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『悪童日記』(アゴタ・クリストフ/ハヤカワepi文庫)

*結末まで触れています。


『悪童日記』(アゴタ・クリストフ/ハヤカワepi文庫)


ぼくらは<大きな町>から<小さな町>へやってきた。戦争が激しくなり、
食べさせることのできなくなったおかあさんのおかあさんのところへ。
おばあちゃんは村の人から魔女と呼ばれている。
おばあちゃんはぼくらを牝犬の子と呼ぶ。
ぼくらは自分たちで学習をし、作文を書く。事実だけを。ぼくらだけの練習を
していろいろなことに慣れていかねばならない。おばあちゃんを手伝って働き、
必要なものはどうにかして手に入れる。
ぼくらは泣かない。ぼくらは忘れない。

前々から評判のよさは知ってて気になりつつ、でもなんだか手が出せなかった。
去年映画を見て、双子の「ぼくら」がくっきりうつくしくて、3部作だよな、
続き知りたいと思って、やっと読むことにした。
本では、現実の世界としての具体的な地名や名前は排除されているけれども、
まあ、ハンガリーなんですね。第二次世界大戦の頃なんですね。
映画だともう見えるようにつくっていたし、双子の記録だけじゃなくてもう
ちょっと説明が補足されていたんだなあと、本を読んで映画がわかりやすく
作られていたんだなあと思った。あと性的なところは映画でも結構あったけど
本だともっとこんなにあったのねと思いました。それでもやっぱり映画は
すごくよかったなと思う。

本はぼくらの作文ということなので、本当に淡淡と、ぼくらの事実が短く
書かれている。ぼくらは感情的な曖昧な言葉は使わないと決めて作文して
いるので、本当に、ぼくらの見た事実が淡淡と積み重ねられている。
悲惨なことも酷いことも、哀しいことも嬉しいことも、好きも嫌いもただ
書かれた事実の背後に隠されている。
重苦しさは読んだあとからじわじわときいてくる。読むこと自体は全然
難しいことはなくてさっくり読み終わってしまったんだけど、本を閉じた
あとから自分が潰れそうになる。

映画だと、最後にぼくらが別々の国にわかれるところ、最後の試練みたいに
もう少し演出されていたけど、本だとほんとうにぱっと一行で去っていく。
以前学校で別のクラスになっただけで気絶しちゃうほど一心同体なぼくら
なのに。このあとぼくらはどう生きるの? ぼくらはひとりでも二人なの
だろうか。続きが読みたい。

昔最初にこの本を知った時には、戦時下の子ども、みたいな児童文学的な
ものかと思ってた。でもそうでもないらしいとわかってからも、でも子ども
の話だよなあと思ってた。おそるべき子どもたち。そんな勝手な思い込みを
していた私がバカでした。映画を見てよかった。読んでみてよかった。

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『三島由紀夫と司馬遼太郎』(松本健一/新潮選書)

『三島由紀夫と司馬遼太郎』(松本健一/新潮選書)

「美しい日本」をめぐる激突


松本健一さんの対談を聞いたことがある。司馬遼太郎と三島由紀夫がほぼ同年代
で、三島の死のあとそのことへの文章を求められて書いたものがある、という
のを、それまで私は知らなかった。国民的大衆小説作家と、国民的純文学作家。
私がどっちも大ファンで、でも全く別物のように思っていたけれども、二人は
ほぼ同時代に、売れっ子とはいえまだ今ほど伝説的巨大な存在ではない作家と
して活躍してたんだなあとなんだか感動した。
立場は大いに違う。
ロマン主義的に芸術至上主義的に、現実には目を閉ざし、自分の信じた美しい
ものに準じて狂気の死をとげた三島。合理主義を愛し現実を見つめた司馬。
三島の死の直後に始まった「街道をゆく」シリーズは、各地の風土歴史をたどり
ながら、そこにまつわる天皇伝説に触れないという特徴があるという。
「坂の上の雲」でも御前会議のシーンはないという。
その指摘と発見は凄い。

松本さんも坂雲のドラマ制作に協力つーか、考証というかで名を連ねている。
ご本人は、このドラマに御前会議のシーンをつくらないよう言ってたらしい
けれど、ドラマにはありましたねえ。ドラマ的に必要とされたのか。
私はそのシーンを見た時、あー違うのに。違うのに、と思ってしまった。

