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映画「リリーのすべて」

*ネタバレ、結末まで触れています。


映画「リリーのすべて」


ゲルダとアイナーはともに画家で仲のいい夫婦。風景画家として評価を得ている
アイナーと、人物を描きながら今一つ評価のつかないゲルダ。
ある時絵のモデルの代わりにバレリーナの衣装をあて、ストッキングをはいて
足のモデルをゲルダがアイナーに頼んだことをきっかけに、アイナーをリリーと
呼んで、アイナーが女装して出かける遊びを始めた。
ゲルダがリリーを描いた絵が認められ、リリーの存在が増してくる。
アイナーはリリーとしていることこそが自分だと感じるようになった。

18日に見に行った。

主演のエディ・レッドメインも、助演女優(といっても主演みたいなものだと
思うけど)のアリシア・ヴィキャンデルもアカデミー賞ノミネートされ、
アリシアは受賞した。納得。二人とも素晴らしかった。
冒頭から、二人夫婦ならではの親密さが視線だけの会話なんかで伝わる。
パーティや人に会うことを苦手としているアイナー。
バレエの劇場の舞台裏かなあ、衣装をするっと撫でていくアイナーの手つき。
エディ・レッドメインはすでにオスカー俳優で、上手いっていうのも当たり前
すぎるのかもしれないけれど、もうほんと、ちょっとした視線とか仕草で
言葉じゃない心のゆらぎみたいなのがとっても見えてくる。

ゲルダもね、最初は楽しく夫を美人さんにして一緒に楽しんでいたのが、段々
夫が本当に女性であると気付いてゆく過程が、切なくて。リリーを描くのが
好きで楽しくて。それが認められて売れて。でも夫アイナーが消えてゆく。
アイナーにとってはリリーになることが生きてゆくことなんだけど、ゲルダに
とってみれば愛し合っていた夫アイナーが消えてしまうことで。せめぎ合い。
アイナーの幸せを思えばアイナーを失うことになる妻。
アイナーが、リリーになっていく時に、これまでアイナーだった自分を消して
いこうとするのがねえ。切ない。そんなにこれまでの自分を殺さなくてもいい
のではないか? と思うけど、うーん。違うのかなあ。
ゲルダがどうしてもアイナーのことを思ってしまうのがリリーには辛いこと、
なのだろう。ゲルダの助けが必要だし、ゲルダのことを大事にも思ってるだろう
けれども、ゲルダの愛してた夫アイナーは自分じゃない、って、ことなの、
かなあ。
複雑。

まだ、性同一性障害というもの自体ほとんど認識されてなかった時代。
無茶苦茶されかけたりしてて辛い。
アイナーがリリーとして、女性の服や化粧をまとうのが嬉しい、ほっとする、
という感じで、それでいいじゃない、と思うのに、そこを矯正せねば、って
なるのは辛い。
ウィショーくん演じるヘンリクと、キスしちゃって、女性扱いされた、と
ときめくのに、ヘンリクが実は同性愛者、アイナーだとわかっていてそう
してくるって気づいたときのショックとかも切ない。

いろいろと、はっきりすっきり割り切れない、ゆらぎ、せめぎあい、切なさ
いっぱいの映画だった。美しい。
画家、芸術、な世界の映画だけあって、どのシーンもそのまま絵画のように
うつくしく決まってて、とてつもなく綺麗だった。
デンマークの景色も。二人の部屋も。複雑な色合い、静謐な構図。素敵だった。

最後、性別を変える手術、世界で初めての手術を受けて、リリーとして生きる、
というところで、術後ほどなく亡くなってしまうリリー。
それでも、危険とわかっていても、自分が自分であるために、手術を受けたい
と決意したリリー。
命を失うことになっても、アイナーのままでいるよりはよかったのだろうか。
難しい。。。

アイナーの子供の頃の初恋の人? ハンスもかっこよかった~。
ヘンリクはリリーと友達になったのかあ、というのも不思議でよかった。
キャストみんな名優って感じ。パリもデンマークもうつくしかったです。


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