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映画「インターステラー」

*ネタバレ、結末まで触れています。


映画「インターステラー」

食糧難に苦しむ世界。砂嵐がたびたび吹き荒れ、農作物はダメになる。
クーパーはかつて宇宙飛行士だったが、宇宙開発などという贅沢は捨て去られた
世界では、問題ある冴えない父親でしかない。
それでもトムとマーフにとっては父親。特に10歳の娘、マーフは父親に似て
父を信じ愛し、知識欲も旺盛だった。
マーフの部屋の本が突然落ちたり、入り込んだ砂が線模様を描いたり不思議な
ことが続く。それは、メッセージだと気付いたクーパーは、すでに廃止された
はずのNASAの研究施設に辿り着いた。
そこでは、人類が移住可能な星を遠い別の銀河に探す計画が進んでいた。
土星の側にワームホールが開いていたのだ。

私はSFは結構好きな方だけど、天文学だの物理学だの、相対性理論だのは全然
わかってない。いろんなフィクション見てぼんやりとイメージはあるくらい。
この映画は映像や宇宙船や細々としたテクニックは本格的に専門家が検証して
作り上げているらしい。緻密に世界を作り上げているなあという感じはしたけど
ま、それが本当に本当らしいのかどうかは私にはわからない。なんかすごい、
っていうのはたっぷり味わった。
打ち上げてゴオオオオオっていって、宇宙空間にいくとふっと静寂になったり
して、宇宙での太陽の光とか、ふっと切り替わる世界がすごく印象的でかっこいい。

音響の盛り上げの一方、役者達の演技は抑え目で淡淡としてると思った。
あんまりは叫んだりはしない。そういう世界でそういう場所で、生きてるという
感じ。子どものマーフィがほんっと可愛くって好きだ。パパはそりゃあ娘大事で
守りたいよね。帰りたいよねえ。

モノリスみたいな機械の相棒が好きだったなあ。モノリスがガクガク動く!
って感じが面白かった。ユーモアレベル下げるぞとか。正直さ90%とか、可愛い。
宇宙は孤独で、そこにはやっぱり相棒が欲しくて。コンピューター?人工知能?
最高だよね。

人類が生き残る可能性を求めて旅立ったはずなのに、その計画者の博士が実は
嘘をついていた、なんて酷い告白して死亡とかもー酷いじゃないの~と思う。
先行者の博士が実は嘘の信号出しましたとかもも~~酷いじゃないの~。
人は、結局自分の欲望に負ける、のか。
身近なものへの愛。愛しかない。
人間てやつは。。。
そんなドラマとしてはクラシカルな物語だったと思う。
愛だろっ、愛っ。

ブラックホールの地平を突き進めば時空を超えられる、のか?次元を超えられる?
メッセージは実はパパだった!とかはまあそうかなと思ったんだけど、でも最初
にワームホールを開けたのは、クーパーじゃないよね? それこそが「彼ら」と
いうことなんだろうか。次元を超えた存在? それに人類も辿り着いたのかな。
それよりさらに高次の存在っていうのが、いる、のか。それもまた未来の人類なの
だろうか。神なのだろうか。ん~よくはわからない~。

最後、クーパーはまた旅立つ。娘のためにどうしても帰りたかった地球。
でも、娘に再会し、約束を果たし、マーフィーの人生は素晴らしかった、という
ことを見届けることができて、幸せだったんだろう。
孤独を救うこと。
それが、クーパーの次の使命かなあ。でもあの別の星で、人工授精で人類繁栄
させてるんじゃないのかなあ? できるんだっけ。どーなってるんだろう。
いろいろああいうのに詳しい人に聞いてみたいようなこともあり。
でもまあ大体の感じはわかるのでいいかなあ。

「トップをねらえ!」とか思い出したなあ。宇宙を旅するっていうのは、時間
との戦いであり。遠く離れて、時間の流れ方が違って。それでも待っている人
がいるはずだという希望。帰ってきたという感動。
結局、それでいいんだと思う。おかえり。そういってくれるのが一番だな。
見に行って満足した~。

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マラリー。 『ヴォカリーズ』批評会。

23日には、マラソンリーディング2014に少し行ってきました。
カウンターで飲み物を渡すお手伝いをして。朗読の声だけを聞いてました。
当たり前だけどそれぞれ個性的だしそれぞれの声があってそれぞれの息遣いが
ありました。声という消えてゆく言葉だけで情景を脳裏に描くのはなかなか
集中力がいるなー。けどただぼんやりと流して聞いたりしてもいいなあ。

