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『特捜部Q-知りすぎたマルコ-』(ユッシ・エーズラ・オールスン/ハヤカワポケットミステリ)

*結末まで触れています。


『特捜部Q-知りすぎたマルコ-』(ユッシ・エーズラ・オールスン/ハヤカワポケットミステリ)


コペンハーゲン警察の地下。未解決事件専門に扱う特捜部Q。シリーズ5作目。

アフリカで少数部族への支援活動を行っていた現地の担当者が殺された。
デンマークでその不審な失踪に気づいた外務省のヴィルヤム・スタークは
上司のレニから現地へ行ってくれるよう頼まれる。だが、スタークもまた
消された。レニこそが支援活動の資金を横領していたのだ。
路上で掏摸をして稼ぐマルコは15歳の少年だった。クランの一員として
血のつながりはなくとも大きな家族として生活してきた仲間たち。だが、この
まま放浪の生活が続くよりも、学校へ行って普通の暮らしがしたいと憧れる
ようになったマルコ。ある日クランを率いているゾーラの話を立ち聞きして
しまったマルコは家を飛び出す。掏摸なんかじゃない恐ろしい犯罪を知って
しまったマルコを、ゾーラたちは執念深く追い続ける。

カール、アサド、ローセのメンバーは相変わらずながらも、なんだか使えない
新人ゴードンがQに配置されたり、カールの上司だったマークス課長が引退し、
次のラース・ビャアンはカールとは敵対。カールはモーナについにプロポーズ
しようとしていた矢先、別れを切り出される。可哀想。でもまたすぐに、図書館
で出会ったリスベトと仲良しになっちゃって、悩むカール。おいおい。
アサドは前に大怪我してたっけね。でもしっかり復帰した。
そしてハーディ。最初の頃は動けるのは目だけ、みたいだったハーディが、
リハビリを重ねて、わずかに指一本動かせるようになり、そして車椅子を自分
で動かせるようになっていた! 時間が動いているなあ。

で、マルコ。
少年ながらもたくましく賢く。いい子だったー。物凄く優秀に育っていく
だろうな。怯え、警戒し、カールのことを知って情報だけは伝えようとして
くるけど、犯罪組織から警察から、どこまでも逃げ続けるマルコ。もう~~
カール、早くマルコを見つけてあげて!捕まえてあげて!助けて!!! と
ドキドキ願いながら読んだ。マルコが有能すぎて逃げきってしまうのが辛い。
始めの頃マルコを助けてくれたクリーニング店の老人ゲイカップルがひどい
とばっちりくらってマルコを恨むようになるのも辛い。ゾーラたちほんと酷い。
マルコも可哀想だしマルコを善意で助けていた人たちも可哀想。

最初は見当違いなところで事件を追い始めるカールたち。ああ~違う、違う
から! と、早く真相に気づいて~~~、っていうのもハラハラドキドキ。
レニも結構逃げ切ったのか、もしかして次巻にひっぱるのか? と思ってたら
最後にはちゃんと報いをうけていた。死体が発見されて調べられればちゃんと
カールたちにわかるんだよね?ともあれ、それなりにけりがついてよかった。

カールたちは、スタークの不正を見逃しマルコに偽造パスポートで身分を
与える。人としてはとてもよい選択だけど、警察だよね?? と思っちゃう。
でもそういうこと飛び越えて自分たちの信念で捜査し解決する特捜部なんだ
なあ。結構びっくりして面白かった。
さてカールは次はモーナとリスベトどちらか選ぶのかなあ。
ハーディの回復はどこまで。アサドとラースと過去に何が。カールたちが
撃たれた事件の解決はつくのか。まだまだひっぱってることいっぱいで、
まだまだ続きが出るんだよね? 楽しみです。

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『燻り』(黒川博行/講談社文庫)


『燻り』(黒川博行/講談社文庫)

