« February 2015 | Main | April 2015 »

『砂漠の天使』(ジョゼフ・ハンセン/ハヤカワポケットミステリ)

*ネタバレしてます。


『砂漠の天使』(ジョゼフ・ハンセン/ハヤカワポケットミステリ)


保険調査員ブランドステッター、シリーズ6作目。
バナー保険会社からの依頼で、デイヴはチャールズ・ウェストオーヴァーの家を
訪ねる。その娘がカルト教団へ行ったきり、死亡したので保険請求があったのだ。
留守の家。娘は本当に死んだのか。まずは一緒に住んでいたという息子の行方を
探すデイヴ。チャールズ・ウェストオーヴァーの経済状況は苦しく、娘セレニティ
の生死ははっきりしない。

シリーズだなーということで、今回はセシルが戻ってきてくっついてた。
あのテレビ局で働いてた子。『誰もが怖れた男』で出てた子だ。
で、アマンダがイケメン捕まえて結婚か~と思ってたらそのマイルス・エドワーズ
はデイヴとも寝ようとして強引でびっくり。デイヴモテまくりだなー。
マイルスのやり口は酷い。すっかり犯罪でしょ。アマンダはなんていうか、
男運悪いって感じなのだろうかね。

事件は。
夫とその親友だと思っていたら同性愛関係だった、とか問題はありつつ。
結局カルト教団にドハマリなセレニティも被害者というよりは加害者で、終盤
の怒涛の勢いは凄かった。
デイヴもまた一人で出かけていっちゃうし。どうして。どうして一人で行くの。
これまでにも何度も一人で行って危ない目にあってるでしょーがー。先に警察
にいくとかもっと腕っぷし強い誰かと仲間になるとか、なんかこう、危機回避の
ために何かしようよー、と、読みながらハラハラ思う。ま、行かなきゃドラマに
ならないかね。
でもそのせいでセシルが危ないことに。死んではないみたいだけど、大丈夫なの
かなあ。次を読むのが楽しみ。

|

映画「イミテーション・ゲーム」

*ネタバレしてます。


映画「イミテーション・ゲーム」


第二次世界大戦かの英国。アラン・チューリングは天才数学者。
ブレッチリー・パークでチェスの天才や言語学者たちと秘密の任務につく。
ドイツの暗号器エニグマ。無電で簡単に傍受できるその暗号を解読すること。


水曜日に見に行ってきた。試写会に行ったので見るのは二回目。
初めて見た時にはMI6とか出てくておお~と感激したり、ついに、暗号解読!
うわーっ、とか、ドキドキハラハラ展開にびっくりしてわくわくしてそして
切なく悲しくなって物凄い揺さぶられた。
二回目なので話はわかっているので、興奮度はやや穏やかに。もう最初から
切なくて苦しくてただただチューリングを見つめていた。

映画の時間軸は戦争のあと、1951年と、暗号解読に苦悩している戦時中と、
チューリングの初恋の学生時代との主に三つ。でもそれで混乱ってほどでは
ないと思う。

少年チューリングくんが変わり者として酷いいじめにあうところを助けてくれた
クリストファー。二人は数学の最優秀者。人の会話の裏がよくわからない、と
いうチューリングに暗号解読の本を貸してくれたのもクリストファーだった。
二人で暗号の手紙のやり取りしたりしてね~。恋しちゃったチューリング少年
の表情がきゅんきゅんでたまんない。
それなのに、クリストファーは休暇中に病気で亡くなってしまう。突然失われた
親友、片思いの相手。チューリングは先生には親しくなかった、と言う。
クリストファーがチューリングをどう思っていたのかはわからず、突然すぎる死の
せいで、チューリングは永遠に彼を追い求めることになる。泣く。どーして
死んでしまったんだよクリストファー。永遠の美しい思い出になった彼のことを
チューリングは純粋な気持ちのまま、追い求める。それがもう切なくて切なくて。
マシンにクリストファーと名前を付ける。

