« 映画「天才スピヴェット」(3D、字幕) | Main | マラリー。 『ヴォカリーズ』批評会。 »

『刑事たちの四十八時間』(アレックス・グレシアン/創元推理文庫)

*具体的内容、結末まで触れています。


『刑事たちの四十八時間』(アレックス・グレシアン/創元推理文庫)


炭鉱の村、ブラックハンプトン。1890年。三月、まだ雪だまりに足をとられ、
寒さが厳しい。
ロンドンからウォルター・ディ警部補とネヴィル・ハマースミス巡査部長は
この村で一家3人が消えた事件捜査の応援のために呼ばれてきた。到着して
みれば、村には謎の病気が流行っていて多数の村人が苦しんでいる。村の巡査
は一人で何もできず、宿で出された食事には薬がもってあった。
吹き荒れる雪嵐。
秘密めいた村人たち。子どもたち。ディたちがもらった時間は二日間。


シリーズの2作目。前は三日間だったのが今度は二日間ですね。次は24になる
のかなw 前作と事件はまったく別物だし登場人物の共通はあるけど全然これ
一冊でも問題ない。
しかし今回も、なんで、なんで、なんでここまで大変にボロボロに過酷な目に
刑事たちをあわせるのか。作者酷い。と、思わず作者を恨みたくなるほどに
もー、大変すぎる中で捜査するディとネヴィル。ドクター、キングスリー博士
もあとからやってきてくれるけど。彼らが可哀想で仕方なかったよ。
無自覚ハンサムくんなネヴィルなんかもー、最初っからボロボロになってて
いやいやいくらなんでもそんな感じで動き回って無理でしょ。無理だよね?って
思う。ボロボロながらもむしろ超人だ。

この村が、地面の下は炭鉱の穴だらけ、というところに建つ家家で、沈みつつ
ある村。揺れて崩れていく家。不安この上ない。落ち着いてくつろげる暖かい
場所がどこにもない。なのに雪嵐。なのに水に浸かったり怪我したりしまくり。
もーほんと、彼らを休ませてあげたいよ早く早くとずっと思いながら読んだ。

幼い子供が消えた。その捜索を第一にしていたんだけど、森の中には不気味な
男がいたり、村の伝説みたいなのを盲信する村人がいたり。
横溝的な雰囲気がする。
そして結局消えた一家というのも家族の確執みたいなことで。
夫は前の妻を殺してヘスターを迎えた。ヘスターは本当はキャンベルを愛して
いたのに。前妻の子供は懐かないしかわいがろうとしない。消えた弟を心配する
こともない子どもたち。キャンベルは刑務所から出てきてみたら愛する女を
奪われていたわけで。でも執着は捨てられない。
キャンベルがアメリカで捕虜になっていた時の確執から、不気味なアメリカ人
が付け狙い追ってきている。捕虜になっていた時の挿話もかなりキツかった。
村の巡査の手にはあまるよね~。
途中でさっくり殺されてしまったグライムズ巡査は、その後ちゃんと遺体を
見つけてもらったんだろうか。ほったらかしで一冊終わっちゃったけど。

実は子どもたちの恐るべき犯行でした、というのは薄々途中からわかりつつ
あって、どう決着するかなあと思った。まともな愛情をもらえなかった子供たち
は本当に可哀想だけど、でも。実際一番酷薄なヴァージニアは父に殺されて
うーん、まあ、仕方ないかと思うけど、ピーターとアナ、その後ちゃんと保護
されていくのかなあ。ピーターをディはかばったけど、けど、けど、うーん。
いいのかなあ。
最後のほうには地面が崩れてまさに村が崩壊しつつあったけど、それでも、
なんとか一応の落ち着きはついてた。力技だ。
キャンベルという異邦の旅人がいついてしまったことからの悲劇、かなあ。
ヘスターが可愛すぎたことの悲劇かなあ。うーん。

ともかくも。村を離れた彼らがちゃんと暖かく気持ちよく眠れる場所へ帰れ
ますように。そして村は。村は、たぶん崩壊してゆくのかな。沈みつつある
不安のまま、鬱々と人々は暮らすのかな。
読み終わってほっとするけどすっきりは全然しないのでした。面白かった。

|

« 映画「天才スピヴェット」(3D、字幕) | Main | マラリー。 『ヴォカリーズ』批評会。 »

「書籍・雑誌」カテゴリの記事