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『ROMES 06 まどろみの月桃』(五條瑛/徳間文庫)

*結末まで触れています。


『ROMES 06 まどろみの月桃』(五條瑛/徳間文庫)

西日本国際空港。海の上の埋め立て地にできたひとつの島の空港。
そこの警備システム、ROMESで、税関の仕事にも協力できないか。そんな要請
を受けて、主に薬物の水際摘発のための作業が始まる。
始めは単純な下っ端運び屋を次々見つけることができたが、その簡単さに
成嶋は不審を抱く。背後にもっと大きなものが隠されているのではないか。

文庫になったーというわけでまた買う。書下ろしのおまけはなかった。
単行本が出たのは2011年の7月だったようだ。始めに、震災を受けた人々へ
力強いメッセージが書かれている。五條さんのメッセージは強く、熱く、胸
に響く。
この物語も、チベットから逃れてきた男が、民族の復讐を長年胸に秘め、
強い思いを、執念を、成就させる話。国を、民族を、語る五條さんの文章は
強い。八角浪夫の果てしないトラップ。空港では標的を守ったけれども、
最後までというわけにはいかなかった。空港の中では八角の計画に勝った
けれど、八角に勝ったわけではない。成嶋さんが警備システム至上主義から
人間へと目がむいた変化にときめく。より完璧なシステムにしたいという事
なんだと思うけど、システムだけでは対峙しえない人間の強い思想、信念。
かつての恩師を今なら少しは理解できるのかもしれないという変化。
成嶋さんの物語なのかなあ。
成嶋さんの変化を見てやっとそんな気がしてきた。

相変わらずのワンコな砂村くんはやっぱり健気でなかなかの不憫でとても
可愛い。探偵してる友人、堤のほうが成嶋さんに重宝されてるみたいだと
不機嫌な感じになったりしてめちゃめちゃ可愛い。大丈夫だよ、成嶋さん
になにかとこき使われて信頼されてるじゃないか!と励ましてあげたい^^

月桃のお茶、というのにひかれたけれど、そーいやまだ飲んでないなあ。
ネットでさくっと探して買ってみることもできるのかもしれないけど、
でも、沖縄に行けたらなあと思う。

ところで。脳内キャスト、成嶋さんは松田龍平になってる。いいよなー。
やってくれないかなー。あの中途半端なドラマはもうとにかくおいといて。
土曜ドラマくらいでやらないかなー。NHKさん。松田龍平で!

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『1995年』(速水健朗/ちくま新書)

『1995年』(速水健朗/ちくま新書)

1995年。日本の転機となった年の一つである。
阪神・淡路大震災、地下鉄サリン事件という大きな事件の起きた年。
ウィンドウ95のの発売などでインターネット元年とも言える年。

19年前。私は大学を出て臨時職員だった頃だなあ。未明の地震の揺れは
感じたものの小さいものだった。テレビで見て初めて大きな地震だったと
知る。職場でおじさんたちが、おいなんだかすごいことになってるぞ、と
時間がたつにつれて騒めいていったのを覚えている。市役所職員のおじさん
たちには単純に怖い以上に、それがうちで起こったら、ということを考え
たのかもしれない。

サリン事件もテレビで知った。
オウムの報道や雑誌記事には興味を持っていた方だった。いろいろな事件
報道、雑誌、結構ずっと追って知ろうとしていた。中沢新一ファンだった
りしたので、自分なりに身近に思ったように思う。隣人がオウムかもしれ
ない、という得体のしれない感じは地方にいた時分には、そこまでは思わ
なかった。やっぱりテレビで知る謎のカルトという感じだった。

エヴァの放送は地元のテレビではなかった。私がエヴァにはまるのはまだ
少しあと、ビデオを借りて見てというところ。パソコン通信を始めるのも
95年当時ではなく、その1,2年後だと思う。そこでどっぷりはまった。

この本は、「1995年」のことなので、その後どうなったこうなった
ということはごくごく簡単にしか書いてない。
私は読みながら、嗚呼そのあといろいろ変わったよねえ、と、多少知って
いることについては思いをはせ、よく知らないことについては、この本を
見て、ああそうだったっけ、その後どうなったっけ、と、ぼんやり思った。
こういうことが同じ年に起きていたんだなあと思う。

「1995年、誰もがオウムに夢中になった。日本社会対オウムの全面
戦争は、戦争を放棄した日本が久々に経験した戦争だった」(P205)

という記述になんとなく納得。テロという戦争が国内で起きたのだ。
別件逮捕で続々と捕まる信者。テレビ中継の上九一色村の施設へ警察が
踏み込んでいくシーン。すぐにも捕まるはずの麻原がなかなか発見されず
逃げたのではないかという緊迫感はつくづくテレビドラマのようだった。
優秀な日本の若者が何故こんなことを? というおびただしい検証も、
わかったようなわからないような。

政治、その時村山政権だったんだなあ。社会党かあ。そんな時もあった
ねえ。その後の新党ブーム。今もやってる議員さんたちがこの頃はまだ
比較的若手新進気鋭みたいなだったんだねえ。

1990年のバブル期と。その崩壊後の1995年は違う。1995年は
今への転換点と言えて、地続き、かあ。
なんとなく納得。
震災と、オウム。
あの時なんだか世界がぐにゃりと歪んで、平行世界の別のところへずれて
しまったような気がする。
2011年の時もね。
2001年の、9.11、アメリカの同時多発テロの時もね。
やっぱり世界がどこか、別のものへ歪み、ずれてしまったのではないかと
いう気がする。
そんなこんなを思い出し考える一冊でした。

  目次
  はじめに
  第一章 政治―ポスト55年体制の誕生
  第二章 経済―失われた20年の始まり
  第三章 国際情勢―紛争とグローバル化の時代
  第四章 テクノロジー―インターネット社会への転換
  第五章 消費・文化―オカルトと自己喪失の世界
  第六章 事件・メディア―大震災とオウム事件のあいだ
  あとがき
  年表

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映画「ダラス・バイヤーズクラブ」

*具体的内容、結末まで触れています。

映画「ダラス・バイヤーズクラブ」

女好き。ドラッグキメまくり。ロデオで賭けをしてはズルく金を持ち逃げ
するカウボーイのロン。電気技師の仕事中、事故で病院に運ばれると、医師
に思いがけない病気を告げられる。エイズで余命30日だと。