カフェにざわざわと人が集まってきて、みんなが楽しそうにあいさつしたり
お喋りしてたりの幕間時間も含めて、イベントですね。沢山の人がひしめき
あって熱気があって、私は少し離れてただその場にいただけなんだけど、
なんとなく面白かったです。
3部の前に退出。それでも4時間あまりはいたかな。
こういうイベントを企画し運営した皆様に心から感謝。集まっていたたくさんの
楽しんだ人たちありがとうございました。せっかくなんだから自分もちゃんと
挨拶したりお喋りしたりできればいいのになーと思いながらあんまりできず。
ま、そーゆーもんだな~私。


24日には「徳高博子第三歌集『ヴォカリーズ』批評会」 行ってきました。

個人的覚書メモ。正確な記録ではありません。私個人の主観で聞いてるので
発言など間違いがあるかもです。

パネリスト:尾崎まゆみ、江田浩司
レポーター:飯田彩乃、柳原恵津子  司会:黒瀬珂瀾

最初に、レポーターの二人からレジュメをもとに発表。
飯田さん。第二歌集『ローリエの樹下に』からの変化、表紙にふれつつ
ミュシャ的世界からボッシュ風世界観へ? というところから入って、美しさ
の裏側まで入り込む視線の表現への言及。父への想いの強さ、一方母とは遠い
感じ。魔女という言葉の表すもの、変化など。社会詠へのチャレンジは始まった
ばかりだろうか、ということ。

指摘はいずれも納得でした。表紙の絵柄からまず変化を見るの面白かった。

柳原さん。キーワードと沢山の歌の引用。タイトル『ヴォカリーズ』とは
母音の歌。本能的な声としての歌を求めていくのではないか。
薔薇というモチーフの多さ。卵。連作の構成や歌集全体の構成など。

薔薇は多いよねえと私も思っていて、でも卵は気づいてなかったな。関係を
築くのも断つのも自分から能動的にしているというのはなるほど。強いんです
よね。熱量が多いという話。

それからパネリストのお二人の発言。
レポーターの二人はテキストに即してよくお勉強されてますね、など。
でももう少し踏み込んで、なんてこととか。
私は第一は読んでないのでわからないんだけれども、でもまあ、第二からの
変化などなどからめつつの、美しい世界ではなくもっとグロテスクな表現への
注目のお話等々。音としての歌へのこだわりとか。
江田さんはグロテスクさとか、「母と娘」というテーマをもっと、とか求めて
らした。

私は自分で読んでいたところだと、華麗な美的な世界だなあ、という印象が
強くて、グロテスクなところまでよくは捉えられてなかった。
美しさと、それ以外の裏側とか音へのこだわりとかのいろんな読みを聞けて
面白かったです。
あと社会詠は、まだもうちょっとみたいな意見があったけど、私は生なままの
今読めたのは面白かった。「悲劇について」の一連。おっしゃることは凄く
よくわかったのですけど。でもそれが自分の身近に起きた、まさに今の徳高さん
でなくては書かなかった一連だと思う。確かにもうちょっと上手くというのは
ほんとわかるけど。まーそれは私の好みかなあ。

毎度ながら批評会ではほんとうに沢山の人の沢山の読みが聞けて面白い。
そういう風に読むのか、とびっくりしたり感心したりする。
そして結局何をどう読むか、って、読み手の問題が大きいのですね。
会場からの発言のいろいろも面白かったです。

『ヴォカリーズ』私が好きな歌いくつか。

  殺さるるほどの悪意に遭ひしこと思い出づ レタスちぎりゐて

  黒き二羽が白き一羽を追撃す青うつくしき空の贄とし (ルビ、贄にへ)

  映すひとを亡くしし鏡そののちは己が光に輝きて在り

  何ものか水面に皺を産み継げりその何ものかに魅入られてゐつ (ルビ、水面みなも)

  大人しき隣人たちは彼の家の悲劇について語らざりしを

  薔薇はすべて男が産みし花にしてみどりごたちはゐない薔薇園

  なにゆゑに蟻を攻めねばならぬのかわからざるまま熱心になる

  眼を閉ぢてからだの力を脱いでみる 風を容れるやうに赦さう

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『刑事たちの四十八時間』(アレックス・グレシアン/創元推理文庫)

