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『放浪のリトル・ドッグ』(ジョゼフ・ハンセン/ハヤカワポケットミステリ)

*結末まで触れています。

 
『放浪のリトル・ドッグ』(ジョゼフ・ハンセン/ハヤカワポケットミステリ)


ブランドステッター、シリーズの八弾。

ジャーナリストのアダム・ストリーターが死んだ。自殺と思われたが、彼の
仕事は順調で、中央アメリカに関して取材を進めており、注目を集める記事を
ものにすると家族に語っていたところだった。一人娘のクリシーは目が見えない。
そんな娘を残して死ぬのか。彼が取材を進めていたはずの資料はどこにもない。
デイヴは調査を進めるうちに、アダム・ストリーターが死んだ夜、不審な男たち
がいたらしいことを突き止める。

そんなこんなで、なんか、途中からは保険調査の仕事の枠を超えて、デイヴの
正義感のためにというか、保険会社からはもういい、って言われたのに、犯人
がいるはずだから、って一人で探偵していくようになる。
毎度ながら、そこまでしなくてもいいでしょー、危ない~、と思う。
この一人で暴走して真相を暴きたい、って感じは、まあ、そうしなきゃ話が
進まないけど、けど、セシルが心配して当然だし、自分ももう年寄りって感じ
になってきて、体も以前ほど動かなくなったってなってるんだから。ほんっと
危なっかしい。
中米情勢、ってことで、民兵? ゲリラ集団みたいなのを敵に回すことになり、
タイヘン。なんとなくちょっと「相棒」を連想したなあ。突っ走る正義、って
感じも右京さん連想するなあ、今だと。

デイヴって戦争中諜報部だったんだっけ。そういえばそんなようだった気がする。
そして昔の戦友が今は出世してて借りを返してもらう、ってデューク・サマーズ
に会う。彼はなんだろう。CIA?軍か? ともあれなんか壮大な感じになって、
でももう残りページも少ないのに? って思ってたら、わりとぱぱっと片付いた。
昔馴染みの権力者は便利だね。

そして。セシルは父を亡くしたクリシーの保護者となるべく結婚した!
えー! あー、まあ最初からクリシーはデイヴに結婚しませんか、って言ったり
してたしなあ。セシルも一目ぼれっぽかったしなあ。バイだったのかセシル。
デイヴはそれでいいのか。いい、んだろう、なあ。一緒に保護者になるのかな。
次が楽しみ。

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映画「リトル・ダンサー」

*結末まで触れています。

 
映画「リトル・ダンサー」


午前10時の映画祭でやってたので見に行ってきました。
先日「パレードへようこそ」見たばかりだけど、舞台は同じく1984年。炭鉱ストって
大変なことだったんだなあと改めて。
公開当時に見て、すごく感動して。思い出すだけでもじわっと涙が、って感じです。
2001年公開か。その後特に見返した覚えもないけれど、シーンのいくつかは
くっきり覚えている。

改めて見てもビリーくんほんと美少年だなあ。そんでちゃんと育ったその年頃の
男の子!って感じがすっごく素晴らしい。
そして踊るシーンがほんっとにほんとにほんっとーーーーに素敵!
まだ原石段階だからね。完成された踊りじゃない。けど、実際うまい子らしい
ので、演技でこーやってるのか~と思うとほんと凄い。
ジェイミー・ベルって、ちゃんと育って俳優やってるのね。しかもかっこよさそう。
凄い。

がちゃがちゃしたりめんどくさがったり、兄と父とに全然かなわない家の中の
一人の子ども。
母は亡くなっていて、それはしばらく前のことなのかなあ。
お婆ちゃんはちょっと痴呆が出つつあるくらいな感じ。そのお婆ちゃんの世話を
するのはビリーの役目。
父と兄は炭鉱ストの真っ最中。今一家には収入がない状態みたい。
父の勧めで週一でボクシングレッスン?に通っている。
バレエレッスンのクラスと場所を共有することになって、ビリーはその練習に
興味をひかれて参加するようになる。
女の子ばかりの中、ランニングとショートパンツでレッスンを続けるビリー。
少しずつ踊れるようになってきて、楽しんでいるのが父にバレて、やめることに。
だけど、先生から才能があると認められてこっそり個人レッスンを続け、
ロイヤル・バレエスクールのオーディションを受けようとしていた。

