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映画「ジャッジ」

*結末まで触れています。


映画「ジャッジ」

裁かれる判事
という副題がついていて、「父は犯人なのか」というコピーもあり、法廷もの
かと思ってました。法廷ものであり、家族の物語でありました。

ロバート・ダウニー・Jr目当てで見に行く~という気軽な感じだったのだけど、
思っていた以上にとてもよかった。

金目当ての鼻持ちならない敏腕弁護士であるハンク・パーマー。母が亡くなった
知らせが入り、20年ぶりに故郷に戻る。何も変わってない小さな街。その街の
判事として長年つとめてきた厳格な父、ジョセフ・パーマー。
母の葬儀を済ませ、シカゴに戻ろうとしていたところに、再び電話。父が警察に
つれていかれたという。容疑はひき逃げ。殺人。

ことさらに目新しい話ではないと思う。父との対立。飛び出した田舎町に戻って
の家族の確執を乗り越えていく話。
ハンクが弁護士であり、父が判事であったのに犯人として告発されているという
状況がちょっと面白いかも。親子喧嘩なのに法律のプロ同士で大変。
しかし最愛の妻を亡くし年老いた父。
少しずつ明らかになる過去。何故彼らは断絶したのか。

三人兄弟で、生真面目そうな長男グレン、次男のハンク、三男デールはちょっと
発達障害か何かなのかな?いつもカメラを持っていてちょっとだけ普通の人より
は遅れている感じ。でも穏やかで優しくてって感じ。まーそういうタイプを天使
にしちゃうっていうのもありがちっちゃーありがちなんだけど。大袈裟さが
なくて私は嫌な感じではなかったなあ。三男くんがいろいろカメラでとってる
こととか、家族の過去のビデオとかうまく話しに活かされていたし。
兄弟がちびっこな頃の家族仲良しのビデオが残ってる。だから三男くんは今、
カメラをお守りにして生きてるんだなあと思う。

法廷でひき逃げは故意の殺人かどうか、を争うわけだけど、頑固な父は素直に
息子に弁護を頼まないし、仕方なく頼んでも言うとおりにしない。困った依頼人
である。それでも、父の現状を知り、過去を語り、二人は近づいていく。
癌であることがわかるんだよね。治療の薬の副作用で、記憶障害が起きたり、
嘔吐や妄想が出たりする。
夜中に叫んじゃう父とか、倒れたり漏らしたりする父とか、それを戸惑いながら
も助けるハンク。すごくいい。
厳格で立派な人物として生きてきた父もまた、ただの人間であり老人であり、
っていう、厳しくも切ない現実が見える。それでも誇り高き父よ。

兄が、将来有望で期待の星の野球選手だったのに、事故で腕を痛めて今はただ
のおっさんになっている。その事故っていうのが、やんちゃな17歳だった
ハンクがハイになって起こした車の事故だったってわかる。
もー。
そりゃもうどれほどの絶望と怒りだったかと思う。
お兄ちゃんはさー家族の誇りでどれほど大事にされてたかと思う。
でも次男ハンクはそれでちょっとやさぐれたりしてたのもあるんじゃないかな。
お父さんに誇りに思うよって誉められたかったんだよ。でももちろんお兄ちゃん
も大好きだったはずなんだよ。はー。切ない。

元カノに再会したら実はもしかして自分の娘かも、っていう娘がいたり。
ハンクが戻った故郷は何も変わってないようでいてもちろん変わっている。
いろんなことが少しずつ明らかになって、愛してたことも大事にしてたことも
ちゃんとあるんだってわかってきて。

事件そのものは、第一級殺人容疑としては無罪になったけれども、事故死
させたことには有罪実刑、ってなったのかな。
嘆願書出て、一年たたないうちに父は刑務所から出るけれど、すぐに亡くなって
しまう。最後にハンクと釣り船にのって、最高の弁護士はお前だ、って言って。
もうほんとに。言葉少なくてもほんとに、家族の赦しはあって、じわじわと沁みる
感動でした。
ちょっとしたシーンで、直接に語ってはいないけれどその家族の物語がしっかり
あることが伝わってきた。

母親は紫陽花が好きだったのね。倒れていたのも紫陽花の側。
ハンクはシカゴの自宅の庭に紫陽花を植えてて、水遣りしてた。お母さん大好き
だったんだなあってわかる。
ロースクールでは首席とっての卒業。父に卒業式に出てほしかった、とか。
どんだけの努力をしたんだろうと思う。たぶんもともと頭はいいんだろうけど、
少年院送りになったあとなんだよね。父に認められたくて。家族への償いも
こめての必死の勉学だったんじゃないかなあ。
そして自立。

関係ないけどドラマの「スーツ」をちょっと思い出して、まだ若い頃には
生意気に手のかかる見習いやってたのかなーと想像。師匠として尊敬する弁護士
がいたみたいで、それってハーヴィみたいだったりしたのかな~。

田舎の弁護士くんが、裁判前に緊張して吐くとか、ハンクも吐くとか可愛かった。
田舎町にもそれぞれの人生があること。
小さな街での名声に拘ったかのような父の誇りは、それでも大事。
最後、裁判所の国旗が半旗になっていたことにじんわり泣いた。

大袈裟じゃなく声高じゃなく、小さな一つ一つのシーン全部に奥行きがあると
思いました。シリアスでありユーモアあり。いいバランスで私はすごく好き
だった。見に行ってよかったなあ。
判事の父を演じたロバート・デュバルはアカデミー賞で候補になったみたい。
なるほどです。とてもよかった。
ふつーにかっこよかったりふざけてたりなロバート・ダウニー・Jrのいろんな
顔を堪能できたのもよかった。可愛いかっこいい~~。大満足です。

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