陽明学の系譜、ということで、吉田松陰の話なんかもあり。即行動、というのが
陽明学なんですね。松陰先生の狂というのはそういうもので、家族の迷惑省みず、
なんだなーと、今の大河「花燃ゆ」の感じを思ったりしました。

昭和天皇は、乃木希典に講義を受けたことがあったそうだ。なるほどー。
なんか、そういうの改めて考えると、歴史って歴史だけど地続きで凄い。
明治といい昭和といい。天皇家ってなんかもの凄いものだよなあ。

松本さんは最初はロマン主義の系譜のほうに興味があったようだけど、その後
リアリストのほうも見るようになって、後年は司馬遼太郎とも付き合いが
できたらしい。そういう裏話的なことを知ったのも面白かった。
松本さんの訃報を聞いて、この本をちゃんと読んでみてよかったです。
とても面白かった。
凄く丁寧にわかりやすく書かれているので、三島と司馬遼太郎かあ、という
私にとっては新鮮かつ興味深いところがクリアにわかってよかった。

なんだかいろいろと愛国だの美しい日本だののもやっとする今の日本を考える
助けになるような気もした。なんとなく。
どうバランスをとればいいのかねえ。

 序章 二つの「日本」
 第一章 二人にとって「戦後」とは何か
 第二章 一瞬の交叉
 第三章 ロマン主義とリアリズム
 第四章 三島の「私」と司馬の「彼」
 第五章 西郷隆盛と大久保利通
 第六章 『坂の上の雲』の仮構
 第七章 陽明学―松陰と乃木希典
 第八章 反思想と反イデオロギー
 第九章 戦後的なるもの
 第十章 人間の生き死
 あとがき

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映画「ジャッジ」

*結末まで触れています。


映画「ジャッジ」

裁かれる判事
という副題がついていて、「父は犯人なのか」というコピーもあり、法廷もの
かと思ってました。法廷ものであり、家族の物語でありました。

ロバート・ダウニー・Jr目当てで見に行く~という気軽な感じだったのだけど、
思っていた以上にとてもよかった。

金目当ての鼻持ちならない敏腕弁護士であるハンク・パーマー。母が亡くなった
知らせが入り、20年ぶりに故郷に戻る。何も変わってない小さな街。その街の
判事として長年つとめてきた厳格な父、ジョセフ・パーマー。
母の葬儀を済ませ、シカゴに戻ろうとしていたところに、再び電話。父が警察に
つれていかれたという。容疑はひき逃げ。殺人。

ことさらに目新しい話ではないと思う。父との対立。飛び出した田舎町に戻って
の家族の確執を乗り越えていく話。
ハンクが弁護士であり、父が判事であったのに犯人として告発されているという
状況がちょっと面白いかも。親子喧嘩なのに法律のプロ同士で大変。
しかし最愛の妻を亡くし年老いた父。
少しずつ明らかになる過去。何故彼らは断絶したのか。

三人兄弟で、生真面目そうな長男グレン、次男のハンク、三男デールはちょっと
発達障害か何かなのかな?いつもカメラを持っていてちょっとだけ普通の人より
は遅れている感じ。でも穏やかで優しくてって感じ。まーそういうタイプを天使
にしちゃうっていうのもありがちっちゃーありがちなんだけど。大袈裟さが
なくて私は嫌な感じではなかったなあ。三男くんがいろいろカメラでとってる
こととか、家族の過去のビデオとかうまく話しに活かされていたし。
兄弟がちびっこな頃の家族仲良しのビデオが残ってる。だから三男くんは今、
カメラをお守りにして生きてるんだなあと思う。

法廷でひき逃げは故意の殺人かどうか、を争うわけだけど、頑固な父は素直に
息子に弁護を頼まないし、仕方なく頼んでも言うとおりにしない。困った依頼人
である。それでも、父の現状を知り、過去を語り、二人は近づいていく。
癌であることがわかるんだよね。治療の薬の副作用で、記憶障害が起きたり、
嘔吐や妄想が出たりする。
夜中に叫んじゃう父とか、倒れたり漏らしたりする父とか、それを戸惑いながら
も助けるハンク。すごくいい。
厳格で立派な人物として生きてきた父もまた、ただの人間であり老人であり、
っていう、厳しくも切ない現実が見える。それでも誇り高き父よ。

