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映画「ザ・ウォーク」


*結末まで触れています。


映画「ザ・ウォーク」

IMAX、3Dで見た。

フィリップは少年の頃見たサーカスで綱渡りに魅せられる。飽きず練習を重ねる
フィリップに呆れて家から追い出されるほどに。
大道芸をしている時に、同じく歌って人々を集めていたアニーと出会う。
新聞で見たNYの世界一高いビル、ツインタワーのワールドトレードセンタービル
の間にワイヤーを張り、そこを渡りたい。そんな夢をアニーと語り合ううちに、
仲間が出来てビルの完成直前の8月、計画を実行すべくアメリカへ渡る。

フランスの若者たちが、アメリカに渡り、また仲間を集めて途方もない計画、
綱渡りの計画を実行する! 
単純に言えばバカバカしいようなその計画が、命がけであること、計画通りには
いかないこと、仲間集めの苦労、不測の事態の中諦めずやり遂げること。
青春映画だな~と思った。
無許可の犯罪行為にあたるわけで、秘密の計画を進めていくのはスリリング。
綱渡り。
でもビルの高さは110階。目がくらむ。
これは~3Dで、ひ~~~や~~~~こわい~~~というのを味わってよかった。

仲間の一人に、高所恐怖症な数学教師、英語はいまいち、なジェフ、だっけ、
がいて、彼がでも最終局面ではフィリップを支えることになるわけで、
ああ~~怖いよねえ~~~可哀想~でもがんばれ~~~って、可愛くてすごい
応援したよ。
フィリップがワイヤーを歩き出すと、背後で無言で(集中の邪魔しないように)
ひゃっはーやったー!って密かにはしゃいでたのが可愛かった。
警備員から隠れてその前にフィリップと二人息を潜めててねー。
高い所1メートルでもパニックになるってゆーのにねー。フィリップを支える。
可愛いぞきみたち。

フィリップを演じるジョセフ・ゴードン=レビットが回想して語る、という
スタイルで、話はテンポよく進む。ひょろっとほっそりしてるけれどもちゃんと
筋肉ある、すごくきれいな体でスタイルでステキだった。ナイスな裸シーンも
あったよ^^ バランスよさそうな体というか。
で、フランス人だから最初は舞台フランスだし、フランス語と英語、両方が
大事な感じの話でフランス語喋ってた。フランス語のニュアンスとかわからない
んだけれども、これは、可愛い、可愛いだろ絶対、って感じはわかる。
フィリップが実行日が近づくにつれてナーバスになってクレイジーになって、
でもなんだかやっぱり愛されちゃって行く、っていう、あーなんか愛される
んだろうなあ可愛いなあ、と思えてとてもよかった。

綱渡りの師匠、パパ・ルディもいいキャラだった。
みんながそれぞれいいキャラだった。

予定通りにはいかなかったけれども、とにかく綱渡り始める!となって。
渡り切った!と思ったら、もう一度戻っていく。そんなことをしてるうちに
両方に警察きちゃうし、それなのにその綱の上で自由だ、とかって何度も歩き、
ポーズをとり、ねそべったりしちゃって、も~~~~~っ。
はやく~やめて~ひ~~~も~~~、早く戻って~~~って何度も何度も思った。
これが実話か。やめろよもう~バカ~~~。

でも、無事にショーは終わって、もちろん捕まるけれども、喝采を浴びる。
なんだか見てた人に喜びと興奮を与えたんだなっていうの、わかる。
すごい馬鹿で、すごい。アーティストなんだなあ。

そして、ワールドトレードセンターはちょっと愛される存在になる。
そして、フィリップは無期限パスを特別にもらう。屋上展望に行けるパス。
綱渡りは二度とするなよ、と釘をさされながら、期限のところに「永遠」と
記されたパスをもらう。

この出来事は1970年代か。
永遠、と記されたパスはもう使えない。あのツインタワーはもうない。
9.11の日に、壊れた。
それを私はリアルタイムで見たんだ。
ことさらにそのことは何も言ってない映画だけれども、見るものはそのことを
思わずにはいられない。
二つのビルに光があたってひかり、やがてゆっくり闇に消える。切ない終幕。

青春映画だ~って思い、馬鹿だ若者たちよ、って感じでもあり、それぞれの
人物の魅力があり。切ない。
時の流れを思う。
3Dでひゃ~っていうのはもちろん、いい映画見たなって満足でした。