短編集。
この文庫が2002年発行。単行本で1998年に出たものみたいです。
燻りというのは、いっぱしのヤクザもんにすらなれない半端なやつ。
下っ端ヤクザとして兄貴の使いをする途中車が故障して警察に捕まり組からも
干されちゃう、という最初の「燻り」という話からして、あー、悪党にもなれ
ない落ちこぼれ、という感じが哀しくも笑っちゃう。きわめて普通のダメ人間
な人物たちを描いていて面白い。
普通、とはいえ警察沙汰だったりヤクザだったりなので実際普通なわけじゃ
ないよなーと思うけど。
こういう小物を描きながらも面白く読ませる作者がやっぱり上手いのか。

会話がほんといい感じ。私は大阪に住んだことあるのは3年足らずだから
ほんとのニュアンスはつかめてないしわかってないと思うけど、なんかこう
会話のテンポ、リズムの感じが腑に落ちる感じがする。そう思わせるように
描きだしてる作者が上手い、と、なんかやっぱり上手いんだなあと思う。
すごいね。

「腐れ縁」というやつは、パチンコの釘師と知人(つーかなんていうか、
仲間ってほどでも友達ってほどの仲でもないぐだぐだなつきあいのつれ)が
パチンコ屋の裏帳簿みたいなのを盗んで恐喝してやろう、という話。
そのパチンコ屋が「パルテノン」て名前で、ん? と思う。『繚乱』で
競売物件になってどーのこーののパチンコ屋の名前だった。同じ店って
設定かどうかはともかく、なんかちょっと、お、と思って楽しかった。

すいすいと面白く読んで二時間くらいでするっと読み終わってしまった。
『逆さの骨』はちまちま5日間くらいかかった。日本人の日本語の小説は
読みやすいなあ。でもこれもやっぱり黒川博行が上手いのかもなあ。

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『逆さの骨』(ジム・ケリー/創元推理文庫)

*結末まで触れています。


『逆さの骨』(ジム・ケリー/創元推理文庫)

新聞記者のドライデンはニュースを求めて発掘現場へいってみた。
イーリーで二輪戦車が発掘されるとすればなかなか大きな記事になる。
だが予想外のものが発見される。かつて捕虜収容所だったそこに掘られていた
トンネル。そこにあった白骨死体。古代人ではないその白骨は、盗品らしき
銀食器や真珠のネックレスを持っていた。

シリーズ三作目か。ドライデンにもタクシー運転手で語学マニアなハンフにも
お馴染み~という感じが出てきてる。
寝たきりのドライデンの妻ローラはパソコンを使ってたどたどしいながらも
メッセージを送るしドライデンの調べものを手伝って今作で結構役に立ってる。
でもぷらいべーとなの、というフォルダを作っていて、ドライデンは自分に
秘密を持った妻に腹を立てる。こういうのなかなか辛い。寝たきりだけど意識
がダメになっているわけじゃない人間を、支え続けるドライデンは辛いけど、
でも、プライベートを持つということに腹を立てるのは。そう、腹を立てたり
するべきじゃないってわかっていても、という複雑さがつらい。聖人君子じゃ
いられないドライデンもわかるし、けど、ローラが一番辛いし。うーん。

と、そういう事件本筋ではないところでも登場人物のあれこれが丁寧に
描かれる。過去を探ってドライデンがあちこち出かけ、出会う人々のぞれぞれの
事情があって。そういう何もわからない状況のあたりは私は結構退屈しながら
読んでものすごく時間がかかってしまう。
けど、終盤にくるとぐっと一気に加速度がついて面白い。その快楽はあるなあ。

戦時中のイタリア兵やドイツ兵の捕虜が収容されていたこと。戦後、イタリア兵
は解放されてそこに居ついた、とか。いろいろあるんだなあ。

あと、今回も霧が凄いんだけど、それが産業廃棄物置き場からの有毒な霧、って
ことで、なんかこわい。そういう環境問題? なんかも書かれている。けど、
だからって環境問題として描くってほどでもなくて、なんかとっても現代な
感じではある。いろんなことがあってでも簡単に解決つくようなことはなくて
なんとなくやり過ごして毎日が過ぎていくんだよな。

途中、ハンフが突然死んだとかってびっくりした!ま、まあ、死んじゃいそうな
不健康な生活してるけどさー。まー助かってよかった。さらっと突然そんなこと
が起こるのが凄い不思議な感じの小説。。。