戦争のあとも一人でマシンの研究を続ける。刑務所へ入れられてマシンから離れる
のは嫌で薬物治療を選ぶ。マシンのクリストファーといられれば、一人じゃない
といって泣く。
とても、ロマンチックなストーリーになっていた。そもそもマシンにそんな
名前はつけてないのが史実らしいけれど。自殺の真相だってわかってはいない。
けれど、薬物治療で体に異常が出て、チューリングの本来の知性も失われて。
クリストファーの研究が続けられなくなって、死を選んだのだ、と、思う。
そう思うようなストーリーになっていると思う。

ドイツは愛で負けたぞ、というセリフがあって、ああと思う。チューリングは
クリストファーとの愛で勝ったんだと思う。クリストファーを想い追い続けた
想いが、不可能と思われた暗号解読のマシンを作り上げさせた。
愛だ、と言えばあまりにも陳腐だけれど、孤独と絶望の少年を救うひかりに
なった想いは、やはり永遠なのだと思う。
ロマンチックなストーリー、と思うけど、変な甘さはなくてあくまでストイックで
うつくしい。

自分は同性愛者だ、という自覚はあるけれど、クラーク嬢を好きになって
彼女がブレッチリーに来られるように両親に一生懸命喋っていたり、引き止める
ために結婚しようといったり、そういうのも凄くよかった。
ブレッチリーの研究の中で、チームの中で人との関わりを学び、変人なりに
これまでたぶん自分を守るためにも無視してきていた人付き合いをするように
なっていくチューリングが健気で可愛い。
恋愛的な意味よりも人としてほんとに好きだよ、という感じがとてもいい。
クラーク嬢はほんと魅力的だった。

暗号解読ができた! という興奮の直後に、それをどう使うか、ということへの
真っ暗になる感じが凄まじかった。
暗号が解読されているとドイツにバレてしまっては意味がなくなる。そのためには、
防ぐべき攻撃とわかっていながら見放す攻撃とを選ばなくてはならない。
その選択が凄い。
もうねー、泣いた。ミンギズに頼んで、極秘中の極秘にして誰にも悟られない
ように、最高機密としての選択。
多くの人々をみすみす見殺しにすることをわかっていながらの選択。連合国側の
勝利のために。戦争が早く終わればその犠牲も終わる。勝利のために殺す。
その重みは、人に耐えられるものなのだろうか。
戦争だから。作戦行動のために人を殺すのが戦争だとは思うけれど。それを誰かが
やらなくてはならないものだとしても、なんという重さか。

軍も政府すらも騙す、ということを、得意分野だ、とさらっと言い切るミンギス
がねーっ、かっこよくってたまんなかった。ぞくぞくきた。大好き。
マーク・ストロングなんだけど、かっこよさに痺れたわ~。そりゃもう裏切りの
サーカス連想するよねーっ、時代はちょっと違うけどっ。あーもー。英国情報部
かっこよすぎるやろ。大好き。

ベネディクト・カンバーバッチの実に繊細な演技が本当に素晴らしかった。
あの綺麗な目。何度もアップになるんだけれども、ほんとうにうつくしい目で、
その目に涙が浮かぶたびにたまらなく切なくなる。
チューリングが自分が人と違うことを、あきらめていたり受け入れていたり、
それでも戸惑っていたり苛立っていたりなんとかしたいとあがいていたり。
クールな無言の中に様々な感情がゆれたつのがわかる。
一生懸命喋るけどうまくいかなかったり、何もいってないのにわかってもらって
驚いていたり。
ベネたん素晴らしかったよー。かっこいいよー。可愛かったよー。大好き。

アカデミー賞では脚色賞だっけ。脚本の人が、変人のままでいい、という
ようなスピーチをしていて感動的だったんだけど。
そういう映画だと思う。
機械は人と違う風に考える。
人と人でも同じとは限らない。
違うように考える。
それでいいじゃないか。
そりゃ人殺しが大好きなんです、みたいなあきらかに困った犯罪行為に及ぶ
のはよくないけど、ニンジンとグリーンピースを皿の中で分けておいて何が
いけない? 恋する相手が同性であって何がいけない? 空気読めないからって
何がいけないのか。
多様な世界であるほうが豊かだと思うのに。

