で目覚め
たり、写真落っこちたり聖書落っこちたり。
聖書が落っこちると必ず「ヨブ記」のところが開いて落ちる。
ある時それを読んでみて、神様に嫌われてるんだよ、ってイヴァンを追いつめ
たりしちゃうんだよね。
アダムは自分を悪だという。
イヴァンのポジティブなクレイジーさとか、なあなあでなんとなくやり過ごして
いる四人の教会の暮らしをおかしいと追及する。
そうやって表面上の取り繕いを暴くのは確かに波風立てる悪でもあるんだけど。
なんだかんだ結局アダムが一番まともなんだなーという感じ。
アダムが来たことによってあの教会の世界は変わり時間が動き、変化は結局は
一応はいい方に働いたのだ、と、思う。
途中辛くもあったけれども、とてもうつくしいラストだった。
四人のうち二人は教会を出ていくけれどとイヴァンと共に残ったのはアダム。
もうスキンヘッドじゃない。そしてまた次の刑務所から出た男たちを迎える。
車の中で音楽をかける。
これ、それまで何回も、イヴァンがかけてはアダムが消す、ってしてきたもので、
一緒に音楽を聴く、穏やかさが救いだと思った。

イヴァン。
マッツ・ミケルセンが演じてます。
半ズボンでさ~~~。なんて美しい膝剥き出しの足!膝下長い~かっこいい~!

デンマーク語なんで何にも一言も私にはわからないんだけれども。
イヴァンはすごくよく喋る。相手を言い負かす。都合の悪いことは見えないふり。
イヴァンと議論するのはメンドクサイ、とみんなわかっててイヴァンの思う善が
全てって感じ。
そこにアダムが異をとなえていくわけだけど。
この、イヴァンの、キャラというか、負わされている運命が物凄い過酷。
イヴァンが生まれた時に母は死亡。
姉がいたらしいけどそれはどーなのかわからなかった。
父に立てなくなるほどレイプされてたらしい。父は逮捕された。
妻がいて妊娠した時に障害のある子になるかもしれないと言われてた。
息子が元気でいるのを見るとただの統計に負けなくてよかった、みたいに言って
たのだけど、実はクリストファーくんは脳性麻痺。動けない。
妻はそれを苦に自殺したらしい。
でも、イヴァンは、あれは事故だったんだ、という。お菓子の入れ物に薬を
間違えて入れちゃってたから、つい飲み過ぎてしまっただけだ、って。
そしてイヴァンは癌。頭にバレーボール大の腫瘍がある、って言われてる。
そんな大きくはないだろ?? と思うんだけども、まあ、そういわれてる。
追いつめられると耳から血が流れる。

イヴァンは、そう、都合の悪いことは見ない。認識しない。よくないことが
起きると悪魔に試されているんだ、と思う。打ち勝っていかねば。神様は味方、
って思ってる。イヴァンの世界には善しかない。
狂ってる。ポジティブにクレイジー。

でもさあ、その、イヴァンに盛られてる設定が物凄いことじゃない? あっさり
あいつオカシイけど大変だから仕方ないみたいに医者が軽く言うんだけど。
そんな中で優しいあいつが今生きる術として見つけたんだ、って。明るさを。
いろいろおかしいし、笑っちゃうんだけど、でも、イヴァンの世界を思うと
ぐっさりぐさぐさ深く突き刺さるもので、このバランスは何なんだ。凄い。

イヴァンは、神様の言葉を伝える。つまらない説教をする。
神様を頼ってきた悩める妊婦にもかける言葉はなんだか心無い。それでもイヴァン
なりに大真面目ではある。その奇妙な感じすごい。
ヨブ記は読んでないという。無礼なやつには厳しい。うまくいかないことには
悪魔に試されているから負けないようにしなくちゃって感じ。
その、アダムたちとかみあわない会話とか強引さとかイヴァンの中だけの正義とか
おかしいんだけど物凄く哀しい。ものすごくかなしい。とてつもなく哀しい。

アダムはイヴァンに苛立って悪魔に試されてるんじゃない。神様に憎まれてる
んだ、って追求する。突きつける。イヴァンの人生の不幸を突きつける。
アダムは悪だから、という対立。アダムはイヴァンを殴るしボコボコにする。
でも、イヴァンはめげないんだよーー。すごい。
ボコボコ血まみれの顔で元気に歩き回ったりして笑っちゃうんだけど、何?
何なんだろうあのバランス。すごい映画。

アダムのネオナチ仲間みたいなやつらが来るんだけど、だんだんアダムは
そこからは離れてようとしてくるんだよね。
パキスタン人の報復をなんとかうまいことそらせようとしたり。

鳥とか害虫に荒らされ、ついには落雷で焼け落ちるリンゴの木。
辛うじて一つだけ無事だったリンゴで、ついにアダムはケーキを焼く。

もう死ぬところだったはずのイヴァン。癌の進行もあったんだけど、ネオナチが
襲撃にきたところ強引に割って入ってとばっちりで左目から頭撃たれて倒れて
いたイヴァン。
なんと。
まさかの奇跡で、脳の腫瘍を銃弾がぶっとばしていて、回復してたー。
なんだってーっ。

と、そんなこんなの無茶苦茶な、ってことなんだけども、アダムのリンゴの
ケーキを二人で味わってるシーン、素晴らしくうつくしかった。
頭顔半分包帯に覆われて、あんなにいつも強引なお喋りばかりしていたイヴァンが
アダムとただ静かにケーキを食べる。
うつくしかった。
神様に、憎まれてなんかいない。

そして、イヴァンはアダムとともに教会を運営していくのだ。
また誰かを救うのかもしれないし、相変わらずおかしなことになっていくのかも
しれないけど、アダムがいるから大丈夫だろうと思う。
アダムとイブなんじゃないの、と思う。二人でリンゴを食べたんだ。

私がキリスト教的なこと詳しくないのでピンときてないだけでたぶん沢山の
宗教的啓示っぽいことはあるんだろうなあと思う。
なんといってもリンゴの木だし。雷だし。主人公の名前アダムだし。
でもそういうことぼんやりしかわかんなくても、というか、デンマークのことも
詳しいわけじゃないし、デンマーク映画にも詳しいわけじゃないし、でもまあ、
ほんとうに、素敵な映画を見られてよかったと、満足した。
暴力も流血もあるのに、おとぎ話みたいでもあって。すごいバランス。面白いなあ。

イヴァンちゃんやってるマッツさいこうに可愛いしかっこいいしたまんねーわー。
ボコボコうつくしい顔が歪まされていくんだけど、んも~それも最高。
お姫様だっこされちゃうの最高~。好き。
マッツはマッツだけれどもホント役柄によって全然違ってて、見るたびにますます
好きになってしまう。こわい。好き。ステキ。かっこいい。
ほんとこれ、ブルーレイ出して欲しい;; マッツ映画全部欲しい。大好きです。

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