*具体的内容、結末まで触れています。


『刑事たちの四十八時間』(アレックス・グレシアン/創元推理文庫)


炭鉱の村、ブラックハンプトン。1890年。三月、まだ雪だまりに足をとられ、
寒さが厳しい。
ロンドンからウォルター・ディ警部補とネヴィル・ハマースミス巡査部長は
この村で一家3人が消えた事件捜査の応援のために呼ばれてきた。到着して
みれば、村には謎の病気が流行っていて多数の村人が苦しんでいる。村の巡査
は一人で何もできず、宿で出された食事には薬がもってあった。
吹き荒れる雪嵐。
秘密めいた村人たち。子どもたち。ディたちがもらった時間は二日間。


シリーズの2作目。前は三日間だったのが今度は二日間ですね。次は24になる
のかなw 前作と事件はまったく別物だし登場人物の共通はあるけど全然これ
一冊でも問題ない。
しかし今回も、なんで、なんで、なんでここまで大変にボロボロに過酷な目に
刑事たちをあわせるのか。作者酷い。と、思わず作者を恨みたくなるほどに
もー、大変すぎる中で捜査するディとネヴィル。ドクター、キングスリー博士
もあとからやってきてくれるけど。彼らが可哀想で仕方なかったよ。
無自覚ハンサムくんなネヴィルなんかもー、最初っからボロボロになってて
いやいやいくらなんでもそんな感じで動き回って無理でしょ。無理だよね?って
思う。ボロボロながらもむしろ超人だ。

この村が、地面の下は炭鉱の穴だらけ、というところに建つ家家で、沈みつつ
ある村。揺れて崩れていく家。不安この上ない。落ち着いてくつろげる暖かい
場所がどこにもない。なのに雪嵐。なのに水に浸かったり怪我したりしまくり。
もーほんと、彼らを休ませてあげたいよ早く早くとずっと思いながら読んだ。

幼い子供が消えた。その捜索を第一にしていたんだけど、森の中には不気味な
男がいたり、村の伝説みたいなのを盲信する村人がいたり。
横溝的な雰囲気がする。
そして結局消えた一家というのも家族の確執みたいなことで。
夫は前の妻を殺してヘスターを迎えた。ヘスターは本当はキャンベルを愛して
いたのに。前妻の子供は懐かないしかわいがろうとしない。消えた弟を心配する
こともない子どもたち。キャンベルは刑務所から出てきてみたら愛する女を
奪われていたわけで。でも執着は捨てられない。
キャンベルがアメリカで捕虜になっていた時の確執から、不気味なアメリカ人
が付け狙い追ってきている。捕虜になっていた時の挿話もかなりキツかった。
村の巡査の手にはあまるよね~。
途中でさっくり殺されてしまったグライムズ巡査は、その後ちゃんと遺体を
見つけてもらったんだろうか。ほったらかしで一冊終わっちゃったけど。

実は子どもたちの恐るべき犯行でした、というのは薄々途中からわかりつつ
あって、どう決着するかなあと思った。まともな愛情をもらえなかった子供たち
は本当に可哀想だけど、でも。実際一番酷薄なヴァージニアは父に殺されて
うーん、まあ、仕方ないかと思うけど、ピーターとアナ、その後ちゃんと保護
されていくのかなあ。ピーターをディはかばったけど、けど、けど、うーん。
いいのかなあ。
最後のほうには地面が崩れてまさに村が崩壊しつつあったけど、それでも、
なんとか一応の落ち着きはついてた。力技だ。
キャンベルという異邦の旅人がいついてしまったことからの悲劇、かなあ。
ヘスターが可愛すぎたことの悲劇かなあ。うーん。

ともかくも。村を離れた彼らがちゃんと暖かく気持ちよく眠れる場所へ帰れ
ますように。そして村は。村は、たぶん崩壊してゆくのかな。沈みつつある
不安のまま、鬱々と人々は暮らすのかな。
読み終わってほっとするけどすっきりは全然しないのでした。面白かった。

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映画「天才スピヴェット」(3D、字幕)

*具体的内容、結末まで触れています。


映画「天才スピヴェット」(3D、字幕)

スピヴェットは10歳の男の子。カウボーイみたいな父と、昆虫博士の母と、
女優を夢見ている姉と、二卵性双生児の弟と5人家族。
学校の先生に嫌われるほどの天才。スミソニアン協会から発明が賞をとったと
知らされて、東部を目指して一人列車に飛び乗った。

