« 映画「キングスマン」 | Main | 『犯罪心理捜査官セバスチャン』上下(M・ヨート&H・ローセンフェルト/創元推理文庫) »

服部真里子第一歌集『行け広野へと』批評会

服部真里子第一歌集『行け広野へと』批評会

9月20日 中野サンプラザ
パネリスト:水原紫苑 染野太朗 吉田隼人 司会:田中槐


昨日行ってきました。個人的主観のメモ覚書。私が聞き間違えてたり理解できて
なかったり勘違いしてたり勝手に解釈してるかもしれません。

最初は染野太朗さん。
未来の新年会でもこの歌集を扱ってらっしゃって、その時のお話も面白かったけど
さらに深く聞けて面白かった。
米倉歩、吉田隼人の雑誌記事をひいて、位相の違う言葉、ということ。
違うレベルの言葉で読みにくいのに読まされてしまう。

助辞、を読まされる。「よ」「を」「こと」「たとえば」等で差し出される名詞。
言葉。イメージ。
この形は私も気になったところで、お話を聞いて流れが良く分かった気がする。
羅列は暴力的でもあるはずなのに読まされる服部真里子の歌の不思議。

光。でもくらい光。ひかりがうたわれていてもネガティブな屈折がある。

クリスチャニティ。賛美歌に出てくる語彙。

キリスト教的な言葉、イメージはこの歌集の中に強く現れている、と、思うけど
私はキリスト教的教養に乏しくて、発言きいてよかった。学問ではなく、肌感覚
の身近さとして、ある。のか。自分にはわかんないんだけどそういうものとして
ある、というのはわかる。

二番目、水原紫苑さん。
「傷ましい向日性」「世界への透徹した眼差し」

女であることの不如意がこの人には感じられない。という発言がとても腑に落ちる。

生の側に物凄い力技でもっていく力強い歌、というのすごくわかる。
それを「傷ましいまでの向日性」とまとめてるのすごいわかる。うまい。納得。
眼差しは死を見る眼差し、というのもとても納得。

強い意志のある歌集だと思う。作者が、こちらを選ぶ、という強い意志の表明。
なんかこうふわっとうたってみました、って感じではなくて、ぎゅっと、ぐいっと、
一人で立つ、というような。

三番目、吉田隼人さん。
やはり光の歌。「苦悶としての光」。ひかりにあたった何か、ではなく、光源
そのものを見ようとしても見ることはできない。
光と父。父は単に家族としての父親ではなく、キリスト教的象徴性を帯びた父で
あると。

父の歌は多いなあと思っていて、そんなに父が好きか?? と、父の感じが
不思議に思っていたので、キリスト教的父の象徴性、みたいなところもあるのかも、
と気づかされてよかった。

「不可視・禁忌・神」
見ることへのこだわり。不可能性。言葉だからこそのイメージ。

そんなこんなで、水仙と盗聴問題というか、そういうのがあるらしいとは知ってる
けれども、私は雑誌等実際には読んでないのでよく知らないんだけど。
なんかこう、歌の強さ、読めそうなのに読み切れないところとかに人が引っかかって
何が言いたくなるのかなー、それはやはり歌の強度があるからなんだろうなーと、
は、思う。
それぞれの発言のあととか、会場発言のあとだったかな、服部さんの歌を読む
にはカロリーがいる、というようにおっしゃってたけど、なるほどと思う。
ぎゅっと圧縮されたエネルギー、歌に込められた魂がしっかりとある歌、歌集
であるのは確かで、それを読み解くにもエネルギーを、カロリーを使うよねえ。

パネリストそれぞれの発表わかりやすくてなおかつ深くて聞いててとても
面白かったし勉強になる。。。と思った。

この歌集の強さ、眩しさ、意志、まさに「傷ましいまでの向日性」が苦手に思う
時もあるんだけど、それは自分がよれよれと薄暗いところへいつも逃げようと
している人間だからで、圧倒されてしまう。
作者にも当然苦しみも醜さも弱さもあるってわかるけど、そうではないところで
うたう、という強い意志。優しさや赦し。自分をひらいていこうとする意志かなあ。
凄い。

歌集の構成の上手さとか。塩の柱の話で近親相姦的なモチーフとか、たくさん
面白い話が聞けた。

服部さんの最後の挨拶で、でもほんとうにきれいな心、本当に本当にうつくしい心
ばかり求めていたら死んでしまうしかない。本当のうつくしい歌がダイヤモンドなら、
私はガラスのダイヤいっぱいで輝かせます! というようなことをおっしゃって
いて、感動だった。
毎度ながら挨拶、スピーチがすごくよくって感動させられてしまう。
そうなんだよねえ。
逃げろ!
生きろ!
その手につかむのがガラスのダイヤでも、自分で選んで飾るならそれはちゃんと綺麗で
キラキラして美しいよ。
すごい面白い批評会でした。参加できてよかったです。

歌集の中でいくつか私が好きな歌。


  三月の真っただ中を落ちてゆく雲雀、あるいは光の溺死  (P7)

  夜の渡河 美しいものの掌が私の耳を塞いでくれる   (P33)

  春だねと言えば名前を呼ばれたと思った犬が近寄ってくる  (P48)

  野ざらしで吹きっさらしの肺である戦って勝つために生まれた (P55)

  海を見よ その平らかさたよりなさ 僕はかたちを持ってしまった (P96)

  冬の火事と聞いてそれぞれ思い描く冬のずれから色紙が散る (ルビ 色紙いろがみ P122)

  文鳥にどんなたましい言葉狩りののちの世界は白く広がり  (P167)

|

« 映画「キングスマン」 | Main | 『犯罪心理捜査官セバスチャン』上下(M・ヨート&H・ローセンフェルト/創元推理文庫) »

「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事