殺人事件としては男女の愛憎劇、ってことでわかってみればなるほどねという
感じ。章の合間に挟まれる過去の物語がだんだん今に繋がって真相がわかって
くるの面白い。
緻密で退屈ででも読み終わると快楽もあって。うーん、単に面白かった!と
言えないつまんなさ込み。まだ続くのかな。次が出たらでもやっぱり読みたい
と思うような気がする。どうかなあ。

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映画「るろうに剣心 伝説の最期編」

*結末まで触れています。


映画「るろうに剣心 伝説の最期編」

後編。
前作で嵐の海から漂着した剣心を助けたのは、師匠、比古だった。虚しく
殺され人の墓をつくっていた子どもの剣心に剣術を教えた人。目覚めた剣心は
もう一度師匠に教えを乞い、奥義を身につける。それは生きるという意志から
開かれる道だった。
浦賀沖に軍艦で現れた志々雄たちは明治政府を脅し、剣心を探させる。
伊藤博文らと共に企み、志々雄の船に近付いた剣心は決着をつける戦いに挑む。

ちょっとお話としては、へ?なに?ええーそりゃないわー、という気がして
しまったところも多々。特に蒼紫関連、なんか、原作読みこんでいればもっと
同情できるのかなあ。でも映画見てる限りでは、バカ?こいつシリアスに決め
てるけど、バカ。。。? と思わざるを得ない。伊勢谷さんはめっちゃめちゃ
かっこよくって戦いシーンもすっごいかっこよかったんですけど。
御庭番関係はないほうがよかったんじゃないのかなー。でも葵屋とか必要なん
だろうし、外せなかったのかなあ。まあなあ。でも最後の志々雄との戦いの場
に蒼紫が突然現れたのにはびっくり。「なんだお前」と志々雄さまもびっくり
だよね。うんうん。
左之助も実にバカで、まあこいつはこういうキャラなんだなと思うんで
完全に馬鹿でもいいけど、まあ。やっぱり志々雄さまに「なんだお前」「知らねえ」
みたいに言われててもう、吹き出しそうになって困ったw
そーだよね~~。
なんだお前らって思うよね~~。「邪魔だ」って言うよねー。当然邪魔だよね。
志々雄さまの言う通りだよ!と心の中で激しく同意。可笑しかった。

剣心は本当に凄かった。佐藤健がいたからこの映画化があったんだなあ。
速い。強い。かっこいい。凄味も十分ながら、ほんわか可愛い顔もする。
素晴らしかったー!
師匠との修行。蒼紫との戦い。警官に囲まれてすいすいっとかわし、気迫
だけで圧倒しちゃうのも。宗次郎くんとの戦い。志々雄との戦い。
物凄いアクションで殺陣で圧倒された。同じようにはしない。森の中、屋敷、
船の中と、いろんな場面で、かなり狭苦しかったりするのに、狭さを上手く
使ってたり狭いのにスピード感まったく落ちなかったり。
ほんっとーに見応えあった~。かっこいい。

宗次郎くんとの戦い。途中で宗次郎くんが、あれ? あれ? って、剣心に
敵わなくてだんだん泣き顔になっていくのがたまんなかった。神木くんも
素晴らしい~~。素敵。

志々雄さまとの最後の戦いは四人がかり。狡いぞ。でもほんと志々雄さまが
強くて強くてすっごくかっこよかった。
しかし、体の熱がこもって、15分しか戦えないとか、剣の勢いで火が出るとか、
あ、あー、えーと、漫画だ漫画だから、と、心の中で言い聞かせる。
いや、かっこいいんだけど。
なんか、リアリティのバランスが私の中でしっくりこなかっただけで。
火が出るたびに、手品?トリック? とかつい心の中で思ってしまって。
いいんだ。かっこいいからいいんだ。

さすがの藤原竜也で、あんな恰好であんなテンションでどシリアスに
ねじ伏せてて凄い。ほんとにもう、みんな目茶苦茶かっこいいな。

ラストには、神谷道場で、穏やかな日が戻ってきてて。
薫どのに一番きれいな紅葉をあげる剣心。にこっとした笑顔が最高!!!
いやー。佐藤健くんもほんとうにきれいな男の子だわ。
面白かった。
お話の細かいことは気にしないで、すっごいかっこいい場面場面を堪能すれば
いい。素晴らしい実写化でした。