兄が、将来有望で期待の星の野球選手だったのに、事故で腕を痛めて今はただ
のおっさんになっている。その事故っていうのが、やんちゃな17歳だった
ハンクがハイになって起こした車の事故だったってわかる。
もー。
そりゃもうどれほどの絶望と怒りだったかと思う。
お兄ちゃんはさー家族の誇りでどれほど大事にされてたかと思う。
でも次男ハンクはそれでちょっとやさぐれたりしてたのもあるんじゃないかな。
お父さんに誇りに思うよって誉められたかったんだよ。でももちろんお兄ちゃん
も大好きだったはずなんだよ。はー。切ない。

元カノに再会したら実はもしかして自分の娘かも、っていう娘がいたり。
ハンクが戻った故郷は何も変わってないようでいてもちろん変わっている。
いろんなことが少しずつ明らかになって、愛してたことも大事にしてたことも
ちゃんとあるんだってわかってきて。

事件そのものは、第一級殺人容疑としては無罪になったけれども、事故死
させたことには有罪実刑、ってなったのかな。
嘆願書出て、一年たたないうちに父は刑務所から出るけれど、すぐに亡くなって
しまう。最後にハンクと釣り船にのって、最高の弁護士はお前だ、って言って。
もうほんとに。言葉少なくてもほんとに、家族の赦しはあって、じわじわと沁みる
感動でした。
ちょっとしたシーンで、直接に語ってはいないけれどその家族の物語がしっかり
あることが伝わってきた。

母親は紫陽花が好きだったのね。倒れていたのも紫陽花の側。
ハンクはシカゴの自宅の庭に紫陽花を植えてて、水遣りしてた。お母さん大好き
だったんだなあってわかる。
ロースクールでは首席とっての卒業。父に卒業式に出てほしかった、とか。
どんだけの努力をしたんだろうと思う。たぶんもともと頭はいいんだろうけど、
少年院送りになったあとなんだよね。父に認められたくて。家族への償いも
こめての必死の勉学だったんじゃないかなあ。
そして自立。

関係ないけどドラマの「スーツ」をちょっと思い出して、まだ若い頃には
生意気に手のかかる見習いやってたのかなーと想像。師匠として尊敬する弁護士
がいたみたいで、それってハーヴィみたいだったりしたのかな~。

田舎の弁護士くんが、裁判前に緊張して吐くとか、ハンクも吐くとか可愛かった。
田舎町にもそれぞれの人生があること。
小さな街での名声に拘ったかのような父の誇りは、それでも大事。
最後、裁判所の国旗が半旗になっていたことにじんわり泣いた。

大袈裟じゃなく声高じゃなく、小さな一つ一つのシーン全部に奥行きがあると
思いました。シリアスでありユーモアあり。いいバランスで私はすごく好き
だった。見に行ってよかったなあ。
判事の父を演じたロバート・デュバルはアカデミー賞で候補になったみたい。
なるほどです。とてもよかった。
ふつーにかっこよかったりふざけてたりなロバート・ダウニー・Jrのいろんな
顔を堪能できたのもよかった。可愛いかっこいい~~。大満足です。

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『ノボさん』(伊集院静/講談社)

『ノボさん』(伊集院静/講談社)

小説 正岡子規と夏目漱石

べーすぼーるに夢中のノボさん。東京の予備門時代あたりから死ぬまでの小説
でした。夏目漱石との友情メインなので、真之さんはちらっとしか登場しない
なあ。古白なんかと向島に逗留して七草集を仕上げようとひと夏過ごす、そこ
で仄かな恋。青春ですね。

てことで、なんとなく読んでみたけれども、んー、まあこういうものかという
感じ。あまり目新しい感じはなくて、ちょこっと恋話があったりするのがいい
のかな? でも私はあんまりそこは求めてないので、まあ、なるほど、でした。
のちの碧悟桐少年がノボさんに出会って感激みたいなのはちょっと面白かった。
虚子より碧悟桐のほうが子規さん大好きって感じかなあ。どうだろう。