そんなこんなで、バレエなんて女の子のやるもんだ。と頑固な父との対立とか、
兄にはバカにされてとか。
喧嘩したり怒ったりしてそれで踊っちゃうんだよねー。すっごく可愛い。
男の子なんだよー。
ほんっと男の子なんだよねー。
こんなにも普通に元気な男の子が男の子してるのが映画であってダンスであって、
ほんと凄い。

炭鉱しか知らない父と兄。ストの最中、仕事もなく警察との対立や仲間内での
分裂など、苛立ちとやるせなさで家の中の空気最悪。
母の残したピアノ。おそらくお母さんは音楽が大好きで一家のムードメーカー
だったのだろう。
ビリーが大事なものとして、母が18歳の僕へって残した手紙を先生に見せる
シーンがある。ビリーは11歳だけどもう読んじゃったの。中身もすっかり暗記
してるほどに。先生はその手紙を読んで、素晴らしいお母さんだったのね、
みたいに言う。ビリーは、別に、普通の母親だよ、って答える。
別に普通の。
ほんとにたぶんただ普通の。
でもかけがえのない母という存在をこんなにさらっと言うセリフ。

階級差、というのもくっきり見える。ビリーの家は労働者階級。先生は中流。
オーデション受けに行くロンドンの学校にいる人たちは上流?中の上みたいな
感じなのかな? まあほんと、そういう社会なんだなーというのがわかる。
それでも、才能あれば、階級を超えることもできる、っていうのもわかる。
社会とか文化の成熟度なのかなあ。
その小さな炭坑の町にも、そうして子どもたちを集めて習い事のボクシング
だのバレエだのやる慣習がある。
「ブラス」でもそうだよね。町のブラスバンド部がある。
何か楽しみを持って息抜きしなくちゃ、ってことなのかなあ。
なんにせよ、貧しいささやかな暮らしの中にも人はそれぞれに生きていて、
それぞれに大事なものがあって、胸を張って頑張るんだね。誇りがある。
その姿が本当にうつくしくて素晴らしい。

ご近所のマイケルくん。姉の服を着てみたり口紅ぬってみたりするビリーの
仲良し。彼のような子もいるなあとか。
先生の娘のデビーも、おませちゃんで可愛い。
きみたち11歳、だよね。小学生ってことだよね。いい子たちだなあ。
大人にとっての都合のいい子じゃなくて、それぞれにちゃんと子どもでちゃんと
一人のいい子たちなんだよなあ。

怖い父親、だけど、ビリーはちゃんとわかってて、先生に「父のせいじゃない」
ってちゃんと父親をかばったりするんだよね。
怖い父親だけど、ほんとに暴力ふるったりはしない。兄がバカなことしでかそう
とした時には殴ってとめてたけど。
みんな根底に善良さがある。
バレエなんてって言ってたけど、目の前でビリーが躍る姿を見たら、その力を
見たら、ビリーのためになんでもするって決意しちゃう父親なんだよねー。
スト破り、って炭坑に行こうとしたり。
ビリーのためにほんとになんでもするんだよね。あの行動がどれだけ苦しい選択
だったかと思うと、もー、涙がとまらない。
子どもの才能を夢をかなえてやりたい、っていう、まっとうな大人がいてよかった。
おにーちゃんが、ビリーを送り出す時、聞こえないのにアイミスユーって
言ったのにも泣いた。

オーディションでは緊張してて不安そうで、不機嫌そうなビリーがめっちゃめちゃ
可愛くってたまんなかった~。
そして結果の手紙が届いて、それを前に一家そろって緊張してるのも可愛かった~。
一人で手紙を見て、合格だってわかっても、わーいやったー!って感じになら
なかったビリーがすっごいよかった。
一人でロンドンへ行ってどうなるかわからない世界へ飛び込むんだもん。
怖いよね不安だよね。寂しいよね。その始まり。

ラスト。
たぶん二度目のロンドンなんだろうねー。父と兄とが劇場へ向かう。
父のなんだかぼーっとした様子が可愛い。
友達だったマイケルもきていて。
ビリーの舞台。あれは、白鳥の湖の黒鳥、なのか。たぶん大役をやる初めて、
ってことなんだろう。家族がきてる、って伝えられて、一瞬少しだけ口元で
わらったのがかっこいい。
そして光の舞台へ。
鳥になって力強く、でも重力なんか関係ないみたいに跳んだ姿のうつくしさったら
もーーーーーーっ最高!