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ナショナル・シアター・ライヴ 2016 「ハムレット」


ナショナル・シアター・ライヴ 2016 「ハムレット」


26日に見に行ってきた。
イギリスのナショナルシアターの、舞台をそのまま、って感じのやつ。

ベネディクト・カンバーバッチが演じる「ハムレット」
私は英国まで見に行ったりできないので、映画館で見られて嬉しい。
舞台の前に、ベネたんのインタビューとか、学生演劇の「ハムレット」をやる子
たちと話していたりというのがあって、ちょっと嬉しかった。
でも、途中幕間の休憩もそのまんま、で、それはどうなのと思ったり。
そんなこんなで3時間半くらいありました。まあ仕方ない。

「ハムレット」についてほとんど何も知らないし、いろいろ舞台の見比べとか
したことないので、正直退屈に感じてうとうとしてしまったところもあり(^^;
駄目人間ですみません、て感じ。
演出とか、今回の舞台美術はステキだとか、詳しければ見どころたっぷりなのだと
思う。
舞台美術、かっこよかったなーとか、そんな感想ですみません。

衣装は完全に現代でフツウ。でもセリフ回しは随分持って回ったというか、
長くて、んー、こういうのもちゃんと英語がわかって見ると全然違うんだろうと
思う。私が残念な観客で悲しい。
あとやっぱ舞台そのまま映してるとはいえ生ではないので、映画館で見てると
なんかもうちょっとBGMあってもいいんじゃないかとか思っちゃった。

でも役者さんはさっすが役者だなーっと圧倒された。
生身のその人一人で、あの長いセリフ、あのテンション、あのエネルギーで
舞台を劇場をぐわっと支配してってる感じがしてすっごいかっこいい。
ベネたんはもちろんながら、どの人も凄い。

日本で映画館で見られてよかった~と思うけど、あああ~これを生観劇できたら、
と、もどかしい思いもしました。

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映画「パディントン」


*ネタバレ、気にするようなものじゃないかもだけど。結末まで触れています。

映画「パディントン」


暗黒のペルーからクマがロンドンへやってきた。昔、探検家が出会ったクマ夫婦の
甥っ子にあたる彼は、英語やマナーを学び、礼儀正しくしていればきっと新しい
おうちが見つかると信じてきた。
駅で誰とも話ができず途方にくれている子グマに、ブラウン一家が足をとめる。
主人のブラウンさんはやめておけ、というが、夫人は子グマに同情した。
パディントン駅で出会ったからパディントン。クマ語では難しすぎる名前に
変わって英語の名前パディントンとなった子グマは、ひとまずブラウン家に
滞在することになった。

20日に字幕で見た。パディントンの声はベン・ウィショーくんだから!!!
すーーーーっごい可愛かった~!!!
すごく礼儀正しい子グマ!!だけど、食べる時とかちょいちょい獣なんだよ~。
可愛い!!
探検家を探しておうちが欲しい子グマ。
ブラウンさんたちが振り回されてでも大事にしていくのがとっても素敵。
ほのぼの可愛いだけじゃなく、スリル、ハラハラドキドキ!もたっぷり。

前半であははって笑ったネタが、後半それなりに役立つ伏線になってるのか~
とわかる親切丁寧設計な映画。楽しい。気持ちいい。
細々リアルでシビアな感じもあるけど基本ファンタジー。マーマレードだね~。
ちょっとだけ苦味もあります、みたいな。

暗黒のペルーを探検、とかって、悲しき熱帯みたいな、あー、ヨーロッパ人め、
って思うし。でも子グマがいても、ああクマだね、みたいな、ロンドンは冷たい
けれど変わり者がいてもそれはそれでオッケーみたいな。冷たいけど優しい。

ブラウンさんが、ダウントン・アビーの伯爵さまだ、って思ったり。
ああ。子グマが、ダウントンにきたら。とか、ウィショーくんが喋ってるわけで
この子グマと007が出会ったら、とか、妄想も広がる。
楽しい。
可愛い。
とにかくめっちゃめちゃ可愛い。紳士的な子グマ。ブラウンさんちで家族に
なれてよかったね。
最高です!

