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映画「エレファント・ソング」

*ネタバレしてます。


映画「エレファント・ソング」

水曜日に見てきた。

1966年。精神科病棟で一人の青年が院長に質問を受けている。
彼の担当の医師、ローレンスが行方不明になっていて、最後にローレンスを見た
のは患者であるマイケルなのだ。
病院の不祥事となることを恐れてグリーン院長は自らマイケルに話を聞く。
だがマイケルは、象の話ばかりしてまともに答えようとしない。まだマイケルの
カルテを読んでもいない院長に、マイケルは取引を持ちかける。
カルテを読むな。婦長は追い払え。ご褒美にチョコレートをくれ。
緊迫感のある会話が進む。退院させてほしいとかローレンス医師の秘密とか、
院長のことを逆に聞き出したりどんどん二人のことが明らかになっていく。
マイケルに翻弄されるグリーン院長。

もともとは舞台作品だったみたい。
グリーン院長が出来事を理事長へ報告している、という語りの中で回想的に
事件当時のことが刻々と語られていく。基本的には院長とマイケル、婦長と
マイケル、といった二人の対峙。マイケルに苛立つし翻弄されるし、でも不安定
なマイケルが愛を求める姿がわかってきて、だんだん彼を好きになる。
マイケルは不安定な患者だけど綺麗で魅力的な青年だ。
幼い頃に母に愛されてなかったこと。今も愛を求めていることがわかる。
ローレンスに性的虐待を受けていたかのように語るが、でも本当は愛してる。
愛して。
愛してるって。どうすればいいんだろう。

院長と婦長は元夫婦で、子供を亡くしてしまって今は別れていることがわかる。
本当なら悲しみを分かち合い支え合う二人であるはずなんじゃないの?
誰もが愛を必要としながらじっと耐えている感じ。

マイケルと父との思い出は、一度だけ会った時に、父は象を狩っていた、という
ことだけ。銃で撃たれて倒れる象。
マイケルは象を何よりもうつくしい生き物として愛している。

結局ローレンス医師は、家族の急病で慌てて出かけていったということだった。
書置きをマイケルが隠していたのだ。
事件ではなかったことにほっとする院長。
ともあれご褒美のチョコレートボックスをマイケルに渡す。
ナッツ入りチョコを選んで食べるマイケル。マイケルは実はアレルギーがあって、
これは自殺行為だった。
マイケルは、愛して欲しかった。プラトニックじゃなくて。
ローレンス医師に最後に院長が問いかけると、愛してました、と答えるんだよね。
だったらプラトニックじゃなくてー愛してやってよ~~。マイケルをしっかり
抱いて抱きしめて離さないでやってよー。(泣)
時代ってこともあるのかなあ。まあ医師と患者だしなあ。立場的にも手は
出せないかなあ。でもなあ。ちゃんと、抱きしめて、愛してると満たしてやる
ことができていれば。マイケルは死を選ぶことはなかったんじゃないかな。
それともそれでも、もうマイケルには生きることが限界だったかなあ。

グザヴィエ・ドランが、監督とかではなく、俳優として主演。激しさも切なさも
魅力だった。凄い。
グリーン院長もそれを受ける感じがすごくよかった。きれいな目だった。
家族、というのは小さな世界だけど、かけがえのないもので、重く苦しく、
切なくて、大切。隣に座って手を握るとか。そういう小さい、けれど確かな
ぬくもりが、マイケルにもあればよかった。だからローレンス先生よ。ちゃんと
愛していてほしかったよ。マイケルの望む形で。切ない。

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