話はわかっているけど、二度目はビリー本人はもちろん、周りの大人のことも
よく見えて、ほんとにほんとに、涙がいくらでも出てしまって困る。
だって踊るのが好きだから! ずっとこの素晴らしい楽しさがあって、そんな
中での苦しさや切なさがあって、も~~、なんて素敵な映画なんだろう。
大好き。
やっぱり大好きだった。
見に行ってよかった。

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映画「パレードへようこそ」

*結末まで触れています。

 
映画「パレードへようこそ」

「PRIDE」がタイトルですね。
1984年。ロンドンでのゲイ・プライドの日。二十歳の誕生日だった、
ジョーはカメラを両親からのプレゼントにもらう。たまたまパレードに紛れて
勢いで参加すると、炭坑夫たちのストライキに感銘をうけたマークたちと共に、
彼らを支援する募金活動に参加することになった。
LGSM。レズビアンゲイサポートマイナー。支援しようしても、ゲイ&レズビアン
の団体だというと断られてしまう。
たまたまウェールズのディライス炭坑に電話すると、電話に出たお婆ちゃんが
了解してしまった。ゲイ&レズビアンと、炭坑ストとの共闘と友情が始まる。

異文化の出会いのコメディ、かな。
生きる権利を求めて戦うところは同じだ、とマークは勢いで活動を始めて、
なんかわかんないけど支援してくれるっていうんなら受けようかな、っていう
田舎町へ出向く。寄付のお礼に、と招かれたパーティで、ゲイなんて、っていう
偏見もたっぷりの人たち、素直に受け入れようとする人たち、町での対立も
見えてくる。
音楽たっぷりで、すごく楽しかった。
楽しくて、可笑しくて、可愛くて、でもしっかり切なくて苦しくもあって。

「ブラス!」とか「リトル・ダンサー」もだけど、イギリスの炭坑のストと
いう大変な出来事を、こうして映画作品に昇華するうまさは一体何なんだ。
凄い。
これもほんとに、素晴らしい名作だった。

ゲイ・プライドの物語であり、青春群像であり、老人群像であり。
つまり生きるということ。
若者も中年も老年も、男も女も何者でもなくても、生きるということ。
誰だって幸せを求めて声を上げて生きる権利があるということ。

でも声高にただ理念を叫ぶようなことはなくて、素敵に脚色はされている
だろうし、面白おかしくもなっているんだろうし、コメディだし音楽だし
こんなテーマなのに押しつけがましさがないのが素晴らしい。
どの立場の人間にもできる限り誠実にフェアであろうとしている感じがした。
このバランス感覚の上手さ。英国らしさなのかなあ。凄くいいなあ。

で、いちいち細々と可愛くてきゅんとする。
ジェフが金髪王子様みたいで、町の女の子たちにお人形さん扱いされて髪とか
弄られてたり。プレゼントに持ってくるのも綺麗な色の手袋でね~。可愛いでしょ、
って感じなの。
ジョーは、お菓子学校に行くことになってる、両親に可愛がられてきた子だけど
活動に参加するうちに目覚めていく。ビアンのステフと仲良しになる。
マークは情熱のままに動き出してみんなを巻き込む力があるし、マイクは
やれやれって感じで彼をサポートする。
ゲシンはゲイ書店やってて、みんなの活動拠点みたいになる場所提供。
アンドリュー・スコットがもうほんっと繊細で可愛くてめちゃくちゃよかった!
ジョナサンつーあんまり売れない俳優とカップルで、この中年カップルがもう
可愛くて可愛くて。ゲシンは故里を出たっきり帰れない16年があって、でも
この活動きっかけで母親と仲直り。ジョナサンはエイズになるけど今も元気
らしい。
マークが26歳の若さで亡くなったらしい。

