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『機龍警察 自爆条項』上下(月村了衛/ハヤカワ文庫)

*結末まで触れています。


『機龍警察 自爆条項』上下(月村了衛/ハヤカワ文庫)

横浜港のコンテナに不審な情報があり警察と税関が事情を聞きに行ったところ、
いきなり男は隠し持ってた銃を撃った。
貨物船へ向かい乱射。警官隊が突入した時には自らの顔面を撃ちぬて自殺。
密かに運び込まれようとしていたのは、キモノ。機甲兵装だった。

今回もいきなり激しい幕開け。
今回のメイン人物は、ライザ・ラードナー警部。彼女は元IRF。テロリスト。
何故彼女はIRFに身を投じたか、何故そこから離れたかという過去が明らかに
なるお話でした。
アイルランド紛争の現実の歴史からこのフィクションの近未来まで、じっくり
描かれていて、過去篇のほうがすんなり読める。
現在東京のほうは、えっと、イギリスの外交官暗殺計画、その背後関係、
中国の裏社会と中国側の思惑、警察内部での対立、日本政治内部での思惑、
などなど絡んでの刑事事件的なところとパワーゲームみたいなところと、
たっぷりあった。警察内部、上層部に<敵>がいるらしい、という前作から
引き続きのまだ見えない大きな謎もあるようで、煽る~。これいつか完結
するとして、謎の敵がよっぽどじゃないと本投げることになるよー。どんな
駆け引きが今後あるのかすごく楽しみ。

ライザの妹。テロに巻き込まれた妹。登場の瞬間から彼女はきっと死ぬ、と
思ってしまう。それがライザの後悔と死への希求の源。
テロリストの幹部である通称<詩人>のキリアン・クイン。人をテロへと
駆り立てあやつり、彼の真意こそなんだったんだろう。テロリスト内部での
権力争いみたいな感じにも描かれていたけど。どんな組織にも覇権争いは
あるのか。テロリストの意志は理想や革命を掲げてもテロそのものになって
しまうのか。どんな理想や大義名分を掲げても、一般市民を巻き添えに殺す
テロが成し遂げる正義などありはしないだろう。
結局、捕まえたのにキリアンは中国絡みの自爆テロで死亡。これはほんとに
死んだと思っていい、のかな。もうテロリストの本心なんてわからない。
外交官は守り切ったし、ライザは生き残った。龍機兵を奪うという第三の
目的も防いだ。警察にも特捜部にも甚大な被害が出たけど、勝った、か。
しかし特捜部の厳しい状況は相変わらず、かなあ。警察内部での対立って
いうのが難しくて、夏川くんとか由紀谷くんが仲間に憎まれて可哀想で。
すっきりはしないねえ。

テロで家族が犠牲となり、誰よりもライザを憎む鈴石緑こそが、ライザと
心の痛みを感じあえるという哀しい皮肉。だからって分かり合えるわけは
ない。いつか二人の距離間は変わるのかなあ。
日本人とアイルランド人では生きる世界が違いすぎる。。。

クライマックスの機甲兵装での戦いは息詰まる迫力。ここはほんとハードに
アニメで見たい~。かっこよかった。

そしてタイトルにもなっている自爆条項。龍機兵に乗るものは龍機兵を奪われ
そうな時には自爆しなくてはならない、という契約があるという。自分ごと。
兵器を失うよりは死ね、という契約を結ぶからこそ、警察内部から搭乗者を
選ぶことはできず、姿やライザ、ユーリのような外部のプロを雇っていると
いう事実。警察官は公務員で、危険手当やなんかはつくだろうし、上の命令
には服従だろうけど、死ねというわけにはいかない、のか。軍隊じゃないから?
なかなかきな臭いところの微妙な問題なような気がするなあ。
難しい。。。
がっつり読み応えありました。次はユーリのお話になるのかな?ロシアなのか。
すごい楽しみ。

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