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『神経衰弱ぎりぎりの男たち』  『犬と小説家と妄想癖』

*具体的内容、結末まで触れています。


『神経衰弱ぎりぎりの男たち』
『地球は君で回ってる』
『最後から一番目の恋』 (高遠春加/二見シャレード文庫)

シリーズで、神経衰弱ぎりぎりの男たち2,3ですね。
これ、一巻目の最初のお話を読んだときには、目が覚めたら自分が誰だか
わからなくって、隣には裸の男が眠ってて、自分も裸で、ええっ、俺、
どーなっちゃってんの!? という、お気楽大学生くんのバカップルみたい
な感じだったのに、3巻まで読むと物凄くずっしりした作品になっていて
凄かった。

七瀬くんは、明るく素直で可愛くて多少おバカではあるけどしっかりも
している、可愛い受だけど長男くんで相手をほっとけなくなるタイプ。
高槻匡一は同じ大学、二年上。医学部で成績トップで美形で、コンピュータ
とあだ名つけられるほどクールで学内でのちょっとした有名人。
七瀬がはずみで怪我をしてしまったことに責任を感じた匡一が、事故で
アパート潰れちゃって行き場のなかった七瀬を余った部屋に泊めることになり。
だんだん二人の距離が近づいて、っていったらまあありがちなお話。
匡一くんが、親に捨てられら子どもだった、という、いろんなのが彬かに
なるにつれて、その生い立ちがちょっとやそっとの孤独じゃなくて、凄かった。

父は実力派だけどメジャーじゃない元役者で、母親は不明で、義理の母とは
まったくの他人行儀で、父は15の時に亡くなり、二十歳の時には義理の母
にも出て行かれ、クールに完璧に、自分を律して勉学に励み、とはいえ
酒も煙草も女も男も適度に遊びこなし、他人を信じないし好きにも嫌いにも
ならないようにしてるのに人肌恋しくて一緒に眠る相手が欲しくて、傷つき
やすくて危うくて脆いのにポーカーフェイスが上手すぎて誰にも本心を見せ
ないとか、匡一くんが素敵すぎるかっこよすぎる。

匡一に恋してしまうまで自分が男と、っていうのを想像すらしたことない
七瀬が怖がるのを余裕で待つのも煽るのもよかった~。こうじっくりと
いくのが素敵。可愛い。セクシー。

一冊に二つほどお話があって、それぞれの時間軸が前後してて、一作目より
あとに出会いがあったりでこれは文庫本三冊一気読みできてよかったなあ。
高遠さんは今は「高遠琉加」という名前にしている。神経衰弱の本が最初の
単行本?1999年の発行。
最初の話だけだったら、ふーん、くらいなもんだけど、次の出会いの話で
ぐっとつかまれてしまいました。
二冊目が2000年、三冊目が2001年ですね。最初の話以外は書下ろしみたい。
雑誌で短いのを読むよりは、じっくり長編がいい作家さんなのかなあ。

最後の番外編は、匡一くんの父、俊哉の決して叶わない思いで。
なんという切なさ。BLというよりはJUNEって感じの味わい。
親の因果が子に報うみたいな話はあんまり好きじゃないんだけど、匡一の
過去を見て、俊哉さんと匡紀さんの話を読めたのはよかった。
しかし生みの母、三重子さんよー。ひどいじゃないのー。いやでも、
恋はねえ。仕方ないねえ。哀しい。

最初のお気楽大学生カップル、みたいに思ってたところから、こんなにも
辛いところまできてしまうとは。
さびしい子どもには、ただ手を、手を握ってて離さないで、側にいてくれる
大事な大好きな人が必要なんだよ。
ほんとうはただそれだけ。
匡一くんと七瀬は幸せになるだろう。
俊哉さんがただ一つ望まれて果たせなかったこと。ただ幸せになって、という
願いを、匡一くんはきっと叶えると信じられる。
匡紀を失って、抜け殻になっても匡一くんを育て、育ててもやっぱり匡紀では
ない子どもを捨ててしまった俊哉さん。12の時に疾走したってのは、
出会ったころの匡紀さんの年と近くなって、やっぱり違う、って思ったり
したのかなあ、と、想像する。
やりきれない。
愛していただろうに。あまりにもからっぽになってしまっていたとしても。
幸せになってね。

匡一くんの周りにちゃんと直巳さんみたいなご近所さんがいたり、実は
大事にされているという配慮があってよかった。すごくよかった。
匡一くんの「好きだよ」を言うタイミングだとか、きれいな手の描写だとか、
ものっすごく素敵。
私は高遠さんの小説が本当に本当に、大好きだなあと思う。ツボにくる~。

ちょうど『真夜中の相棒』読んだばかりでもあり。あれは二人ともがさびしい
子どもだったからなあ。二人の側に、お互い以外誰もいなかったからなあ。
切ない。

   *********************

『犬と小説家と妄想癖』(高遠琉加/ビーボーイノベルズ)

大学の時からの友人、不破と鮎川。鮎川をかばって自分が階段から落ちて
しまった不破は右手骨折。責任を感じて鮎川は売れっ子作家である不破の
仕事を手伝う。不破の小説は官能小説。口述筆記を手伝うってことは、
しっかり濡れ場を語り聞かされながらワープロをうつってことで。

これは単発かな。編集の沖屋さんのお話があるのかな? わかんないけど。
まあ可愛い感じでした。
これも恋人に、ってなった後にもなかなか抱かれることに恐怖と戸惑いが
あって鮎川くんがぐるぐるなのが。可愛いけれどもイラっともする(笑)
まあそうだよねえ。

これは2004年。この時にはもう名前変わってるのね。
そしてやっぱ、男が男に抱かれるなんて。俺はストレートなのに、みたいな
感じなのはちょっとなあ、と。この恋の前はまっとうにストレートだった、
みたいなのが神経
衰弱ぎりぎりのほうにも出てたけど、そういう差別的思い
込み発言がさらっとあるのは、まあ、まだまだそんな時代というか、そんな
世界というか、そーだったんだなーというか、そこは葛藤とタブー感がある
ほうがもえるってもんかもしれないんだけど。

ともあれ、高遠さんの本にはぐさぐさと心つかまれてまれてしまうことが多い。
好きだ。

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