本当にあった物語、というので感動を誘うっていうのはベタなんだけど、
映画なんだからうまくまとめているんだろうけど。けど、彼らのような、
普通の人がそれぞれになんとかがんばって、戦ったり楽しんだりしながら
生活があって生きていて、そういうのが本当に大切で素晴らしいと素直に
思えた。

最後の、最初とは一年後のゲイ・プライド。炭坑のみんなと一緒にパレードの
先頭を歩くみんなは本当に楽しそうで、この出来事は素晴らしい歴史の一つで、
とてもとても素敵だった。
いい映画だなー。切なくて、楽しかった。
たっぷり泣きました。

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『真夜中のトラッカー』(ジョゼフ・ハンセン/ハヤカワポケットミステリ)

*結末まで触れています。

 

『真夜中のトラッカー』(ジョゼフ・ハンセン/ハヤカワポケットミステリ)


デイヴ・ブランドステッター、シリーズの7作目。
トラック運転手のポール・マイヤーズの死亡調査をするデイヴ。夜にも働いて
いた彼の秘密の仕事は何だったのか。
調べるうちに仕事を紹介してくれたオシー・ビショップも死亡していたことが
わかる。不審な病死。彼らを脅かしていた謎の人物。デイヴはさらに調査を進める。

前回暴発しまくる銃弾で重症を負ったセシルはまだすっかり回復してるわけじゃ
ないけど無事でよかった。自分は役立たずだ、って落ち込んだりしているのが
可愛い。セシルは何も悪くないよー。無鉄砲なデイヴが悪いんだよー。
今回も調査を進めるうちに不法投棄問題に突き当たって、ぐいぐい突っ走る。
無自覚な正義感っていうのかなあ。そこはもうほっといていいんじゃないの、
って言いたくなる。だって一緒に行くのは体調万全とはいえない弱ってる
セシルと、父の死、母の危機に怯える少年だったりするんだよ。雨のぬかるみで
車が動けなくなるとかもうハラハラするしそんな弱った体のセシルに無理させ
るんじゃないよもう馬鹿ーって思う。
デイヴ自身ももう年になってきてる、って自覚はあるみたいだけれど。50前
くらいな感じか? 危険な仕事を続けなくても生活に困るようなことはないのに
仕事始めると突き進んでいっちゃう。

 「やめ方がわからないのだと思う」デイヴが答えた。 (P165)

っていうのがあって、自分でもなんでこう危険とわかっても仕事を続けている
のか、困ってる感じではある。ほどほどで切り上げてセシルと幸せになれよ。
と思うけど、それじゃ話にならないか。

犯人、は、また意外なというか。不法投棄させてた本人が、妻が犠牲になって
しまったからって逆ギレみたいな感じ。んー。まあわりと仕方ないような。
ま、わりと毎回犯人に関してはどうでもいいような気になる。私はやはり
ミステリとしてより、デイヴの物語として読んでいる。

訳者あとがきで、このシリーズの重要なテーマは、<失われた女(母親)>
だという。デイヴの父は9人もの妻を持った男。デイヴの母については
ごくわずかな記述しかない。
がっつりゲイの物語だけれど女、母というテーマがあるっていうのは面白い。
母は敵のようだと思うけど、どうなんだろう。
続き読むのも楽しみ。

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『塔の下』(五條瑛/光文社文庫)

『塔の下』(五條瑛/光文社文庫)


錦糸町。ヤクザの白樺に恩のある鏑木はちょくちょく調べごとなど便利に使われて
適当な金をもらって暮らしている。
スナックの上客に絡もうとしている怪しい男をなんとかしてほしい、と、エイコに
頼まれ、調べていくうちに、中国絡みのヤバいことにつながることがわかる。
ちょうど白樺に頼まれていた事件ともつながってきた。

そんなこんなで、2月に文庫化になっていたのを購入。一度は読んでるんだけど
文庫でもう一回。
書下ろしで「墨東浮き世風」ってなってたけど、これは単行本の時の書下ろし、
ってことか。SKT634の企画って読んだことあった。
単行本は2012年刊。

