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田丸まひる歌集『硝子のボレット』批評会

田丸まひる歌集『硝子のボレット』批評会

昨日の午後、中野サンプラザ行ってきました。

 司会 荻原裕幸 パネリスト 山崎聡子、吉田恭大、平岡直子、斉藤斎藤

私個人的主観的メモ感想自分のための覚書で正確な記録ではないです。
私の思い込み勘違いで何か間違いあるかもしれないです。

最初は山崎聡子さん。
短歌に浸っていない人にも広がる歌集なのではないか。作中主体の「私」が
今を生きる女の人の程よい通俗性があってみんなに受け入れられるのでは。
単なる男と女の枠組みの中で語ってはつまらない。あなたとわたしの共犯関係。
ふたりだけのルールで遊んでいるような、内側だけの共犯関係のような。
受動と能動。能動性を発揮しようとするときの暴力性。性愛の暴力性。
秀歌としてすんなり思える歌もあるが、この歌集の軸ではない。

二番目、吉田恭大さん。
舞台における主導権争い、「する」主体は誰なのか。
足の歌の多さ。
他者との行為を通じてひらく、さらしている裸体。熱量の高い身体。
職場詠の危うさ。「アミ」の目立ち方は、歌集の一貫性がブレてしまうのでは
ないか。

三番目、平岡直子さん。
歌集の特徴が出ている歌と、いいなと思う歌がずれている。
性愛と職場詠。過剰で暴力的な性愛はエロくない。あまり幸せな関係でなさそう
でエロくない。女性として消費されることへの抗い。でありながらも、一首一首
にサービス精神があり予定調和になってしまうことも。味方かと思っていたら
背中から撃たれたような。
作中主体は受け身。男性は別の生き物。患者とは同化しそう。
父親と娘、として見るとすんなり読めるところもあり。
この歌集のほんとの作中主体は女医ではなく患者「アミ」なのではないか。

山崎さんも平岡さんも桜庭一樹の名前を挙げててなるほどと納得感ありました。

四番目、斉藤斎藤さん。
わりと冷静。ほんとにそう思っているとは思えない恋人との歌。暴力的、情念、
と見るのは誤読だと思う。男、あなた、はわりとどうでもいい。
穂村さんの歌の本歌取りをしていたり。主語が混ざる歌。本をつきやぶる。
ねじれた文体をもっての抗い。こういう抗い方はあるんじゃないか。

五番目、荻原裕幸さん。
冷静な言葉。文体の過剰性。意味としては隙だらけでも迫力のある言葉。
現代口語のトップランナー。

ざっくり聞いた感じ、山崎さん、平岡さんは、この歌集の問題を相当に自分の
こと、問題、として強く意識があるのではないかと思った。
斎藤斎藤さん、荻原さんはこの歌集のこの感じとは距離があるんだろうなあ、
と思った。
単純に性差とか世代差と言ってしまってはなんだけど。山崎さんが最初に
おっしゃったように、広く多くの人に受け入れられる、共感を呼ぶ感じに
自覚的に作られている歌、歌集だと思うのだけれど、共感から遠い人というのは
当然いて、これはいい歌集だとかいい歌だ、とか評価の方に重きを置く距離感
だと、なんかそうなっちゃうのかなあ。

司会がパネリストの話のかみ合わなさを整理しようとしてくれてたけど、そこは
もうちょっと当事者同士で沈黙しながらも話をさせて聞かせてーと思ったけども。
まあ時間配分もあるしで、難しいかな。

終りの頃に、加藤治郎さんの会場からの発言があって、この新鋭短歌のシリーズ、
この歌集はある程度マーケティングを考えていて、どういう読者に届けたいか、
意図して作られているんだなと理解した。それは当然ありうる判断で、その中で
著者がせめぎあったこともあるんだろうけど、この意図が見える、見えすぎる、
あるいはうまくいってる、その辺のバランスが完全に成功、ってまではいって
ないんだろう、なー、と、思う。でもその成功は至難の業で、これだけ議論が出て
理解、不理解が出て、たぶん参加者全員が、自分なりに、いいとかよくないとか
考えられて、面白い歌集だし面白い批評会だった。
共感を得てふぁぼを集めればいいってもんでもないだろうけど。

消費、というワードでもあれこれがあって、女性性を消費される、させてやる、
している、歌を消費する、なんかこう、いろいろ。いろいろ大変。
加藤さんが消費されるというのは読者を得るということでもあって、と発言
したのがさすがのポジティブだった。ほんとさすが。治郎さん強いよなあ。
まあ消費、っていう言い方の使い方のなんだかんだがあって一概には言えない
感じが難しいというかメンドクサイというか。

私はこの歌集はとても読み易いし差し出しているサービスも凄いと思う。
ただ個人的には性愛というところを扱っての歌のやり方は、私個人としては
もういいや、という感じがあるので、共感してふぁぼしてっていう風には
なれない。
口語のトップランナーと荻原さんが書いていたのはとても納得で、もう本当に、
本当に言葉を自在に生み出してすごく上手い、と思う。
今も、これからの歌も、楽しみにしています。批評会参加してよかった。

あと私が好きだった歌いくつか。

  けれどまた笑ってほしい今朝虹が出ていたことを告げる回診

  いいよ 息をしていていいよ 真夏にもあなたをつつむ雪ふらせたい

  心などないのに(鳥は鳥かごに)(記憶は脳に)こころぼそいね

  ずっととけない氷がほしい あなたとはほんとうに家族になりたかったんだよ

  ひかりの深さをきみは知らないどれくらいおかされたって体じゃないか

  きみの目にすみれの匂う墓地がある ひとを内側から刺したいよ

    それでも、
  愛してるどんな明日でも生き残るために硝子の弾丸(ボレット)を撃つ

                        *(ボレット)はルビ
(P23、P38、P100、P103、P111、P115、P130)

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