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『死者の代弁者』上下(オースン・スコット・カード/ハヤカワ文庫)

*結末まで触れています。『エンダーのゲーム』のネタバレもしてるかも。
  


『死者の代弁者』上下(オースン・スコット・カード/ハヤカワ文庫)
  

  
人類が最初に接触した異星人、バガー。その戦いの後三千年。銀河各地に植民
していった人類は、再び別の知的生命体と出会う。
惑星ルジタニア。小さな豚に似た生き物をピギーと呼ぶ。人類の文明の影響を
与えることをしないように、最小限の接触で彼らを観察し理解しようとする。
ルジタニアのフェンスの中に暮らす人々。ピギーと接触するのは異類学者、
ゼノロジャー、ゼナドールというわずかな人に限られていた。
  

  
え、あれから三千年後? というので最初は混乱した。別の星のことだし、
別の異星人。別の文明という感じ。エンダーは? 
読み進むのも最初は苦労した。どういう状況なんだかわからないし、カタカナ
の言葉も用語もなんだかわかんないし。エンダーが出てきた、となってからは
いろいろ繋げて考えられるようになってやっと慣れた。
  

  
ちょっとしたミステリっぽい始まりでもある。ピギーの生活を解き明かそうと
していたゼナドールのピポ。何事かを発見した、というところで殺される。
バラバラに解剖され地面に置かれた死体。ピギーに悪意があるようではない。
しかし何故殺されねばならなかった?
  

  
「死者の代弁者」は、カトリックなどとは違う。宗教というわけではない。
だが、死者を代弁する。残されたものに、死者のあるがままの姿を。その行為
は癒しでもあるが傷を深めるものにもなりえる。
その「代弁者」であるアンドルー。彼は、光の速度で惑星間を旅し続け、三千
年の時を超えているエンダーだった。
エンダーの名は、最悪の虐殺者として知られている。
「窩巣女王」と「覇者」の書き手「死者の代弁者」がエンダーであることは
知られていない。その書によって、バガーとの戦いが不幸な出会いであったと
知られているが、それは異端の書でもある。
  

  
ついに別の知的生命体との出会いがあり、衝突があり、その事件を知った
エンダーは、死者の代弁者を呼ぶ声に答える。ルジタニアまで22光年。
ともに旅を続けてきた姉、ヴァレンタインと別れエンダーは出発する。彼に
とってはあれから20年あまり。30代半ばになっていた。
エンダーは、ルジタニアこそ贖罪の地になると感じていた。
  

   
子どもだったエンダーが騙されて抱えた罪。バガーを滅亡させた少年。
それがどうなるのかと思ってたけど、この物語で救いなんだなあ。
今度もやっぱり偉大なエンダーって感じなんだけど、それでも、ピギーと
人類の橋渡し役になり、窩巣女王を、抱えもってきた卵を、ルジタニアで
生かし、バガーの復活になる。孤独なエンダーに、コンピューターの中の
意識、みたいな、コンピューターの妖精? な、ジェインという人格の友人
というか恋人めいた存在があったのはちょっと救い。ヴァレンタインとは
恋人にはなれないし。ヴァレンタインはヴァレンタインで幸せに結婚し、と
いうことになってるし。
エンダーはここでようやく、旅人や代弁者でなく生きることを始められた。
自分のために生きていく場所になるんだなと思う。よかった。
  

  
異文化との出会い、という物語でもある。もう、出会ってしまった以上、
影響与えないということは出来ない。ピギーにとっては第三の生として樹
になることは名誉だけれど、人類にとっては惨殺でしかないとか。辛い。
文化人類学ってどうなんだとか考えてしまう。
さらに宗教めいたことも絡んできて、『エンダーのゲーム』の雰囲気とは
全然違うよな。ピギーとの出会い。エンダーの救済。人類の罪のやり直し?
壮大でありながらも、エンダー一人の物語でもあり、家族や愛の話。
窩巣女王が復活して、ルジタニアは人類とピギーとバガーとが暮らす惑星
になっていくのだろうというところで終わり。
エンダーの贖罪の話。
彼は、ここで初めて、自分の手で他の命を殺す。ピギーにとっての名誉で
あり頼みであるとはいえ、ヒューマンの血を手にあびる。ゲームと思って
バガーを滅ぼした時には感じなかった生々しさを、贖罪のこの時に味わわ
せるのかとぐっさりきた。辛い。でも、それが再生であるんだよなあ。
シュミレーションやコンピューターから、他者の代弁から離れ、エンダー
自身が生きる。そういう物語だと思う。
読み終わってとってもよかった。
『エンダーのゲーム』で終わりじゃなくてよかった。エンダーがこうして
生きてくれてよかった。
  

   
で、シリーズはまだ続くようなんだけど、ネットでちらほら見る限り
あんまり面白そうな感じでもないかなーと思う。まあ確かに、ルジタニア
はこのあとどうなっちゃうんだとか、ヴァレンタインがやってきて再会
するのかとか、ミロは一旦離れて戻ってくるのか、その時どう活躍する
のだろうとか、気にならなくもないけど、今の満足感だけでいいかなあ。
しばらくおいてまだ続き読む気になったら読もうかなというところ。
読んでよかったです。
  


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