スカイツリーの建築中に見に行ったなあとか、ご当地アイドル企画とかすでに
懐かしくもありでも今も地続きでもある。
完成したスカイツリーの観光は去年行った。

読み返してみて鏑木さんの動きがいろいろ効率的だなとか思うけど。
京二くんの存在が可愛いんだけれども可哀想で。
ホワイトカラー4のニールを連想。ドツボにはまっちゃうダメな父親って
出来のいい息子にとってはキツイよなあ。五條さんの書くこの清水のほうが
色気ある感じがしていいけど。

これだけくっきり時間経過を感じる作品ていうの珍しいかもしれない。
スカイツリー建築で変わる町、というのがしっかり描かれている。
今読み返したからいろいろ連想することも増えてて面白かった。

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映画「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」

*ネタバレしてます。


映画「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」


リーガンはかつて「バードマン」というヒーロー映画で大人気だった俳優。
それから20年あまり、これといって活躍することはなく、再起をかけて
ブロードウェイで脚本演出主演で文芸作品を舞台にかけようとしていた。
プレビュー直前に俳優の一人が事故。急遽代役として参加したマイクは舞台人
としてリーガンを脅かす存在となる。
過去の栄光であるバードマンの声に悩まされうまくいかない舞台に苦しみ
まだ始まってない舞台に下されるであろう批評家の酷評に怯えるリーガン。
娘とも恋人ともまともに関係を築けていない。
散々なプレビューを終え、ついに初日、リーガンは舞台の上で銃を構えた。


アカデミー賞その他いろいろ賞とりまくってたようで、でもなんかシュールそう
な感じで楽しみに見に行った。
何がどのくらいリーガンの妄想なのか。全部が妄想なのか??
ラストも、彼はそしてどうなったのか。バードマンになった? 死んだ? 明確
な答えが示されはしないし、見終わって面白かった!!と声高に言うことも
できないし、という作品だと思う。けど、確実にじわじわくる。可笑しいし
切ないし苦しいし面白かった。

アベンジャーズをディスらないで!w いろいろな俳優の名前をもっと知ってた
らよかったのにーと思う。ちょっとしか知らないなりにも可笑しかったけど。
ヒーローが多すぎるよね、この頃のハリウッド大作。昔のリメイクとか。
映画そのものへの批判もたっぷり、娯楽映画なんて、って感じの演劇界みたいな
ものへの批判もたっぷり。映画とは、舞台とは、俳優とは、エンタテイメントとは、
ネットとは話題とは人気とは。いろんなことをメタに見せている。

すべてワンカットに見えるような映像づくりってことで。実際ほんとずーっと
ずーーーーーっと、リーガンにくっついていくカメラ。
自分がリーガンにストーカーしてる目になった気分でみた。そんなにずっと
ぴったりとリーガンにつきまとう視線。リーガンの悪夢の原因は私、という気分。
リーガンに語りかける悪夢のバードマンの声がこのカメラそのもの、みたいな。

最初、リーガンのちょっとした超能力、みたいに言う、浮いてたり物を動かしたり
するのも、マジで超能力なのか?? いやでも彼の思い込みで、実際には
暴れて壊してるのも彼自身なのか。バードマンになって飛ぶ、みたいなのも
実際には単にタクシーに乗ってきた間の妄想か。
すると最後には、やっぱり彼は飛び降りて、死んだ、んだろう、なあと、思う。
けど、サムは空を見上げて笑ってた。
幻想を共有したのか、解放された父のことを思ったのか。わからないけどー。

わからないのも、長回しの緊迫感も、面白かった。
マイクやサムや、女優たちスタッフたち、みんなそれぞれに、不安や無茶苦茶
がありながらも舞台にかける感じが素敵だった。
全体的に悪夢なんだと思うけど、しみじみと切ない。生きていくことはままならぬ。
長い人生いい時ばかりじゃないさ、なんて言ったら単なる陳腐なんだけれど、
エンタテイメントの華やかさの裏には華やかさの分だけ濃厚に、浮き沈みの
苦しみがあるのかなあと思った。