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映画「ブリッジ・オブ・スパイ」

*ネタバレ、結末まで触れています。


映画「ブリッジ・オブ・スパイ」


冷戦下のアメリカ。一人の男がスパイ容疑で捕まる。ルドルフ・アベル。スパイと
いえども国選弁護人がつく、とのことで選ばれたのがジェームズ・ドノバンだった。
形ばかりの弁護でいいはずのところ、あくまで法に忠実に公平に裁判を進めよう
とするドノバンは、スパイに肩入れするとして危険にさらされる。
なんとか死刑は防いだドノバン。アベルはドノバンへ信頼を見せた。
それから5年後。偵察任務に出た米軍パイロットがソ連に囚われる。
スパイとの交換をしようということになり、交渉人として再びドノバンが選ばれた。

見に行ったのは15日。スパイもの~とはいえ、かなり地味。
一般人である、というドノバンが一人東側に行き、交渉にあたる。ドノバンは
あくまで単なる弁護士なので、これといって超人的活躍するでもなく、
コートとられて寒そうで風邪ひいちゃうよってぐずぐずなったりしてる。
でもその一人の男のシンプルな正義感としたたかな根性で、スパイ交換が
なんとか成り立った。

途中、ベルリンの壁ができてるところとか、そのどさくさに紛れて東側に捕まって
しまった学生くんとか、さらっと時代背景が見える感じがとても面白かった。
スパイ交換、というそのものは成功しても、冷戦真っただ中であることには
変わりなく、ソ連にもどってゆくアベルを見送るのはむしろ酷いことのように
思う。それはまあ私が西側のがいいよって思ってるから、かなあ。どうなんだろ。

アベルが、ひょうひょうとしたおじいちゃんのようでいて、捕まる時には
さりげなく証拠隠滅とか、囚われの身でも平然とマイペースな感じとか、すごく
魅力あるキャラだった。
ドノバンと友情らしきつながりを持つ、とかね。

ル・カレ的な感じと思った。地味で地道。寒い冷たいヨーロッパの空気。
すかっとはしないけど小さく一息つく映画でした。

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映画「白鯨との闘い」


*ネタバレ、結末まで触れています。


映画「白鯨との闘い」


メルヴィルはある男に話を聞きにきていた。エセックス号の生き残りの男。
彼は若い頃捕鯨船に乗っていた。名家の出だからというだけで船長になった
ポラードと、本来なら船長になっていたはずのオーウェンの対立ムードの中、
嵐の船出だった。


「白鯨」の映画化じゃなくて、そのための実話取材しているメルヴィルが聞く、
遭難事件の話だった。なんかこう、デカい鯨と戦うぜ!ひゃっはー!みたいなのを
勝手に想像してたので、後半はすごいダメージ受けた。。。

嵐に遭遇しても自分がエライって示したいばかりにオーウェンとは違う指示して
船を危うくしちゃう意地っ張り船長。かっとなって突っ走りやすいオーウェン。
昔からの友達マシューが間にたってお互いなだめたり。
一番下っ端、ニカーソンくんが可愛いけど、小さいからって鯨の脳髄の中に入れ、
ってされたりして、うへえ、とかいうシーンもあり。
鯨を獲るぞ!っていう盛り上がりは前半にあったけど、でもそのあとはなかなか
鯨に出会わず漁ができない苛々。ついに鯨を見つけたとおもったら、エセックス号
よりも巨大な鯨で、傷だらけでも強いやつで。船は壊される。

鯨が。こわい。
悪魔だった。。。
海の王者。海の神。人間を蹴散らす悪魔。。。こわかったよ。。。

で、遭難して漂流して、どんどん弱っていって。
怪我をして、やっと島を見つけたけど孤島すぎて助けはこない、って絶望して。
それからまた海へ。
もー。
つらい。
先に死んだ人間をたべる選択をせざるをえないとか。くじ引きで死ぬ人間を決める
とか。つらい。でもどうしようもない。
そんなこんなの中やっと救助されて。
帰ることができて。

ニカーソンくんの、ずーっと話せなかった事件の話を聞くメルヴィル。
そしてフィクション「白鯨」が生まれるのかあ。
読んだことない。いつか読んでみようかな。。。

メルヴィル役がベン・ウィショーくんで、静かな中に熱心な強情さがあって
ステキでした。
あとキリアン・マーフィ。オーウェンの友達。島に残って海へゆく仲間を
見送る横顔、目が、ほんとうにほんとうにとてつもなくうつくしかった。

