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『ラスト・ウィンター・マーダー』(バリー・ライガ/創元推理文庫)

*内容、結末まで触れています。


『ラスト・ウィンター・マーダー』(バリー・ライガ/創元推理文庫)


『さよなら、シリアルキラー』『殺人者たちの王』に続く三部作完結編。
三部作、っていっても、前はほんとに続く!で終わって、これはまさに続き!
で始まるので、三部って言い方はどうなのかという気はする。

ニューヨークでのハット・ドッグ事件を追って、単独行動の果てに、FBIの
モラレス捜査官と二人だけでトランクルームに行ったジャズ。
前の終りでは撃たれて倒れ。コニ―はビリーに囚われ。ハウイーはサマンサと
対決して倒れ。
ってところでど~なるんだよおおお、ってドキドキでこれ読み始めて、まあ
それなりにどうにかなって、ひとますはほっとした。死んでない。
でもコニ―は酷い怪我を負うし、ハウイーはまたあやうく死ぬところだった。
ジャズは、ついにビリーと対面して、対決して。
ビリーをとめられるのは自分だけだから、って逃亡してしまうジャズ。
コニ―でもハウイーでもとめられなくなってしまうジャズ。
母が生きていてビリーに人質にとられたと信じ、助けようとするジャズ。

それなのに。
ビリーよりも母のほうが邪悪。母こそがカラスの王だったと知ることになる。
読みながら、ああそんな。やめて。やめて。って、泣きそうになる。
17歳の少年に、負わされる宿命としてはあまりに過酷じゃないか。
ビリーだけでも信じられないほどの苛烈な運命だろーに、母もまた、ってね。
もー。
終盤のほうはずっと目の奥が熱い状態で読んだ。あまりにもつらいでしょ。
ジャズ。
でも、母ジャニスのほうが邪悪、ってなると、ビリーがちょっとしょぼく
感じるようになってしまうのは残念だな~。
しかもちょっと、ビリーのほうが母から息子を守るような存在であった、って。
ジャニスとしては嬰児殺しをやってみたかった、みたいな感じだったけど、
ビリーが、俺の息子をサイコパスエリートに育ててみたい、って、赤ん坊の
存在に夢中になっていた、ということ。
う~~ん。
歪んでいるながらも愛情なのか?? いやあかんて。
母と息子の初体験とか。
もう、めいっぱいジャズに辛いこと背負わせまくりで、作者はどんだけドS
なのかと。

でも、それでも、ジャズには友達がいて、恋人がいた。クレイジーだけど
殺人者ではない祖母がいた。学校にいってたしタナー保安官が気にかけていた。
人は大事、人は本物、って唱える呪文があった。
ほんとに。
ほんとにほんとに。
ハウイーがいてよかった。コニ―がいてよかった。まっとうな大人がいてよかった。

 「きみは立派に育ったよ、ジャスパー」
 「きみに言いたいのは、かわいそうにということだ。本当にかわいそうにな、
 ジャスパー」

コニ―の父がぼろぼろになったジャスパーにかけた言葉のところで、泣いた。
本当に、かわいそうに。
ジャズにそういってあげてよかった。
嗚咽がとめられなかった。声上げて泣いてしまった。一人で読んでてよかった。

エピローグは5年後で、ジャスは自伝みたいなの書いてた。乗り越えた、という
ことかね。そして植物状態の母を毎日見舞いに行く。いつでも生命維持装置を
切ることはできる。それは家族に委ねられた権利だから、犯罪ではない。
母に、いつでも殺せるよ、と囁くジャズは、でも、それは、ちょっと、あまり
健全に乗り越えているとは言えないような気がするけどねえ。

人を殺せる。
人を操れる。
圧倒的な力を持っているジャズはやっぱりどこか決定的に歪んでいて、でも
それを自分の中でコントロールしていくのだろう。
どうしようもなく残酷だと思う。コニ―もハウイーも変わっていくだろう。
ジャズももっと変わっていくだろう。人生は続く。人生は長い。
彼らの、青春小説だったなあ。
ヤングアダルト分類らしいけど、確かにそれはそうだと思うけど、ぐっさり
深く突き刺さってくる小説だった。

シリアルキラーの息子ってなんかそそられる~、みたいに軽く読み始めたけど、
その題材の重さをがっつり描いていると思う。

最初は、ハンニバルな感じ!とか、これ、ジャズがウィルだったら、とか
ああジャズが博士だったら、っていろいろ妄想もしちゃってもえるときめく、
って思ってた。
けどこれだけでもう素晴らしく十分に最高に面白かった。
ハウイーがさ~、もう、すごいよね。コニ―ももちろんすごいいい子で理想の
恋人だけど。ハウイーもほんと理想の親友。やはりここまでジャズに過酷な
運命背負わせるんだったら、やっぱりこの理想の友達と恋人がなくちゃ
やりきれなさすぎる。

もしも映画化だったら~、「クロニクル」の時のデハーンくんだな。というのが
私のイメージ。綺麗な男の子であやうくてでも冷酷で強い。

ジャズたちのしあわせを心から願って、満足の読書でした。


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