緊迫感とセリフ、それがジャズドラムのリズムにのって、すっごくかっこよかった。
音楽のかっこよさが凄い。

そしてこの映画もまたハリウッド映画で、賞をたくさんとったこと。そのことが
またなんかメタレベルで面白いような気がする。映画が好きな人、映画作る人
みんなの胸に刺さる作品なのだろう。
人生っていろいろだねとか映画って本当に凄いねとか、ベタなこと思わされる
のに、斬新で見たことない感じ。不思議だった。面白かった。

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『threesome』(榎田尤利/リブレ出版)

*ネタバレしてます。


『threesome』(榎田尤利/リブレ出版)

弁護士×舎弟×組長のエロティック極上3P

ってことで帯のとおりがっつり3Pだった。楽しい。

辻はヤクザ。とはいえ一応は暴力は背後に隠しながらのグレーな企業の社長。
上部組織は和鴻連合会。まだ若い辻を支えるのは古くからの兄貴分である櫛田。
この頃シロウト崩れの老人向け詐欺集団に頭を悩ませている。
辻に忠犬として懐きまくっている菊池を躾け、弁護士の財津は頼りにしている。
菊池と財津との3Pで楽しむ生活は半年ほど続いている。

この前に短編があったそうだけれどもそれは読んでない。好評で、予定して
なかったこの長編をかきました、ということらしいです。
ヤクザの内部でもゴタゴタがあり、詐欺集団のえげつない若いのとかもあり。
結構ハードだった。
そんな中でアホ馬鹿ワンコな菊池くんは可愛くてよかった。けど。
私個人的には財津さんとカップルでいいじゃーん、とは思う。3人でっていう
のもいいけどさー。菊池くんの独占欲はほんとにうまくかわしきれるのか。
可哀想だね。
さらにこの後続くのか、は、もうないかなあ。櫛田さんのことはショックだった。
櫛田さんも忠実だと思ってた。
レンくんは、かなりさくっと死んでしまって、でもまあそうかなと思ったけど、
その上さらに櫛田さんの裏切りは予想外だった。
ここまでいくのかあ、と、すごくよかったです。
概ねBLだとやはりどっか甘い、と、私の思い込みがあったなあ。

辻も十分大人なので、でも櫛田さんを失った傷というのは、二人ががりで
愛してあげないと、っていうのは素敵かもしれない。
えろしーんはしっかりたっぷりめいっぱいでステキでした。
表紙の絵にそもそもとってもそそられたので、買ってよかったと満足でした。

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『ありふれた祈り』(ウィリアム・ケント・クルーガー/ハヤカワポケットミステリ)

*ネタバレしてます。


『ありふれた祈り』(ウィリアム・ケント・クルーガー/ハヤカワポケットミステリ)


あの夏。ひとりの少年の死に始まった、ミネソタ州ニューブレーメン郊外で起きた
いくつかの死。
フランクは13歳の少年で、弟のジェイクがいつもくっついていた。父のネイサン
は牧師として力を尽くしていたし、母は教会での歌の指導に熱意を持っていた。
音楽大学進学目前の姉、アリエルは弟たちに公平で優しく、誰からも愛されていた。
約40年前のあの夏。

フランクの回想、という形。舞台は1961年だそうだ。父は戦争に行く前には
弁護士になるつもりでいて、その前途洋洋たる父に惚れて結婚していた母は、牧師に
なった父にあまり納得していない。戦争中何を見てきたか、父は語らない。
教会の手伝いなどをしているガスは戦争中の父の仲間だった。フランク達にとって
ガスはいい相談相手。祖父や叔母もいる。姉が音楽を習いにいっているエミールと
その妹リーゼとも家族ぐるみのつきあい。
小さな町の穏やかな日常が、列車事故で亡くなったボビーの死をきっかけに、
不穏なものへと姿を変える。
何よりの絶望は、天使のように素晴らしかった姉アリエルの死。行方不明、川の死体
を見つけたのはフランク。一家の絶望。
姉の死の謎を巡るミステリでもあって、つきあっていたボーイフレンドはそういう
意味ではつきあっていなかったとか、妊娠していたのはエミールとだったとか、
いくつかの秘密は暴かれさらなる悲劇をよんだりして。リーゼの衝動は事故として
諦めるしかないのか。
終りのほうを読みながらもうどうしようもなく切なくなる。