やはり坂雲のイメージが強烈なので物足りないと思うのと、やっぱり子規にせよ
漱石にせよ、本人たちが書き残したものが最高なので、本人が書いたもの読んだ
方が圧倒的に満足するんだよねえ。
作家を主人公にする小説って大変だなと思った。特に本人のものが今も面白く
読めるレベルの感じだとなー。私が子規や漱石に思い入れがありすぎる?いや
そうでもないか。どうなんだろー。
どうせなら松山での漱石との同居暮らしをもっとみっしりと書いて、って思う
のは私の間違った期待ですねはい。

すんなりさらりと読める青春小説でした。

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『繊細な真実』(ジョン・ル・カレ/早川書房)

*結末まで触れています。


『繊細な真実』(ジョン・ル・カレ/早川書房)

外務省でこれといって目立つことのない地道なキャリアを積み重ねてきた男。
ある日気鋭の若き大臣に呼び出されて、君の名前はポールだ、と決められる。
極秘の作戦に、大臣の耳目として参加してほしいという要請だった。
ポールは作戦を見届け、だが実際何がどうなっているのかはっきりしないまま
終わる。そして次のキャリアへ。
トビー・ベルは大臣の秘書官として勤務していた。まだ若く野心あるトビーは
密かに大臣の行動を監視する中、不審な動きに気づく。
だがどうすることもできないまま移動。
そして三年後。その<ワイルドライフ作戦>で実は無関係な女と子どもの血が
流されたということを、ポールは知ることとなった。

ル・カレの新作。
今この国際情勢の中という感じが凄い。ル・カレじーさまは80すぎてるのに
まだこういうキレキレな感じが書けるんだ。ほんとに自分でー?もはや書くの
と呼吸するのと同じみたいになっちゃってたりするのかなあ。不思議。

現在形で淡淡とつづられていく出来事。臨場感。やっぱり最初の方は何が起きて
いるのかわからないし人物たちがなんだかわからないし、ただ黙々と読み進める
しかなくてややつらい。でもそう油断してたら、はっとびっくりして息をのむ
シーンがきた。もうホント、文字通り本当に息をのんでしまった。
クラブにジェブが現れたところ。キットと同じくびっくり。ああ。油断ならない
んだったよほんとに。

それから、ジェブがあの作戦行為は完全に失敗だったという話をして、キッド
とその妻はそんな作戦を隠しておくなんていけない、となって、事件を明るみ
に出そうとするんだけど。トビーも協力して。
いろいろくねくねと邪魔されたりジェブは殺されたり、誰もが彼らをやめるよう
説得を試みたり。そのくねくねとした感じが凄く面白かった。リアルっていうか
そういうことのリアルなんて私は知らないんだけれども。リアルだと思わせられ
る。凄い。

でもそんなのほっときなよ、とも私は思う。キットもトビーも自分の身の安全
だけ考えればいいじゃない、と思うんだけど。正義感?うーん。私がダメ人間
すぎるんだろうか。。。こういうささやかだけど一人ひとりの高潔な行為とか
凄いなあと思う。

で。トビーを諜報活動っぽいことに引き込んだ、けれど放り出したジャイルズ・
オークリーね。終りの方で突然ゲイらしいとさらっと突きつけられるんだけど。
びっくり。ジャイルズ切ない~、と、そういう視点でもう一度考え直したり、
なんかもうほんと、びっくり。いやびっくりしてる場合じゃなくて、そういう
のが当然の如くある社会と思って感動した。だから好きなんだル・カレ作品。
この突き放しっぷりにふるえる。
そのことに気づいた時にトビーがそのことを察せられなかったことに苦悩する
シーンにはうたれた。

 自分は娼婦だ。
 知らなかった。
 知っていて、彼に媚を売った。
 知らなかったが、察するべきだった。
 自分を除いて、みんな知っていた。
 そして、いちばん数多く聞こえたのは――ハンブルクからこのかた、自分は
 どうしてここまで愚かだったのか。人はみなそれぞれに欲望を満たす資格が
 あると己に言い聞かせて、結局ジャイルズひとりを傷つけてしまった。(P317)

こんなでありながら、同時に情報を考え直してたりして、もー。
そんなこんなでトビーはワイルドライフ作戦をマスコミに流した、という所で
終り。で、どーなったの、ということは何も書いてない。相変わらずやっぱり
読み終わったところで放り出される。たまらん。
はー。面白かった。

