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『機龍警察 未亡旅団』(月村了衛/早川書房)


*結末まで触れています。


『機龍警察 未亡旅団』(月村了衛/早川書房)

チェチェンに、家族を亡くした女たちだけのテロリスト集団がいる。「黒い未亡人」
と呼ばれる組織。
神奈川で密売取引の現場に踏み込んだ警官隊が捉えたのは女性ばかりの集団
だった。捕まった彼女らの一人は、自爆した。


と、いきなり重い派手な爆発で始まった。テロ集団が日本に潜入している。
小さな子どもしか乗れないようなキモノ、エインセルが使われるらしい。
街で不良に絡まれかけていた子どもを偶然助けた由起谷は、それが少女であり、
ただならぬ様子に後にテロ集団の一人かもしれないと思い当たる。
連続した自爆によって確実に標的に近づき、殺戮被害を甚大にする「黒い未亡人」。
彼女たちの日本での狙いは。
彼女らのリーダーであるジーナ、由起谷が助けた少女カティアはジーナの娘の
ような存在だった。誰もが自ら自爆さえも辞さない戦士たる「黒い未亡人」の
狂気のやり方は、由起谷の説得によって心動かされたカティアの痛みだった。

事件そのもの、と、チェチェンでの悲惨さ、犠牲となるばかりだった子ども、
女たちの物語、それと警察内部の<敵>とは、と、由起谷、城木といった警察
の人間と、それぞれの物語が描かれていく。
カティアが捕まって取り調べ、となって、というあたりはまだろっこしい気が
するけれども、それで存分に個々の背景を語らせていくわけで、うーん。
これは難しいところで、凄いと思ったけど、やっぱ下関で母とこじれてグレて
ましたってな由起谷くんの内なる暴力と、カティアが体験してきた人生と、
どーにも比べるレベルの問題じゃなくて、まーそれは重々承知の上で、白鬼って
いくらいっても仕方ないけど、近未来とはいえ今の日本と地続き設定な日本で、
実際紛争地帯、テロ組織と対抗できるような人間を設定するのは難しいよなあ。

ジーナ、カティアたちの歩んできた道は悲惨すぎるし凶悪すぎる。
今回の事件で吹っ飛ばされた日本警官や、街の被害も甚大すぎる。
それでも、そこに一人一人の人、を描くとなると、やっぱり個別の小さな
思い出や、ぬくもりや、親子関係や。愛、に、なるしかない。
恋なのか。
愛なのか。
恨み。
執着。妄執。
ダークサイドに堕ちた、と一言で言ってしまえばそうなんだけど、やっぱり
人間一人ひとりは小さくて弱くて、抱きしめて一緒にねむる大事な人の体温が
あればそれでよかったはずなのに。
キモノや武器を手にして膨大な他人の、それぞれ大事な大事な、とわかって
いるはずの命を犠牲に憎しみ復讐をぶつけることをしてしまう。
善良なる愛の傲慢か。
不幸にあえぐ憎しみか。
子どもすら犠牲にするか。
実に苦しかった。

それでも最後にカティアから手紙が届いて、ゆきたにしろう、に、もう一度
会いたいという願いがあって、絶望的だけれども微かな救いはあった。
会いたいという願い、希望を、ささやかな恋を、カティアは持つことが
できたんだなあ。

あと警察内部の<敵>ね。
もう半端なく酷い警察内部の被害を引き起こしてるわけで、この<敵>の
思惑とか物凄いことにしないと、明らかになった後でこんだけひっぱった、
こんだけしでかしたことに対してしょぼい~~~と投げたくなるようなことに
ならないでくれよ、と、心配になってきた。
<敵>のことをもっと話すすめてくれ、とも思うけど、それが明らかになったら
がっかりするかも~、と、心配で。杞憂であれと思うけど。
なのであんまりひっぱりすぎる前になんとかしてほしい~。

キモノバトルのわくわく!みたいなのもあるけど、やっぱり今回、いやまあ
毎回ヘビーな話だけど、やっぱり特に今回、非常に辛くて、メカバトルだ~!
ってわけにもいかないかと。
テロリスト。どう考えればいいのか。。知ることすらしてない自分は、と、
また暗澹たる思いになりました。
読み応えたっぷり。次はどうなるのかなあ。

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