日常に暴力的に現れた死を、どう受け入れるのか。許せるのか。
祈ること。いかに祈るのか。
丹念に描写が重ねられていてフランクの心に同調しながら読んだ。苦しい。
ジェイクの受け入れ方も凄い。吃音でずっと苦しんでいたジェイクこそが小さな
奇蹟に出会う。

最後には40年すぎた今、ということで生き残っている彼らは沢山のお墓を巡る
毎年の決め事をしている。
祈り、許したのだろう。
フランクは歴史の教師になり、ジェイクは牧師になっている。
あの絶望と悲しみを許す、という祈りはやはり時間がとてつもなくかかること
なのだろうと思う。それでも許し、もちろんすべて許すってことはないんだろう
けれど、この静かな結末に至る。死者はいつも隣にいる。

男の子兄弟であるフランクとジェイクが、喧嘩したりうっとおしく思ったり
しながらも、世界で一番の友達だ、と思いあったりしてとてもいい。ひと夏で
抱えきれないほどの出来事に出会うわけだけど、その時ちゃんと大人が大事に
してあげてるのがとてもよかった。しょーもない大人もいてダメダメだったり
もするんだけど、両親だけじゃなくて子どものフランクとジェイクが、相談できる
大人がいて彼らを大事に見てる大人がいて、よかった。苦しくて悲しいけど
救いがあるんだなー。

この祈りとか許しとかの感じはキリスト教な感じなのだろうと思う。私は信仰
のことはわからないんだけど、赦す、という感じって、あるんだなあと思う。
もちろんキリスト教徒ならだれでもってわけじゃないんだろうけど。
祈ること、赦すこと、というのを読みながらすっと感じた。切なかった。

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『機龍警察 暗黒市場』(月村了衛/早川書房)

*ネタバレしてます。


『機龍警察 暗黒市場』(月村了衛/早川書房)

機龍警察のシリーズ3作目。
ユーリの物語。

警視庁との契約を破棄されたユーリは幼馴染のティエーニを訪ねた。ロシアの
ヴォル。独特の掟を持つロシアマフィアで武器商人をしている彼の本名はゾロトフ。
惨めな犯罪者の息子と警官の息子として、子どもの頃からの因縁があった。

読むのに結構間があいてしまったけれど、読んでいるうちにまあまあ思い出して
わりと大丈夫だった。今回はロシア時代のユーリの話で、少年時代、警官になりたて
の青年時代とロシアの暮らしとかロシア人の名前とかいっぱい。でも説明がそれ
なりにうまくいれられてるし人物もわかりやすかった。
警官としての父を尊敬し、警官としての先輩たちを尊敬し、自身も警察官として
誇りをもって働こうとしていたところ裏切りにあって一転追われる身になった
ユーリ。
過去をなぞるかのように、契約破棄されたと見せかけて犯罪組織への潜入捜査に
あたるユーリ。
絶望と虚無なのかと思いきや、ユーリ凄い熱い刑事魂だった。結構泣いちゃったり
するのが可愛い。
何故嵌められたのか、何故裏切られたのか。その謎がずうっとあるので、途中
よくわからないよーなんなんだよーとじれったく思いながら読み進む。
それだけに、耐え抜いての終盤。機龍での戦い、逃亡、決戦、て感じの派手な
アクションシーンは盛り上がる。かっこいい。渋い。
途中また謎の警察政府内部の<敵>の邪魔らしきものが入って、警察の現場と
上層部での動きとの齟齬とかじれったさとかもハラハラドキドキで面白かった。

ゾロトフは影<ティエーニ>でユーリは灯火<アガニョーク>。幼馴染の因縁
とかなかなかもえる。ティエーニが刺青させたユーリの手の黒い犬。それを
見られることを恥辱に感じて泣くユーリとかえろくてステキだった。
いいよねー潜入捜査。ドキドキして。

映画「スタンド・バイ・ミー」が印象的な思い出の映画みたいに出てきて、
あー、こういうのに引用される映画が自分もよく知ってて好きなものである
なんて、なんか自分自身の年を感じる気がした。作者の人は私より年上だけど。
広くわかりやすくという心遣いなんだろーか。というか、あの映画もこういう
扱われ方をする古典的なものになりつつあるのか、と感慨深い。