ずっと海で過酷で、普通に2Dで見たのに、酔ったみたいにどんどん気分が悪く
なってしまった。
嵐の海とか、沈む船とか。鯨。迫力だった。鯨、こわかったよ。。。

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『さよなら、シリアルキラー』(バリー・ライガ/創元推理文庫)


*結末まで触れています。


『さよなら、シリアルキラー』(バリー・ライガ/創元推理文庫)


ジャズは高校三年生。もうすぐ18歳。ロボズ・ノッドという田舎町で祖母と
暮らしている。母はいない。父は21世紀最悪の連続殺人犯。21年間にわたって
三桁に及ぶ人間を殺していた男が父親で13歳までその「教育」を受けてきた。
ジャズには友達がいる。彼女がいる。
だが、指を切り取られた女性の遺体が見つかると、それは連続殺人犯の犯行だと
確信でき、その犯人をみつけるために動き出さずにはいられなかった。


青春ミステリ。ヤングアダルトに分類されるものだそうで、物凄く辛い苦しい
重荷がありつつも、読後感はほんと、青春ミステリ、という感じ。
特殊な環境に育った少年のあがき。
親友である、ハウイーがいる。血友病A患者、で、弱い存在ではあるんだけど、
ハウイーがいてくれることでジャズがどれほど救われているか。
コニ―という彼女もいる。ティーンの女の子としては理想的すぎるほどの、
ちゃんとした最高の彼女。でもやっぱりこんな最高の彼女がいなくちゃ、ジャズ
を支えることはできない。
最悪の祖母。最悪の父。その代わりとしてジャズには最高の親友と最高の彼女が
配されている。そうしてくれてよかった。
保安官のG・ウィリアムも。シリアルキラー、ビリーを逮捕した一見冴えない保安官。
ジャズを気にかけてくれる。

ちょっと特殊な環境の子どもの成長、っていっても、このシリアルキラーの息子、
っていうのは過酷すぎないか、と、凄かった。
ビリーはまあ、レクター博士だよね。すでに囚われ獄中だけれども、圧倒的カリスマで
その最悪サイコパスにものごごろつく前からめいっぱいの殺人エリート教育で
育てられ、というか洗脳され、そして今それなりに普通の高校生らしくいる
ジャズは特別すぎる。普通の高校生らしくしている、のも、父の教えのように
相手にどう見せて相手をどう操るか、という演技の中にいるから。で。
もう何もかもがめちゃくちゃ辛いんだけど、ジャズは若くて友達がいて、よかった。

これが出たのは2012年らしい。(この文庫刊行は2015年)
ビリーのイメージの原点はレクター博士だと思うけど、読みながら私はドラマの
ハンニバルを思ってしまってもえた。ドラマのハンニバルより前に書かれてるから
もちろん違うのだとは思うけど。ビリーの描写がマッツのハンニバルみたいに
思えるの。

 「口もとに皮肉っぽい笑みをたたえ、大きく見ひらいた目を輝かせ、いたずらっぽい
 表情ともとれるものを浮かべている」(p337)
 「灰色ががったブロンドの髪はもう剃りあげられてはいない。昔より少し長く
 伸びていて、きれいに後ろになでつけられている」(p337-338)
 「ビリーが言った。その声は低く、わけ知りで、誘惑するような調子を帯びて
 いる。完璧なソシオパスの声」(p343)
 「だが、ビリーはその情報に対して反応らしい反応を示さなかった。ただ手錠の
 鎖の許すかぎり後ろにもたれ、目を閉じて、口もとにかすかな笑みを浮かべて
 聞いていた。ジャズがこの一週間のできごとを話すあいだも、その笑みは一ミクロン
 も揺らがなかった」(p353)

