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『さよなら、シリアルキラー』(バリー・ライガ/創元推理文庫)


*結末まで触れています。


『さよなら、シリアルキラー』(バリー・ライガ/創元推理文庫)


ジャズは高校三年生。もうすぐ18歳。ロボズ・ノッドという田舎町で祖母と
暮らしている。母はいない。父は21世紀最悪の連続殺人犯。21年間にわたって
三桁に及ぶ人間を殺していた男が父親で13歳までその「教育」を受けてきた。
ジャズには友達がいる。彼女がいる。
だが、指を切り取られた女性の遺体が見つかると、それは連続殺人犯の犯行だと
確信でき、その犯人をみつけるために動き出さずにはいられなかった。


青春ミステリ。ヤングアダルトに分類されるものだそうで、物凄く辛い苦しい
重荷がありつつも、読後感はほんと、青春ミステリ、という感じ。
特殊な環境に育った少年のあがき。
親友である、ハウイーがいる。血友病A患者、で、弱い存在ではあるんだけど、
ハウイーがいてくれることでジャズがどれほど救われているか。
コニ―という彼女もいる。ティーンの女の子としては理想的すぎるほどの、
ちゃんとした最高の彼女。でもやっぱりこんな最高の彼女がいなくちゃ、ジャズ
を支えることはできない。
最悪の祖母。最悪の父。その代わりとしてジャズには最高の親友と最高の彼女が
配されている。そうしてくれてよかった。
保安官のG・ウィリアムも。シリアルキラー、ビリーを逮捕した一見冴えない保安官。
ジャズを気にかけてくれる。

ちょっと特殊な環境の子どもの成長、っていっても、このシリアルキラーの息子、
っていうのは過酷すぎないか、と、凄かった。
ビリーはまあ、レクター博士だよね。すでに囚われ獄中だけれども、圧倒的カリスマで
その最悪サイコパスにものごごろつく前からめいっぱいの殺人エリート教育で
育てられ、というか洗脳され、そして今それなりに普通の高校生らしくいる
ジャズは特別すぎる。普通の高校生らしくしている、のも、父の教えのように
相手にどう見せて相手をどう操るか、という演技の中にいるから。で。
もう何もかもがめちゃくちゃ辛いんだけど、ジャズは若くて友達がいて、よかった。

これが出たのは2012年らしい。(この文庫刊行は2015年)
ビリーのイメージの原点はレクター博士だと思うけど、読みながら私はドラマの
ハンニバルを思ってしまってもえた。ドラマのハンニバルより前に書かれてるから
もちろん違うのだとは思うけど。ビリーの描写がマッツのハンニバルみたいに
思えるの。

 「口もとに皮肉っぽい笑みをたたえ、大きく見ひらいた目を輝かせ、いたずらっぽい
 表情ともとれるものを浮かべている」(p337)
 「灰色ががったブロンドの髪はもう剃りあげられてはいない。昔より少し長く
 伸びていて、きれいに後ろになでつけられている」(p337-338)
 「ビリーが言った。その声は低く、わけ知りで、誘惑するような調子を帯びて
 いる。完璧なソシオパスの声」(p343)
 「だが、ビリーはその情報に対して反応らしい反応を示さなかった。ただ手錠の
 鎖の許すかぎり後ろにもたれ、目を閉じて、口もとにかすかな笑みを浮かべて
 聞いていた。ジャズがこの一週間のできごとを話すあいだも、その笑みは一ミクロン
 も揺らがなかった」(p353)

こういうの、マッツハンニバルが子どもウィルを育てていたとしたら。。。って
妄想してしまってもえた。ごめん。苦悩する少年ウィルだったらな~って。ドキドキ。

ジャズは懸命に、人は大事だ、人は本物だ、僕は殺さない、って何度も心の中で
繰り返す。あまりにもやすやすと人を殺すやり方が自分にはわかっているから。
ビリーの息子として殺人者になってしまうという恐れと、違う、という希望と。
その希望がこわい、というのと。もうほんと読んでて苦しい。
そして、8歳の時にいなくなった母親。それを殺した、父が自分に殺させたのでは
ないかという恐れ。悪夢。
こんな大変な運命背負わされて。それでもジャズには未来があって。
だけどカリスマシリアルキラーである父ビリーには信奉者もいて。
もーっ
巻き込まれざるをえないジャズ。大変すぎる。ビリーすごすぎる。
この事件もビリーの計画なのか信奉者の計画なのか、ともあれ、ビリーの犯行を
なぞっていると気付き、なんとか阻止しようとジャスも保安官も動いて、
被害者遺族のふりをしていた男を捕まえることには成功する。
でも、ビリーは脱獄する。
その父と、いつか対決することを決めて、ジャズは背中に反転した文字を刺青する。
鏡でいつでも見られるように。

 「「I HUNT KILLERS」
  ―ぼくは殺人者を狩る者になる」 (p406)

原題が「I HUNT KILLERS」なんですね。三部作だそうで、2作目は翻訳もう出てる。
読みたい。全部読みたい。ほんとキャラがみんな魅力的でよかったし、YAらしく
読み易いし、個人的もえもえツボもつかれてすごくよかった。

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