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『悪童日記』(アゴタ・クリストフ/ハヤカワepi文庫)

*結末まで触れています。


『悪童日記』(アゴタ・クリストフ/ハヤカワepi文庫)


ぼくらは<大きな町>から<小さな町>へやってきた。戦争が激しくなり、
食べさせることのできなくなったおかあさんのおかあさんのところへ。
おばあちゃんは村の人から魔女と呼ばれている。
おばあちゃんはぼくらを牝犬の子と呼ぶ。
ぼくらは自分たちで学習をし、作文を書く。事実だけを。ぼくらだけの練習を
していろいろなことに慣れていかねばならない。おばあちゃんを手伝って働き、
必要なものはどうにかして手に入れる。
ぼくらは泣かない。ぼくらは忘れない。

前々から評判のよさは知ってて気になりつつ、でもなんだか手が出せなかった。
去年映画を見て、双子の「ぼくら」がくっきりうつくしくて、3部作だよな、
続き知りたいと思って、やっと読むことにした。
本では、現実の世界としての具体的な地名や名前は排除されているけれども、
まあ、ハンガリーなんですね。第二次世界大戦の頃なんですね。
映画だともう見えるようにつくっていたし、双子の記録だけじゃなくてもう
ちょっと説明が補足されていたんだなあと、本を読んで映画がわかりやすく
作られていたんだなあと思った。あと性的なところは映画でも結構あったけど
本だともっとこんなにあったのねと思いました。それでもやっぱり映画は
すごくよかったなと思う。

本はぼくらの作文ということなので、本当に淡淡と、ぼくらの事実が短く
書かれている。ぼくらは感情的な曖昧な言葉は使わないと決めて作文して
いるので、本当に、ぼくらの見た事実が淡淡と積み重ねられている。
悲惨なことも酷いことも、哀しいことも嬉しいことも、好きも嫌いもただ
書かれた事実の背後に隠されている。
重苦しさは読んだあとからじわじわときいてくる。読むこと自体は全然
難しいことはなくてさっくり読み終わってしまったんだけど、本を閉じた
あとから自分が潰れそうになる。

映画だと、最後にぼくらが別々の国にわかれるところ、最後の試練みたいに
もう少し演出されていたけど、本だとほんとうにぱっと一行で去っていく。
以前学校で別のクラスになっただけで気絶しちゃうほど一心同体なぼくら
なのに。このあとぼくらはどう生きるの? ぼくらはひとりでも二人なの
だろうか。続きが読みたい。

昔最初にこの本を知った時には、戦時下の子ども、みたいな児童文学的な
ものかと思ってた。でもそうでもないらしいとわかってからも、でも子ども
の話だよなあと思ってた。おそるべき子どもたち。そんな勝手な思い込みを
していた私がバカでした。映画を見てよかった。読んでみてよかった。

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