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映画「誘拐の掟」

*結末まで触れています。


映画「誘拐の掟」

元警官、マット・スカダーは、免許のない私立探偵。時々人から頼まれたことを
して、贈り物をもらう。
アルコールを口にしなくなって8年。集会で知り合ったピーターから、弟の話を
きいてくれ、と頼まれる。ケリーのところへ行くと、彼の妻が誘拐され、殺された
という。犯人を見つけてくれ、という頼みだった。

これ、スカダーの10作目、「獣たちの墓」の映画化なんですね。
気づいてなかった。見逃さなくてよかったー。すごくよかった。傑作だと思う。
いきなりシリーズの10作目で映画? と思うけど、これまでにもスカダーは
映画化とかなってるのかなあ。よく知らない。
ともあれ、これはたぶん原作を知らなくてもこれ一つでちゃんとわかる感じに
うまく仕上げられているんじゃないでしょうか。私はもう読んじゃってるので
全く知らなかったらどうなのかっていうのはわかんないんだけど。

原作読んでるの2001年だったなあ。自分の日記を検索したよ。自分のための日記
がちゃんと自分に役立った。
エレインとかは全然出てこなくて、まあ、事件そのものに話は絞ってる。
スカダーが地道に聞き込みに回るし、幸運もあって犯人にも辿り着く。
事件そのもの、だけれども、描かれているのはスカダーの人生のひとときで、
TJとの出会い、つきあいの感じも凄く好きだった。
「同情するなよ」
と、お互いに言い合うの。このフラットな感じがすごくよかった。

ニューヨークといえばお洒落スタイリッシュスマート、ってイメージだけれど、
そうじゃないごちゃごちゃとした闇の暗さ、ドライさ、なおかっこいい、って
感じがすごく好きだった。

依頼人、ケリーは、麻薬ディーラー、かな。ピーターはドラッグでボロボロに
なってるのに、それを扱うケリーのほうは自分じゃ麻薬をやったりしない。
金持ち。ピーターのほうの弟への屈折、好き。イケメン兄弟だー。
ケリーをやってたのがダン・スティーブンスで、すっごい、すっごい、すーっごい
かっこよかった。つくづく美形だなあと感動的。うっとり。黒髪にしてて、
ますます青い目が綺麗で、悪人なのに隠しきれない上品さ。かっこいい~。
これは思わずマットも手をかしてしまうよな、と納得の儚さ。彼を見ただけ
でも大満足だ。

犯人は、サイコパスっつーか完全なる異常者。二人組、よく喋る方はまだ比較的
人間らしさがあるかもだけれども、無口なほうはただもう淡淡と怖い。
「羊たちの沈黙」が1990年くらい。で、なんか猟奇殺人とか流行ったよね
という感じなんだけど、その流れにのって、のことだったっけなあ。
スカダーものの中で倒錯三部作とかいってたんだよね。

この映画の中、1999年。コンピューターの2000年問題が、とか
マットは携帯もパソコンも使わない、TJは使うけど、とか、NYの街にまだ
あのビルがある、とか。時代もあるんだよねえ。
その頃、って私には普通に記憶あるし、だけど15年前っていったらもう
かなり前、でもあるなあと、感慨にふけりそうになる。

麻薬関係者狙いの犯人たちが、次に狙ったのは14歳の少女。
娘を生かしておく理由を与えるんだ。ってマットが交渉役になっての、受け渡し
とか。宣伝だと、この誘拐事件をマットが追いつめてって、って感じだけど、
なんか、その、宣伝の感じとは違うんだよなー。
やっぱりそこにいる人、その街を描く、という感じが、好きだった。
結局みんな悪人で。多くの人が死ぬ。少女が助かったのが救いだなあ。
マットは疲れ果てて。
街の片隅、しみったれたホテルの部屋で眠る。でもそこに、TJも眠ってる。
それが希望か、と、思った。
疲れ果てて哀しみと苦しみの中にあって、でも微かな希望がある。
うっかり見逃さなくてほんとよかった。


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