1985年。エイズはホモセクシャルの間で感染する謎の不治の病だった。
私はニュースや物語程度でしか知らないけれども、あの差別と偏見に満ちた
空気を思い出した。ロンがエイズだと言われた、と酔ってしゃべると、昨日
までつるんでいた仲間たちは近付くロンを避け、ホモ野郎と侮蔑する。
医師は製薬会社の治験で危険な副作用がある薬を患者に処方する。
誰も何もわかってなかった頃。

アメリカでは認可されていない薬や治療を求めて、ロンはメキシコへ行く。
そこで回復してロンは未承認の薬を密輸。会員制クラブを始めて、薬を売る。
自分のため、他の患者のため、金儲けのため、世界各地で新たな薬を手に
入れて、アメリカの医師と対立するのだった。

途中から仲間になるレイヨン。最初はロンもホモ野郎って感じでがっつり
差別してたけど、ビジネスパートーなーになって、友達になっていくのが
ぐっときたー。
一緒にスーパーで買い物しているときに、昔馴染みにばったり会って、
そいつが相変わらずのホモフォビアなんだけど、レイヨンを紹介するの。
握手しろよ、って締め上げて。ロンとしてはそいつへの仕返し兼ねてって
感じでもあるんだろうけど、レイヨンがなんにも言わないけど、ふふん、て
ちょっと嬉しそうにするんだよね。可愛い~。
ロンは、レイヨンにドラッグやめろとか食事に気を付けろとかぶっきらぼう
ながらもちょいちょい心配する。ビジネスパートナーだからだけど。でも
同じ病気。死にたくない。死なせたくない。
しんみりしたり説教したりするようなシーンはあんまりないけど、その心配
や友情は偽りない。おまえに必要なのは、優しいハグとまともな食事、って
ことを言うシーンがあってうるっときた。
レイヨンは実はいいとこのボンボンみたいな感じだった。立派そうな父親が
いて、その期待の息子じゃなかった自分に苦しんでいたんだろうなあ。
必要なのは、そう、本当に、優しいハグだったんだと思う。恋人はいるけど
なんか刹那的な関係ばっかりだったのかなーと思う。
ロンがしたみたいな、シンプルな心配のやさしいハグを、もっと前から、
もっとたくさん、もらってればよかったのに。
ドラッグをやめられず、治験者にもロンよりはずっと長くなってたみたいで
あっさりと亡くなってしまった。
病院が殺した、と怒鳴り込んだロン。
でもレイヨンは、もう戻らない。

金儲け主義の病院が毒になる薬を与えた、病院が悪い、って決めつけて
しまえれば楽だけど、そう単純にも言えないよねえ。新しい薬の治験データ
をとることは必要だろう。AZTっていってたあれは、最初から副作用の危険、
というのを心配されてたけど、でも、新薬を何でもかんでもどんどん認可
していけばいいもんでもない気がするし。
人によって効く効かないの差はあるだろうし。ロンのようにすれば全員が
寿命が延びるよ、ってものでもないだろうし。
エイズはその後やっぱり緩和ケアのほうに力点がいってるんだと思う。
エイズの治療薬というよりは、免疫系高めて発症を抑えるようになって
るんじゃないかな。一時よりは不治の病としてただ恐ろしいとばかり言う
病気ではなくなっていると思うし、ホモセクシャルだけがかかるってわけ
じゃないというのもわかってる。それでも今でももちろん辛い病気。

これも実話ベースなんだよね。
ロンは、余命30日と言われたあと7年生きて、亡くなったようだ。
ロデオシーンで終わってた。
7年か。死ぬ心構え、できたのかなあ。死なないように必死だ、って
いうようなセリフがあったけど。生きてる感じを味わえたのかな。

マシュー・マコノヒーが20キロ以上痩せて役作り、だそうで。
確かにもう、とっても病人!で、大丈夫かと支えたくなるよねー。
ちょっと回復してた処でも、そうはいっても健康ではない、という感じ。
レイヨンのジャレット・レトという人もげっそりなってた。可愛いレイヨン
のシーンなんかもとっても素敵だったし、すごいよかったー。
これでもドラッグキメまくりで、おいおいアメリカ、と思うんだけど、
セリフが怒涛のように出てくるんじゃなくて、怒鳴ったりのシーンはある
けれども、黙ってる姿とか、ちょっとしたセリフに言葉以上の思いが見える
ようで、とってもよかった。抑え目だからこそひきつけられる。
見に行ってよかった。

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映画「アメリカン・ハッスル」

*結末まで触れています。

映画「アメリカン・ハッスル」

クリーニング店を経営しているアーヴィン。パーティでシドニーと出会う。
アーヴィンはでっぷりしたお腹、可哀想な髪の毛は9:1分けで禿を隠す
いじましい努力の冴えない男なのに、余裕の態度、雰囲気があっていい、と
シドニーはひきつけられる。アーヴィンにとってもシドニーは他の誰とも
違う女だ、と、一目ぼれだった。
アーヴィンの裏の仕事は、贋作の絵や詐欺。シドニーも積極的に手伝った。
だがFBIのリッチーにバレて、他の詐欺師を捕まえる協力をさせられる。
リッチーの要求はエスカレートし、政治家の汚職にまで手を伸ばす。

てことで、詐欺師を使うFBI捜査官のほうがクレイジーになっていく様は
狂気で怖い~ってなってしまった。政治家、本物のマフィア。そんな相手
に関わりたくないアーヴィンの気持ちがよくわかるっ。
でも、アーヴィンに妻がいることに苛立ち、リッチーとも恋にし、女の
戦いが始まっちゃったり、嵌めるつもりだった市長の人柄にほれ込んで
いったり、なんとか、リッチーの裏をかいてこの件を終わらせないと殺さ
れそうなところまで追い込まれて、アーヴィンは閃いた。
FBIに乗りながら密かに200万ドルを消す。それをかたに、自分たちと
市長の身の安全を図る。

