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『鳥』(ダフネ・デュ・モーリア/創元推理文庫)

*ネタバレで書きます。


『鳥』(ダフネ・デュ・モーリア/創元推理文庫)

デュ・モーリア傑作集。
短編集ですね。「鳥」はヒッチコックの映画の原案? 映画をちゃんと見たこと
ない。この前BSプレミアでやってたのに、とっておけばよかった。映画はこの
小説とは違ってるんだろうと思うけど。いつかまた機会あれば今度こそ見よう。

8つの短編。著者は1906年ロンドン生まれ。1931年に作家デビュー。長編短編
戯曲や伝記も書いたそうです。あー「レベッカ」なら名前を聞いたことある、
というくらいにしか私は知らなかった。
短編それぞれに味わいが違っていて、さり気なく始まって読み進むうちに
がらっと景色を変えられてしまう感じ。すごく上手い。翻訳もいいのかな?
短編なのに、短編だからこそか、一つ読んで世界に取り込まれたあと、しばらく
ほわーっとなって、時間おかないと、という感じで、ゆっくり一冊読んだ。

「恋人」
「ぼく」とい軍隊上がりの若者の語り手が仕事終わりに映画を見に行って、
切符切りをしていた女の子に一目惚れしちゃって、ちょっと不思議な夜を
過ごした翌日、また映画に行くと彼女は消えていた。
実は彼女は連続殺人者だった、みたい。
その彼女ことはわからないままで、取り残されちゃったぼく。初々しく可愛い、
そして幻想的な感じがした。

「鳥」
ある日突然鳥たちが襲ってくる。
田舎のほうで家に閉じこもる一家。理由もなにも不明。最後に救いなんてなくて、
ただただ暗澹たる思いに放り出される。淡々とした不気味さが~。

「写真家」
海辺で休暇をすごす美しい侯爵夫人が、彼女を崇拝する町の写真家とひと時の
気まぐれな愛人関係を過ごす。休暇のあとにも彼女に執着しようとする写真家だが、
彼女にはそんなつもりはない。衝動的に崖から突き落としてしまう。
写真家の姉が、写真を手に、夫人に密かな脅しをかける。
って、二時間サスペンスみたいなネタなんだけど、実に優雅で退屈で、侯爵夫人の
ただ賞賛が欲しいがためにちょうどいい男を人として見てないとか、素晴らしく、
微細な描写を堪能した。

「モンテ・ヴェリタ」
年老いた「わたし」が語る思い出。モンテ・ヴェリタという外国の山。
かつて友人とその妻が消えた山。下界から孤絶したその山にある古い僧院の
ような建物。そこで暮らしているという人々。
ちょっとSFめいたことなのか?と思いながら読んだ。カルト教団のような。
でもこれも真相はわからない。だんだん狂気めいてくる感じのじわじわさが
すごく面白かった。

「林檎の木」
妻が死んだ男が、庭のみすぼらしい林檎の木が妻にそっくりだ、と思い始め、
その影に悩まされる話。神経症的な。
男が語る妻の様子がいかにも辛気臭くてああ嫌だ~と思うけど、使用人たち
の感じからするとそんなに嫌な奥様でもなかったかのような。
読んで実に嫌~な気分に囚われてしまう。上手い。

「番」
ん。結局白鳥の話かー。でも人が白鳥に変わった、って幻想に読んだ方が
いいなーと思う。

「裂けた時間」
ああこれはタイムスリップ、か。事故死で、でもその先で警察だとか住人
だとかに見られて認識されてるみたいで、意識だけじゃなくて実際に?
面白かった。
上流階級の奥様がこうずうっとしゃべり続ける感じ、なんだろうこういうの、
英国だな~~~と思う。

「動機」
幸せいっぱい、もうすぐ子供も産まれるという妻が突然自殺した。その動機を
なんとか探り出すよう探偵を雇ったサー・ジョン。
ブラックは妻のメアリーの過去まで丁寧に調べつくす。
記憶をなくして赤の他人の手にゆだねられていたメアリー。彼女は実は少女の
頃に何もわからないまま妊娠、出産していた。
段々に過去が明らかになっていく。哀しいめぐりあわせ。メアリー可哀想。
知らない方がいいこともあるんだよね。探偵が真相を隠すのがなるほどね
と思った。

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