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映画「薄氷の殺人」

*結末まで触れています。


映画「薄氷の殺人」


1999年。石炭工場でバラバラの人体が発見された。15か所もに
散らばった死体。
捜査にあたっていたジャンは容疑者を確保しようとしていた時に発砲され、
仲間は死亡、自分も怪我を負ったあげく事件から退く。
それから5年。よく似た事件が起こっていることを知ったジャンは再び事件
に関わろうとする。最初の被害者の妻、ウーの身に迫るうちに、ジャンもまた
彼女にひかれていく。

中国。北の方なんですね。最初は夏だったけれども、5年後の舞台は冬で、
トンネルを抜けると雪国になり時間がたっていた、という最初の方のシーン
うつくしかった。そしてずっとずっと寒そうで、凍えて、きしむ足音とか
いろいろな街や世界のノイズが耳につく映画だった。
どの場面も全く美化しようとしていない、どうしようもない街の景色で、
それがとても美しい。あのうつくしさを成立させている力って何なんだろう。
不思議な感触だった。

バラバラ連続殺人事件を追うミステリ。というつもりで見に行ったんだけど、
かなり芸術よりなのか?? と、見ているうちにいろいろとわけのわからない
気分に陥る。なんかシュール。突然アパートの廊下に馬がいたりするんだけど
それは「気にしないで」って、気にしなくていいのか? ヘンさがちょっと
リンチ風味だったりするような。クリーニング店の店主のその頭ヅラですか
ヅラですよね?でもそこに別になにも触れるでもなく、でもヅラですよね??
なんだろー。ヘンなダメおやじって記号??

主人公、か。元刑事ジャン。登場の時から元妻に最後の一回お願いしててなお
未練たらたらでこいつダメ男だ。。。とウンザリするような男で、それが最後
までかっこいいと見える瞬間がなくって凄かった。
事件を追うのか、たんにウーにひかれてずぶずぶになっているのかよくわからない。
大抵映画一つ見てる間に見慣れて、いいなとかかっこいいなと思うものだと
私は思ってきたけど、ジャンはなー。最初から最後までちっともかっこよく
なかった。踊っても。何してても。結果何故かうまいこと事件解決して、ウーと
その夫が、って犯人わかったジャンの手柄だとしても。かっこよくない。
切なくなったけど。
ウーは最初から最後まで儚くやるせなく、美しい自分を持て余すしかない
不器用な哀しい魔性の女で、ほっそくて不幸で、哀しかった。寒そうだよー。

原題は「白昼の花火」らしい。そのとおりのラスト切なかったです。それが
ぶつっと途切れてしまうのも。音楽も。
全体的に淡淡として説明もセリフも少なくて、でもびっくりしたり笑っちゃったり
苦しくなったり。なんだかよくわからないと思いつつも、かなり私は楽しんだと
思う。これはどういうのかなあと予告で気になってたし、見に行ってよかった。
不思議でした。

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『暗黒寓話集』(島田雅彦/文藝春秋)

『暗黒寓話集』(島田雅彦/文藝春秋)


8つのお話が入った短編集。「はじめに」が、「いいたいことがいいにくく
なる世の中に暮らしたいなどと思う人はおそらくいない。なのになぜ社会は
そちらの方向へ向かってしまうのか?」という一文で始まっていて、今の日本
とか世の中のことだと思うど、昨日のフランスでの新聞社へのテロ襲撃なんか
が起こったばかりだったりしてこの文章がこわい。
多様が必要なんだよ。

 アイアン・ファミリー
 死都東京
 夢眠谷の秘密
 透明人間の夢
 名誉死民
 南武すたいる
 神の見えざる手
 CAの受難

東京郊外、多摩川沿いのニュータウン。中年、初老の男。島田さんの作品を
読み続けていてすっかりおなじみ気分の舞台。秦氏の一族の歴史だったり、
新興開発地の闇だったり、行き詰まった若者だったり。リアルな日本と地続き
のようでいて不可思議な世界。
「神の見えざる手」は雨男が年を取ってそれほど雨男でもなくなった、って、
他愛のない話。貧乏神に憑かれていた人とか。短編の中でさらに短いエピソード
が連なって、エッセイみたいでもあり、ちょっと不思議で面白かった。