ジャン=ピエール・ジュネ監督のまた不思議な色使いとか楽しみに見に行きました。
今回も、途中で出会うオジサンたちが凄く不思議な深い顔をしていて、こういう、
人間だけど人間じゃないみたいなしわしわな人物見せてくるのが凄い。

双子といっても二卵性。全然タイプの違う弟、レイトン。レイトンは活発で
ちっちゃなカウボーイとして父親に可愛がられていた。スパローのほうは
賢いけどひ弱な感じで、それが自分でもコンプレックス。それでも弟のことは
大好き。でもレイトンは二人で遊んでいる時に、銃の暴発で死んでしまった。
誰もがその話題を避けてバラバラになった家族。
賞をきっかけに家出してスパローは受賞スピーチで弟の死について話す。

まあもちろん最後には家族わかりあってめでたしめでたしなんだけど。
スピヴェットくんが可愛かった~!
カイル・キャトレット。実際9歳?10歳になったくらいかな? そんで語学堪能
で格闘技で子供チャンピオンに3年連続なるとか、天才少年なんだね~。うまく
育って行ってほしい。美少年美青年美中年になっていってほしい~~。

家族の死とか再生とかいうとベタなんだけれども、さすが、単に泣かせるって
ことじゃなくて、感動させておきながらさらっと重さを翻す感じが素敵。
スピヴェットがねえ。
ほんとうに、ほんとに切なくて。
弟はもちろん太陽のようで愛されてる子供だったってことをひしひしとわかって
いる。もちろん自分も大好きだったのに。その死に責任を感じながら誰にも
話せない。父はもともと無口。母は昆虫に熱中。姉は田舎にうんざりしてる。
父のお気に入りカウボーイみたいに自分はなれない。田舎町の学校では先生にも
かしこぶってるつもりか、みたいに嫌われる。酷い。

まだ小さい子どもだから。
という絶対誰もが感じたことのある張り裂けるような痛みがすごく伝わってくる。
だからもー、実は最初っから涙出そうで困る。
さり気なく描かれれば描かれるほど、切ないんだよ。
ずうっとスピヴェットの行方を追いかけて見る映画で、ずうっと見つめて、
ほんとに愛しくてたまらなかった。
大丈夫。
レイトンの死というのはとてつもないことで、大人の家族にも辛くてたまら
なくて、でも君のことも愛してる。愛してるんだよ。おとーさんおかーさん
ちゃんと伝えてあげて、と願ってた。

犬のタピオカもいい味出してたわ~。おねーちゃんも。おねーちゃんがちゃんと
弟の死の時スパローを抱いて側にいてあげててほんとよかった。
おねーちゃんがタピオカと絆つないだのもよかったなあ。
みんなね、少しずつしかできないんだよ。

旅も、よかったし。スピーチはもちろん素晴らしかったし。ヘンな家族も素敵
だったし。スピヴェットほんと可愛い。
3Dは、そう激しいわけじゃないけど、スピヴェットの思考がふわふわ浮いて
きたりするのが楽しかった。
ぽろぽろいっぱい泣いちゃった。ほんとにバランスが上手くて、うまく泣かせ
てもらったなあ。気持ちいい映画でした。

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『風の十二方位』(アーシュラ・K・ル・グイン/ハヤカワ文庫)

『風の十二方位』(アーシュラ・K・ル・グイン/ハヤカワ文庫)

テレビドラマのMOZUで、東が嬉しそうにオメラスの子どもの話をしまくるので
気になって読んでみようと思いました。長谷川さんの東面白かったな~ちゃお☆

デビュー作からこの本が出た1980年にわたる期間の短編を集めたもの。
長編と関連するものも含め17の短編が入っている。1961年から1979年に
書かれたもの。
私はたぶん昔々、『闇の左手』や『ゲド戦記』を読んだくらいで、全然長編を
読んでいない。なので、長編と関連しての短編というのはよくわからない。
それぞれの話の前に、著者覚書みたいなのがついているので、ふーん、そういう
ものなのかあ、というのはわかる。

すっごい栗本薫を思い出した。ああこういう感じ、と思う。
そして、どーしてもこういうの、私は合わない読めないんだなあと思い出した。
凄い素晴らしい別世界を緻密に構築している感じはする。でもなんか、なんか、
この感じ合わないんだよなー。
最初の「セムリの首飾り」は、別世界の娘がうっかり星間旅行して時間が
遙かに流れていた悲劇、か。ファンタジーのようでありSFであり。面白い。
けど、苦手~~。

