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『書楼弔堂 破暁』(京極夏彦/集英社)

*具体的内容に触れています。


『書楼弔堂 破暁』(京極夏彦/集英社)

時が明治というものに変わって二十年ほど。10歳ほどの頃に維新を経た
元旗本の家の出身である高遠は病療養で休職し、家族と離れて一人田舎住まい
をしていた。幸いいくばくかの財産はあり、すぐに食うに困るほどではない。
病と思いこんでいたのも、実は風邪をこじらせただけで治ってしまい、ただ
暇をもてあそんでいる。
そんな折、近くに品揃えのよい変わった本屋があると知る。
本屋の名前は弔堂。
人にとって本当に大事な一冊の本に出会えるように本を売っている。読まれて
こその本。本を成仏させたいという主。主は元僧侶であったそうだ。

6つの短編集、というところかなあ。語り手っぽいのは高遠。丁稚のような
少年がいて、主と、客と。人物としてはそんなところ。そして基本的には
本屋に客がやってきて、主と問答してその人に必要な一冊を主が売ってやる、
という感じ。
無駄などないのです、人が無駄にするだけです。みたいな決め台詞が
あるような。
終りのところでは、神職を継ぐ中禅寺さんが出てきて、京極堂の祖先、て
いうか、おじいちゃん?ひいじいちゃん?そのあたりかなあ。京極堂その
ものは弔堂の雰囲気。京極堂よりは弔堂の主のほうが親切な感じ(笑)
由良卿の名前も出てきて、ああ、地続きなんだなと思う。

それぞれ客というのが、月岡芳年、泉鏡花、不思議巡査という矢作、
井上圓了、ジョン万次郎に岡田以蔵、巌谷小波、と、なんだがゴージャス。
んで、ほとんど主との会話劇。
京極夏彦が自分が好きな人物と予言者となって会話してみたいっていう
話なのかしらと思う。弔堂に水木しげるがやってきても驚かないぞ(笑)

下人のゆくへは誰も知らない。
とばかりに、お話の終りは「誰も知らない」。
硯友社とか、ちょっと前に慶応三年のーとかの本読んでたし多少は
知ってたので、ふむふむなるほどこんな感じうんうん、って思いながら
読んだ。幕末のイメージもあるし。
でもなるほどこういう感じ、ってすんなりわかっちゃうのは、一般的
イメージ通りな人物像でしかないわけで。
彼らのなにがしかの変化のきっかけを与えたのが実はこんな主がいたりして、
っていうところはいいかもしれないけど、でも、人物像として新たな魅力
とか、主なり高遠氏なりに新たに惚れ込むってこともないわけで、ん~、
まあこんなもんか、って感じがしてしまう。
相変わらずの分厚さだけどするっと読ませる文章力はさすがで凄いんだけど、
もっと、もっと面白いのを読ませてくれ! と、私が期待してしまう。

てゆーか、もー、京極堂のシリーズやってくんないかな、って、待ちわびて
いるんだよぅ。エノキヅさんに会いたいです。

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