こういうの、マッツハンニバルが子どもウィルを育てていたとしたら。。。って
妄想してしまってもえた。ごめん。苦悩する少年ウィルだったらな~って。ドキドキ。

ジャズは懸命に、人は大事だ、人は本物だ、僕は殺さない、って何度も心の中で
繰り返す。あまりにもやすやすと人を殺すやり方が自分にはわかっているから。
ビリーの息子として殺人者になってしまうという恐れと、違う、という希望と。
その希望がこわい、というのと。もうほんと読んでて苦しい。
そして、8歳の時にいなくなった母親。それを殺した、父が自分に殺させたのでは
ないかという恐れ。悪夢。
こんな大変な運命背負わされて。それでもジャズには未来があって。
だけどカリスマシリアルキラーである父ビリーには信奉者もいて。
もーっ
巻き込まれざるをえないジャズ。大変すぎる。ビリーすごすぎる。
この事件もビリーの計画なのか信奉者の計画なのか、ともあれ、ビリーの犯行を
なぞっていると気付き、なんとか阻止しようとジャスも保安官も動いて、
被害者遺族のふりをしていた男を捕まえることには成功する。
でも、ビリーは脱獄する。
その父と、いつか対決することを決めて、ジャズは背中に反転した文字を刺青する。
鏡でいつでも見られるように。

 「「I HUNT KILLERS」
  ―ぼくは殺人者を狩る者になる」 (p406)

原題が「I HUNT KILLERS」なんですね。三部作だそうで、2作目は翻訳もう出てる。
読みたい。全部読みたい。ほんとキャラがみんな魅力的でよかったし、YAらしく
読み易いし、個人的もえもえツボもつかれてすごくよかった。

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『もう年はとれない』(ダニエル・フリードマン/創元推理文庫)


*結末まで触れています。


『もう年はとれない』(ダニエル・フリードマン/創元推理文庫)


バック・シャッツは元メンフィス署殺人課の刑事。現在87歳。
ラッキーストライクを吸い続け三五七マグナムをしっかり握って寝ている。
それでももうパンチを繰り出したところでひょろひょろ、憎まれ口は叩けても
体は思うようには動かない。
そんなシャッツの昔からの知人に、病床へ呼び出される。かつてナチの残党を
見逃したことがあるというのだ。ユダヤ人であるシャッツはナチに囚われていた。
収容所で死にかけたことのあるシャッツに、今更の告白をして男は死ぬ。
遙か昔の出来事。
そいつが生きているとしてもよろよろの老人だ。だが、密かに金の延べ棒を
たっぷり隠し持って逃げてきているとしたら。
もう関わりたくないはずのシャッツだが、秘宝を狙う男たちにせっつかれ、
謎を追う事になる。


主人公はおじいちゃん。といって可愛いおじいちゃんじゃなくて、気難しい
クリンスト・イーストウッドってところ。孫のテキーラと一緒に元ナチの男を
探し出し、金塊を見つけ出す。
面白かった。けど、まあまあ普通な面白さ、かなあ。
すでに映画化みたいに訳者あとがきにあったけれど、映画でテンポよく見せられ
たほうが楽しいのかもしれない。渋かっこいいおじいちゃん俳優とちょっと
可愛げのある孫くんコンビでナチの隠し財産を見つけ出す、ね。

忘れたくないノートとか、シャッツのままならない内心の独白とか面白く
読んだけど、実際のところ老いとは、というのはどうなんだろうねえ。
作者は孫の立場あたりでこの物語を書いている。うーん、果たして87歳
おじいちゃんというのはこれでいいのかなと思わなくもない。連れ添ってきた
妻ローズにはなんといっても頭が上がらないとか結局は言う事聞いちゃうとか
もし妻がいなくなったらどうしていいのか、考えることすら嫌で逃げてしまうとか。
シャッツの生活的なところがちょっとステレオタイプすぎないか。

あとメンフィスとか、地域性みたいなことが私にはピンと来ないので、結局
刑事のランドールがダークサイドにってことになっちゃった感じも、まあそんな
もんかなあ、と、さっくり思うしかなくて、うーん。もうちょっと刑事さんの
ほうにも踏み込んでほしかった気がしないでもない。実はお前か、という真相
明らかになるところが慌ただしく感じた。

二作目もすでにあるようで、シャッツ、さらに年取ってるのかな?? 大丈夫?
と、気になる。読んでみたくはある。けど、どうかな。映画化になったら
見てみたい。

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『機龍警察 未亡旅団』(月村了衛/早川書房)


*結末まで触れています。


『機龍警察 未亡旅団』(月村了衛/早川書房)

チェチェンに、家族を亡くした女たちだけのテロリスト集団がいる。「黒い未亡人」
と呼ばれる組織。
神奈川で密売取引の現場に踏み込んだ警官隊が捉えたのは女性ばかりの集団
だった。捕まった彼女らの一人は、自爆した。


