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映画「トム・アット・ザ・ファーム」

*結末まで触れています。


映画「トム・アット・ザ・ファーム」


恋人ギョームの葬式のために、彼の実家の農場を訪れるトム。ガランとした家に
入り込み、家の人を待つうちに眠り込んでしまう。
母親のアガットには歓迎されたが、兄がいることを初めて知る。兄、フランシス
は、トムに決して弟と恋人同士だったとは母親には言うな、と脅した。ギョーム
にはサラという恋人がいることになっているらしい。
葬儀で友人としての弔辞を言えなかったトムは、フランシスに脅されるままに
農場に残り、仕事を手伝い始めた。

グザビエ・ドランが戯曲を映画化したもの。監督、主演。共同脚本。いろいろ
全部やっちゃう人なのだった。「わたしはロランス」の印象も強烈だったし、
同性の恋人を亡くしたトムの姿も写真見て印象的で、でもサスペンスらしくて
いろいろ期待して見に行った。

田舎の閉塞感。といってしまえばそんな単純なことではないんだろうけれども。
携帯も圏外になってしまうらしい広々とした農場地域。フランシスの異様な
暴力性。同性愛への憎悪。トムを圧倒し支配する力。
薬でやられちゃってるとこもあるんだろうけど、トムも初めは逃げ出したり
してみたけど、どんどんフランシスの支配を受け入れるようになる。
予告というか、宣伝文句では、フランシスに恋人の姿を重ねる、みたいに書いて
たりしたけど、あんまりそうは感じなかったなあ。DV男にはまってしまう弱い
女という感じだなーと私は思ったけど。
でも二人で踊るシーンなんかはかなりドキドキときめいた。怖くてドキドキでも
あるし、セクシーでドキドキでもある。
フランシスが暴力で組み伏せるたびに、うわ、キスしないの?しないの?その
近さまで唇がきてるのに!? と思ったけど、しなかったー。トムの赤い唇が
キスしたくなるセクシーさなのに。

恋人のフリをするよう頼んでサラもやってくる。だけど、フランシスに支配
されている異様さをすぐに見抜き、トムに一緒に帰ろうという。けど、行かない
トム。
けど、サラとフランシスが酔った勢いでやっちゃってる感じから逃れたあとに、
フランシスの起こした暴力事件の話を酒場で聞いて、ちょっと目が覚めた、
のかなあ。怖くなったのか、異様さを自覚したのか。

逃げたトムを追いかけるフランシスの車を奪って、都会へ、帰るトム。
いつ引き返すのか本当に最後までハラハラした。
結局、恋人ギョームの姿はよくわからないまま。いい加減で不実な恋人だった
みたいで、トムの純情は悲しい感じ。
ギョームはおそらくフランシスや母親から逃げて都会へ出た。母親は夫を
亡くしてから一人でいろいろがんばってきてて、大事な自慢の息子を溺愛しつつ
厳しく育ててきたんじゃないかなあ。フランシスの暴力性は母の影響かと。
母親、フランシスをバシッと叩いてたシーンがあって、こわかった。
息子が何かおかしい、ということに気付きながらも、目をそらしてきていた母。
その母をおそれながらも疎ましくこんなところは嫌だと思いながら一緒にいる
フランシス。
確かに農場のイケメン兄妹としてかつてはいい時代があったんだろうけど、今は
どうしようもなく行き詰まっている家族。
そこに現れたトム。トムに依存先を見出したフランシス。お前が必要なんだ!
と叫んだ最後の言葉は本当なんだろうけど、トムは逃げられて本当によかった。
本当の支配者は母親だったんだろうなあ。
こわい。
フランシスはあれからどうなっちゃうんだろう。

ずーーーっとドキドキビクビクしながら見てた。上映時間100分だけど、緊張
しっぱなしで、長く感じた。あれ以上長いとキツイ。
傷ついてゆくトム、グザビエ・ドランがとっても素敵でした。

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