暗黒寓話、っていうほど暗黒でもないと思う。でも大仰さはないのにストン、と
落ちてしまうからこわいんだろうか。
するするーと読み終わり。
多様な妄想していこう。

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『ヴァイオリン職人の探求と推理』(ポール・アダム/創元推理文庫)

*結末まで触れています。


『ヴァイオリン職人の探求と推理』(ポール・アダム/創元推理文庫)

イタリア、クレモナ。ジャンニは腕のいいヴァイオリン職人。仕事のあと、
ワインを飲みながら仲間4人で四重奏を楽しんだりする60代悠悠自適の
暮らしをしていた。
ある晩、いつものように演奏を楽しんだ後、帰ったはずのトマソが家に
帰ってこないと妻から電話があった。まだ残っていたグァスタフェステと
一緒にトマソの工房へ様子を見に行ってみると、そこで彼は死んでいた。
グァスタフェステは警官。トマソは幻をヴァイオリンを追っていたらしいと
わかると、ジャンニの専門知識が必要となり協力して捜査と推理をしていく。

イタリア、イギリスなど移動しながら、ストラディヴァリの幻のヴァイオリン
を探し求める。殺人事件の推理と宝探しと組み合わさっていて面白かった。
基本丁寧語な会話の感じがすごく素敵で読みやすくてもえる~。陽気なイタリア
人というイメージよりはずっとしっとり落ち着いている。人生を楽しむ余裕と
職人の専門的な感じと親しみやすさと。ジャンニがとっても魅力的で、これは
惚れるわ~モテるわ~と納得です。

私は以前大人になってから憧れてヴァイオリン習っていたことがあり、何度か
ヴァイオリンコンサートにいってたこともあり、ヴァイオリン素敵~という
イメージがあって余計面白かったかも。でも別に何の専門知識があるわけじゃ
ないし、もっと何も知らなくても丁寧に描かれているので全然問題ない。
登場人物の魅力も話の展開の広がりもまとまりも、すごくよかった。

途中、ジャンニがかつては贋作づくりに関わっていた、というのがわかって
グァスタフェステがショックを受けてたりするのが可愛かった。その意外性。
ヴァイオリン、ディーラーやコレクターの世界は凄そう、とか、職人の世界も
単純なわけないとか、面白い。
最後には幻のヴァイオリンを手にして、そして、ジャンニは最もふさわしい
演奏家の手に渡す。音楽の才能とか、めぐりあわせの奇跡とか、そういう
音楽的なうつくしさも存分に描かれていて素敵だった。

かつて富士見シリーズにもえもえし、のだめを楽しんだそういう感じを味わう
ことができました。

ジャンニは63才で、グァスタフェステは40はじめ、くらい。この二人に
もえもえで凄く楽しかった。いい。すごくいい。ジャンニは妻と6年前死別。
もちろんジャンニは素敵なふさわしい彼女にこの物語の中で出会ってて、
あーまあそっちですよねと納得なんですけど。私の脳内ではグァスタフェステ
の片思い物語が熱かった。グァスタフェステがジャンニを凄く尊敬し慕ってる
感じがよかったし、ジャンニも息子同然に可愛がっててー。そして協力して
事件にあたる相棒でもある。すごくいい組み合わせだった~。
シリーズとして次の作品も日本での刊行も決まっているらしい。また読みたい。
楽しみです。

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『反逆の神話』(ジョセフ・ヒース+アンドルー・ポター/NTT出版)

『反逆の神話』(ジョセフ・ヒース+アンドルー・ポター/NTT出版)

カウンターカルチャーはいかにして消費文化になったか

カウンターカルチャーは流行ってしまうことによって消費のメインになってしまう。
カウンターである意味がなくなる。
そんな困惑。

アメリカ社会を、映画など参照にしながら消費中心に分析している、のかな。
がんばって読んだけど、ちゃんと読めている気はしない。読んでいる最中は
結構付箋つけてなるほどーと思いました。が、なんか、わりと、うむ、そう
ですね、という感じでした。と思ったら翻訳出たのは2014年だけど、本国の出版
は2004年、底本としたのが2005年の版、てことで、あー10年前なのかと納得。
まあ大体うん、そうですね、というくらいの感じになるかなあ。