と、いきなり重い派手な爆発で始まった。テロ集団が日本に潜入している。
小さな子どもしか乗れないようなキモノ、エインセルが使われるらしい。
街で不良に絡まれかけていた子どもを偶然助けた由起谷は、それが少女であり、
ただならぬ様子に後にテロ集団の一人かもしれないと思い当たる。
連続した自爆によって確実に標的に近づき、殺戮被害を甚大にする「黒い未亡人」。
彼女たちの日本での狙いは。
彼女らのリーダーであるジーナ、由起谷が助けた少女カティアはジーナの娘の
ような存在だった。誰もが自ら自爆さえも辞さない戦士たる「黒い未亡人」の
狂気のやり方は、由起谷の説得によって心動かされたカティアの痛みだった。

事件そのもの、と、チェチェンでの悲惨さ、犠牲となるばかりだった子ども、
女たちの物語、それと警察内部の<敵>とは、と、由起谷、城木といった警察
の人間と、それぞれの物語が描かれていく。
カティアが捕まって取り調べ、となって、というあたりはまだろっこしい気が
するけれども、それで存分に個々の背景を語らせていくわけで、うーん。
これは難しいところで、凄いと思ったけど、やっぱ下関で母とこじれてグレて
ましたってな由起谷くんの内なる暴力と、カティアが体験してきた人生と、
どーにも比べるレベルの問題じゃなくて、まーそれは重々承知の上で、白鬼って
いくらいっても仕方ないけど、近未来とはいえ今の日本と地続き設定な日本で、
実際紛争地帯、テロ組織と対抗できるような人間を設定するのは難しいよなあ。

ジーナ、カティアたちの歩んできた道は悲惨すぎるし凶悪すぎる。
今回の事件で吹っ飛ばされた日本警官や、街の被害も甚大すぎる。
それでも、そこに一人一人の人、を描くとなると、やっぱり個別の小さな
思い出や、ぬくもりや、親子関係や。愛、に、なるしかない。
恋なのか。
愛なのか。
恨み。
執着。妄執。
ダークサイドに堕ちた、と一言で言ってしまえばそうなんだけど、やっぱり
人間一人ひとりは小さくて弱くて、抱きしめて一緒にねむる大事な人の体温が
あればそれでよかったはずなのに。
キモノや武器を手にして膨大な他人の、それぞれ大事な大事な、とわかって
いるはずの命を犠牲に憎しみ復讐をぶつけることをしてしまう。
善良なる愛の傲慢か。
不幸にあえぐ憎しみか。
子どもすら犠牲にするか。
実に苦しかった。

それでも最後にカティアから手紙が届いて、ゆきたにしろう、に、もう一度
会いたいという願いがあって、絶望的だけれども微かな救いはあった。
会いたいという願い、希望を、ささやかな恋を、カティアは持つことが
できたんだなあ。

あと警察内部の<敵>ね。
もう半端なく酷い警察内部の被害を引き起こしてるわけで、この<敵>の
思惑とか物凄いことにしないと、明らかになった後でこんだけひっぱった、
こんだけしでかしたことに対してしょぼい~~~と投げたくなるようなことに
ならないでくれよ、と、心配になってきた。
<敵>のことをもっと話すすめてくれ、とも思うけど、それが明らかになったら
がっかりするかも~、と、心配で。杞憂であれと思うけど。
なのであんまりひっぱりすぎる前になんとかしてほしい~。

キモノバトルのわくわく!みたいなのもあるけど、やっぱり今回、いやまあ
毎回ヘビーな話だけど、やっぱり特に今回、非常に辛くて、メカバトルだ~!
ってわけにもいかないかと。
テロリスト。どう考えればいいのか。。知ることすらしてない自分は、と、
また暗澹たる思いになりました。
読み応えたっぷり。次はどうなるのかなあ。

