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『フード左翼とフード右翼』(速水健朗/朝日新書)

『フード左翼とフード右翼』(速水健朗/朝日新書)

食で分断される日本人

 「食べるものを選ぶ」
 それだけで政治思想がわかる。

と見返しに煽りがあります。食べ物、食生活の違いで政治思想を分けるという
のは読んでみるとなるほど~、と納得させられそうにとてもわかり易かった。

フード左翼というのは、健康志向。オーガニックだとかスローフードとか、
ベジタリアンな方向。具体的には青山のファーマーズマーケットの話や、
有機野菜をつくって届けるところの話などがありました。
フード右翼というのは、ジロリアンだとかメガ盛りだとか、安くてチェーン店
で食の安全に拘りは少ない感じのところ。
なかなかその右翼左翼と分けられるものとイメージが私にはピンとこなくて
そこが難しかった。
右翼っていうと国粋だとかあのー、ゴツイ街宣車で何事か訴えるみたいな
イメージで、左翼っていうと学生運動で火炎瓶投げてましたみたいな。
そもそものその私のイメージがヘンで右翼左翼をわかってないんだ(^^;

食のグローバリゼーションというか、とにかく安く、とにかく大量にという
工業化したような不自然な食べ物に溢れている現在。それをやめて、もっと
自然に地産地消、新鮮な安全な食べ物のみを食べる、という感じがフード左翼
と名付けられている、かな。
それは都市部の在り方で、富貴層の在り方。
オリーブ少女の行く末で理想を追求する在り方。

そういう憧れは私にもないわけじゃない。雑誌のクウネルとか天然生活とか。
ヨガも軽いスピリチュアルもいいと思う。
けど、同時に何がオーガニックだ、ケッ、という気持ちもある。
青山の高級レストランで有機野菜のグリルに塩とオリーブオイルだけで
召し上がれ、みたいな感じには、どーしても馴染めない。
私は富貴層じゃないしおしゃれピープルじゃないしジャンクフード大好きだし
食の安全にあんまり心配持ってない。
青山のファーマーズマーケットねえ。国連大学のあそこ。何度か通りかかった
ことあるけど、そこで生産者と会話したりして新鮮野菜を買うとか食べる
とか、全然魅力を感じない。コミュ障には高すぎるハードルだろ。
それにそんなに「いいもの」を売ってる感じもしないんだよねえ。
私にその価値がわからないから、なんだろうけど。でもねえ。

私は地方の農家の娘だったので、ほんとに新鮮でとれたて野菜たっぷりで
育った。その有難味は全然わかってなくて、むしろうんざりしていて、
今家を離れてから、あー、あの食生活はなかなかいいものだったのかなと
少しは思うようになった。
とはいえ、別に有機栽培無農薬とかだったわけじゃない。
農業のうんざりするところをよーく知ってるので、素敵生活みたいに
有機野菜で手作り、みたいな農業の話にはどうしても、ケッ、という視線で
見てしまう。あと高級レストランの新鮮野菜、みたいな煽りもね。別に
ほんとの新鮮じゃねーだろ。流通の時点でいくら直送ったって時間たってる。
などなど、野菜関係のあれこれには素直になれない私が悪いんだけどさあ。

左翼のジレンマ、ということで多少触れられていたけれど、
実際本当に農業がすべて有機栽培になり、無農薬になり、遺伝子組み換えも
なくなると、世界の人口を賄うほどの食糧確保はできなくなるようだ。
今でも飢えてる人はたくさんいるのに、さらに食糧取れ高が減るように
舵取りしていくのは、都市の富貴層のエゴなのでは。
実際自分が食事をするときに、地球にはまだ飢えた人々が、といちいち
気にすることはできないけれど、ねえ。

著者もこの本の取材をへて、ゆるやかではあるがフード左翼側へ食生活が
変化したそうです。有機野菜自然食レストラン美味しいもんね、ということ
だそうです。ふーん。
富貴層うらやましいね。

っていう、もー、どーしても、都市部富貴層め。という恨み視線ばっかり
になってしまう私って、人間が小さい。

最後の方の、セントラルキッチンの考え、共産主義的なものみたいなんだけど、
今まさに求められている感じのことでは? と思ったけど、どうなんだろう。
集合住宅の真ん中にキッチンがありベテラン家政婦が食を賄い、保母がいて
託児所みたいのもあり、って、働く母親が欲しいものなのでは。戦前ドイツ
で挫折した試みのようだけど、今、ビジネス的にやってみるってどーなのか
なあ。今でも母親の手作りが賞賛される世の中みたいだから無理なのかなあ。
世の中の変化ってどのくらいなのか、いまいちはかりかねる。

政治思想が見える食というのはとても面白かったです。
フード左翼のほうへの私がもやもやと拒否感ある感じもちょっとはクリアに
見える感じがして面白かった。
毎度ながらこうわかりやすいなあ、とすんなりさっくり読めてわかる気に
なってしまう危うい~ということは肝に銘じつつ。読んでみてよかった。


 序章 「食の分断」から見えるもの
 第一章 政治と切り離せない食
 第二章 フード左翼とは誰のことか
 第三章 政治の季節から食の季節へ
 第四章 魔術化するフード左翼と民主化するフード右翼
 第五章 フード左翼のジレンマ
 補章  高齢者の未来食と共産主義キッチン
 終章  食から政治意識を読み解くということ

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