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『セカイからもっと近くに』(東浩紀/東京創元社)

『セカイからもっと近くに』(東浩紀/東京創元社)

現実から切り離された文学の諸問題

文芸評論として雑誌に連載していたものを大幅に書き換えて一冊にまとめた
ものだそうです。雑誌の頃のは知らないので何がどう違うのかはわかりません
が、文体を「ですます調」に変えたとのことで、たぶん印象は全然違うの
だろうなあと思う。

「セカイ系」という言葉がはやったのはゼロ年代。その「ゼロ年代」って
のもなんだかもう懐かしいねという気分です。きみとぼくとの小さな関係
が、世界の危機、この世の終りみたいな大きな問題に直結してしまうような
お話、みたいな感じ。
そういう「セカイ系」の困難、というのは「社会が描けない」という問題で
今では日本文化全体に広がりつつある問題だと著者は考えているようです。
その困難への答えを、本人の意図かどうかに関わらず、描き出している作家
ということで、新井素子、法月綸太郎、押井守、小松左京の作品の読みを
提示しています。

すごくわかりやすくて面白かった。
取り上げられている作家を私自身が一応は知っているし。セカイ系とその
困難、という問題もわかるような気がする。セカイ系になりすぎててもう
「セカイ系」って言われなくなってきてるんだろうなーと思う。
社会って、描かなくちゃダメかな? とも思う。でも描かれているものの
ほうが圧倒的に面白いと私は思う。セカイ系ばっかりになってしまうのは
やめてほしいなあと思う。
でも、小松左京のとこまで原点はある、みたいに見ていくんだったら、
大抵の作品は「セカイ系」みたいとこはある、と言えてしまうと思うんだ
けど。母性だのなんだのとか。
小松左京の女は古いとか感傷、とか、マザコンとか。まー言ってみれば
すべての男はマザコンですから。いいんだけど。小松左京、ちゃんと読んだ
ことないと思う。読む気をそがれるなあ。

小松左京の全盛期の頃、「未来」が流行っていたってちょっと面白かった。
未来って流行語みたいな感じだったのかね。今思う懐かしい未来、って感じ
はこのころの感じがあるからかなあ。
私、「未来」に入ってるけど、未来は別に未来っぽくないしやっぱり
確かに懐かしい未来な感じがする。60周年すぎてるわけだし。「未来」
という言葉が輝かしい頃つけた名前だったのかな、と、思う。


新井素子はぬいぐるみ含めて「家族」という存在がどうしても出てくる。
法月綸太郎は恋愛という他者を導入してみたらしい。
押井守は不能性の繰り返しの中にこそ希望を託す。
小松左京は子を産め、生殖への欲望を、という道で絶望を救う。
って感じかなー。
何にせよ、子どもなのか。

子どもを持つって、物凄く自身の世界観が変わるんだろうなあと思う。
そこを想像することはするけれども、実際には持たない私にとっては、
実際に凄く変わるということがないわけで、実感としてはわからない。
それを責められているような気がする。
被害妄想なんだろうけど。
そしてそれなら持たないひきこもり思考のままでいい、と思ってしまう。
これも勝手なネガティブ思考でしかないけど。
現実から切り離されたままでいたい。
て、それが問題ってことなんだろうけどー。けどー。けど。うーん。

押井守の「スカイ・クロラ」はそういう風に見るのか、とわかってちょっと
面白かった。森博嗣の原作のはたぶんシリーズ途中で読むのやめてる。
そしていまいちわかってなかった。
大体私はループものにピンと来ない。ルームもの、今でこそもう慣れたと
いうか、またか、ってくらいになってきてると思う。それはゲームな思考
と親和性があるみたい。私はゲームをほとんどやったことないままなので
リセットとかやり直しとかバットエンドだのトゥルーエンドだの、そういう
ところがうまく掴めていない気がする。平行世界っていうのには馴染める
んだけど、何だろう。おんなじように思っていいのかどうかがわからない。
うーん~。

この本のところくらいだとわかる、と思える。本当に理解できているか
どうかはともかく、読んで、認識がまた違う方向からクリアになって面白い
って思える。けど、これより後で、ラノベだの、最近の文学的な作品だの
っていうのは実際の作品をもうほとんど読んでないので私にはわからない
ことになってるのかなあと思う。
最近私が読むのは海外ものが多くなってきたし。BLすら10年前くらい
のを読んでるしな(^^;
ほんとの今の作品て、何が面白いんだろうなあ。私がもう面白いと思えなく
なっているんだろうな。うーんー。面白がれるようによく見てよく考えたい。

 はじめに
 第一章 新井素子と家族の問題
 第二章 法月綸太郎と恋愛の問題
 第三章 押井守とループの問題
 第四章 小松左京と未来の問題
  参照文献

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