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『マルタの鷹』(ダシール・ハメット/創元推理文庫)

*結末まで触れています。


『マルタの鷹』(ダシール・ハメット/創元推理文庫)


私立探偵サム・スペイド。妹を探して欲しい、いう依頼の仕事を始めたが、
張り込みにつけた仲間のマイルズ・アーチャーが殺されたという知らせが
深夜に入る。依頼人のワンダリー嬢には謎が多い。後をつけまわす男。
スペイドの所を訪ねてきた男は黒い鳥を取り戻せば金を払う用意があると
申し出る。妹を探すなんていうのは嘘で、黒い鳥の像をめぐって、起きた
争いに、スペイドも巻き込まれていく。

有名だなーと思いながら、よく知らないでいました。勝手にスパイものだと
思いこんでいたんだけれども、泥棒の話だった。ブリジッド・オーショーネシー、
彼女が一番の悪女なのか。
歴史的秘宝、選りすぐりの宝石を飾られた鳥の像を奪う、つもりが、結局は
みんな騙されてました、ってことねー。本当にそんな秘宝があるのかどうか
明確になるわけでもなく、なんか、なんか、すっきりはしない。
スペイドは正義のヒーローってわけでもない。自己保身に走る。けど、そこに
生きる男としては、そりゃ自己保身しなくちゃいけないよなと思う。けど。
ブリジッドを助けるわけじゃない。まあ、助けられるような可哀想なヒロイン
じゃなくて、犯人なんで、当然捕まっちゃえばいいんだけど。清純ぶりっこ。

1930年に出たもので、江戸川乱歩が感想書いたりしてる作品なんで、
たいへんにクラッシックなのね。ブリジッドの言葉遣いなんかもいかにも。
スペイドもとりあえず女の子には「天使ちゃん」て呼びかけるよーな。
そういう古い映画な味わいを読むのは面白かった。
けど、お話としては、なんか、うーん。終りの方のブリジッド、カイロ、
ガドマンとスペイドの所に集まって、鷹の像を待つ間に誰を犯人として
警察に引き渡すか、みたいな緊迫の感じは凄く面白くてよかった。けど、そこ
に至るまでうろうろしてた間は、なかなか読みづらかった。スペイドがあまり
有能って感じでもないしな~。
ともあれこういう話だったのか、と読んで満足はした。
映画のほうが有名なのかな。映画もそのうちまともに見てみたい。ブリジッド
がどう演じられてるのが見てみたいな。


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映画「ホビット 決戦のゆくえ」(3D、IMAX)

*ネタバレかな。


映画「ホビット 決戦のゆくえ」(3D、IMAXで見た)


火の竜が街を炎で焼き尽くす。逃げ惑う人々。一人バルドは伝説の黒い矢で、
唯一の弱点である鱗の剥がれ目を射抜くことに成功した。竜の死はたちまち
知れ渡る。
破壊された街から逃れて、はなれ山へ向かう人々。
竜がいなくなり、宝と山を取り戻したトーリンは、誇り高き王としてより、宝に
執着し、人を疑う心の闇に囚われてしまった。
エルフが軍勢を率いて到着し、かつて奪われた宝を返すよう迫る。戦いが始まる
かと緊迫した中、闇の勢力、アゾクが率いるオークの軍勢がやってくる。エルフ、
ドワーフ、人間、オークやトロール闇の軍、戦いが始まった。

いきなり続き!から始まるので、最初、あれ、誰だっけこれ、とか思っている
うちに、スマグウが炎吐きまくって町が壊滅。でもわりとあっさり矢で殺された。
竜退治はほんのオープニング扱い。
もーねー!エルフの軍勢うつくしい!
ドワーフ重い!
闇の軍勢コワイ!!!ぎゃー!
その戦いが凄くて凄くて、かっこよくって怖くて、ずーっとドキドキハアハア
しながら見た。
今回、初めてIMAXで見たんだけど、スクリーンが大きい~~~。3D飛び出す~。
どどーーん!と穢れの王のドアップも目の前に迫るわけですよ。ぎゃー。
私は3Dはあんまり好きじゃないんだけど、もしも3D見るんならIMAXがいいなあ
と思いました。あんまり暗くなかった。音は体感する。ちょっと前の方で見た
ので、ほんっとーに視界いっぱい世界に入り込む。もうちょっと後ろの席にした
ほうがよかったのかなーと思ったけど、ともかく興奮満足しました。
私、ずらーっと整列勢ぞろいした大軍勢が、睨みあった末に行けーっ!となって
先陣がぶつかり合うまでの流れが大好き!かっこいいい~!
鮮やか~!でした。素晴らしい!

