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映画「イミテーション・ゲーム」

*ネタバレしてます。


映画「イミテーション・ゲーム」


第二次世界大戦かの英国。アラン・チューリングは天才数学者。
ブレッチリー・パークでチェスの天才や言語学者たちと秘密の任務につく。
ドイツの暗号器エニグマ。無電で簡単に傍受できるその暗号を解読すること。


水曜日に見に行ってきた。試写会に行ったので見るのは二回目。
初めて見た時にはMI6とか出てくておお~と感激したり、ついに、暗号解読!
うわーっ、とか、ドキドキハラハラ展開にびっくりしてわくわくしてそして
切なく悲しくなって物凄い揺さぶられた。
二回目なので話はわかっているので、興奮度はやや穏やかに。もう最初から
切なくて苦しくてただただチューリングを見つめていた。

映画の時間軸は戦争のあと、1951年と、暗号解読に苦悩している戦時中と、
チューリングの初恋の学生時代との主に三つ。でもそれで混乱ってほどでは
ないと思う。

少年チューリングくんが変わり者として酷いいじめにあうところを助けてくれた
クリストファー。二人は数学の最優秀者。人の会話の裏がよくわからない、と
いうチューリングに暗号解読の本を貸してくれたのもクリストファーだった。
二人で暗号の手紙のやり取りしたりしてね~。恋しちゃったチューリング少年
の表情がきゅんきゅんでたまんない。
それなのに、クリストファーは休暇中に病気で亡くなってしまう。突然失われた
親友、片思いの相手。チューリングは先生には親しくなかった、と言う。
クリストファーがチューリングをどう思っていたのかはわからず、突然すぎる死の
せいで、チューリングは永遠に彼を追い求めることになる。泣く。どーして
死んでしまったんだよクリストファー。永遠の美しい思い出になった彼のことを
チューリングは純粋な気持ちのまま、追い求める。それがもう切なくて切なくて。
マシンにクリストファーと名前を付ける。

戦争のあとも一人でマシンの研究を続ける。刑務所へ入れられてマシンから離れる
のは嫌で薬物治療を選ぶ。マシンのクリストファーといられれば、一人じゃない
といって泣く。
とても、ロマンチックなストーリーになっていた。そもそもマシンにそんな
名前はつけてないのが史実らしいけれど。自殺の真相だってわかってはいない。
けれど、薬物治療で体に異常が出て、チューリングの本来の知性も失われて。
クリストファーの研究が続けられなくなって、死を選んだのだ、と、思う。
そう思うようなストーリーになっていると思う。

ドイツは愛で負けたぞ、というセリフがあって、ああと思う。チューリングは
クリストファーとの愛で勝ったんだと思う。クリストファーを想い追い続けた
想いが、不可能と思われた暗号解読のマシンを作り上げさせた。
愛だ、と言えばあまりにも陳腐だけれど、孤独と絶望の少年を救うひかりに
なった想いは、やはり永遠なのだと思う。
ロマンチックなストーリー、と思うけど、変な甘さはなくてあくまでストイックで
うつくしい。

自分は同性愛者だ、という自覚はあるけれど、クラーク嬢を好きになって
彼女がブレッチリーに来られるように両親に一生懸命喋っていたり、引き止める
ために結婚しようといったり、そういうのも凄くよかった。
ブレッチリーの研究の中で、チームの中で人との関わりを学び、変人なりに
これまでたぶん自分を守るためにも無視してきていた人付き合いをするように
なっていくチューリングが健気で可愛い。
恋愛的な意味よりも人としてほんとに好きだよ、という感じがとてもいい。
クラーク嬢はほんと魅力的だった。

暗号解読ができた! という興奮の直後に、それをどう使うか、ということへの
真っ暗になる感じが凄まじかった。
暗号が解読されているとドイツにバレてしまっては意味がなくなる。そのためには、
防ぐべき攻撃とわかっていながら見放す攻撃とを選ばなくてはならない。
その選択が凄い。
もうねー、泣いた。ミンギズに頼んで、極秘中の極秘にして誰にも悟られない
ように、最高機密としての選択。
多くの人々をみすみす見殺しにすることをわかっていながらの選択。連合国側の
勝利のために。戦争が早く終わればその犠牲も終わる。勝利のために殺す。
その重みは、人に耐えられるものなのだろうか。
戦争だから。作戦行動のために人を殺すのが戦争だとは思うけれど。それを誰かが
やらなくてはならないものだとしても、なんという重さか。

軍も政府すらも騙す、ということを、得意分野だ、とさらっと言い切るミンギス
がねーっ、かっこよくってたまんなかった。ぞくぞくきた。大好き。
マーク・ストロングなんだけど、かっこよさに痺れたわ~。そりゃもう裏切りの
サーカス連想するよねーっ、時代はちょっと違うけどっ。あーもー。英国情報部
かっこよすぎるやろ。大好き。

ベネディクト・カンバーバッチの実に繊細な演技が本当に素晴らしかった。
あの綺麗な目。何度もアップになるんだけれども、ほんとうにうつくしい目で、
その目に涙が浮かぶたびにたまらなく切なくなる。
チューリングが自分が人と違うことを、あきらめていたり受け入れていたり、
それでも戸惑っていたり苛立っていたりなんとかしたいとあがいていたり。
クールな無言の中に様々な感情がゆれたつのがわかる。
一生懸命喋るけどうまくいかなかったり、何もいってないのにわかってもらって
驚いていたり。
ベネたん素晴らしかったよー。かっこいいよー。可愛かったよー。大好き。

アカデミー賞では脚色賞だっけ。脚本の人が、変人のままでいい、という
ようなスピーチをしていて感動的だったんだけど。
そういう映画だと思う。
機械は人と違う風に考える。
人と人でも同じとは限らない。
違うように考える。
それでいいじゃないか。
そりゃ人殺しが大好きなんです、みたいなあきらかに困った犯罪行為に及ぶ
のはよくないけど、ニンジンとグリーンピースを皿の中で分けておいて何が
いけない? 恋する相手が同性であって何がいけない? 空気読めないからって
何がいけないのか。
多様な世界であるほうが豊かだと思うのに。

暗号謎解きミステリ、とはちょっと違うかなあ。でも暗号解読に賭けた男たち
の物語だし、スパイものだったし、戦争の悲劇であり、そこで生きている市民
の物語でもあり働く女性の物語であり、仲間との友情物語でありロマンチック
な恋の物語でもある。そして一人の男の半生である。
すごくすごくよかったです。

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