「オメラスから歩み去る人々」はごく短い。文庫のページで10ページくらい。
ウィリアム・ジェイムズの『道徳哲学者と道徳哲学』での問いみたいなことから
生まれたお話、かなー。
平和でうつくしい街全部の幸せのために、牢獄に閉じ込められる子ども。犠牲。
いいのか悪いのか。わからない。

一応頑張って全部読んだけど、うーん。私にはあんまりなんとも。
読みづらくてめちゃくちゃ時間かかったー。

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映画「デビルズ・ノット」

*結末まで触れています。


映画「デビルズ・ノット」


1993年、アーカンソー州ウェスト・メンフィス。3人の男の子が消えた。
捜索の後、無残な遺体が発見される。
その町で悪魔崇拝者だとみなされる少年が犯人として捕まる。だが、曖昧な自供、
確たる証拠はなく、重要な証言や証拠を無視した警察の捜査が明らかになるに
つけ、本当に少年たちが犯人なのかはっきりしない。
本当に起こったことはなんなのか。
事件を知った調査会社のロン・ラックスは、被告の弁護士に協力をして少年たち
を救おうと奔走する。

実話をもとにして。と、最初に出る。1993年なんて最近じゃないの、と
思ってしまう私である。そーは思っても20年昔、かあ。
それにしても、警察の捜査が杜撰すぎてびっくりする。レストランにきた謎の
血まみれの男は今にいたるも発見はなく、サンプルの血液はミスでなくしたとか。
どうしてそんなことに? と、疑問がいっぱい。
そう、事件の犯人とされる少年が捕まって有罪になっているものの、冤罪なの
ではないかという疑いは消えず、殺された少年の義父が怪しい、ってなっても
それについてもまだ解明はされておらず。
モヤっとしたまま終わる。
事件は終わっているはずなのに、終わってない。
ヒーローはいない。法廷での弁護合戦みたいな盛り上がる見せ場もない。
ただただ疑わしさがつのり、どうしてこんなことになっているのか、答えはない。
上映館が凄い少ないなあと思ったけど、なるほどこう、もやっとするばかりで
答えがなくて、うーんー、となっちゃう感じが受けなさそうと判断されたのか
なあと思う。

しかしコリン・ファースですよ。ちょこっと、ほんと少しだけどデイン・デハーン
くんも出てるよ。それ目当てで見に行った。事件の謎みたいなのにもひかれた。

悪魔崇拝者、とみなされる。って、ヘヴィ・メタル好きとか、次は人間を生贄に
するって言ってた、とか、中二病全開の少年をただそれで犯人扱いって。
なんで? 
警察はなんでこんなことしてるんだろう?
まあもちろん映画だし、この通りだったってわけじゃないんだろうけれども。
けれども。でも。まともに捜査してるようには見えない。

ロンは、テレビでニュースを知った、ほんと部外者の探偵。
リッチで正義感あり、ってことなのかな。死刑反対の立場、ということで。
誰かが冤罪かもしれないこの事件を助けなくては、という感じかなあ。
でも、別に熱血漢っていう風でもなくて、コリン・ファースの佇まいが、外から
きたもの、町とも事件とも馴染まない異質なもの、という感じがしてすごく好き
だった。
最初にいきなりオークションシーンで、競り落としてて。あーリッチマンって
感じ。シャツ姿だったりダークスーツだったり。バリバリに決めてるわけじゃ
ないけど、かっこよかった。コリン・ファースってなんだかでっかいよね。
惚れる。
デハーンくんは、ちょっとあやしげだった容疑者の一人、で、出番少ない。
でもうそ発見器にかけられたりしてるのはちょっともえた。彼はなあ。なんだろう
なあ。危うい青年って感じがすごくするなあ。不思議だ。

ごく普通の毎日。なんでもない暮らしが、ある日突然変わってしまうかも
しれない。ある時突然事件がふりかかるかもしれない。事件の当事者になって
しまうかもしれない。自分たちのごく普通と思っている暮らしが、外から見る
と異常な世界に見えるかもしれない。森の奥には悪魔がいるかもしれない。
殺された男の子がとても可愛くて。子どもならではの生意気そうだったりの
可愛さがすごくきれいで。哀しかった。
いつか本当のことがわかる時がくるんだろうか。。。