広大な絶景も、その中での激闘も凄い。一対一も、一対多も、ガツンガツン殴り
あうのも、ひらひらと飛び交うのも、全部かっこよかった。
なんかもう、話は大体でいっか! この大迫力目の当たりにすれば!

アーケン石を探すトーリンに、ビルボはそれを隠している。言い出せなくて、
渡すわけにいかなくて、気まずい、みたいな感じで無言でいるのがめちゃ可愛い。
さすがビルボ。可愛い。可愛い。
お土産にどんぐりを持ってるのをトーリンに見せた時にはきゅんときた。
一瞬トーリンもまっとうに戻るのかと思ったよ。
結局アーケン石はエルフに渡したままかな。指輪の時に何か出てきたっけ?
よくわからない。。。

そしてガンダルフは毎度毎度、わりと、かなり、頼りにならないよね!
今回も奥方の力でなんとかなったような。奥方はこわくてかっこよくて美しい。
そして白のサルマン!
まだ名前もない、って言われてたサウロン! わりとあっさり退けられていた。
まだまだ影なのねー。指輪も遠いしねー。嗚呼。

レゴラスは今回はレゴラス無双ってほどでもないかな。でもやっぱりひらひらと
かっこよかったです。
イケメンドワーフはみんな死んでしまった。。。
それにしても、タウリエルはキーリとレゴラスと、二人のイケメンを命がけに
させるほどのいい女なんだろうか? それが一番釈然としなかった。。。まあ
わりとあの世界は女子不足な感じだから仕方ないのか。。。んむー。

最後レゴラスが北へ行け、スライダーと呼ばれている男、とか言われてたのは
あれ馳夫さん、アラゴルンのこと、だよね? 次の旅へつながる、と思ったの。
ああしてドワーフ嫌いになりこじらせたレゴラスが、次の旅ではギムリと段々
仲良くなっていくのね、と思うと胸熱。

ラストはホビット庄へ帰ってきたビルボ。そして時は流れ、111歳の誕生日。
古い友人が訪ねてきて、という、「ロード・オブ・ザ・リング」の始まりへ
繋がって終り。
エンドロールの歌の間、ずうっと涙が止まらなかった。
この遙かな旅の時間を共にしてきたと、思うから。
ファンタジー的な物語は好きじゃないなあと思っていたんだけど、この映画に
出会ったときの衝撃は凄かった。すっかりどっぷりはまって、はるばる13年?
リアルタイムで映画見に行って毎回凄いなあ~と思って、面白くて、共に旅して
きてよかった。
行きて帰りし物語。
ひとつの旅は終り、また別の旅が始まる。これからフロドの旅が。あの辛い旅
が始まるんだなあと思うと、ぞくぞくします。

すぐにも指輪物語を見直したい。6作全部をずずーっと見たい。
ほんとなら、これ見に行く前に、今までのおさらいをしていったほうがよかった
よなーとやや反省。
それでも大満足でした! 見に行ってよかった! 終わってよかった!
ありがとうトールキン! ありがとうピーター・ジャクソン監督!
物語の力は凄いね。

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『兄の殺人者』(D・M・ディヴァイン/創元推理文庫)

*結末まで触れています。


『兄の殺人者』(D・M・ディヴァイン/創元推理文庫)

霧が深くまるで視界の効かない夜。兄の電話でオリバーからの電話でサイモン
は共同経営の弁護士事務所へ呼び出された。いつもよりずっと時間がかかって
やっと到着したオフィスは静まり返っていた。兄は、死体となって倒れていた。