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映画「イヴ・サンローラン」

*ネタバレ? 最後まで触れています。


映画「イヴ・サンローラン」


イヴ・サン=ローランは21歳という若さでディオールのデザイナーに採用された。
ディオール亡きあと、デザインを任されるが、ディオールを引き継いだだけで何の
新鮮味もないと酷評される。
兵役、躁鬱病。生涯を共にするピエールとの出会いと支え。独立して自分のメゾン
を持ったイヴは成功を収めるが、酒や薬、享楽的な楽しみに耽る。追われるように
コレクションのデザインを続けるが、体を壊していく。
残されたピエールの回想する二人の時間の映画だった。

サンローランを演じたピエール・ニネ、今25歳の新星だそうで。
綺麗。
ほんっとーーーーに綺麗だった。
最初の頃、内気で繊細で、人前に出るのに慣れない、神学生のようだと言われる
儚さ。ピエールと恋におちてきゃっきゃウフフする可愛さったらもうっ!!!
孤独、精神を病んでしまったこと。仕事に没頭してもうまくいかない苛立ち。
アイデアに苦しみ、男遊びもやる。どんな姿も素晴らしく綺麗だった。
孤独で繊細で高貴で我儘。天才。
そんな姿が完璧だった。凄い。

そんな、若くして天才、その上うつくしい恋人を持ってしまったら。
ピエールは芸術を愛する、でもそういう才能は平凡な男。イヴを愛し、彼が
つくるファッションを支えるための実務は一手に引き受ける。
愛し合う日々は移ろい、他の男を愛してるなんていうイヴ。
それでも、「生涯の男はお前だ」なんていうイヴ。
この時のピエール・ニネの凄まじい美しさは衝撃。
若くて綺麗~な時から、やさぐれて乱れ、それでもうつくしい、そんなイヴが
素晴らしくて驚く。こんな男と運命を共にしてしまう、ピエール・ベルジュの
業を思ってふるえる。怖い。

華麗なるファッションショーの世界もその裏側も、面白かった。
僕のモデルたち、って、モデルも作品のように大事に綺麗だねっていって愛し
てるようなイヴが素敵。
ヴィクトワールとはピエールに出会う前からの付き合いで、ほとんど恋人の
ようだけど、イヴはゲイで、ヴィクトールは別の男と結婚するのに、でも、
結局は三人での三角関係のようになって。ヴィクトールもピエールも自分の
ものにしておきたいイヴは狡い。でもその二人に裏切られた、と荒れるのも
すごく切ない。辛いね。凄いね。

年を重ね、晩年いつもイヴのそばにいるよというピエール。
そして今も、サンローラン財団を維持してるんだよねえ。ピエール。
凄い。

ディカプリオの「J・エドガー」を思い出したなあ。

いろいろ細かい説明はなくて、察してくれというような感じだった。
でも細々と説明されなくてもいいんだろう。本当のことなんてわからないんだし。
ファッションの映画というよりは、イヴとピエールの愛憎の軌跡みたいな映画。
とてもとてもとても綺麗で圧倒された。美、エレガンス。天才。
素晴らしかったよ、ピエール・ニネ。

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『繚乱』(黒川博行/毎日新聞社)

*結末まで触れてます。


『繚乱』(黒川博行/毎日新聞社)

かつて大阪で暴力団対策係だった堀内と伊達。堀内は依願退職の後、東京で
暮らしていた。そこへ、堀内よりあとに警察を辞めた伊達がやってくる。
今は競売屋の調査の仕事をしているという。
堀内は誘われるままにまた大阪へ行って競売物件の権利関係を探る仕事を始めた。
パチンコ屋、パルテノン。競売になるという噂から探っていくうちに、そこに
絡むヤクザや大物企業の背後関係が明らかになっていく。