暗号謎解きミステリ、とはちょっと違うかなあ。でも暗号解読に賭けた男たち
の物語だし、スパイものだったし、戦争の悲劇であり、そこで生きている市民
の物語でもあり働く女性の物語であり、仲間との友情物語でありロマンチック
な恋の物語でもある。そして一人の男の半生である。
すごくすごくよかったです。

|

『ブルー・ムービー』(ジョゼフ・ハンセン/ハヤカワポケットミステリ)

*ネタバレしてます。


『ブルー・ムービー』(ジョゼフ・ハンセン/ハヤカワポケットミステリ)


保険調査員ブランドステッター、シリーズ5作目。

ジェラルド・ドースンが死んだ。彼は熱心に町を浄化しようとしていた。教会での
活動に意欲的で不適切な人や店と戦っていた。犯人としてあげられたのはロニー・
ツーカー。ポルノ書店の店主。
デイヴは保険の受取人である妻と息子の行動を洗い直し、次第にドースンの秘密
を暴いていくことになる。彼は幼女のように見える女の子と関係を持っていた。
事件当夜から姿をけした少女シャーリーンを追い、その夫に辿り着く。

デイヴの父親が亡くなった。デイヴは父の会社であったメダリオンをやめて、
フリーの保険調査員として仕事を請け負う、って感じ。メダリオンにいると
なにかとお家騒動的なことになるのかなあ。そういうのがあってもいいと思う
けど、それだと企業内部の話で単発のハードボイルドにはなれないのか。

これまでは会社の車だったのを返さなくちゃいけなくて、トライアンフに。
っつっても私は車は全然わかんないのでそれがどーなのかは知らないけど。

んで、新しい家を買って、父の最後の若い妻アマンダとはそれなりに仲良く、
彼女が立ち直るのに力をかすって感じ。内装工事とかやりはじめてた。
アメリカとかって、こういう家を買って内装を自分好みにがっつりやり直して
みたいなことがよく出てくる。インテリアに凝るとか作り変えるとか好きなのね。

ポルノ映画撮影の現場で、ランディという女装の彼と知り合う。かなり可愛い
いい男って感じがする~。つきあうのかな。次も出てくるかな。男装の時には
デイヴの好みみたいで、つきあっちゃえよーと私は思ったけど、どうだろう。

終盤のシャーリーンを助け出そうとしてからの激しさは結構凄い。そーとー
血まみれって感じだ。デイヴもやはりだんだん超人になってくアメリカンなの
だろうか。ともあれ、ランディを助けられたのはよかったね。

|

『誰もが怖れた男』(ジョゼフ・ハンセン/ハヤカワポケットミステリ)

*ネタバレしてます。


『誰もが怖れた男』(ジョゼフ・ハンセン/ハヤカワポケットミステリ)


保険調査員ブランドステッター、シリーズ4作目。

ラ・カレタ。その町の警察署長だったベン・オートンが殺された。容疑者として
捕まったのはクリフ・ケアリー。活動家としてオートンと対立していた男。
だが、デイヴはおざなりな捜査に不審を持ち、オートンの死に責任があるのは
誰なのか、調べていく。保険の受取人だった家族、かつて受取人だったけれど
外された娘。不審な脅迫状。父親へのあてつけのように結婚した娘と夫は姿を
消した。ベンが死んでいた現場に入れ替わり立ち代わり居合わせたことがわかって
くる人々。テレビリポーターや芸術家のなりそこね。本当に手を下したのは誰か。

デイヴの父親が病気で倒れてた。ダグとの仲は冷えて、別別の相手とつきあい
始めてる感じ?デイヴはモテるね~。ローカルなテレビ局の若者がついてきて
協力してる。
ゲイ・パレードのことがちらっと出てきたり、殺されたオートンはガチガチに
保守で、ゲイとか黒人とかに激しい差別を持つ人物。最初容疑者にされていた
のも運動家だし。差別と対立がかなりはっきり描かれていると思う。
けど、それはそれとしてやはりミステリというかハードボイルドというか、
デイヴは淡淡と話を聞いて回り状況を把握し、人の秘密を知っていく。
ベン・オートンはよきアメリカ人のフリをしながら、娘の付き合う相手が黒人
だということで許さず、麻薬所持の罪をきせて逮捕させた。愛人を作ってもいた。
家族や小さなテリトリーの中では威張りくさっていた。

