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映画「悪党に粛清を」

*結末まで触れています。


映画「悪党に粛清を」


1870年代、アメリカ。元兵士であるジョンは、兄と共に新天地を求めて
アメリカへ移住する。生活の目途が立ち7年ぶりに妻子を呼び寄せて再会。
これから共に暮らし始めるという時に、駅馬車に乗り合わせた男たちに襲われ
子どもも妻も殺される。ジョンもまたその男たちを殺した。
その男は、辺りの町を力で支配するデラルー大佐の弟であった。無関係な町の
人間を殺し、犯人を捜し出せ、と命じるデラルー。
ジョンは捕まり、それを助けた兄もまた殺される。ジョンには復讐しかなかった。

マッツ・ミケルセン主演。
デンマーク人の監督、デンマーク人主演。デンマーク・イギリス・南アフリカ合作
ということらしい。
デンマーク人が作る西部劇、という異色さ、というけれど、私自身が西部劇に
ついて詳しくないので、たっぷりオマージュがあるそうなんだけどわからず。
ダメな観客でごめんなさい。
とはいえ、物語はシンプル。全てを奪われた一人の男が、復讐を遂げるという
その一点に絞られている。
前半はだから、ジョンがとにかくズタボロに酷い目にあって、もー。辛い。
小さな町の人たちは、デラルーの恐怖の支配に反抗する気力すらない、ただ
ただ絶望している感じが凄い。一人の若者だけが、反抗しようとするんだけど、
だからジョンに協力するんだけど。けど、死んじゃうんだよね。。。

一応保安官はいて。ほとんどデラルーの言いなりだけど、あまりの状況にもっと
上へ、かなんか、とにかく助けを求めようとはしてた。一応彼が、わずかな、
微かな良心であり救い、かなあ。でもそうともいえないほどに何の力もない。
あの町の絶望感はほんと凄い。

これがデンマークスタイルということなのか、西部劇ってことなのか、セリフ
は極限まで少ない。
悲惨悲痛であっても、微かな悲鳴とか、無言で目を見張るとかくらいで、
誰も泣き叫んだりしない。銃を撃ちまくる確かに王道西部劇なんだけれども、
とても静か。その静かさに胸が潰れる。

捕まって吊るされてるところをやっとおにーちゃんが助けにきてくれて、
ジョンを隠して敵を引き付けていった兄の姿。次にジョンが見たのは、馬に
繋がれて土ぼこりを上げて引き摺られていく無残な兄の死。それでも無言。
無言でいるしかない。
もーほんとジョンから何もかも奪われていくのが辛い。そして復讐しかない、
ってなるのも辛い。
保安官は、妻子を殺されたからって相手を殺してしまわなければこうならなかった
という風に言う。それは正論だし、そうあるべきだったろうけれども。

駅に迎えにきてて、落ち着かない感じで列車を待って、やっと妻子に再会して、
かといって大仰に抱きしめ合ったりするわけじゃないの。ちょっと、少しだけ
笑うくらいなの。駅馬車に乗り込む前に、ほんとにそっと一瞬キスするの。
その清らかなうつくしさが素晴らしくて、ああそれなのにー。慎ましやかな
愛する家族との暮らし、を求めるだけだったはずのジョンが、デラルーの一味
皆殺しにするまでに至る苦しみが描かれていた。

月夜や雨の夜もうつくしい。見渡す荒野の圧倒的な広がり。
ジョンの家の、町の暮らしの貧しさ。ぎりぎりな感じ。

一方デラルーのほうは、あんまはっきりとはわからないけれど、その辺一帯、
どうやら石油が出るっぽいので、土地買い占めろ、って都会の会社かなんかに
雇われてるっぽい。そしてデラルーの弟が、攫われて舌を切られた女を救い
出して妻か愛人かにしてるマデリンといううつくしい女性は経理係?
喋れないけれどとにかくうつくしいから、結局弟亡き後デラルーにやられて、
嫌で逃げ出して、ってことになってた。
ジョンが仇であるはずだけれども、デラルー憎しの思いは同じで、最後には
二人で逃げることになる。

銃撃戦の緊迫感凄かったし、撃ち合いもかっこよかった。ジョンは強いけれど
でも超人めいた強さってほどでもなくて、また負傷する。
もうほんと、ジョンはどこまでボロボロにされるのか。辛い。
デラルー一味は倒したものの、正義は勝つ、って感じにすっきりするわけでも
なくて、なんかもうほんとズタボロ。
激渋い西部劇でした。


私はここんとマッツ・ミケルセンのことが大好きで、大好きで大好きで。
「ハンニバル」でハマったんだけれども、そのマッツ大好き熱にうかされて
いたころにマッツがこの映画のプロモーションで来日! というニュース。
新宿武蔵野館へ行ったさ。
舞台挨拶のチケットは瞬殺でとれなかったけどー。一目でも見たくて。
そしてほんとにちらっとは見られて! めちゃくちゃかっこよかった!!!
それが5月で。今月はその時の取材の雑誌がいっぱい出たのを買いあさって。
やっと映画公開になって見に行けたよー。
また武蔵野館へ行ったよー。
メッセージビデオのNGテイクも今だけ公開中、なんてのにつられてね。
くー。か、可愛い。可愛かった。しかしどこまで私はマッツに釣られるのか。
我ながら自分大丈夫か、と心配してしまうほど。
はー。
マッツかっこよすぎで可愛すぎ。当分熱は冷めないなあ。

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