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映画「ディーン、君がいた瞬間(とき)」


*結末まで触れています。


映画「ディーン、君がいた瞬間(とき)」


ジェームズ・ディーンと、写真家デニス・ストック。
デニスは個展を開けるような写真家になりたいと、自分のテーマを持った写真を
撮りたいと思っているもののままならず焦燥の中にあった。
パーティで出会った、ジミーという若い俳優に惹かれて、彼の写真を撮りたいと
願う。マグナム・フォトでライフに売れると思うと売り込みをかけるが、
ジミーは写真撮影に協力的ではなく、なかなか思い通りな写真が撮れない。
NYにいる別れた妻、幼い息子とのコミュニケーションもうまくいかず、
ジミーの写真は諦めるように上司に言われ、だが「エデンの東」のプレミア直前、
故郷へ帰るジミーに誘われて一緒に旅をする。
まだ世界中に名前を知られるようになる直前。若さと不安の中にいる二人の
つかの間の交流だった。

昨日見に行きました。
デイン・デハーンがジェームズ・ディーンかあ。というのにそそられて見た。
どうにもやる気とか元気とかはなく、ぼそぼそと喋り猫背で煙草に火を付けたり
サインしてみたりするシャイなジミーの姿。一瞬激高したり、無言で自分の中に
沈んでいたり。
ジェームズ・ディーンをやるなんてすっごくプレッシャーだったんじゃないか
なあと勝手に想像するけれども、スクリーンの中ではそんなことはわからなくて
ふわっとただそこにいるジェームズ・ディーンだった。
若くてハンサムで愛されてて会社の期待の星で、でも、そこにうまく馴染めず
故郷で農場の中にいるときこそリラックスしているジミー。

もっさりしてたり眼鏡かけてたり影の中にいたりのシーンが多かったけれど、
デハーンくんの目にひかりがさす、あの青い目の深さうつくしさは本当に素晴らしい。
見に行ってよかった。

デニスは、写真家としてもっと、とあがいていて、まだ無名なジミーに
八つ当たり的とも見える感情のぶつけかたをしてたりもして、でも見てるこっち
としては、このあともうすぐにジェームズ・ディーンは死ぬとわかってるから
ああもう~~もうもう~~~馬鹿~~~っ。二人の時間を大事にしなよ。
もっとジミーに寄り添ってやれよ、と、勝手にうるうるしてしまう。
ラスト、プレミアすっぽかしてデニスをまた誘いにジミーがデニスのアパート
下から大声で呼ぶの。また一緒に行こうよ!って。一番の大声と晴れやかな顔
をして。でもデニスは行けないよ、と苦笑して断ってしまう。
それはそうなんだよね。
大人だし仕事あるし急に言われても行けないんだよね。
でも、行けよ馬鹿ーって思う。ジミーとまた今度会う事はできないんだよ。。。

静かな映画だった。その中で何度も電話のベルが鳴り響いて印象的だった。
昔の電話のベル。切り裂くような、突き刺さるような、不穏な音だった。
でも時にはいい知らせももたらす。
電話の音ってこんな風だったんだなあ、と、この頃のやさしい電子音とは
違う鋭さを思った。

ジェームズ・ディーンの写真かあ、というので私ですら見たことあるような
あの写真この写真を撮る場面たち。エンドロールの時にライフに載ったデニス
の写真たちが流れる。
私はジェームズ・ディーンのことを詳しく知っているわけじゃないし、
この映画の物語がどのくらい本当なのかどうかはわからないけれども、
若くて成功者にはまだなっていなくて不安で焦燥の中にあって出会った二人の
時間のうつくしさがとても好きだ。今となっては奇跡のひと時。
ジェームズ・ディーンはあまりに短い生涯を終える。
デニスのことは特に何も描かれないけど、長生きしたみたい。2010年没。
ライフの天才写真家、みたい。

原題「Life」
マグナム・フォトとか、ちょっと前一瞬キャパにはまったりしてたので
お、なんて思ったのも楽しかった。ベン・スティラーの「LIFE!」も見たし。
時代を築いた雑誌なんだよなあ。

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『アルファベット・ハウス』(ユッシ・エーズラ・オールスン/ハヤカワポケットミステリ)

*結末まで触れています。


『アルファベット・ハウス』(ユッシ・エーズラ・オールスン/ハヤカワポケットミステリ)


1944年。英国軍パイロットのブライアンとジェイムズは急な任務を言い渡された。
特別写真偵察任務。
強風と雪の中、ドイツ軍が隠そうとしている何か、を写真撮影に行く。
低空で飛行するなか、砲撃を受けて二人は機体を捨ててパラシュートで脱出。
線路際までたどり着き、病院列車に乗り込むことができた。
重症らしき兵士を放り出し、ドイツ兵に成りすました二人。
彼らが入れ替わったのはナチの高官の軍人で、重症かつ精神を病んでいた。
高官ばかりを集めた施設に入れられ、喋ることもできず、二人は脱出の機会を
じっと待った。