左翼っぽいようなカウンターカルチャーって結局は内向きなことになるような
気がする。地球にやさしくとかスローライフみたいなスタイルができるのは
むしろ豊富なありあまる富と時間を持つ最高の贅沢な在り方でしょう。
社会にそれなりの秩序があるからそれに反抗してみせるポーズがありえる。
消費をやめようぜ、っていっても別の消費を生み出すだけ。うーん。
そんな感じではないかなあ。私の頭がついていけてないのか。うーん。

この本でもむしろもっと秩序や規制を、という方での提言がなされている、かな。
消費最強かなー。
たぶん私が読めてないんだと思うけど、何か新鮮という感じはなくて退屈
しながら読んだ。仕方ない。


 序章
 第一章 カウンターカルチャーの誕生
 第二章 フロイト、カリフォルニアへ行く
 第三章 ノーマルであること
 第四章 自分が嫌いだ、だから買いたい
 第五章 極端な反逆
 第六章 制服(ユニフォーム)と画一性(ユニフォーミティ)
 第七章 地位の追及からクールの探求へ
 第八章 コカ・コーラ化
 第九章 ありがとう、インド
 第十章 宇宙船地球号
 結論
 後記

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『コンプリケーション』(アイザック・アダムスン/ハヤカワポケットミステリ)

*結末まで触れてます。


『コンプリケーション』(アイザック・アダムスン/ハヤカワポケットミステリ)


父と同じ名前のリー・ホロウェイ。ある土曜日の朝、父のリー・ホロウェイが
亡くなったという知らせを受ける。
父の荷物を整理していると、気になる手紙を見つけた。5年前に死んだ弟の
ポールの死の真相について、お話したい、という申し出の手紙。プラハで待つ
その差出人の女性ヴェラのところへ、リー・ホロウェイは旅立った。

父の死、謎の手紙、それでシカゴから一気にプラハへ飛んで、そこで巻き込まれる
事件の数々。弟は歴史的価値あるルドルフ・コンプリケーションという時計を
盗み、そして消えたという。リーは弟の跡をたどるうちに、襲われたり事故に
あったり散々な目にあう。いやちょっと休んだら?とまったら?と、読んでると
ハラハラするんだけど。ぼろぼろになりながらもハリウッド映画なみにタフに
動き続けるのね。
でもなんか、あれ?事件てなんだっけ。真相ってなんなの。とわからなくなる。
右手を切断される連続殺人みたいなのも混ざってくるんだけど、それはー、
えーと、その錬金術師が作った魔法の時計?ルドルフ・コンプリケーションの
ねじを巻くのに必要、って感じなのかしら。魔法の時計?
私は結構混乱してしまった。いや、読むのは大丈夫なんだけど、世界観の混ざり
具合というか、どう基準あわせて読めばいいんだろーと思いました。

そして最後の父の手紙。
弟というのは実はリーの別人格である、みたいなことが書いてあった手紙。
リーはそれを認めない。父のほうが妄想してるという。これはー。どっちなの。
リーのほうが妄想なのか。んー。あー、タトゥーか。やっぱりポールは幻なの
かなー。もやっとしてしまって終り。むむー。
ルドルフ・コンプリケーションもどうなったかわかんないし。
プラハという街の幻という感じでしょうか。
個人的には期待したほどは面白くなかった。

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2014年まとめ

2014年まとめ。

昨年は本79冊、映画36本の感想を日記書いていました。
本少ない(^^;
自分でも読んでないなと思ってましたがほんとに少なかった。
あんまり熱心にどんどん読むような作品を見つけられなかったです。自分の
感度が落ちてるんだろう。ぐいぐい一気読み!みたいな作品よりは、なんとなく
じわじわ読み切った、というタイプの作品のほうが多かったかなあ。

あ、マンガの感想を全然書いてなかった。主にBLを、ちょこちょこ読みました。
「テンカウント」とか「10DANCE」にドはまりです。面白くてセクシーで最高。
続きが待ち遠しい早く~早く読みたい。

映画は大体月に2,3本見に行ってる感じ。このくらいのペースが自分には
いいところだろう。今年も沢山楽しみがあるねー。

今年はもうちょっとたくさん読みたい。無意味にネットでだらだらするのを
やめる。やめるったらやめる。インプットアウトプットをしましょう。
そのうち読もうリストに入れてる本を春までにさくさくこなしたいところです。

今年もよろしくお願いします。

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