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『三島由紀夫と司馬遼太郎』(松本健一/新潮選書)

『三島由紀夫と司馬遼太郎』(松本健一/新潮選書)

「美しい日本」をめぐる激突


松本健一さんの対談を聞いたことがある。司馬遼太郎と三島由紀夫がほぼ同年代
で、三島の死のあとそのことへの文章を求められて書いたものがある、という
のを、それまで私は知らなかった。国民的大衆小説作家と、国民的純文学作家。
私がどっちも大ファンで、でも全く別物のように思っていたけれども、二人は
ほぼ同時代に、売れっ子とはいえまだ今ほど伝説的巨大な存在ではない作家と
して活躍してたんだなあとなんだか感動した。
立場は大いに違う。
ロマン主義的に芸術至上主義的に、現実には目を閉ざし、自分の信じた美しい
ものに準じて狂気の死をとげた三島。合理主義を愛し現実を見つめた司馬。
三島の死の直後に始まった「街道をゆく」シリーズは、各地の風土歴史をたどり
ながら、そこにまつわる天皇伝説に触れないという特徴があるという。
「坂の上の雲」でも御前会議のシーンはないという。
その指摘と発見は凄い。

松本さんも坂雲のドラマ制作に協力つーか、考証というかで名を連ねている。
ご本人は、このドラマに御前会議のシーンをつくらないよう言ってたらしい
けれど、ドラマにはありましたねえ。ドラマ的に必要とされたのか。
私はそのシーンを見た時、あー違うのに。違うのに、と思ってしまった。

陽明学の系譜、ということで、吉田松陰の話なんかもあり。即行動、というのが
陽明学なんですね。松陰先生の狂というのはそういうもので、家族の迷惑省みず、
なんだなーと、今の大河「花燃ゆ」の感じを思ったりしました。

昭和天皇は、乃木希典に講義を受けたことがあったそうだ。なるほどー。
なんか、そういうの改めて考えると、歴史って歴史だけど地続きで凄い。
明治といい昭和といい。天皇家ってなんかもの凄いものだよなあ。

松本さんは最初はロマン主義の系譜のほうに興味があったようだけど、その後
リアリストのほうも見るようになって、後年は司馬遼太郎とも付き合いが
できたらしい。そういう裏話的なことを知ったのも面白かった。
松本さんの訃報を聞いて、この本をちゃんと読んでみてよかったです。
とても面白かった。
凄く丁寧にわかりやすく書かれているので、三島と司馬遼太郎かあ、という
私にとっては新鮮かつ興味深いところがクリアにわかってよかった。

なんだかいろいろと愛国だの美しい日本だののもやっとする今の日本を考える
助けになるような気もした。なんとなく。
どうバランスをとればいいのかねえ。

 序章 二つの「日本」
 第一章 二人にとって「戦後」とは何か
 第二章 一瞬の交叉
 第三章 ロマン主義とリアリズム
 第四章 三島の「私」と司馬の「彼」
 第五章 西郷隆盛と大久保利通
 第六章 『坂の上の雲』の仮構
 第七章 陽明学―松陰と乃木希典
 第八章 反思想と反イデオロギー
 第九章 戦後的なるもの
 第十章 人間の生き死
 あとがき

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