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映画「怒り」

*ネタバレ、結末まで触れています。


映画「怒り」


21日に見に行った。

一年前、ある夫婦惨殺事件。犯人と思われる青年は姿を消したまま。
小さな港のある街で働き始めた田代。
新宿のハッテン場で体の関係からマンションへ誘った直人。
沖縄の無人島にいついたバックパッカー田中。
前歴のわからない三人の男。彼と関わることになった人。
テレビで一年逃げ続けている犯人像がニュースとなるのを目にして、その男は
彼なのではないか、と、人の心に疑いが兆す。

千葉、新宿、沖縄の三つの場所でぞれぞれ繰り広げられるドラマ。
信じるか。信じ続けられるか。心に兆した疑いをどうするか。
ぎりぎりとひりひりと、痛い思いが辛くて苦しくて、凄い映画だった。

渡部謙と宮崎あおい親子。と、松山ケンイチ。
妻夫木聡と綾野剛。
広瀬すず、佐久本宝と森山未來。

それぞれのキャストが本当に最高に凄くてよくって素晴らしかった。

アイコちゃんは、家出しては風俗でぼろぼろになっちゃう女の子で、多分ちょっと
頭が弱い。そんな娘を大事に思いながらもどうにもしてやれない不器用なお父ちゃん。
田代くんはバイトを転々としている無口な青年だけど、アイコちゃんとは
真剣につきあおうとしている。ように見える。でも、手配写真と、似ている。
アイコちゃんはさー、田代くん大好き、って言いながら、お父ちゃんの疑いを
聞いて、そして、そんなことないよ、って言ったけど自分で警察に通報してしまう。
田代くんが話した事情を信じきることができなかった。

お父ちゃんがさ、近所の親戚のお姉さん?単に近所のお姉さん? に指摘されてた
ように、うちの娘が幸せになるわけない、うちの娘とつきあおうなんて
碌な男じゃない、ってどっか思ってるんでしょう、って、それが、その思いが、
アイコちゃんにもどこか植え付けられてしまってて、幸せに、なれるわけない、
って、思っちゃってて。なんだよなあ。
田代くんと二人で暮らす、って家を出ようとした時に、心配するお父ちゃんに
向かって、「アイコだから?」って、聞くの。その目が、すごかった。暗い透明な、
虚無みたいな、絶望みたいな、諦めみたいな。
それは違うよ、娘を持つ父親なら誰もがする心配だよ、と、言ってあげたい。
どうぜアイコだからダメだ、って、すごく、すごくすごくすごく思ってるのが
わかった。いつもふわふわ笑ってるのに、そういう目を、思いをしてるのが凄かった。
しあわせを、自分が壊しちゃったって、ぼろぼろに泣くのが凄かった。
さすがだ。
田代くんはもう一度連絡をくれて、戻ってくるのが、救いだった。辛くて、でも、
またもう一度、やり直すんだと思えた。

ユウマはオシャレマンション暮らしで、多分外資系?かなんかでちゃんと仕事
してて、ゲイで、ゲイであることを楽しむようにしてて。母は癌かなあ、
ホスピスにいて。優しい息子で。でも、母に対してはどっかごめんみたいな
気持ちのある、優しい息子で。
ナオトといきなりガツガツやっちゃうシーンからです~~~っごくセクシーで
ステキだった~!きゃ~!
で、行き場のなさそうなナオトを段々ほっとけなくて一緒に暮らすようになって。
ナオトは母親のお見舞いにもついていくようになって。ナオトだけで母親と
話にいったりもするようになって。
母をお墓に葬って、この墓継いでいく人いないなあみたいな感慨があって、
冗談ぽく、一緒に墓入るか?ってナオトに言っちゃう。冗談ぽく受けながらも、
物凄く控え目ながらも、ナオトがさ~~ほんとはすっごい嬉しいっていう感じが、
めちゃくちゃ可愛い。
でも、手配写真にナオトは似てて、ナオトの素性とか何にも知らないって
不安になって浮気か?とかコソ泥か?とか疑いが兆してしまって。
そのユウマに何も言い訳しないで、ナオトはいなくなってしまって。
警察から一度連絡が来た時に、ユウマはそんな人知らないって切ってしまう。
もしも犯人だったら?
面倒に関わりたくない知りたくない怖い。って。逃げてしまう。
後に、ナオトは施設育ちでそれを隠してたんだってわかる。病気抱えてて、
公園で行倒れてたんだってわかる。
どんなに泣いても、もう取り返しはつかない。
疑いにユウマは負けてしまった。
でも、疑ってしまうのもわかる。。。不安で、面倒に関わりたくなくて、苦しい
から逃げるっていうのもわかる。人はそんなに強くない。信じ続けるのは難しい。
このカップルは~も~。きみら商業BLか、という。いちゃついてる時の可愛さ
セクシーさ、片方死亡で終わるとか、もおお~~~。素敵だった。。。

沖縄編が、一番ツライ。
最近沖縄に引っ越してきたイズミちゃん。タツヤくんていう地元の男の子と
仲良しで、無人島に遊びに行ったところで、建物の残骸に住み着いてる田中さん
と出会う。できれば秘密にして、って言われて。段々仲良くなる。
那覇にタツヤくんと遊びに行ったとき、イズミちゃんは米兵?に襲われる。
タツヤくんは怖くて隠れてた。
田中さんも実はこっそり見ていた。
イズミちゃんは誰にも言わないでって、タツヤをとめる。
その秘密を抱えたタツヤくんも、味方になるよって言ってくれた田中さんが実は
別に味方なんかじゃなくて、こころのない人間だって、わかる。
犯人は偽名田中さんなんだよね。。。
田中さんの闇は虚無で。タツヤくんの苦しみはその闇に吸い込まれるようだと
思った。田中さんが裏切り者だ、と感じて、そして、彼を殺すタツヤくん。
本当に殺したいのはレイプ犯だし自分自身だろうし。どうしうようもなくて。
そんな被害者が泥沼におちてくような、世界。
沖縄編がほんと辛かった。
イズミちゃんは最後には部屋から出てひとりで立ったけど、でも、救いでは
ないよなあ。青い海、白い砂浜。美しい沖縄の景色の中で、ひとりぼっちで
立つ女の子に、救いがありますようにと、願った。

どのキャストもすっごいし。
淡々とぐるぐると描かれる三つの場所の三つの物語も凄いし。
ぐさぐさずたずたに突き刺されて、映画のあとぐったり茫然としてしまった。
重い。
すごい映画だった。
信じるのは難しい。
信じること、幸せになることを、思い続けるのは難しい。疑いには負けやすい。
諦めて逃げるほうが簡単だ。
それでも、生きるって。
重い。
たいへんな映画だった。


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