これは1961年に出たものだそうです。公募の小説でクリスティが絶賛したとか。
大学教員を対象にした探偵小説コンクールに応募したけど、教員ではなく事務員
だったから受賞はしなかった。けど、優れていたので出版はされた。ってこと
らしい。そんな限定的なコンクールがあったのね。

本格的、というのか、サイモンが地道にアリバイあたって推理してって、
何度か間違った方向へ行きつつ最後には真相にたどり着く。
事故によってかつての美貌を失った兄嫁とか、素晴らしい恋愛の果てに結婚した
はずの妻とのすれ違いによって離れてしまったサイモンとか、家族問題が結構
深刻。兄嫁マリオンひどいでしょー。サイモンの家庭まで壊しちゃうなんて。
そんなこんなのいろいろ問題で犯人はだれか、っていうのがあちこちして、でも
まあそんなに驚愕するってほどのこともなくて、ふむふむ、というくらいの
テンションで読み終わり。最初は頼もしい協力者だと思っていた秘書ジョイス
の正体が実は!っていうのは、私は明かされるまでわかんなくて、面白かった。
んん~、途中でアリバイがこじつけ臭いとか気づくべきだったんだろうか。

なんか、サイモンいいやつだな~ということで終わり。リンダと仲直りする、
だろう、ということだよね。自覚ないままにモテていたようだから、きっと
かなりハンサムなはず、と妄想しながら読んだけど。
敢えてシリーズ探偵にはしない、という著者のスタイルらしく、これはこれで
終りでまあいいかと思う。シリーズは途中から読むとかちょっとメンドクサイ
感じがするから、そういうスタイルっていうのはいいなーと思う。
でもたぶんまあ、この作者のはもう読まない、かなー。もう一冊くらい読んで
みてもいいかなあ。ほどよく読める感じでよかったです。

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映画「ゴーン・ガール」

*ネタバレしてます。


映画「ゴーン・ガール」

ニックとエイミーは結婚五年目。結婚記念日の朝、エイミーの姿が消えた。
エイミーを探す情報を求めるニックだったが、次第に容疑はニックへ向かう。
仲のいい夫婦だったはずの二人の関係はいつしか変化していた。
エイミーは何処へ消えたのか。ニックの疑いは? 捜査が進むにつれて見えて
くる結婚生活。

ニックをやってるベン・アフレック。普通にもっさり冴えない感じがいい。
ロマンチックに恋人やってる時にはちょっと素敵、で、でも今はダメ男で。
エイミーは、ロザムンド・パイク。主演女優賞かみたいな評判らしいけど、
納得。どんどん明らかになるエイミーのいろんな顔がお見事。完璧な妻、
夫を恐れるようになる妻、逃亡者になっている間にはだらしなく平凡すぎる
ダサダサな悪女。サイコパス? 周到な計画を巡らせ躊躇わず実行する迫力。
実はエイミーの失踪は彼女自身の計画だったのだー。小娘と浮気している、
昔と違うダメ夫になったニックをはめて犯人にしたてる。
マスコミや警察への印象操作とか凄い。
そんなにうまくいくかねー? しかし高学歴で賢い妻がひまをもてあまし
悪巧みを思いついたらぼさっとした夫なんて簡単に陥れられる、かも、と、
思ってしまうほどにエイミーが巧妙。怖い。
んでも、エイミーも途中でチンピラみたいな相手にお金盗られちゃって。賢い
だけじゃダメなのね、とかちょっとおかしかったりして。
でもそこから次のターゲットとか、そのへんアドリブ計画だよね?凄いわ。
エイミー。
エイミー。
アメイジングエイミー。

