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映画「ディーン、君がいた瞬間(とき)」


*結末まで触れています。


映画「ディーン、君がいた瞬間(とき)」


ジェームズ・ディーンと、写真家デニス・ストック。
デニスは個展を開けるような写真家になりたいと、自分のテーマを持った写真を
撮りたいと思っているもののままならず焦燥の中にあった。
パーティで出会った、ジミーという若い俳優に惹かれて、彼の写真を撮りたいと
願う。マグナム・フォトでライフに売れると思うと売り込みをかけるが、
ジミーは写真撮影に協力的ではなく、なかなか思い通りな写真が撮れない。
NYにいる別れた妻、幼い息子とのコミュニケーションもうまくいかず、
ジミーの写真は諦めるように上司に言われ、だが「エデンの東」のプレミア直前、
故郷へ帰るジミーに誘われて一緒に旅をする。
まだ世界中に名前を知られるようになる直前。若さと不安の中にいる二人の
つかの間の交流だった。

昨日見に行きました。
デイン・デハーンがジェームズ・ディーンかあ。というのにそそられて見た。
どうにもやる気とか元気とかはなく、ぼそぼそと喋り猫背で煙草に火を付けたり
サインしてみたりするシャイなジミーの姿。一瞬激高したり、無言で自分の中に
沈んでいたり。
ジェームズ・ディーンをやるなんてすっごくプレッシャーだったんじゃないか
なあと勝手に想像するけれども、スクリーンの中ではそんなことはわからなくて
ふわっとただそこにいるジェームズ・ディーンだった。
若くてハンサムで愛されてて会社の期待の星で、でも、そこにうまく馴染めず
故郷で農場の中にいるときこそリラックスしているジミー。

もっさりしてたり眼鏡かけてたり影の中にいたりのシーンが多かったけれど、
デハーンくんの目にひかりがさす、あの青い目の深さうつくしさは本当に素晴らしい。
見に行ってよかった。

デニスは、写真家としてもっと、とあがいていて、まだ無名なジミーに
八つ当たり的とも見える感情のぶつけかたをしてたりもして、でも見てるこっち
としては、このあともうすぐにジェームズ・ディーンは死ぬとわかってるから
ああもう~~もうもう~~~馬鹿~~~っ。二人の時間を大事にしなよ。
もっとジミーに寄り添ってやれよ、と、勝手にうるうるしてしまう。
ラスト、プレミアすっぽかしてデニスをまた誘いにジミーがデニスのアパート
下から大声で呼ぶの。また一緒に行こうよ!って。一番の大声と晴れやかな顔
をして。でもデニスは行けないよ、と苦笑して断ってしまう。
それはそうなんだよね。
大人だし仕事あるし急に言われても行けないんだよね。
でも、行けよ馬鹿ーって思う。ジミーとまた今度会う事はできないんだよ。。。

静かな映画だった。その中で何度も電話のベルが鳴り響いて印象的だった。
昔の電話のベル。切り裂くような、突き刺さるような、不穏な音だった。
でも時にはいい知らせももたらす。
電話の音ってこんな風だったんだなあ、と、この頃のやさしい電子音とは
違う鋭さを思った。

ジェームズ・ディーンの写真かあ、というので私ですら見たことあるような
あの写真この写真を撮る場面たち。エンドロールの時にライフに載ったデニス
の写真たちが流れる。
私はジェームズ・ディーンのことを詳しく知っているわけじゃないし、
この映画の物語がどのくらい本当なのかどうかはわからないけれども、
若くて成功者にはまだなっていなくて不安で焦燥の中にあって出会った二人の
時間のうつくしさがとても好きだ。今となっては奇跡のひと時。
ジェームズ・ディーンはあまりに短い生涯を終える。
デニスのことは特に何も描かれないけど、長生きしたみたい。2010年没。
ライフの天才写真家、みたい。

原題「Life」
マグナム・フォトとか、ちょっと前一瞬キャパにはまったりしてたので
お、なんて思ったのも楽しかった。ベン・スティラーの「LIFE!」も見たし。
時代を築いた雑誌なんだよなあ。

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