« October 2016 | Main | December 2016 »

『極道転生』(五條瑛/徳間文庫)

*ネタバレ、結末まで触れています。


『極道転生』(五條瑛/徳間文庫)

シルバー・オクトパシーの二作目、ということかな。文庫書下ろし。2016年8月初版。

裏ビジネスのプロ集団、謎の社長という頭一つとメンバー8人の足。亡八と
いわれてたりもする。
そのメンバーの一人、ユリア。昔の知り合いの蕗川というヤクザに呼ばれた。
すでに病と年で引退している昔気質のヤクザである蕗川。ユリアへの頼みは、
16年前、鉄砲玉になって刑務所入りしてた浪岡の出所を迎えてやってほしい。
生活の目途をつけてやってほしい、というもの。ユリアに料金と浪岡に渡す金
を託す。もはやヤクザがヤクザらしく渡世する時代ではない。まっとうなビジネス
を装い、暴力や脅しは駄目。そんな時代に浪岡は戸惑うだろうから。
出所してきた浪岡は、だが複数から命を狙われていた。
刑務所でひっそり暮らしていただけのはずの浪岡が、狙われるのは何故か。
ユリアたちは背後を探る。

そんなこんなでわりとさっくり進む。古き良きヤクザ像をちょっと懐かしみつつ、
そこはプロ集団、結局刑務所から出てくる人間絡みで新たな戸籍を手に入れる
方法を探り出し、入り込み、八神会に恩を売る形で自分たちの利益を掴む。
浪岡に同情して、ってばかりではないぜ、というのが小気味よい感じ。

刑務所の中で小さな秩序の中で、昔気質のままで、義理だメンツだという
シンプルな論理で16年すごした浪岡が、結局は娑婆のほうがおそろしいだろ、
って思う所が、しんみり切ない。
ユリアもなんかかんだいいつつ、そういう男が好きで、でも利用できる限りは
利用し尽くす、っていうのがいい。
お~、そうくるか、という終盤のパズルがはまっていくのがばちっと見えて
くる感じ面白かった。

またシリーズになるのかな? 謎の社長っていうのがそのうち出てくるのか。
ちょっと楽しみ。

|

『イン・ザ・ブラッド』(ジャック・カーリィ/文春文庫)

*ネタバレ、結末まで触れています。


『イン・ザ・ブラッド』(ジャック・カーリィ/文春文庫)


カーソン刑事シリーズの5作目。2013年刊の文庫本。だいぶ最近に近づいてきたな。

カーソンがハリーと早朝の釣りをしていたところ、流れてきたボートの中に
赤ん坊を発見した。

というのと、テレビで演説して人々を虜にしていた有名な説教師、大学の創設者
でもあるスカラーが、SM行為の最中に死亡したとみられる状況で発見された、と
いう事件が平行してすすむ。
何故か狙われる赤ん坊。
白人至上主義者の教団。
血とは何か。

人種差別って今ホットな話題だなあ、と思うタイミングで読み終わった。
カーソンくんがいつも以上になんだか強引だったり衝動的だったりして、こいつ、
って感じなんだけど、まあこれはたぶん薬をいつの間にか、ってことだろうとは
わかる。あ、でも、麻薬捜査とぶつかってることだったのか、という最後の方は
へー、って思った。
保守、極右、移民黒人差別、と、そういう方に目がいくようになってる。
ハリーは黒人で、カーソンは当たり前のように相棒として信頼し頼りにしているけど
それをないがしろにするような奴というのは、いる。でもそんなの間違ってる。
でも、今回の大統領選後、やっぱりみんな本音では差別したいじゃないか、って
建前のほうをないがしろにするようになっちゃったらすごい怖いし嫌だ。
アメリカの社会って、また変わっていくのだろうか。フィクションの中でも
描かれ方は変わっていくだろうか。
この小説の中では、クローン技術でスーパー人類みたいなのを作ろうとしてる
のではないか、というのはまあ未来の夢物語だったけれど、混血してよりよい
人類が、みたいな感じではあって。
白人至上主義の崩壊、みたいな方が描かれていた。
未来がどうなるのか。人種の対立とかもっと激しくなるのか。そんなのおかしいと
もっとフラットになれるのか。10年後くらいのフィクションがどう描かれて
いくのか、読んでみたいよなあ。

今回はジェレミーはいない。行方不明のまま。
でも、カーソンくんの不安定さはやっぱりジェレミーとのことがあるのでは。
と、それは私の願望だけどね。
精神科医にかかるようにはなるみたいで、もうちょっと掘り下げられていくのか
どうか、楽しみ。次作はジェレミー出てくるみたいだし。
あと今回カーソンくんは新しい彼女作ってないしよりを戻すでもないしで、
女関係はクリア。最初の救急ヘリできてくれた女医さんあたりとどうにかなる
のでは、と思ってたけど、それは勝手な深読みだった。ごめんカーソンくん。
次作楽しみ。

|

« October 2016 | Main | December 2016 »