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映画「ダラス・バイヤーズクラブ」

*具体的内容、結末まで触れています。

映画「ダラス・バイヤーズクラブ」

女好き。ドラッグキメまくり。ロデオで賭けをしてはズルく金を持ち逃げ
するカウボーイのロン。電気技師の仕事中、事故で病院に運ばれると、医師
に思いがけない病気を告げられる。エイズで余命30日だと。

1985年。エイズはホモセクシャルの間で感染する謎の不治の病だった。
私はニュースや物語程度でしか知らないけれども、あの差別と偏見に満ちた
空気を思い出した。ロンがエイズだと言われた、と酔ってしゃべると、昨日
までつるんでいた仲間たちは近付くロンを避け、ホモ野郎と侮蔑する。
医師は製薬会社の治験で危険な副作用がある薬を患者に処方する。
誰も何もわかってなかった頃。

アメリカでは認可されていない薬や治療を求めて、ロンはメキシコへ行く。
そこで回復してロンは未承認の薬を密輸。会員制クラブを始めて、薬を売る。
自分のため、他の患者のため、金儲けのため、世界各地で新たな薬を手に
入れて、アメリカの医師と対立するのだった。

途中から仲間になるレイヨン。最初はロンもホモ野郎って感じでがっつり
差別してたけど、ビジネスパートーなーになって、友達になっていくのが
ぐっときたー。
一緒にスーパーで買い物しているときに、昔馴染みにばったり会って、
そいつが相変わらずのホモフォビアなんだけど、レイヨンを紹介するの。
握手しろよ、って締め上げて。ロンとしてはそいつへの仕返し兼ねてって
感じでもあるんだろうけど、レイヨンがなんにも言わないけど、ふふん、て
ちょっと嬉しそうにするんだよね。可愛い~。
ロンは、レイヨンにドラッグやめろとか食事に気を付けろとかぶっきらぼう
ながらもちょいちょい心配する。ビジネスパートナーだからだけど。でも
同じ病気。死にたくない。死なせたくない。
しんみりしたり説教したりするようなシーンはあんまりないけど、その心配
や友情は偽りない。おまえに必要なのは、優しいハグとまともな食事、って
ことを言うシーンがあってうるっときた。
レイヨンは実はいいとこのボンボンみたいな感じだった。立派そうな父親が
いて、その期待の息子じゃなかった自分に苦しんでいたんだろうなあ。
必要なのは、そう、本当に、優しいハグだったんだと思う。恋人はいるけど
なんか刹那的な関係ばっかりだったのかなーと思う。
ロンがしたみたいな、シンプルな心配のやさしいハグを、もっと前から、
もっとたくさん、もらってればよかったのに。
ドラッグをやめられず、治験者にもロンよりはずっと長くなってたみたいで
あっさりと亡くなってしまった。
病院が殺した、と怒鳴り込んだロン。
でもレイヨンは、もう戻らない。

金儲け主義の病院が毒になる薬を与えた、病院が悪い、って決めつけて
しまえれば楽だけど、そう単純にも言えないよねえ。新しい薬の治験データ
をとることは必要だろう。AZTっていってたあれは、最初から副作用の危険、
というのを心配されてたけど、でも、新薬を何でもかんでもどんどん認可
していけばいいもんでもない気がするし。
人によって効く効かないの差はあるだろうし。ロンのようにすれば全員が
寿命が延びるよ、ってものでもないだろうし。
エイズはその後やっぱり緩和ケアのほうに力点がいってるんだと思う。
エイズの治療薬というよりは、免疫系高めて発症を抑えるようになって
るんじゃないかな。一時よりは不治の病としてただ恐ろしいとばかり言う
病気ではなくなっていると思うし、ホモセクシャルだけがかかるってわけ
じゃないというのもわかってる。それでも今でももちろん辛い病気。

これも実話ベースなんだよね。
ロンは、余命30日と言われたあと7年生きて、亡くなったようだ。
ロデオシーンで終わってた。
7年か。死ぬ心構え、できたのかなあ。死なないように必死だ、って
いうようなセリフがあったけど。生きてる感じを味わえたのかな。

マシュー・マコノヒーが20キロ以上痩せて役作り、だそうで。
確かにもう、とっても病人!で、大丈夫かと支えたくなるよねー。
ちょっと回復してた処でも、そうはいっても健康ではない、という感じ。
レイヨンのジャレット・レトという人もげっそりなってた。可愛いレイヨン
のシーンなんかもとっても素敵だったし、すごいよかったー。
これでもドラッグキメまくりで、おいおいアメリカ、と思うんだけど、
セリフが怒涛のように出てくるんじゃなくて、怒鳴ったりのシーンはある
けれども、黙ってる姿とか、ちょっとしたセリフに言葉以上の思いが見える
ようで、とってもよかった。抑え目だからこそひきつけられる。
見に行ってよかった。

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