彼女の母親かな? 完璧なエイミーという、絵本?か、児童文学かなんかの
作家みたいで、その本の中のことと現実の彼女はチガウって感じで、エイミーに
とっては嫌なこと、だったみたいな感じなんだけど、結婚はそこから脱出できる、
っていうきっかけだったのかなあ。エイミー自身ももちろん素晴らしい女性なん
だけど、NYでの生活ができなくなって、田舎にひっこんで、思い描いていた
結婚生活じゃなくなって。理想的夫ニックではなくなって浮気までされて。
我慢できなかった。離婚すればいいじゃん、て思うんだけど、それも嫌なのねー。
エイミー。エイミー。素晴らしい女性なだけにコワイ。
周りの人も状況も支配しなくては気が済まない、のか。

アップになっても。目をのぞき込んでも。エイミーの心が見えない、っていう
感じが凄い。エイミーの企みに気づきそうな刑事も、手を出せない。ニックは。
流される。気づいて抗おうとしているのに、できない。できないかねえ。でも
できないんだなあと思わせる感じが凄い。
双子の妹、マーゴもなあ。うーん。
マーゴは、結婚してないのか。ずっと冴えない田舎暮らしなのか。んー。
マーゴも、なんか、大丈夫かと思う。唯一の良心というか、まともさいどの
人間だと思うけど、けど、なんか、大丈夫かと思う。

二人の子どもは、無事生まれるんだろうか。そしてまた、エイミーはその子ども
を支配するのだろう。理想的な子どもに。アメイジングエイミーとして、きっと
母親と同じことをする。
マスコミ酷い、って思うけど、それを操ることができれば、強くなれる。こわい。
ほんと最後まで、どーなっちゃうんだどーするんだなんなんだそれでいいのか~
えええええ~、と、すっかり引き込まれました。
面白かった。

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映画「悪童日記」

*結末まで触れています。


映画「悪童日記」

戦時下のハンガリー。双子の兄弟は祖母のところへ疎開させられた。
母親とは二十年疎遠だった祖母は、村はずれに一人、魔女と呼ばれながら
暮らしていた。
必ず迎えに来る、という母と別れ、祖母の仕事を手伝いながら強くなる訓練を
しながら生きる双子。彼らを守ってくれる人は誰もいない。

本を、ずっと前からいつか読もうと思っている。けれど、なんとなく手を付け
られなかったんだけど、今回映画化の写真を見て、うつくしい双子の兄弟の表情
にひきつけられた。強い目。絶望を飲み込んでいるみたいな美しい双子。
ハンガリー中の学校をリサーチして見つけたらしい。演技経験はゼロ。でもこの
双子がただそこにいるだけで成り立つ。
たまにある映画の奇跡。今この作品でこの双子の姿を永遠にとどめてくれて
ありがとう監督。淡々と残酷さ過酷さの中に放り出された双子の兄弟がいる。
時に彼ら自身が死の天使になるけれど、けど、子どもである双子。
大人に捕まれて殴られて引き離されそうになって必死に抵抗してるシーンが
辛かった。全身で抵抗するけれどどうしようもなく子どもでね。辛い。

彼らを守る大人がいない。
世の中から隔絶した祖母の家。祖母も狂ってるし。いや、戦時下、もうすでに
世界全部が狂ってるような。
どのシーンも淡淡と過酷。
でも童話めいたうつくしさも確かにある。祖母が魔女と呼ばれる変人でこわいのも
どこかファンタジックに思わせる曖昧さもあって、不思議。
酷いし、怖いし、哀しいし、悲痛なんだけれども、うつくしい。
どうしてだよ。
父も母も、双子の助けになれない。
最後の訓練は別れる訓練。双子は互いが引き離されることが死ぬほど辛いのに、
別れて生きようとする。
国境をなんで越えていかなくてはいけないのかわからない。けれど、父の死体
を踏み越えて、後にして、別れて生きる決意は、希望なんだろうか。
希望なんて知らない彼らは絶望も知らないのかもしれない。

何も言う言葉はない。
この映画に出てくる人々には名前もない。
ただただ、この映画を見てよかった。
本も、読まねばと思う。3部作らしいので、全部。この絶望の距離と美しさは
本ではどんな風なんだろう。どんな風に彼らは生きているんだろう。
双子素晴らしかった。

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