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『ふたりの証拠』『第三の嘘』(アゴタ・クリストフ/ハヤカワepi文庫)

*ネタバレです。


『ふたりの証拠』『第三の嘘』(アゴタ・クリストフ/ハヤカワepi文庫)


『ふたりの証拠』は、『悪童日記』の最後で、小さい町に残ったほうのお話。
いきなり名前が出てきてびっくりする。リュカ。LUCAS。15歳。三人称の
小説になる。
ひとりになったリュカは、これまで通りの暮らしをしようとするが、暫くは
野菜の手入れも動物の世話もできないくらい、意識を失うように茫然として
いた。ヤスミーヌという、町から追われそうになっていた子持ちの少女を助け、
不具のある赤ん坊マティアスを育てるようになってまたちゃんと生きるように
なる。祖母の家を売り、書店を買い取り町へ引っ越し、子どもを育てて生きる。
図書館の司書をしている年上の女性クララと夜をすごす。
そして待っている。いつかもう一人、クラウスが帰ってくるのを。
クラウス、CLAUS。
同じ名前の綴りのアナグラム。。マティアスを失って消えたリュカ。それから
20年後、現れたクラウス。双子は一人なのか。

『悪童日記』のころは二人で一人。名前も年もはっきりとは記されてなかった
子どもたちが、実は一人かも、っていう曖昧さは予測できて、この二作目では
かなりくっきり一人なんだろうと思って、でも、でも、二人なの?? と、
結局混乱した。ともあれ『悪童日記』はリュカの作文で想像で、ありのままを
書くって書いていたそもそもが嘘だったのかー。物語の中での本当だと私は
思っていたので、ひっくり返されてびっくり。

党幹部らしきぺテールがかっこよくて好き。と思ったけど。
リュカ、よく生き延びているなあと思った。けど、とてつもなく危うい。
マティアスが頭脳のほうは賢く早熟で、リュカとマティアスの関係もとてつも
なく危うくて苦しかった。マティアスの死は再び双子の半身をもぎとられた
ようなものなんだろう。
でもほんとうに、ふたりはひとりなのか。ひとりでしかないのか。


『第三の嘘』

滞在のビザが切れて投獄されているクラウス。いや、リュカ。
子供の頃リハビリ施設にいて、それから戦争中町はずれの老婆のところに
預けられて。これが、ぼくらなのか。
家族の物語。
第二部では、クラウスという詩人の話。母の面倒を見ながら暮らしている。
これが、ぼくらのもう一人なのか。
かつて、母が父を殺し、流れ弾で一人の子どもを傷つけてしまった。
クラウスの話が本当なのか。
この中でのリュカの話が本当なのか。

でも全部、ありえたかもしれない作り話で、そもそもこの本のタイトルが
「第三の嘘」なんだものね。
物語の中ですら本当はないのか。
くらくらする。
本当は二人なの?ひとりなの? ぼくらはぼくらの物語をそれぞれに作り
あげて書き綴っていたの? ひとりが書いただけなの?
三部作全部がぐしゃぐしゃに渦巻く感じを味わってすごく面白かった。
苦しくて切なくて辛い。凄い。

こんな風に展開していくのねー。読んでよかった。とてもよかった。

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