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『残酷な神が支配する』全10巻(萩尾望都/小学館文庫)

*結末まで触れています。


『残酷な神が支配する』全10巻(萩尾望都/小学館文庫)


母と二人ボストンで暮らしているジェルミ。母の再婚相手グレッグはイギリスの
お金持ちで、夢のようだと母サンドラは浮かれていた。サンドラが幸せになること
を心から願うジェルミはグレッグの要求を断れない。グレッグはサンドラを愛して
いるという以上にジェルミを求めてきた。


前々から凄いという評判は知っていたけれども手が出せなかった漫画。
ハンニバル好きなら絶対ハマる、みたいな話を見て、ついうっかり全巻購入。

子どもが辛い目にあうのは、辛くて苦手。。。とはいえ、すっごくいい。
グレッグがジェルミの弱み、母を思う気持ちにつけこんで性的虐待繰り返して
いくのだけれど、表面上グレッグは完璧な紳士で、ジェルミ以外には誰も正体を
知らず、一人思いつめ追いつめられていくジェルミがもう、辛くて。
しっかし性的虐待行為にに超もえるーっと思ってしまう自分の背徳感も凄くて、
ああ~っも~~っ、と、いろんな感情ゆさぶられまくって読み終えるのが大変
だった。もえる。けど、やっぱ子どもはダメだ。。。大人でやってくれ。。。

全巻購入という贅沢のおかげで、読み始めるとやめられずに、半日で一気読み。
連載は9年くらいだったようで、特に前半あたり、連載読んでいた読者の人は
地獄だったんじゃないかと思う。凄い。

ジェルミが本当にグレッグを殺したのか、ジェルミがやらなくても事故だったのか、
わからないけれど。でもジェルミは自分がやったと思うことに変わりなくて。
グレッグがいなくなったあとにも、強烈なトラウマの影響、支配が凄くて、
繰り返し繰り返し苦しみは続いて、辛い。
イアンがわかってくれようとしたり、でも否定されたり、でも、でも、それでも
向き合い続けたり。

MOZU絡みで、「オメラスから歩み去る人々」をわりと最近読んだこともあって、
ジェルミはオメラスの子どもだ、と思った。
ジェルミが一人我慢すれば、サンドラは幸せで、家族が平和で、グレッグは
他のみんなには優しい人で。
ジェルミはそんな思いに苦しむ。
でも、ジェルミはそこから逃れ、生きる方へ進むことができた。
萩尾望都が描く、オメラスの子どもを助け、生きることができるかという試みの
作品であるように感じた。
「オメラスから歩み去る人々」を読んだ時にはあんまりわからないもやっとした
ものが残っただけだったのだけれど、こういうの読んで。少しクリアになる。
この子どもを、たすけられるのか。たすけられるのか。

あと、「風と木の詩」も思い出す。ジェルミとイアンが二人だけじゃなくて
よかった。
かなり丁寧に人物配置されて、なんとか二人の助けになる大人がいた。
一応は専門家のセラピーとか。ただ話を聞いてくれるだけでも、外部へ開かれ
てジェルミとイアン二人だけの世界で閉じていなくてよかった。
もちろん何の助けにもならない大人も。
思うに、昔のジュネとか、それこそ風木の頃だったらジェルミをなんとか生きる
方へいかせるのはできなかったのかもしれないと思う。ジルベールは死ぬしか
なかった。
ジェルミもほんとにほんとに辛くて厳しくて、でも、最後には希望が感じられて
やっぱり辛いけれど、きっと少しずつよくなると思える。

やはり世界は残酷で、この漫画は物語で、ジェルミは15歳から19歳になって。
生き延びることができたけど、現実世界にもっと小さいころから虐待にさらされる
こともあるだろうし生きのびるほうに歩き出せないこともあるだろうし、という
のを知っている。
読み終わってしばらくたつけど、思うと茫然としてしまって辛くてでも
どうしようもなくて少しだけ涙が滲む。
オメラスの子どもを知って。私は歩み去る住人に、なれない。目を閉じてる。

こんな物語をちゃんと最後まで描き切ったのは本当に凄くてこわい。
萩尾望都が凄いのはもちろん知ってたけど、本当に本当に、改めて凄い。
読んでよかったです。

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