今回の話が今の所一番面白かったな。

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映画「ジュピター」

*ネタバレしてます。


映画「ジュピター」(2D、字幕で見た)


ジュピターは生まれる前に父を亡くしていた。ロシアからアメリカへ移住。
今は家族と共に家政婦として自分とは縁のない豪邸の掃除ばかりの毎日。
こんな人生嫌だ、と思う平凡な女の子。ある日突然、突然異星人に襲われる。
危ういところを助けてくれた男は、やはり異星人の傭兵だった。

そんなこんなのSF大作。「マトリックス」以来のウォシャウスキー姉弟の
オリジナル新作! みたいな大々的うたい文句。ほんとは3Dで見るともっと
映像がよかったのかなあ。でもそこまでの気力がわかなくて普通に見ました。

ジュピターって女の子の名前なのね。平凡な地球人の女の子が、銀河、つーか
宇宙全土? の支配層のアブラサクス家の女王の生まれ変わりだった!
ってことなんだけど。
へー。。。。

これはもう全面的にわたしの個人的好みの問題で、女王の生まれ変わりっつー
ヒロイン、ジュピターに全然魅力を感じなかったです。美人だけど。好みじゃ
ないのよ。だからなんかチャニング・テイタムががんばって彼女を守って
互いにひかれていくみたいなロマンス風味にも全然のりきれなくてですね。
どーでもええわーと思ってしまった。
これが可愛い男の子で王子の生まれ変わり美少年だった。と思わずにいられない。

お話はクラシックだと思った。
本人無自覚な高貴な血筋が狙われ、守るものが現れ、対決。家族が大事という
ハートフル主人公側と、人を人とも思わない非情な搾取する支配者。ヒロインが
無事守られめでたしめでたし。
しかしねえ。
ちょっと待て。結局アブラサクス家の壮大な家族内揉め事兄弟喧嘩っすか。
まあ王族の喧嘩になったら国も滅びちゃうかもしれないからいいけど。けど。
長男バレムくんは我儘一家の中で支配者として経営者としてすっごく真面目に
厳しく仕事して頑張ってたんじゃないのか。彼だけが。という気がして
しょーがない。長男くんに同情。ジュピターが生まれ変わりとして現れたばっかり
に、彼んち目茶苦茶にされちゃってんじゃないの。可哀想。バレム可哀想。

エディ・レッドメインがバレムやってて、それで私のひいき目があるとは
思うけど、うーん。バレムが一番好きだった。女王母親にも結局振り回されてた
彼は、膨大な財産管理がんばって収益あげようとしてただけじゃないのか。
まあ、なんかその宇宙帝国みたいな?? 世界観がいまいちはっきりしなくて
みんな何やって動いてるんだかよくわからないまま、まあなんか対立してる
んだな、くらいで流してみた。
うーんー。
世界設定っつーか世界観みたいなのがほんとはいろいろみっしりあるんじゃない
のかなーと思うけど、一回見たくらいじゃぼんやりしかわからないよ。
ジュピターとケインのせいでバレムんちボロボロだしあのあと世界秩序が
みだれちゃって大変なんじゃないのー。もー。と、余計な心配をしてしまう。
いやほんと、私がヒロインサイドに思い入れを持てなくて。アブラサクス家の
心配をしてしまった。地球収穫してもいいよもう、とかまで思っちゃった。

建築とか、ケインが履いてる反重力ブーツだとか、シールド。空中戦とか
宇宙船とかメカメカしいのはとってもかっこいい。
2Dで見たせい? マトリックス を最初に見た時ほど驚くことはないなあ。
でももうあんな映像革新はなかなかないだろうからなー。
異星人とか衣装とか、いろんな造形は面白かったけど。

なんかこう。なんていうかこう。すっごくゴージャスでかっこいいがいっぱい
なんだけれども、なんかこう残念な気がする。うーん。
初めて見るSF映画がこれだったらもっと凄いとか感動するかなあ。どうかなあ。
面白かったし楽しんだけど、すっごくよかった!ってほどではないって感じ。
なんだろうなあ残念だなあ。

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