どんどんリッチーが突っ走って、FBIの上司の上司みたいな人も絡んで、
アーヴィンは乗り気じゃなかったのに~~と深みにはまっていくのにかなり
ドキドキした。
寂しいのとか人が苦手なのとか何もできないのといいながらもヒステリー
と減らず口で完全に相手を振り回し自己中な妻、ロザリンには最高にイラっ
とした!
シドニーもさ、いや、今女の戦いやらなくていいんじゃない?って諭したか
った。みんな、みんなそんなにハイテンションに突っ走らずに、ちょっと、
落ち着いてみようか、と、言いたかった(笑)
みんな芸達者ですねえ。

70年代。音楽もいっぱいよかったし。ファッションも過剰になんだか
どうかしてる感じが凄い。みんな髪の毛になんかしてるし。
しょっぱなのシーンが、アーヴィンがカツラっつーか、淡々と丁寧に、残り
少ない髪の毛をふんわりさせて、バーコードの中に増毛?入れて、糊?で
はって、禿隠しがんばってて、もーーーっ。それなのにその髪をリッチーが
オラ!って乱して、あああああっ。なんてことを! 大丈夫じゃねーよー!
と、ものすごくハラハラドキドキに始まったわ。
クリスチャン・ベールって英国男子だったのか、と最近認識しなおしたの
だけど、かっこいいってわかってるのに、見事にでっぷりもっさり太ってて
哀しい頭髪で、びっくりしちゃった。
天才的詐欺師!ってほどでもなくてなんか冴えない、なんか悲しいおっさん、
そんな姿が素晴らしい。
最後のひっかけは見事な大逆転だったけどねえ。なんか情けない。

女優二人も、お見事で。女優っ!!! 当然きれいなんだけど、それより
強烈な演技、キャラの個性見せつけられた。
暴走するFBI捜査官リッチーも。自分の策に夢中で、反対する上司殴るとか
ヒドイ。あげくに最後にははしご外されて可哀想。ブラッドリー・クーパー
もかっこいいのに、クレイジーな感じよかったなあ。
ところで殴られた上司の、氷上釣りの話のオチはなんなんだよ(笑)オチ
が聞けないというオチなのか。

一番可哀想というか、とばっちりは市長だったと思う。デビッド・リンチに
似てるな? と思ってしまって、これも髪ばっかり見てしまったけど。

これも実話をもとにした映画。もちろん面白く作り上げているとは思うけど、
かなりの無茶苦茶をFBIもしてたりしたのかなあ。やり始めると冷静じゃいら
れなくなるのかなあ。こわいこわい。面白かった。

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『ロシア・ハウス』上下(ジョン・ル・カレ/ハヤカワ文庫)

*結末まで触れています。


『ロシア・ハウス』上下(ジョン・ル・カレ/ハヤカワ文庫)

ペレストロイカの頃、モスクワ。英国主催のブックフェアの会場で、
エカテリーナ・オルロヴァという女性がある原稿をニキ・ランダウに託した。
ミスター・スコット・ブレアに必ず渡してほしいと頼まれる。ランダウは
英国に帰国後、ブレアを探すが見つからない。そこで、英国情報部に原稿は
渡り、ブレアが探し出される。出版社の経営者であるブレア。
その原稿は、ソ連の軍事力に関する情報を記したものだった。

てことで、相変わらず名前が最初わからなかった。結局スコット・ブレアは
バーリーなのね。エカテリーナはカーチャなのね。ハリーというのは偽名で
オールド・ポールフリなのね。法務担当。ハリーの告白を聞いた男。最初、
誰かがこれを書いている、というのはわかるけど、誰なんだよハリーって
君は誰なんだ、と思いながら読む。情報部の法務担当。ハンナという愛人と
の関係を心の中で常に苦悩してる男。ポールフリの回想というか記録として
この作品がある。

謎の原稿を託してきた男は、かつてバーリーが飲み明かしたことのある
ゲーテと名乗っていた男。実はソ連の科学者ヤーコフ。ソ連のミサイルは
欠陥だらけ、という情報を渡して、本にして出版してくれ、と頼む。
なんか、まともな文章もなさそうな感じなんだけど、出版してくれ、という
執拗な情熱はなんなんだろうなあ。
ゲーテとカーチャ。
カーチャとバーリー。
カーチャは謎のロシア美女ってことなのね。子どもいるけれども魅力抜群。
バーリーは彼女を助けるために西側を裏切るんだけど、そうなっちゃうか
なあというのがなんだか唐突で、まあ、そりゃ、恋は突然恋は盲目だけど。

ル・カレのことだから、きっとこのバーリーが裏切るんだ。きっと最後には
死んじゃう、殺されちゃう。と覚悟しながらじわじわと読んだ。けど、
なんとバーリーは生きていた。裏切ったけど、生きてたー。びっくり。
バーリーには優しいじゃないか作者。どうしたんだよ。
冷戦後のスパイ小説、というところで作者も模索中なのかもみたいな感じの
解説があったけど、そうなのか。ソ連もペレストロイカ、グラスノスチ。
以前のように血なまぐさいことはしなくなる、という感じか。英国も。

この文庫の奥付は1996年4月発行。冷戦後、といってもまだ間もない頃
かなあ。スターウォーズ計画とかあったよなーと思う。軍縮に向けて確かに
アメリカの上の方はなにかと大騒ぎだったのかなあと思う。
CIAががっつり絡んできて、バーリーはCIAに使われることになる。

英国のロシア・ハウスチーフのネッド。『影の巡礼者』先に読んでいるので
なんか若造のころから知った気分がするんだけど。この作品では凄いデキる
男でハンサムでかっこいい感じ。これで失脚しちゃうのね。途中で一人、
バーリーの裏切りを予見したのに気の毒。。。バーリーめ、という気がする。
裏切るんじゃねーよー。
ネッドのジョーとして教育していく、というのぞくぞくする。厳しく優しく。
洗脳みたいなもんなんじゃないのかなあ。相手の心に強引に入り込んでいく
のって、とってもセクシー。ネッドのことをかなり好きになったので、
裏切ったバーリーが酷いと思う。カーチャを助けたかった、のだろうと思う
けど、けど、なんで。ネッドへの手紙がなんであったのか最後までわからな
くてもどかしい。そこは書いてくれよー作者ー。
そんなこんなの不満はありつつも、面白く読みました。
カーチャはやってくるのかな。ほんとにうまくいったのかな。

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映画「ウルフ・オブ・ウォールストリート」

*ネタバレしてるかも。 ネタバレ気にするような映画じゃない?