戦時中、アルファベット・ハウスと呼ばれる精神科病棟。
ナチ。酷い治療。同室の男たちの仮病や駆け引き。
ジェイムズのほうは多少ドイツ語がわかるけれど、ブライアンはわからなくて、
でも二人で相談するようなことはできなくて、じりじりする。
その中で限界とばかりにブライアンは一人脱出し、それから28年後。

ジェイムズは生き延びていた。ずっと精神を病んだものとして。

これは戦争小説ではなくて、人間関係の亀裂についての物語である、と著者
あとがきにあるように、戦争の厳しい状況の中、そこで運命が別れた親友二人の
関係の物語。

これがデビュー作なんですね。特捜部Qより10年前。1997年の作品。
特捜部が好評で今頃翻訳になったのかな。2012年にドイツ語に、2014年に英訳、
とのことなので、やっぱ特捜部の人気で他のものも、ということになったのか。
日本語訳は英語から、ドイツ語も参照して、ってことらしく。デンマーク語
からというのは難しいのかなあ。なんかすごいなあ。なんにせよ読めて有難い。

じっくりじわじわ進んで、終盤で一気にぎゅっと集中して盛り上がるのは
最初から上手かったのね、と思う。けど、じっくりじわじわの前の方が結構
辛かった。状況も辛いしそれが延々と続くように感じながら読むのも。

逃げ出すことに成功したブライアンと、薬漬けになって精神病者として過ごした
ジェイムズとでは大違いで、でも仕方ないことだった、と、思うしかないのか。
もしも、もしも、と、もう少し何かが違っていたら、という無限の後悔がきて
辛い。
二人は再会できたし、ジェイムズは隔離状態からは逃れられたし。
脱出するまでに悪いやつらを殺す、とか、うーん。小説だし復讐しなくては
治まらないだろうし、だがしかし、という気もする。
ジェイムズはやっぱりブライアンをも憎む、のか。許したのか? すっきりは
しないけど、すっきりできることじゃないしなあ、と、思う。
二回は読みたくないな。ずっしりでした。

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2015年のまとめ

2016年始まり始まり。

ざっくりと2015年のまとめ。

本は52冊、(残酷な神の10巻一気読みしたのは一つとして)
映画32作品の感想アップしてました。

少ない、とは思ってたけど、我ながらホント本が少ないね。
年々本の冊数は減っている。映画は増えてる。
映画は映画館で見たやつしか書いてないけど、円盤買ってしまってるのも結構
あるので、それも見たらちゃんと書いた方がいいかなあ。自分の記憶力が
ますます衰えているし。
マッツのとか見たらもえもえ語りたい。(買っただけで見てないものが多数)


デイヴ・ブランドステッターシリーズ読んだのが2015年の収穫かな。
読みづらいなあと思ったけど読み切ってよかった。

ドラマ「ハンニバル」にどハマリして、トマス・ハリスのを読み直したのも
楽しかった。
映画のシリーズも見直したいところ。
もう、ほんっと、2015年はハンニバルにおちて、マッツ・ミケルセンに
熱中したのが大きくて、映像とかネットでの情報漁りにあけくれて、本を
読まなかったなあ。
さすがにちょっと反省。今年はもう少しネット依存から離れたい。自分の
ペースを取り戻したい。
でもやっぱりマッツ大好きすぎてどっぷりなのは当分続くでしょう。映画ある
もんね。あ~楽しみ~~。そしてハンニバルのドラマ、か、映画でも、なんとか、
続きができる動きが、ありますように。それをひたすら願う2016年です。

映画が、すっごく大当たりで、どれも面白かった。
ついに007! で待ってたし、ミッション・インポッシブルも、アンクルや
キングスマンも。スパイ最高かっこいい~を堪能した。
それともちろんマッドマックスも。スターウォーズも。
こんなに映画が面白くて物凄くて、ガンガンくる一年って。
大作だけじゃなくて「追憶と、踊りながら」だとか、しっとり良品もよかった。

今年も、沢山の面白い本、面白い映画を楽しみます。

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