『火焔の鎖』(ジム・ケリー/創元推理文庫)
*結末まで触れています。
『火焔の鎖』(ジム・ケリー/創元推理文庫)
1976年。農場に飛行機が墜落。生き残ったのは一人の娘と、赤ちゃん。
それから26年。死の床にあるマギーはある秘密を告白して息絶えた。
それは何人もの人生を狂わせる秘密だった。
シリーズ2作目。
前作ではとっても寒そう冷たそうだったイーリーだけど、この夏は猛暑という
ことらしい。生きるのに厳しそうな土地だなあ。
ドライデンの妻、ローラ。コンピューターにわずかな反応を伝えて、
アルファベットを綴るほとに意識がある、回復ってことになってて、その
意味不明な中にあるわずかな意味を成す単語がヒントになったりしてて、
ローラをこんな風に物語に参加させてくるのかと感心した。
ローラと同じ病室にマギーがいた、ということで成り立つのね。
赤ちゃんのすり替えによる人生の狂い。愛し合ったのに兄妹かと悲劇の中に
突き落とされるとか、信じてきた祖国のための働きが崩れ去るような思いに
なってしまうとか、もうほんとマギーの罪で子供たちが大変な目に。可哀想。
現在の、デートレイプポルノとか密入国の労働者問題とか、異常気象な暑さ
とか、ドライデンが追いかける事件はいくつも平行して、絡み合ったりそれ
ぞれに片付いたり。ドライデンがガンガン動き回るので、やっぱりなんか
時間の感覚がつかみにくい。挿入される過去エピソードは字体も変わるし章の
変わり目だから混乱はないんだけど。ドライデンがどこにいるんだ、と、
掴みづらいのは、うーん。私がしっかり集中して読まないからだろーか。
ハンフがやっぱり専属運転手で。タクシーと一体化してるかのよーで、かなり
臭いよーで、なんか。なんか。なんか、どーなの! すごくいいキャラで好き
なんだけど、臭いのは嫌だよ!(笑)
事件は次々起こるし、火事になるし、ドライデンは今度は火傷をおってしまう
し、派手そうな出来事があるんだけど印象としてはクール。よくわからない
所に連れまわされてなんとかついてって、最後でやっとわかった、と思える
感じ。面白くて一気読み!というタイプの小説じゃあないねえ。
リンドンの自殺、エステルのほうが実は殺したんだ、ってことを秘密に
しておくとか。ドライデンは刑事じゃないし杓子定規な正義を振りかざす
ことはない。
リンドンが自殺を選んだ家が実はローラが密かに用意していた二人の家、
ということで、ドライデンがいつも持っていた鍵がその場の鍵で間一髪
逃げられた、ってゆーのは~そんなのありか、と思わなくもなかったけど。
じわじわと、面白かったです。
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