映画「ウルフ・オブ・ウォールストリート」

ジョーダン・ベルフォード。ウォール街で働き始め、やっとディーラーの
資格(?)を得て、さあこれから!というところでブラックマンデー。
失職し、新聞広告で見つけた株仲買人の募集に応募する。
そこは、店頭株のみ。小さすぎて大手は相手にしないような屑株の売買の
場だった。だが、手数料は50パーセント。
ジョーダンは、売りまくってがっぽり稼ぎ、自分で会社を興しさらに稼ぐ。

ディカプリオの超絶ハイテンションの熱演!演説!クレイジー!
アカデミー賞とれるといいのにねえ。とればいいのにね。
しょっぱなからせっくすとドラッグてんこ盛り。18禁映画だけど納得。
ふぁっくーみたいなセリフばしばし。やーほんと、ディカプリオよくここ
までやるよね~~。おっさんだ。ちょっとだらしないボディのおっさん。
でもやっぱりディカプリオ。
ふっとした瞬間、あやうくて、儚くなる。
ずるくて汚くて、無茶苦茶でドラック中毒セックス依存ありえなバカ騒ぎ。
なのに、きゅんとさせられる瞬間があるって凄い。
私が美少年のころから見てるよディカプリオ~、という思い入れがある
せいでもあるのだろうけども。でもディカプリオならではの奇跡のバランス。

株取引関係で違法で捕まったりなのか? でも、ドラッグはあんなに
無茶苦茶やっててもお咎めなし? あるけど描写してないだけ? アメリカ
ってドラッグなんでもオッケーだっけか?? と不思議なほどドラッグ漬け
なんだけど。レモンってやつでヘロヘロになって、転がりながら車に乗って、
っていうあそこ凄かったなあ。金持ちの集まるクラブハウスみたいなんじゃ
なかったっけ。あんなのがそこで転がりまわってて放置? それが金持ち?
それがアメリカ? わからん。。。

実話ベースのお話だそうで、これでも抑え目にしてるんだよ、ってこと
らしいけど、どんだけー。ドラッグでハイになって半分くらい夢なんじゃ
ないのか(笑)それもアメリカ、なのか。
堅物FBI捜査官が地下鉄につつましく乗っている。これもアメリカ。
波乱万丈の人生、って言っていうより10倍、100倍も波乱万丈な人生。
それでも懲りない男、ジョーダン・ベルフォード。こんな人生、体も心も
もたないだろーと思う。よく死んでないな。凄い。

顧客を、社員を煽りまくる演説シーンが何度もあり、素晴らしかった。
カリスマー!!!
もともとは学もキャリアもないそのへんのクズ寄せ集めで始めた会社。
そこで彼らもカリスマめいたディーラーになり、なんかわかんないけど
全社あげて稼ぎまくり儲けまくり。
最初の部下、副社長のドニーが、もう最高にイラっとくる~。もっと早く
切っておけばよかったんじゃないのかっ。そうもいかないか。ベルフォード
も完全に同じ穴の狢だもんね。

3時間ほど。長いよなあと始まるまで思って覚悟してたけど、見入って
ただただ圧倒されているうちに終わってしまった。懲りない男。
激しかったなあディカプリオ。
見逃さなくてよかった。

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映画「エージェント:ライアン」

*結末まで触れています。

映画「エージェント:ライアン」

 
学生のころ9.11のテロをロンドンでテレビで知ったジャック・ライアン。
そして軍隊で少尉になっていたが、ヘリで任務に向かう途中撃墜される。
酷い怪我をしたものの、生きてリハビリに努めるジャック。ある日、海軍の
ハーパー中佐がやってきた。密かに明かした身分はCIA。ジャックに、分析官
になってウォール街へ潜入しないかと、スカウトする。

てことで、トム・クランシーのジャック・ライアンのシリーズのリブート?
CIAに入って初めての任務、って感じのところのお話。
私はあんまりジャック・ライアンのシリーズに思い入れなんかはないので、
単純に新しいスパイもの、って感じで楽しく見た。

104分。
とってもコンパクトにさくっとまとまっていて、緊迫感もあり、最後に怒涛
の畳みかけもあり、楽しかった。
監督がケネス・ブラナーですってよ。ロシアの悪い奴として出演もしてた。
かっこよかった~。
結局ジャックにやられちゃうへなちょこなんだけど、ままならない立場で、
息子もテロリストにさせられて(?)、自身も病の身、ってね。辛いっすねー。

ジャックをスカウトし、上司となるハーパー中佐をケビン・コスナー。
もうすっかりしわしわじゃないか。おっさんだった。素敵おっさんだった。
かっこいい~。
ジャックを見込んで使う、ジャックが動くのに任せて後方支援テキパキ。
上にいてもらうにはいい上司なんじゃないかな。CIAとか警察とか、組織が
すごくテキパキ優秀!って感じなのがすっきりしてよかった。

ライアンは、30そこそこ、くらいな年齢設定なのかなあ。体を痛めたから
情報分析官であって、現場のエージェントをするつもりではないのに、
襲われ巻き込まれていく。襲われた相手を返り討ちにするんだけど、その後
手が震えてきてしまう、人を殺したことをどう乗り越えるのかとブルーに
なったりして、初々しい。一応最初から、分析のレポート出したりするような
軍人だった、ってことで紹介されてるので、なるほど軍隊で鍛えられた経験
があるんだろう、と、思う、けど、でもやっぱ超人だよねー。
まあそこは楽しいスパイ娯楽アクション。よかった。
ロシアから飛行機で脱出する間に、テロはどこだ、と、情報集めて推理して
いくシーンかっこよかった。物凄い集中で天才的ひらめきになって脳がフル
回転してんだろーなーという勢いの感じ、わくわくした。
クリス・パインの青い目素敵~。普通のサラリーマンぽくしてるとこも
可愛くて好きだった~。