『悪果』のコンビ再び、ですね。出版社変わってる。『悪果』は角川で、2007年
発行、これは毎日新聞社で2012年か。コンビ同じだけどお話は別物。
もう二人は警察じゃない。でも警察仲間とのつながりでいろいろ情報とったり、
もう競売の下調べなんて範疇を越えて、悪い奴らにいろいろ白状させて、ついに
は金せしめてって。もうすっかり自分らがヤクザっすね。まあ、前作の時から
なんとかシノギつくって金儲けようって話なんだけど。

疫病神シリーズのコンビよりもうちょっと陰惨な気がしてしまうのはなんだろ。
会話の軽さがちょっと少な目かなあ。
堀内のやさぐれっぷりが陰気かなあ。かっこいいんだけど。
伊達には妻子がいるから、って庇おうとするのは、伊達のほうにひかりを
託しているから。堀内はどんどん虚無的になっていってるような感じ。
刺されたり当たらなかったけど撃たれたり。
この最後はどーなんだ。死んじゃったの?刺されて倒れて昏くなって、って。
続きが書かれるんならなんとか助かったってことになり、このままなら死んだ、
って思えばいいのかな。
このさっくり突き放した終りは凄く好きだ。

喧嘩っ早い伊達のほうが陽気で、それほどでもない堀内のほうが死に近い。
いいコンビ。二人で暴力団追いこんだりシノギ見つけたりするのが面白い、
っていう、やっかいな楽しみにはまってる。
情報吐けって爺をロープで吊るしたり、えげつないことしてる~。
みんなしたたかで怖い。
面白かった。

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『悪果』(黒川博行/角川書店)

*結末まで触れてます。


『悪果』(黒川博行/角川書店)

大阪。今里署の暴力団犯罪対策係の堀内は、賭博の情報を掴んだ。相棒の伊達
と捜査を進め、手柄をとる。
そこであげられた客の中に、学校法人の理事長をしている森本という男がいた。
堀内は業界紙発行を傘に恐喝まがいのことをしている坂辺に情報を流す。
坂辺がせしめる「広告料」の半分は堀内のものになるのだ。
マル暴の刑事は独自にシノギを持つ。坂辺は堀内の重要な資金源だった。

黒川さんの疫病神シリーズ以外って読んだことないよな、と思って読んでみた。
これは刑事の話だけど、もー完全に暴力団のシノギと同じですやん。権力持った
暴力団。こわー。これもやっぱりカタギは相手にしてなくて、暴力団絡みで
いかに金を引っ張り出すか、という駆け引きの話。
賭博の捜査とかも地道に緻密に描かれていて面白かった。

柔道青年が柔道おっさんになったごっつい強面の伊達と、女に入れあげる堀内。
妻との仲は冷え切っていてただめんどくさいから離婚してないだけ。
坂辺がひき逃げにあい、刑事でありながら暴力団に付け狙われる堀内。
警察手帳を奪われるという失態をなんとかすべく、後半は怒涛の勢いで動く。
前半も面白かったけど、やっぱ後半の勢い、事件が繋がり明らかになっていく
のはすっごく面白かった。

恐喝。裏金。接待。情報の流し合い。まあこれはフィクションですから、とは
思いつつ、実際暴力団相手に毎日仕事って、きれいなだけじゃやってられない
んだろうなあと思う。こわー。
森本を追い込むあまり、街中での暴力沙汰。堀内は辞職しろや、ということに。
まー、なるよねー。警察の揉め事は隠蔽隠蔽!それでも伊達を庇いきって、
ちょっとかっこよかった。
けれども、伊達もまたずぶずぶの果てに問題になっていた。

優秀な刑事でいることと、悪に染まらずにいることは、両立できるんだろうか。
堀内や伊達の泥沼に自ら飛び込むよーな真似は賢くないと思うけど、とれる
とこからめいっぱい金とってやろーというのは、なんか、なんか、黒川さんの
話の中ではなんか納得してしまうというか。そーなっちゃうよねーと、思う。
森本のとこまで行く前でやめとけばよかったんじゃないの。
でもなあ。

この作品でもコンビの会話は魅力的。大阪中走り回ってて、千里中央とか江坂
だとか、ああ~その辺生活圏だったことがあるのでわかるわかるって思ったのも
面白かった。登場人物がすごく生きてる感じがするのね。上手いねえ。