結局犯人は、愛人の兄でメキシコから美術品を密輸していたフランクリン。
揉め事は犯罪絡み。ベン・オートンの醜い側面を知ったところで、もうすでに
死んでいる。息子はこれからも盲信してこの小さな町で暮らすんだろう。
デイヴにくっついてきたがったセシルは兄の手によって引き離された。
小さな町の保守的頑強な人々。息苦しかったなあ。

この本が書かれたのは1978年か。(この翻訳出たのは1985年)アメリカでは
こういうゲイの権利活動が盛んになっていたころなんだね。
差別はなくなったとは言えないけれど、変わってきてもいる。長い時間がかかる
ものだね。

|

映画「未来世紀ブラジル」

*ネタバレしてます。


映画「未来世紀ブラジル」


20世紀のどこか。
というわけでもう過去世紀じゃない? と思いながら見ました。
『1984年』ぽいというのはよくわかる。情報管理社会。どこか未来だけど
懐かしい壊れた荒廃の世界。情報局みたいなところ? 一部上流階級がピカピカ
で管理する側、される側はまともな抵抗のすべはなく、爆弾テロが頻発する世界。

サムは上流階級のコネがありながらも出世の見込めない資料整理の仕事でいい
と思っていた。ただ、いつも夢に見るのは美女を救うために戦う翼のある英雄
である自分。ある時夢の中の美女に出会ってしまったことから、なんとか彼女
の情報を得るべく仕事の昇進を願い、彼女のトラブルを解決しようと奮闘し、
だが自分も反逆者の側に追い込まれていた。

コメディなのかな? と最初思う。
名前ばかり知ってて中身はSFだと思ってたけど、これ、ドタバタコメディ?
あとこれ大体夢だな? と思って正直退屈で一瞬寝たりした気がする。
作られたのは1985年くらいで、その当時に、10代で見られたら衝撃も
強くて夢中になったかもしれない。
情報管理社会とか社会格差とか、テロの頻発とか無限に溢れる書類とか
コンピューターはあれどもテレビに夢中とか。ネット社会ってわけじゃない
のがまだ時代かなあ。テレビなんだよね。今だと各自がすきあらばスマホを
いじって勝手な動画みてる、みたいなところなんだと思う。
作られた当時の社会風刺であり社会問題であり、それがたぶん今現代の
社会風刺であるとも深読みはたっぷりできそう。それだけの強度はある作品
だなあと思う。

でも大体夢だな? と思っちゃうのが個人的には弱い。
悪夢の妄想映像表現ってどんどんもっと凄いのがきてる気がするから。
むしろこれとかが原点として今があるんだろうなあ。

お話を理解して追いかけようとするよりは、場面場面の絵面のかっこよさに
ひたすら痺れる感じで眺めるだけでいいのかも。
ほんっとかっこいい。
ダクトマニアなんだろうか。
工場とかダムなの??ぐわーっとコンクリの壁の底って感じの拷問場所とか。
冷たく暗く重々しい街。ゴツゴツ角ばって鉄の塊の車たち。
拘束着。軍服。特殊装備の警備兵。
若返りにいそしむ母たちなど上流階級の不気味な奥様方。
悪夢の中の日本の鎧兜のサムライ。
すごくかっこよかった。

結末は、拷問から救出されて逃げ出せた、夢の女ジルと田舎暮らしへ逃避行、
っていうところで終わりになるというハッピーエンドバージョンにされて、
でもそんなのダメって抵抗して、みたいなごたごたがあったらしい。
それは拷問中のサムの妄想、彼は結局地の底に一人残されたまま、という
ラストのほうが当然いいでしょー。
私が今日みたのはその142分版。

タイトルだけ有名で知ってた、っていうのをちゃんと映画館で見られてよかった。

|

« February 2015 | Main | April 2015 »