ロシアとの経済戦争。テロを仕掛けて同時にドル売りで市場攻撃、ってこと
をやりたかったらしい。テロだけじゃなくて経済攻撃合わせて、っていうの
が現代的なのかなあ。単純に冷戦時代じゃないし、単純にテロリストでも
ないしというところか。
テロをとめれば経済攻撃もしない、っていうのは、なんか、そうなの? と
思わなくもないけど、(経済攻撃だけでもやればいいじゃん。でも効果が
あがらなさそうだからやめたのか?)そういう株価つーか通貨操作みたいな
ところは、わかりにくいだろうからさっくりさせたのかなあ。もうちょっと
ウォール街で働くからこそ、みたいなところがあればいいのにーと、思う。
けど、たぶん私がそういうのわかるわけでもないか、と、も、思う。

監督がケネス・ブラナーか、という私の思い込みがあるのかもしれないけど、
ハリウッドの新しいスパイアクション映画!どーん! っていうよりは、
もうちょっと引いた感じ、クールとシニカルが少しある、でもスカッと
楽しい現代のエージェント、って感じだと思う。満足した。

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『誰よりも狙われた男』(ジョン・ル・カレ/早川書房)

*ネタバレになっているかも。
 

『誰よりも狙われた男』(ジョン・ル・カレ/早川書房)
  

 
ドイツ、ハンブルク。背の高い痩せこけた若者が一軒の家を訪ねる。
チェチェン人だという青年はイッサという。ロシア語しか話せない。
庇護を求める彼には秘密の資金があるようだった。
  

 
ル・カレの新刊。だけど、訳者あとがきによると、『ミッション・ソング』
と『われらが背きし者』の間に入る作品とのこと。翻訳の順番が前後した
ということでしょうか。別に繋がってる話ではないみたいだからいいか。
しかもこれはもう映画化されてるんだって。フィリップ・シーモア・ホフマン
がバッハマンを演じてるんだって。先日訃報を聞いたばかりの。。。日本で
公開あるかなあ。あれば見たいなあ。
  

 
謎めいた、拷問を受け国を逃れてきたらしい青年イッサ。どうやらとても
美青年のよう。何もはっきりしたことは言わない。彼を助けようと奔走する
弁護士、アナベル・リヒターに、改宗してくれたら結婚しましょうとさらり
と言う。
でも別世界にいるかのようなイッサ。なんだろうこの不思議な感じ。夢の
王子様みたいな感触。でも突然紛れ込んできたこんな夢の世界の青年だから、
関わってしまった人の世界が少し狂う、というのは納得してしまう。
  

 
もちろん夢やファンタジーめいた小説なわけはなくて、とことん地道。
イッサは不法入国。犯罪者でテロリスト。イッサを巡って、ドイツの情報部
つーかなんかいろいろあってのドイツの憲法擁護庁? よくわからないけど
組織の人間が彼を捕まえようと動く。英国も彼を、というか、彼の秘密の
資金をひっそり管理していたプライベートバンクのブルーを欲しがって動く。
CIAも絡む。

善意の弁護士だったアナベル。父の銀行の跡を継いだトミー・ブルー。
それぞれにスパイなどとは縁遠かった彼らがイッサに関わり、情報部に
取り込まれ、動かされ、翻弄されていく。日常がいきなり非日常になり、
感情が動き、止まれなくなっていく。
そういう感じがすごくいい。

やっぱり読んでいる最中には何がなんだかどうなっていくんだか、登場人物
と一緒に見えない暗い中にいて、つまんない眠たいとか思ったりするんだけど
やっぱり心もいつの間にか掴まれていて揺さぶられていて最後には唖然として
終わってしまう。CIA酷いじゃなーい。英国はどこまで知ってて関わってた?
ギュンター・バッハマンがなんだか気の毒。
テロとの戦い。911後の、アメリカとイスラムの戦い。国家や組織では
なく、テロとの戦い。唐突で単発で何が誰の正義なのかわけがわからない。
イッサは本当にテロリストなのか?
ドクトル・アブドゥラは本当にテロリストの資金源なのか?
明確な答えはない。

英国のイアンはなかなかかっこよさそうな気がして好きだったな~。
 
ル・カレの作品そこそこ読んできたし、きっとこんな風に突き放されて
終わってしまうんだ、って思ってるのに。最後にまた茫然として取り残さ
れて、作者酷い、と、人生振り回された気分に浸る。
面白かった。

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『点滅』(榮猿丸/ふらんす堂)

『点滅』(榮猿丸/ふらんす堂)
  

 
著者第一句集。
句集をわざわざ買うことはあまりないのだけれども、いくつかの句を
見るにつけやっぱり自分で欲しいよーとなってしまって買った。
サイン本ゲットしたぜ。
  

 
  汝が腿に触れジーパン厚し夕薄暑 
  

 
この句が書いてありました。ああ。触るのねえ。触るよねえ。くー。
  

 
2002年から2012年に作られた句、330句を収めたとのこと。
厳選されたのかなあ。付箋つけながら読んだけど、あれもこれも、全部、
全部つけたい、って思うほど。かっこいい。はー。惚れる。
  

 
作者は男性、というのは知っているので、基本的には作り手男性と思い
ながら読む。相聞、っていうのかなあ、恋の句にひかれる。うっとり。
なんかねー、けっこうぞんざいだったり武骨だったりする男の手、って
感じる。それが繊細になる瞬間みたいな気がする。力強いのに不意に
優しいみたいに思ったりする。というか、そういう自分の理想とか好み
とかを投影して読んでしまう。えろい~、と、思わせるのが凄い。
惚れされる句なんだよねー。かっこいい。
  

 
俳句はやはり余白が多いと私は思うので、一句の背後の広がりに妄想投入
しようとすればどんどんいってしまう。あんまりそういうのよくないの
かなあ。わかんないけど。
句が強いので、どんどんいってもゆるぎない感じがしてますますうっとり
してしまう。かっこいい。

好きな句、いくつか。
  

 
  喉まで釦責めなり休暇明

ちょっと長い休暇の後でしょうか。釦責め、っていうのが素敵。是非
ネクタイスーツもキメて眼鏡男子であってほしい。 

  風邪薬拒む子の口ゆるびたり
  

 
子どものことを描いている句がけっこうあるな、という印象だった。
私の好みとしては子どものは好きじゃないんだけど、この句はどうしても
何度も目にとまる。口が「ゆるびたり」がなんだかセクシー。風邪で熱っ
ぽく苦し気だったりするのに薬は嫌だっていうのね。その口元。あー。
ほんとすみません。ぞくっとくる子どもの色気だと思う。これ好き。
  

