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映画「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」

*ネタバレしてます。


映画「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」


リーガンはかつて「バードマン」というヒーロー映画で大人気だった俳優。
それから20年あまり、これといって活躍することはなく、再起をかけて
ブロードウェイで脚本演出主演で文芸作品を舞台にかけようとしていた。
プレビュー直前に俳優の一人が事故。急遽代役として参加したマイクは舞台人
としてリーガンを脅かす存在となる。
過去の栄光であるバードマンの声に悩まされうまくいかない舞台に苦しみ
まだ始まってない舞台に下されるであろう批評家の酷評に怯えるリーガン。
娘とも恋人ともまともに関係を築けていない。
散々なプレビューを終え、ついに初日、リーガンは舞台の上で銃を構えた。


アカデミー賞その他いろいろ賞とりまくってたようで、でもなんかシュールそう
な感じで楽しみに見に行った。
何がどのくらいリーガンの妄想なのか。全部が妄想なのか??
ラストも、彼はそしてどうなったのか。バードマンになった? 死んだ? 明確
な答えが示されはしないし、見終わって面白かった!!と声高に言うことも
できないし、という作品だと思う。けど、確実にじわじわくる。可笑しいし
切ないし苦しいし面白かった。

アベンジャーズをディスらないで!w いろいろな俳優の名前をもっと知ってた
らよかったのにーと思う。ちょっとしか知らないなりにも可笑しかったけど。
ヒーローが多すぎるよね、この頃のハリウッド大作。昔のリメイクとか。
映画そのものへの批判もたっぷり、娯楽映画なんて、って感じの演劇界みたいな
ものへの批判もたっぷり。映画とは、舞台とは、俳優とは、エンタテイメントとは、
ネットとは話題とは人気とは。いろんなことをメタに見せている。

すべてワンカットに見えるような映像づくりってことで。実際ほんとずーっと
ずーーーーーっと、リーガンにくっついていくカメラ。
自分がリーガンにストーカーしてる目になった気分でみた。そんなにずっと
ぴったりとリーガンにつきまとう視線。リーガンの悪夢の原因は私、という気分。
リーガンに語りかける悪夢のバードマンの声がこのカメラそのもの、みたいな。

最初、リーガンのちょっとした超能力、みたいに言う、浮いてたり物を動かしたり
するのも、マジで超能力なのか?? いやでも彼の思い込みで、実際には
暴れて壊してるのも彼自身なのか。バードマンになって飛ぶ、みたいなのも
実際には単にタクシーに乗ってきた間の妄想か。
すると最後には、やっぱり彼は飛び降りて、死んだ、んだろう、なあと、思う。
けど、サムは空を見上げて笑ってた。
幻想を共有したのか、解放された父のことを思ったのか。わからないけどー。

わからないのも、長回しの緊迫感も、面白かった。
マイクやサムや、女優たちスタッフたち、みんなそれぞれに、不安や無茶苦茶
がありながらも舞台にかける感じが素敵だった。
全体的に悪夢なんだと思うけど、しみじみと切ない。生きていくことはままならぬ。
長い人生いい時ばかりじゃないさ、なんて言ったら単なる陳腐なんだけれど、
エンタテイメントの華やかさの裏には華やかさの分だけ濃厚に、浮き沈みの
苦しみがあるのかなあと思った。

緊迫感とセリフ、それがジャズドラムのリズムにのって、すっごくかっこよかった。
音楽のかっこよさが凄い。

そしてこの映画もまたハリウッド映画で、賞をたくさんとったこと。そのことが
またなんかメタレベルで面白いような気がする。映画が好きな人、映画作る人
みんなの胸に刺さる作品なのだろう。
人生っていろいろだねとか映画って本当に凄いねとか、ベタなこと思わされる
のに、斬新で見たことない感じ。不思議だった。面白かった。

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