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『BL進化論』(溝口彰子/太田出版)


『BL進化論』(溝口彰子/太田出版)

ボーイズラブが社会を動かす

「いまBLに何が起きているのか 女性たちを虜にする快楽装置=BLの歴史
と本質に迫る画期的評論」

という帯のとおり、BLの歴史から今について、とてもわかりやすくて読み
やすくて、なるほど~と思わせられる評論でした。

著者はレズビアンでありBL愛好家。「美少年マンガ」の数々、特に
『摩利と新吾』に思い入れありそうな感じとか、たぶん私は年齢近いのだろう
と思う。BLの始祖を森茉莉の『恋人たちの森』とする、から始まるBL概史
の流れも無理なくすんなりわかるーと思える感じ。

JUNEあたりではまだまだホモフォビアでミソジニーを書き手が無意識に
なぞって無自覚な差別があったとか、やおい論争とは、とかがよくわかるように
書かれていてそういうことか、と腑に落ちる感じが多々あった。
やおい論争、というか、ゲイの人からゲイ差別だといわれたことがあったらしい、
というようなことをなんかうっすらどこかで知ったことがあったかもしれない
けど、実際には知らないしわからない、って思ってたところがわかってよかった。

BLであれなんであれ、社会にまったく無関係な作品というのはないのだ。

そして近年、2000年代以降の作品は、BLにとってゲイにとって同性愛者
にとって、マイノリティにとって、現実よりはよりよい世界、を書き手が自覚的
に主体的に想像して描く作品が増えてきている、というのも、わかる。

私はずーっとBLを読み続けてきてはなくて、ジュネから離れて暫くBL的な
ものからも離れて、まー個人的妄想趣味はずーーっと変わらないにせよ、
商業出版なところや同人な世界から離れていた時期が、たぶんそのBLが
変化していった2000年代以降というところ。ここ数年はまた商業BLに
手を出すようになったり、ほんとごく最近pixiv登録して、同人っぽい
ところにすこーーしだけは触れるようになった。けど、なんか、やっぱり
全体的に見るなんてとてもとても出来ないし、なんかよくわかんないなって
ことの方が多い。
もちろん個人的にただ読んで面白いかつまんないかだけでいいんだけど。

たぶん世界がよりよい方へ、向かおうとしている、という流れがBLにも
少し先進的にとりいれられているというのは面白いなあ。
BLが好き、っていうのはたんなる好き嫌いでありながら、差別やマイノリティ
として生きることについて、敏感にならざるをえないところがある。
そこでほんの少しだけでも、立ち止まって世の中の当たり前みたいなことって
ほんとに当たり前? と考えるか考えないかじゃ全然違う。
エンタメとして楽しむものとして作品でありながら、世界を変える視点への
問いかけのきっかけになる。
できるだけ自由に。できるだけフラットに。できるだけ幸せに、なるといいなあ。

で、面白く読んだんだけど、活動家な感じのところには多少違和感を感じたり
もあった。
あとBL愛好家たちのテキスト交換を「ヴァーチャル・レズビアン」と表記
するのはどうしてなのか、どうも納得がいかない。作り手や読み手の大部分が
女性だから女性同士としてセックスの快楽を分かち合う、のはそうかもしれない
けど、それってわざわざ「レズビアン」と表記することなのか?? どうも
これは著者の飛躍のように思える。

補遺としてある映画の読み解き。
私は「御法度」好きなんだ。でもこれが悪しき類例としての作品、という
のは、読んで納得できた。それにこういう分析かあ、というすっきりした感じが
あって面白かった。でも好きだけど。
感想ってことじゃなくて評論だからだとしても、映画だけじゃなくていろいろ
紹介されてる小説やマンガ、私が読んだことあるのもいくつもあったけれど、
著者と自分じゃ随分見方が違う、と知ったところがいっぱいで、面白かった。


 プロローグ BL進化論
 第一章 「BL進化論」にとってのBL概史
 第二章 ホモフォビックなホモと愛ゆえのレイプ? ―一九九〇年代のBL
     テキストの定型―
 第三章 ゲイの目線? ―まぼろしの(ような)「やおい論争」を中心に―
 第四章 BL進化形
 第五章 BLを読む/生きる ―女性同士が「まぐわう」フォーラムとして
     のBL―
 結論
 対談 溝口彰子×ブルボンヌ「“気持ちいいこと”で社会を変える」
 補遺一 理論編「BL進化論」の理論的文脈
 補遺二 応用編「BL進化論」と映画における男性同性愛

 謝辞 本文注 引用・参考文献

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