 
  合成樹脂の聖樹ボール紙の天使

クリスマスツリーかなと思うんだけどどうでしょう。手触りのある句。
合成やボール紙と聖樹、天使のとりあわせがとても素敵。

  春の潮脈打つものを喰ひにけり

ほんとはシンプルに、まだ活きのいい海産物を喰う、のだろうけれど
恋人をくってしまう、というえろす目線で読んでしまう。いいなー。
いいなー。さわやかっぽいのにむしろえろす。
  

 
  別れきて鍵投げ捨てぬ躑躅のなか

好き。捨てないで鍵は返しましょうよ。いや、鍵を自分に返されたの
かなあ。返された鍵なんかいらないのか。いやでも鍵は大事にしようよ。
でも捨てちゃうんだよねー。かっこいい。

  蟻払ひ蟻の頭残る腕なる

蟻に噛まれた腕。ぞくっとくる小さな残酷が素敵。自分が死神になった
ささやかな瞬間を思う。怖くて素敵。       

  三本の指にもの食ふ大暑かな 

  靴干せばいちにち家や草の花 

  グラウンド灼けをり蛇口上向けり

  責められて嗤ふをとこや法師蝉

  暖房の室外機の上灰皿置く

  秋風や路地に灰皿あれば寄る


豪快な感じがなんか好き。煙草を吸う人なのかな。飄々と、でもちょっと
くたびれながら煙草吸ってる姿が絵になる感じのようで好き。
(「蝉」の字が出せない。つくりの上、口ふたつのやつです)

  雪の教室壁一面に習字の雪

  監視カメラ毎秒一コマ花散るのみ

しんと冷えた、凍りついた張りつめた世界の緊迫感がある句。視覚的で
よく見える上に、冷たい空気を感じると思う。今が寒い冬だからっての
もあるか。「花散るのみ」は桜だろうけど、花冷えって感じ。 

  春の夜の時刻は素数余震に覚め 

  春の雨いきものはみながまんする 

  蛍光灯はづせばぬくしけものめく

これも春だけど、寒い春、と思う。「余震に覚め」る春の夜は冷たい。
すごくリアルにこの感覚に共感する。
蛍光灯の温度。やわらかい生き物じゃないんだよな。ガラスの手触りで
「けものめく」温度。その夜の薄闇の感じを思う。

  舌出せば眉上がりたる氷菓かな

これはちょっとおどけた可愛い句。誰でも自分が好きな人の顔を思い
浮かべればいい。私はねー、ベネたんの表情を思って好きです。お茶目。

  わが手よりつめたき手なりかなしめる 

  愛かなしつめたき目玉舐めたれば

  口中に母音重たし春のくれ

  日覆や通りの女すべて欲す

  ベランダに名月を見るふうんと言ふ

  手を入れて汝が髪かたしクリスマス

恋の、えろすの句と思って好きなやつ。うっとり。何してんの。でも
感触が冷たいのがとってもかっこよくて素敵。激しさがあるのに冷えて
いる。
全然違うって思うんだけど、高村薫の『照柿』を連想する。灼熱に燃え
るのに、冷えているんだよね。どろどろに溶けるのに硬質なんだよね。
好きだ。
 
引用しすぎたかなあ。これでも控えたつもりだけど、ほんともう全部
素敵です。全然まとまりませんが、買ってよかったということです。

喉まで釦責めなり休暇明 (P19)
風邪薬拒む子の口ゆるびたり (P25)
合成樹脂の聖樹ボール紙の天使 (P26)
春の潮脈打つものを喰ひにけり (P31)
別れきて鍵投げ捨てぬ躑躅のなか (P35)
蟻払ひ蟻の頭残る腕なる (P39)
三本の指にもの食ふ大暑かな (P44)
靴干せばいちにち家や草の花 (P49)
わが手よりつめたき手なりかなしめる (P55)
愛かなしつめたき目玉舐めたれば (P66)
口中に母音重たし春のくれ (P71)
舌出せば眉上がりたる氷菓かな (P85)
グラウンド灼けをり蛇口上向けり (P87)
日覆や通りの女すべて欲す (P89)
責められて嗤ふをとこや法師蝉 (P91)
雪の教室壁一面に習字の雪 (P100)
暖房の室外機の上灰皿置く (P102)
春の夜の時刻は素数余震に覚め (P152)
春の雨いきものはみながまんする (P153)
蛍光灯はづせばぬくしけものめく (P153)
監視カメラ毎秒一コマ花散るのみ (P154)
汝が腿に触れジーパン厚し夕薄暑 (P157)
ベランダに名月を見るふうんと言ふ (P171)
秋風や路地に灰皿あれば寄る (P176)
手を入れて汝が髪かたしクリスマス (P180)

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『悪魔が本とやってくる』(吉野朔実/本の雑誌社)

『悪魔が本とやってくる』(吉野朔実/本の雑誌社)
  

 
吉野朔実劇場。
このシリーズも何冊目かな。2013年7月刊行だ。気づいてなかった。
本の紹介というよりはその本を読んだときのエピソード漫画。本読み仲間
たくさんで、みんな楽しそうで、とっても羨ましい~。あ、同じ本読んで
ます、というのが出てくるとちょっと嬉しい。この吉野さんの仲間たちの
中に入れたらいいのに! と、すごく思う~。
  

 
この本を読んで、じゃあこの中の本を読もう! とそれほど積極的に思わな
いのも不思議なところ。私自身が好みが偏って固まってしまっててダメ
なんだけど、でも、どーもたぶん吉野さんが面白いとか盛り上がるとかの
ツボが自分とは違うんだろうなあと感じている。
一人カズオ・イシグロフェアをしてしまうとか、わかるんだけど、でも、
私も 孤児だったころ とか 私を離さないで を読んだけどでも、
さらにもっと、ってならなかった。
吉野さんの作品は大好きだけど、好きなものが同じではないんだよなあ。
同じじゃないから作品を愛したり面白く思ったり打ちのめされたりする
んだと思う。友達になれない距離がいいのかもしれないと思う。ひたすら
遠くに仰ぎ見て憧れていたい。同じ本を読んでもうんうんってわからない
ほうがうれしいのかもしれない。
  

