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映画「ケープタウン」

*具体的内容、結末まで触れてます。


映画「ケープタウン」


南アフリカ、ケープタウン。
子どもが消えてゆく事件。植物園で発見された無残な女性の死体。
捜査にあたるズールー族のアリ、よき家庭人であるダン、酒に女に自堕落の極み
なブライアンという三人のチーム。
女性の交友関係を追ううちに、ドラッグ絡みの線が見えてくる。

オーランド・ブルームがやけに男臭いマッチョでだらしないダメ刑事をやるみたい
だな~。予告見るとかなり渋い重い映画みたいだ、と思ってはいた。
実際ほんっとーーーーーーに重くて見終わってから鬱々と苦しくて、映画館から
出てしばらく明るいひかりの中をぶらぶらして深呼吸して回復をはかった。
暑いけど秋の気配のある青空。綺麗に整えられた街。信号を守って行きかう車や
人。秩序。基本的に大体は法律で守られている暮らし。日本。

別に事実に基づいた事件というわけじゃないよね。お話。映画の中の出来事。
だけど、あまりにもやすやすと人が殺され、秩序が無視されているあの世界が
完全にフィクションと切り捨てるわけにいかない重苦しさが凄かった。
私は南アフリカに行ったことはない。スラム街もあるだろうが、近代的に発展
した綺麗な街もあるだろう。人種差別は撤廃されているはず。それでも根強い
差別はあるのだろう。
映画の中、ドラッグはあふれ子どもや弱いもの邪魔者は容赦なく、あまりにも
あっけなく死ぬ。殺される。
この映画がリアルなのかどうかは判断できないけれど。現実に繋がるところが
あるのだとは思う。

でもほんとは南アフリカに限った話じゃなくて。
日本でも行方不明の子どもはいるし綺麗に整えられた街ばかりでなく闇はあり、
差別もドラッグもあるんだろう。こんな風に目には見えないけど。こんなにも
ここまでも簡単に殺されたり銃撃戦が突然起こったりはしないと思うけど。

話としては、ああこれはもう殺されちゃうんだろう、とすぐ分かるんだけど、
やっぱりとても残酷で辛い。ダン。ああもー。こんないい人いい刑事はもう
真っ先に殺されてしまう。
重くつらい過去を背負い、乗り越えてきたかのようなアリ。秩序や法律や
警察そのものが頼りにならない状況で、理性や理屈を捨てるしかなくなったアリ。
ママを巻き込んでしまった。ママが殺されなくちゃならない理なんて一つもない。
一ミリもない。ママ。ママ。
砂漠で延々と科学者を追いつめ殴り殺して。自らの命もなくしてしまったアリ。
あの辛い子どもの時から、どれほどの努力と自制で警察官として生きてきたのか。
アリ。辛すぎる。生きてほしかったけど、アリにもう希望はなくなってしまった
んだろうなあ。

オーランド・ブルーム演じるブライアンは酒や軽めのドラッグ?浸りで女癖悪い。
鍛えた体見せびらかすように脱いでてくれて眼福~。らくがきみたいなタトゥー。
別れた妻とか息子にはダメ人間として嫌われているけど、アリやダンからは
そんな男だけど優秀だと信頼されている。
アリが主人公かな、と思うんだけど、やっぱり最後に残るブライアンが主人公
なのか。ブライアンにだけ、わずかに希望があるから。
妻を助けることはできたし、息子にほんのわずかだけでも歩み寄ることができた。
かつて差別主義者だったらしいブライアンの父の墓碑銘を最後には刻む決意が
ついていた。それが過去と折り合いをつけたということなのか、完全に決別する
決意がついたということなのか。。。
ダンを失い、アリを失い、この酷い事件の結末を見届けた男として、ブライアン
が主人公だったのかなあ。
実際優秀だったし。
オーリーかっこよかったあ。めっちゃむさくるしいんだけど、でも、それもまた
かっこよかったわ。女が釣れるのも納得。

上映時間107分。セリフは少なく淡淡とあっさりと展開してゆく。でもどのシーン
も強い。ここまで辛い重い気持ちになるとは、だけど、見てよかった。

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