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映画「それでも夜は明ける」

*結末まで触れています。


映画「それでも夜は明ける」

ソロモンは自由黒人だった。バイオリンを弾くアーティストだ。奴隷ではない。
だが、2週間の契約でサーカスの興行の演奏を引き受けた後、奴隷商人に売ら
れてしまう。
ほんの数日前まで自由に生きていたのに、奴隷として鞭打たれ過酷な労働に
追われる。ただ生き延びるために耐える。

アカデミー賞、作品賞とったんですよね。
ブラッド・ピットが制作も関わってて、最後にソロモンを助ける役割になる
旅の大工をやってた。美味しいとこどり~。
ベネディクト・カンバーバッチも出ていて、最初の、ちょっと優しい、だけど
ヘタレなご主人さまだった。さすがベネたんいい声。うっとり。
でもちょっとくらい優しくて、ちょっとばかし理解があっても、奴隷の味方を
するわけはない、という普通の弱いご主人様。奴隷制度があたりまえに強固に
あって、黒人は買ったものの「所有物」であり私的財産である時代。
人間扱いじゃない。

自由黒人、というのとか、実際の事情や歴史を詳しく知っているわけじゃない
ので、同じ黒人でもどうしていろいろに違っているのか、あんまりよくわから
ない。地域差があったみたいというのはわかるけど。でも奴隷の中でも気に入
られて? 家族扱いになってるのかなんなのか、奴隷を使うほうの立場になった
ってご婦人もいたり。
主人の慰み者にされて、奥様に嫉妬されていじめられてたり、その微妙な人間
とも家畜とも違う辛い生きざまがひたひたと苦しい。
パッツィーがせめて体を洗いたいからって石鹸をもらいにいったことで激しく
鞭打たれたり。どうしてそこまでやれる?
人は、そんなにも冷たくなれる? 同じ人と思わずに人を追いつめられる、か。

読み書きできることを隠しながら、ソロモンがなんとか故郷に手紙を出そう
とするけれども騙されたり。
誰も信用できない孤独が恐ろしい。
自由に生きてきた記憶がむしろ辛いような。でもただただ絶望してしまう
こともできない。苦しい。

旅の大工、カナダの人の意識は、人間平等、白人も黒人も、ってことで。
そういう意識も同時代にあるのに、あそこでは奴隷は奴隷、なんだなあ。。。
ソロモンは12年奴隷にされていたらしく。その後解放運動とかしたらしい。
やっと家族のもとに戻れた時に、今更かえってきてごめん、って泣いたのが
辛かった。
12年。
長い。
そしてその死は謎に包まれているらしい。
殺されたのかなあ。。。

映画の最初は1841年だったと思う。南北戦争は1861年からか。

過酷で辛い映画だったけれど、とても静かな印象の映画だった。
ひたひたと果てしない絶望。
最後に一人自由を得たとはいえ、ソロモンの帰郷はあまりにもささやかな
救いだった。ヒーローはいない。失った時間は戻らず目の当たりにした
絶望は重すぎる。歴史や時間を静かにうつしだす映画だと思った。
今も昔も、誰しも当事者だ。
差別は、なくならないものかねえ。

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