 
エルディシュの本、私も読んだ。そして子供のことをエプシロンと呼んだ、
(イプシロンじゃなかったっけ?と思ったけどおんなじか)というエピソ
ードが大好きで印象に残ってる。そこを描いてあったの嬉しかったな。
  

 
あとミレニアムを読むかどうか迷ってると。私もまだ迷ってる(笑)この
連載からはもう時間たってるから吉野さんはお読みになったのだろうか。
三部作かあって思ったのと、映画にもしも続きもなるなら映画先に見たい
って思うのと、でももう映画はないかもしれないなーと思ったり、うーん。
そして作者は亡くなってしまって(若いのに急死だっけ?)実はきちんと
完結してないらしいとか。うーんー。でもなー。読もうかなあ。迷う。。。
  

 
そしてやっぱりマキューアンをもうちょっと読もうか、とか、バリー・
ユアグローってのにちょっとそそられたけどでも好きじゃないかもとか、
あれこれ思う。ん~。読もうかなあ。
  

 
2ページだったりする短さの中でさらっとしててかっこよくってやっぱり
大好き。カクカクっとした硬そうな絵もなかなか好き。でも吉野さん、
ピリオドだっけ、漫画の続きはどうなってるんでしょうか。。。漫画を
読ませてくださいと、願ってます。
  

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『死者の代弁者』上下(オースン・スコット・カード/ハヤカワ文庫)

*結末まで触れています。『エンダーのゲーム』のネタバレもしてるかも。
  


『死者の代弁者』上下(オースン・スコット・カード/ハヤカワ文庫)
  

  
人類が最初に接触した異星人、バガー。その戦いの後三千年。銀河各地に植民
していった人類は、再び別の知的生命体と出会う。
惑星ルジタニア。小さな豚に似た生き物をピギーと呼ぶ。人類の文明の影響を
与えることをしないように、最小限の接触で彼らを観察し理解しようとする。
ルジタニアのフェンスの中に暮らす人々。ピギーと接触するのは異類学者、
ゼノロジャー、ゼナドールというわずかな人に限られていた。
  

  
え、あれから三千年後? というので最初は混乱した。別の星のことだし、
別の異星人。別の文明という感じ。エンダーは? 
読み進むのも最初は苦労した。どういう状況なんだかわからないし、カタカナ
の言葉も用語もなんだかわかんないし。エンダーが出てきた、となってからは
いろいろ繋げて考えられるようになってやっと慣れた。
  

  
ちょっとしたミステリっぽい始まりでもある。ピギーの生活を解き明かそうと
していたゼナドールのピポ。何事かを発見した、というところで殺される。
バラバラに解剖され地面に置かれた死体。ピギーに悪意があるようではない。
しかし何故殺されねばならなかった?
  

  
「死者の代弁者」は、カトリックなどとは違う。宗教というわけではない。
だが、死者を代弁する。残されたものに、死者のあるがままの姿を。その行為
は癒しでもあるが傷を深めるものにもなりえる。
その「代弁者」であるアンドルー。彼は、光の速度で惑星間を旅し続け、三千
年の時を超えているエンダーだった。
エンダーの名は、最悪の虐殺者として知られている。
「窩巣女王」と「覇者」の書き手「死者の代弁者」がエンダーであることは
知られていない。その書によって、バガーとの戦いが不幸な出会いであったと
知られているが、それは異端の書でもある。
  

  
ついに別の知的生命体との出会いがあり、衝突があり、その事件を知った
エンダーは、死者の代弁者を呼ぶ声に答える。ルジタニアまで22光年。
ともに旅を続けてきた姉、ヴァレンタインと別れエンダーは出発する。彼に
とってはあれから20年あまり。30代半ばになっていた。
エンダーは、ルジタニアこそ贖罪の地になると感じていた。
  

   
子どもだったエンダーが騙されて抱えた罪。バガーを滅亡させた少年。
それがどうなるのかと思ってたけど、この物語で救いなんだなあ。
今度もやっぱり偉大なエンダーって感じなんだけど、それでも、ピギーと
人類の橋渡し役になり、窩巣女王を、抱えもってきた卵を、ルジタニアで
生かし、バガーの復活になる。孤独なエンダーに、コンピューターの中の
意識、みたいな、コンピューターの妖精? な、ジェインという人格の友人
というか恋人めいた存在があったのはちょっと救い。ヴァレンタインとは
恋人にはなれないし。ヴァレンタインはヴァレンタインで幸せに結婚し、と
いうことになってるし。
エンダーはここでようやく、旅人や代弁者でなく生きることを始められた。
自分のために生きていく場所になるんだなと思う。よかった。
  

  
異文化との出会い、という物語でもある。もう、出会ってしまった以上、
影響与えないということは出来ない。ピギーにとっては第三の生として樹
になることは名誉だけれど、人類にとっては惨殺でしかないとか。辛い。
文化人類学ってどうなんだとか考えてしまう。
さらに宗教めいたことも絡んできて、『エンダーのゲーム』の雰囲気とは
全然違うよな。ピギーとの出会い。エンダーの救済。人類の罪のやり直し?
壮大でありながらも、エンダー一人の物語でもあり、家族や愛の話。
窩巣女王が復活して、ルジタニアは人類とピギーとバガーとが暮らす惑星
になっていくのだろうというところで終わり。
エンダーの贖罪の話。
彼は、ここで初めて、自分の手で他の命を殺す。ピギーにとっての名誉で
あり頼みであるとはいえ、ヒューマンの血を手にあびる。ゲームと思って
バガーを滅ぼした時には感じなかった生々しさを、贖罪のこの時に味わわ
せるのかとぐっさりきた。辛い。でも、それが再生であるんだよなあ。
シュミレーションやコンピューターから、他者の代弁から離れ、エンダー
自身が生きる。そういう物語だと思う。
読み終わってとってもよかった。
『エンダーのゲーム』で終わりじゃなくてよかった。エンダーがこうして
生きてくれてよかった。
  