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映画「サボタージュ」

*結末まで触れています。


映画「サボタージュ」


DEA特殊部隊のボス、ジョン・ウォートンは、かつて麻薬戦争で神とも呼ばれた
凄腕の男。癖の強い部隊をまとめチームの結束は強い。
だが、ある作戦で麻薬組織の金を奪ったものの、チームで分け合うはずの金は
何者かに奪われ消えてしまう。
やがて、チームの一人一人が残酷に殺され始めた。犯人は。金を奪ったものは。
疑心暗鬼に陥ったチームは反目を始める。ジョンはチームを守れるのか。

アーノルド・シュワルツェネガー主演。てことで。
爽快なアクション全開、ってわけじゃなくて、かなりミステリサスペンス、と
いう色合いが強いと思う。特殊部隊での戦いや、ラストのほうのカーチェイス
はがっつりアクションだけれども、超人的に強い、というよりはチーム戦として
地道に扉を一つ一つ開けて行ったりしてる。あーでもラストのカーチェイスは
超人的かなあ。
刑事と協力して連続殺人犯を追う、という感じ。
かなりグロテスクな死体もたっぷり。
犯行を追うところに犯行そのもののシーンが重なっていて、この時間軸はどう
なんだろう、と、最初ちょっと混乱した。面白い。

ジョンは二年前に妻子が拉致され殺されていた。麻薬組織に報復されたのだ。
妻が殺されていく姿の映像を一人の夜に何度も繰り返し見ているジョン。
シュワちゃんが、ムキムキの肉体ではありつつも、しわも多いしすっかり老人
の域に入ってるなあと思う。
疲れ果て諦めきったような。どこか虚無的な。犯人を追っている時にもそんな
顔に見えて、渋いシュワちゃんであった。
妻子を奪われてからボスは変わった、というとおり、もう心は死んでいたんだ
ろう。最後には復讐を遂げるけれども、満足という感じではなくて。妻も息子
も戻ってはこないものね。

チームを裏切って金を奪っていたのはジョンだった。チームを殺してたのは
唯一の女性隊員のリジーだった。リジーは、なんだろ、薬でなんかイカレた
感じってことなのかなあ。ちょっと微妙~。犯人に何か凄い動機が、ってこと
ではなかったか。ジョンはとにかく情報を買うのに金が必要だった、ってこと
かなー。DEAってことで捜査協力とか頼めないものなのか? それ以上に
メキシコだかでは麻薬組織が力もってるから、警察を動かすにも金がいる、って
感じなのかなあ。
ともあれ、一味違うシュワちゃんというところ。
孤独な男の復讐譚だった。ハードボイルドかなあ。
老年になってきてるわけだし、こう渋い、暗い役柄でかっこよくなっていって
もらいたいね。

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ナショナル・シアター・ライヴ 2014 「フランケンシュタイン」

*ネタバレ、結末まで触れています。


ナショナル・シアター・ライヴ 2014 「フランケンシュタイン」


映画館で見る演劇。私はこういうの初めてです。
「フランケンシュタイン」は小説読んでいるし映画も見たと思う。
舞台でどういう風にするのかなあと思ってました。
短期間あちこちで上映しているみたいで、今回は行けそうな所だったので、
念願かなっていってきました。お値段3000円。映画よりは高いけど舞台
よりはずっと安いってところですね。
始まる前のナショナル・シアターの宣伝がなが~~いい~~~。あれはちょっと
勘弁してほしかった。。。まあ仕方ないのか。

見に行ったのはベネたんが怪物を演じているバージョン。
W主演ということで、ジョニー・リー・ミラーと二人が交互に、博士と怪物を
演じたそうです。
クリーチャーが生まれるところから始まり、博士に見捨てられ、人に会うと
嫌われ追われ、人里離れたところで暮らす盲目の老教授に教育を受けて、やっと
言葉を覚え人と理解しあおうとしたところでまた息子夫婦に追われ。
そんなクリーチャーの姿を見続けるので、どうしたってクリーチャーに同情する
気持ちが大きくなる。人間のほうが酷い。
博士のほうが酷い。こじらせて困ったちゃんなのは博士なんだよねえ。そもそも
自分がしでかしたことが恐ろしくなって逃げた、って。酷い~~。
博士がちゃんと保護して育ててやればそもそも怪物にはならなかったろうに。
うるうる。

