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映画「薄氷の殺人」

*結末まで触れています。


映画「薄氷の殺人」


1999年。石炭工場でバラバラの人体が発見された。15か所もに
散らばった死体。
捜査にあたっていたジャンは容疑者を確保しようとしていた時に発砲され、
仲間は死亡、自分も怪我を負ったあげく事件から退く。
それから5年。よく似た事件が起こっていることを知ったジャンは再び事件
に関わろうとする。最初の被害者の妻、ウーの身に迫るうちに、ジャンもまた
彼女にひかれていく。

中国。北の方なんですね。最初は夏だったけれども、5年後の舞台は冬で、
トンネルを抜けると雪国になり時間がたっていた、という最初の方のシーン
うつくしかった。そしてずっとずっと寒そうで、凍えて、きしむ足音とか
いろいろな街や世界のノイズが耳につく映画だった。
どの場面も全く美化しようとしていない、どうしようもない街の景色で、
それがとても美しい。あのうつくしさを成立させている力って何なんだろう。
不思議な感触だった。

バラバラ連続殺人事件を追うミステリ。というつもりで見に行ったんだけど、
かなり芸術よりなのか?? と、見ているうちにいろいろとわけのわからない
気分に陥る。なんかシュール。突然アパートの廊下に馬がいたりするんだけど
それは「気にしないで」って、気にしなくていいのか? ヘンさがちょっと
リンチ風味だったりするような。クリーニング店の店主のその頭ヅラですか
ヅラですよね?でもそこに別になにも触れるでもなく、でもヅラですよね??
なんだろー。ヘンなダメおやじって記号??

主人公、か。元刑事ジャン。登場の時から元妻に最後の一回お願いしててなお
未練たらたらでこいつダメ男だ。。。とウンザリするような男で、それが最後
までかっこいいと見える瞬間がなくって凄かった。
事件を追うのか、たんにウーにひかれてずぶずぶになっているのかよくわからない。
大抵映画一つ見てる間に見慣れて、いいなとかかっこいいなと思うものだと
私は思ってきたけど、ジャンはなー。最初から最後までちっともかっこよく
なかった。踊っても。何してても。結果何故かうまいこと事件解決して、ウーと
その夫が、って犯人わかったジャンの手柄だとしても。かっこよくない。
切なくなったけど。
ウーは最初から最後まで儚くやるせなく、美しい自分を持て余すしかない
不器用な哀しい魔性の女で、ほっそくて不幸で、哀しかった。寒そうだよー。

原題は「白昼の花火」らしい。そのとおりのラスト切なかったです。それが
ぶつっと途切れてしまうのも。音楽も。
全体的に淡淡として説明もセリフも少なくて、でもびっくりしたり笑っちゃったり
苦しくなったり。なんだかよくわからないと思いつつも、かなり私は楽しんだと
思う。これはどういうのかなあと予告で気になってたし、見に行ってよかった。
不思議でした。

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