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映画「ケープタウン」

*具体的内容、結末まで触れてます。


映画「ケープタウン」


南アフリカ、ケープタウン。
子どもが消えてゆく事件。植物園で発見された無残な女性の死体。
捜査にあたるズールー族のアリ、よき家庭人であるダン、酒に女に自堕落の極み
なブライアンという三人のチーム。
女性の交友関係を追ううちに、ドラッグ絡みの線が見えてくる。

オーランド・ブルームがやけに男臭いマッチョでだらしないダメ刑事をやるみたい
だな~。予告見るとかなり渋い重い映画みたいだ、と思ってはいた。
実際ほんっとーーーーーーに重くて見終わってから鬱々と苦しくて、映画館から
出てしばらく明るいひかりの中をぶらぶらして深呼吸して回復をはかった。
暑いけど秋の気配のある青空。綺麗に整えられた街。信号を守って行きかう車や
人。秩序。基本的に大体は法律で守られている暮らし。日本。

別に事実に基づいた事件というわけじゃないよね。お話。映画の中の出来事。
だけど、あまりにもやすやすと人が殺され、秩序が無視されているあの世界が
完全にフィクションと切り捨てるわけにいかない重苦しさが凄かった。
私は南アフリカに行ったことはない。スラム街もあるだろうが、近代的に発展
した綺麗な街もあるだろう。人種差別は撤廃されているはず。それでも根強い
差別はあるのだろう。
映画の中、ドラッグはあふれ子どもや弱いもの邪魔者は容赦なく、あまりにも
あっけなく死ぬ。殺される。
この映画がリアルなのかどうかは判断できないけれど。現実に繋がるところが
あるのだとは思う。

でもほんとは南アフリカに限った話じゃなくて。
日本でも行方不明の子どもはいるし綺麗に整えられた街ばかりでなく闇はあり、
差別もドラッグもあるんだろう。こんな風に目には見えないけど。こんなにも
ここまでも簡単に殺されたり銃撃戦が突然起こったりはしないと思うけど。

話としては、ああこれはもう殺されちゃうんだろう、とすぐ分かるんだけど、
やっぱりとても残酷で辛い。ダン。ああもー。こんないい人いい刑事はもう
真っ先に殺されてしまう。
重くつらい過去を背負い、乗り越えてきたかのようなアリ。秩序や法律や
警察そのものが頼りにならない状況で、理性や理屈を捨てるしかなくなったアリ。
ママを巻き込んでしまった。ママが殺されなくちゃならない理なんて一つもない。
一ミリもない。ママ。ママ。
砂漠で延々と科学者を追いつめ殴り殺して。自らの命もなくしてしまったアリ。
あの辛い子どもの時から、どれほどの努力と自制で警察官として生きてきたのか。
アリ。辛すぎる。生きてほしかったけど、アリにもう希望はなくなってしまった
んだろうなあ。

オーランド・ブルーム演じるブライアンは酒や軽めのドラッグ?浸りで女癖悪い。
鍛えた体見せびらかすように脱いでてくれて眼福~。らくがきみたいなタトゥー。
別れた妻とか息子にはダメ人間として嫌われているけど、アリやダンからは
そんな男だけど優秀だと信頼されている。
アリが主人公かな、と思うんだけど、やっぱり最後に残るブライアンが主人公
なのか。ブライアンにだけ、わずかに希望があるから。
妻を助けることはできたし、息子にほんのわずかだけでも歩み寄ることができた。
かつて差別主義者だったらしいブライアンの父の墓碑銘を最後には刻む決意が
ついていた。それが過去と折り合いをつけたということなのか、完全に決別する
決意がついたということなのか。。。
ダンを失い、アリを失い、この酷い事件の結末を見届けた男として、ブライアン
が主人公だったのかなあ。
実際優秀だったし。
オーリーかっこよかったあ。めっちゃむさくるしいんだけど、でも、それもまた
かっこよかったわ。女が釣れるのも納得。

上映時間107分。セリフは少なく淡淡とあっさりと展開してゆく。でもどのシーン
も強い。ここまで辛い重い気持ちになるとは、だけど、見てよかった。

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