   
で、シリーズはまだ続くようなんだけど、ネットでちらほら見る限り
あんまり面白そうな感じでもないかなーと思う。まあ確かに、ルジタニア
はこのあとどうなっちゃうんだとか、ヴァレンタインがやってきて再会
するのかとか、ミロは一旦離れて戻ってくるのか、その時どう活躍する
のだろうとか、気にならなくもないけど、今の満足感だけでいいかなあ。
しばらくおいてまだ続き読む気になったら読もうかなというところ。
読んでよかったです。
  


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花鳥佰歌集『しづかに逆立ちをする』批評会

花鳥佰歌集『しづかに逆立ちをする』批評会
  

 
 
昨日、2日、中野サンプラザに行ってきました。
単なる私一個人の主観による覚書メモです。発言を私がきちんと認識できて
いないことがあるかもしれません。間違ってることがあるかもしれません。
  

 
 パネリスト 黒瀬珂瀾、斉藤斎藤(司会)、田中槐、日高堯子
  

  
最初に田中槐さん。
花鳥さんの短歌には韻律音痴みたいなところがある。言葉やイメージの過剰
さが傷になることがあるが個性として強い魅力にもなっている。
「過剰さ」「特異な感覚」「動くひと」「観察者/幻視」というキーワード
で丁寧な歌のポイントの指摘。
私も花鳥さんの特異な感覚がヘンで面白いなあと思うところなので納得。
  

次に黒瀬珂瀾さん。
早足な歌だな、という印象。知性、機知で言いたいことを言い切る叙述的
な歌。旅に出ても自身の中のイメージを裏切られた歌はなく、早足に通り
すぎていく。歌には言い尽くさずこらえることも大事なのでは。
ナルシスティックな素のところが出る歌はいい感じ。
そうかー。早足な感じ、というのは納得。
 

次に日高堯子さん。
小説的な歌だ。物語的、というと、定型があり因果律があるものだが、
小説的とは、因果のしっかりしたものを突破し、ある中間で成立させている
のではないか。一首の一場面。この先はない、という感じ。
内面と関わっていない身体性。だからエロティックになっていない。「我」
が外側で記号のようになっている。
一首一首はくどいけど一冊では弱いかなあ。などなど。
すごく面白い発表でした。面白さの指摘はとても納得。でも好きないい歌だ
なあと思うのはさり気ない歌のほう、というのも納得でした。
  

司会を兼ねての斉藤斎藤さん。
人の欲望をものに代弁させてさらに擬人化、みたいな回りくどい表現、自作
自演的。でも勝手な言いぐさも強く突き抜けていってしまうとなんか許し
ちゃう。強さくどさも重ねて魅力に変える。などなど。
指摘はいろいろ納得できた。で、なんかもうここまでいくと許しちゃう、と
いう感じも、そうだなあと思う。なんだろう、そういう花鳥さんの個性で
あり魅力であるってことなんだろうなあ。
  

  
一通り終えてのわいわいとした話の中でも、知識で読者を選ぶのではないか
とか、過剰さ破調が傷になってるのとうまくいってるのと、それはたまたま
なのかいいのか、とか、面白かった。
もうちょっとうまくバランスとって、落ち着いて、つくると良くなるだろう
けれども、この花鳥さんならではの、まとまりきらない魅力を殺してしまう
ことのないようにしてほしい、など。難しい注文ですよねえ。
  

  
休憩後、会場から。やはり初期のころの歌が好きという声が多かったように
思う。花鳥さんの歌ならではのからっとした強い力みたいなところが魅力
なんですね。花鳥さんならではの個性、というのがちゃんとあるのがやっぱり
すごくいいなあと思いました。無難なうまい歌目指すってことじゃないの
かなあ。強いな凄いなと思います。
いいところ悪いところ、みんなが率直に話している感じがして面白かった。
参加できてよかったです。

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『しづかに逆立ちをする』(花鳥佰/六花書林)

『しづかに逆立ちをする』(花鳥佰/六花書林)
 

  
著者第一歌集。
  

 
なんだかゴージャス。それが第一印象の歌集である。石井辰彦さんの栞文
に「この歌人は、生活を詠って豪華であり豪快でもあるのだ」とあるよう
に、歌に出てくる小道具がなんだか煌びやかだ。羨ましくてかっこいい。
  

 
夢やイメージの世界が、私には思いもよらないような発想があってとても
面白かった。とてもヘンな感じがするものも多くて、ヘンだなあと思うの
が面白かった。単純なきれいではなくて、奇妙な感触。そういうところ
見るのか!? とびっくりしたりします。
  

 
歌集タイトルからして、「しづかに逆立ちをする」って。何故逆立ちを?
しかも静かに。
  

 
  九月の陽のむごきまで熱き午後なればひとりしづかに逆立ちをする
    (ひ)
  

  
この歌からのタイトルだが、何故。何故逆立ちをするの。わからないけど
なんだか不思議と迫力がある気がする。
 
時に内容が詰め込まれすぎなのかなあ、とか、逆に省略がすぎるのか?
不意に途切れるような歌とか、なんだか定型におさまりきらないような
歌もあって、そこもなんだか豪快なスケール感かと思う。不思議です。
 
桃の歌が目についた。お名前、漢字は違えども「モモ」なので、お好き
なのかなと思う。いいですよね桃。

 
ずっと本が好きで、ミステリーが好きで、小説家であったという花鳥さん。
たぶん花鳥さんとはレベルが違うでしょうが、私も本、ミステリー好き
なので勝手ながらとても親しみを持つあとがきでした。
 
いくつか好きな歌。
()はルビです。
  

 
 
  桃つつむ山梨日日新聞の沢田研二の唇(くち)の濡れをり
 
  失語症のうつはを抱へこころぼそく代官山をのぼりゆきたり
 
  ひたすらになんにもしない幸福に酔ひしれてをり波の音(ね)たかく
 
  あのころの東のスパイになりきつて襟を立てたりベルリンの雪
 
  どんぐりばかり食べておいしくなつたといふスペインの豚称へつつ食む
 
  オオアリクイの長き舌わが鼻を舐む桃の花の下まどろみをれば
 
  さりさりとうたひをりけりわが上の蛇の目の傘に落ちる五月雨
 

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