唯一つの願い、伴侶が欲しい、というクリーチャーの願いを一度はききながら、
やっぱり女を壊してしまう博士。
クリーチャーは報復に唯一クリーチャーを見ても嫌おうとしなかった博士の許嫁
エリザベスを、殺してしまう。嘘を覚えた怪物。
女とやれば男だ、ってそんな短絡的な~と思ったけど、怪物は怪物、という
ことなのかなあ。本を読み知識を得て愛を欲しても単純な表層的なこと、と。
でもなあ。酷い。エリザベス可哀想。

北極の果てまで追いかけあおう、と、互いを求める博士と怪物。
クリーチャーが可哀想で、博士も可哀想で、愛し合うかわりに憎み合うしか
できない二人が切なくて、うるうるしながら見た。大満足。
さっすがうまいこと話つくりあげているなあ。

生まれた時には全裸、なクリーチャーだけど、さすがに映像とるってことで
大事な所はパンツ的布巻いてた。実際の舞台じゃほんとに全裸だったそうで
丸見えどころじゃないなあ、なんて思ってしまうワタシ。
でもほんと、クリーチャーを演じるのは凄いなと思った。体、筋肉をうまく
使えなくて、生まれたこともわけがわからなくて、ひきつりながらぐるぐる
バタバタ、ぐねぐねしながら唸り這い回り、立ち上がってはよろけて倒れ。
大変だ。
W主演とはいえ、怪物メインな感じ。ベネたんが怪物のを見られてよかった。
少しずつ言葉を覚え、学んでいくのが可愛い。それでも動きはぎこちなく、
不自然にひきつりながらの舞台。めちゃくちゃキツイだろうなあ。
すごく見応えあった。

博士は童貞こじらせちゃったのか? 怪物に対しても婚約者にたいしても
態度がひどいじゃないのー。天才といってもそんなんじゃ、生き物を作っちゃ
いけなかったんだよー。愛を知らない博士だから怪物は怪物になってしまう
しかなかったのか。そもそももっときれいに縫合して作っていれば!見た目で
怯えられなくてすんだのに。
でも博士も母を無くしてこじらせちゃったんだったっけ。小説の細かい所は
忘れちゃってるんだけど。
う~んそれにしても。元凶たる博士がやっぱり困ったちゃんだった。

北極で博士と二人きり、博士の愛が欲しかったというシーンは切なくて
うつくしくてうっとり。愛し合えれば、よかったのに。

見に行けてよかった。面白かった。生で見てたらもっと迫力なんだろうなあ。
映像は、真上から写したのが多くて、舞台では見られない角度から、という
配慮だったのかね。舞台と両方見られればいいのにな。

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『パインズ―美しい地獄―』(ブレイク・クラウチ/ハヤカワ文庫)

*ネタバレ、結末まで触れています。


『パインズ―美しい地獄―』(ブレイク・クラウチ/ハヤカワ文庫)


ウェイワード・パインズ。ノーマン・ロックウェルの絵の中のままのような、
美しい小さな田舎町。イーサン・バークは自分が何者かもわからない状態で
目覚めた。ひどく怪我をしている。次第に思い出す、この町に到着したばかり
の時に交通事故にあったのだ。自分は連邦捜査官だ。先にこの町で行方不明に
なった別の捜査官を探しにきたはずだ。
だが、のどかな田舎町であるパインズは、外部から切り離されたおかしな、
不気味な町だとわかってくる。狂っているのはこの町か。自分か。


どういう話なのかあんまりわからないまま読み始めて、少しずつあれ?あれ?
何これ? ミステリ、って感じでもないのか??? と、イーサンと同じく混乱
しながら読んだ。まさに一気読み本。なにこれどうなってるんだ、という思いで
ぐいぐい読み。途中で時間感覚なんかがおかしいと気付き、ミステリというより
SFっぽいのか、とわかってくる。実はイーサンは千年以上仮死状態で眠って
いたのでしたー。人類はパインズ以外滅亡していた。な、なんだってーっ!?
というわけで面白く読み終わり。なんだこれ、の謎がとけてすっきり。すっきり、
ってことでいいのかどうかうーん、と思うけど、面白かった。

