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『エディに別れを告げて』(エドゥアール・ルイ/東京創元社)


『エディに別れを告げて』(エドゥアール・ルイ/東京創元社)


子供の頃に、楽しい思い出はまったくない。

という著者の半生の自伝的小説、なのかな。著者は22歳、この本刊行当時は
21歳、ということらしいので、半生、っていうのも憚られるほどの若さ。

北フランスの村で、村全体貧しい暮らしの中で、子供の頃から女の子みたいな
ことが好きだったエディ。男らしくワルであれ、という価値観の父親からは
うとまれ、学校ではいじめにあう。
近所の子供たちとAVを見た勢いで、同性愛行為に耽るも、親に見つかって愕然と
される。いつの間にがエディだけが悪いことになっている。
女の子とつきあってみようとして、うまくいく、自分の病気は治ったんだ、と
思いかけたが、結局できない。
貧しく粗暴な親、兄弟。
そこから逃れる転機は、高校入学で手に入れた。寄宿舎へ向かう旅立ちが、
何よりの希望となって終わる。

赤裸々に語る自伝、てことなので、書かれているのは大体はそうなんだろうな
と思って読んだ。ちょっと現代とは思えないような感じがするんだけど。
19世紀の小説、みたいな気分が、する。いや、まあ、今でもこんななのかなあ。
同性愛は当然差別されていて。階級差みたいなことからなにからもう全部、
ほんとにそんななのかなあ、と思ってしまう。私は恵まれた人生なのか?
当然小説だから、赤裸々な自伝、といったって、ある程度脚色はしてる、だろう
し、記憶がいつも正確な事実とは限らないし。と、思うけど。

貧しい暮らしの中から、それでも才能をもって抜け出す、という感じは、
映画の「リトル・ダンサー」をちょっと連想したけど、でもあの映画はほんと
素敵な物語で、父親も頑固で粗暴な男だったけどまっとうに息子を愛して
いたよなあ、と、思う。この本の父は、自分が無学無知であることに自覚を
持つことはない。というか、目をそむけて逃げているんだろう。
母親も頼りにはならない。
なんだかんだでそれでも教育のために子供を送り出したんだから、この印象より
はもうちょっとまともなのかなあ。
この本をどう受け止めていいのかわからない。

著者はすでにこの本の前にも論文? が刊行されているし、現在学生ながら
フランス大学出版で叢書の編集責任者となっているらしい。パリ在住、
哲学と社会学を学ぶ、だって。
エディ、という名前が、愛称とかじゃなくてそれが名前っていうことが
そんなにありえないことなのか、とか、私にはピンとこないことがあったりで、
いろいろと不思議に思いながら読んだ。

とても読み易いし、出来事は悲痛だけれども、すんなりとどこか冷静に描かれて
いて、今生きている若い彼がこういう思いを抱きながらここまできてるのか、
というのにひかれた。この先は、もう大人だし、生きやすくなるといいねえ。

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