イーサンが軍人あがりとはいえ、かなり超人じゃないかと思ったりだけれども、
こういう作品の主人公としてはこのくらいはありかなあ。
結果イーサンは町を受け入れ、というかもうそれしかないよねえ。一応は、
めでたしめでたしかなあ。
そして続編ありというか、三部作構想なんだって。保安官になったイーサンが
次は町の中でなんか事件解決したりするんだろうか。
そしてアメリカではテレビドラマ化するらしい。なかなか豪華そうらしい。
もうこの結末知ってしまったから謎にわくわくはできないかな。でもできれば
見てみたい気がする。

著者のあとがきによると、「ツイン・ピークス」大好き!だったそうで、勿論
この本は全然別のお話だけど、あのドラマの多大な影響があります、とのこと。
わかる。
謎めいた一見美しい田舎町。孤独な連邦捜査官。
いいよねえ。
ツイン・ピークス、あれから25年。リンチがまたドラマ撮るって話だけど
どーなるのかなあ。見たいようなみたくないような。ほんと私も大好きだから。

美しい地獄、というサブタイトルはなんだかいただけない気はする。
パインズだけでいいじゃない。原題知らないけど。
続刊も出れば読んでみたいかなあ。んー。読まなくてもいいかなあ。んー。
この状況をどう活かしているのか、やっぱり出れば読んでみたいかも。

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『ネルーダ事件』(ロベルト・アンプエロ/ハヤカワポケットミステリ)

*結末まで触れています。


『ネルーダ事件』(ロベルト・アンプエロ/ハヤカワポケットミステリ)


カジェタノ・ブルレは私立探偵。南米チリに1971年にやってきたキューバ人。
今はそれなりの成功をおさめている。その探偵としての初めての仕事は、チリの
国民的詩人、ノーベル文学賞詩人であるパウロ・ネルーダのために人探しをする
ことだった。

現代、50代半ばらしいカジェタノの回想として始まる物語。私立探偵で人探し
ではあるけれども、ミステリという感じよりは、とんでもない詩人に振り回され
る若者が探偵になっていくお話、かなあ。探偵もなにも、ただ無職の若者を見込
んで、金も名誉もある詩人が人探しを頼む、しかも探偵として見習えと渡すのは
シムノンのメグレ警視の小説数冊、という。
それなのに、カジェタノは結構真面目に仕事をこなし、ついには探し人と出会う。
見つけたというより見つけられた、という形で。

私はチリのことは何にも知らない。こんな革命の歴史があったことも、ネルーダ
という実在のノーベル賞詩人のことも。
あとがきとか見たり、ぐぐってみたりして、ネルーダって実在の人物なんだあ、と
思った次第。詩人で政治家で大統領と友人で、なんか、なんか、とんでもない。
この小説の中の人物像は、女をとっかえひっかえみたいな感じで、おいおい、と
思うけど、魅力なんだよなあ。

ネルーダは癌におかされていて、昔薬草での癌研究をしていたらしい医師を探し
てくれ、とカジェタノは頼まれる。でも実は、それは医者ではなかったらしい。
本当に探したいのはその妻らしい。本当の本当に知りたいのは、一時のロマンス
を結んだそのうつくしいベアトリスが産んだ子供が、実は自分の娘なのではない
だろうか、ということだった。と、だんだんネルーダの頼みの中身がわかって
きて、カジェタノはメキシコ、キューバ、東ドイツ、ボリビアと各国尋ねて回る
ことになる。
1970年頃のそういう国の感じとか、まさに軍事政権、革命に揺れているチリ
とか、いろんな事情が描かれていて面白かった。よく知らないよくわからない
ことばっかりで、なかなかスムーズに読み進むことができなくて、読み終わるの
にすっごく時間がかかってしまったけど。

終盤、アジェンデ大統領がヘリに乗ってネルーダのうちを訪ねて立ち寄ったり
するあたりから、なんだか自分でも謎の感動でうるうる泣きそうになりながら
読み終わった。ネルーダがいよいよ死にそう、っていうのもあるし、チリが
大変なことになってるっていう感じとか、なんだろう。じっくりカジェタノに
つきあって読んでいるうちに、そんなに面白くて夢中ってなってないのに、
本当に彼らの死に泣いてしまいそうだった。ネルーダとんでもない人だ、と思う
のにかっこよかったなあ。

カジェタノはシリーズものらしく、作品はいくつもあるみたいで、でもこれは
カジェタノ最初の事件ってことだからこれだけで読める。カジェタノの探偵譚
というよりは、ネルーダとチリやその頃の社会情勢みたいなお話でもあるし。
読んでみてよかった。

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