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『サラマンダーは炎のなかに』上下(ジョン・ル・カレ/光文社文庫)

*結末まで触れています。


『サラマンダーは炎のなかに』上下(ジョン・ル・カレ/光文社文庫)

マンディはインド生まれ、イギリス軍人の息子。オクスフォードで学ぶ途中、
学生運動に関わる。ドイツへ渡り、サーシャという小柄なカリスマに出会う。
騒動の最中、身を挺してサーシャを助け、不滅の友情を築く。

そして。
人生の寄り道の挙句、文化振興の仕事で東側に渡った時、サーシャと再会。
裏切りと秘密、情報提供の駆け引きに巻き込まれる。長年の情報部での仕事。
冷戦の終結。
語学学校経営をしていたが、また落ちぶれ、ドイツでルートヴィヒの城のひとつ
でツアーガイドの仕事にありつく。トルコ人の女性と息子と愛情を分かち合い、
小さな幸せに満足していたところに、またしても現れたサーシャ。
再び、世界を変える活動へ誘われる。
 
ル・カレはイラク戦争への怒りがかなりあるそうだ。この文庫は2008年、
実際書かれたのは2003年。解説には新聞に怒りの論文出したみたいなこと
があったりして、へーそうだったのか、と思った。
この小説でも、マンディは政治への怒りみたいなのをあらわにしている。
学生運動への関わりは、女性きっかけだったりして、へなちょこ学生な感じが
するんだけれどもね。でもその後またサーシャと情報部で関わり働き活躍して、
その気力というか、その力はどういうことなんだろうと思う。
相変わらずのル・カレでとっても淡々とそっけなく書かれているんだけど、
実はものすごい、という感じがとってもたまんない。何がなんなんだかわかんない、
つまんない、それなのに、凄いぞくぞくわくわくする。

テディ(毎度ながら外国小説のわかんないところだけど、エドワードでテディで
基本マンディって書いてあるのね名前)とサーシャの深い長年の友情のお話、と
いうことでドキドキして読んだわけです。
サーシャという名前でどうしても五條さんの革命シリーズを連想するんだけど、
まあ、カリスマ、という点では同じだけど、こっちのサーシャは別にハンサムで
なく小柄で足がちょっと不自由で、という男。情熱の男。世界の革命を夢見る男、
というのは同じかな。

テディに命を救われた時から、テディに対して絶対の信頼を寄せている。その信頼
っぷりは見ているとハラハラしてしまう。革命や活動で何故そんなに夢を見て
ばかりいられるんだ。純粋。純真。セカイにかかわろうとしているくせに、何故。
サーシャを見ているのが危うくて仕方ない。それはテディがいろいろ大人になり
ながらもサーシャを思う気持ちというのに私も同調してみているからかなあ。
最後まで、疑いながら駄目だとわかっていながら、サーシャを思う気持ち。

怒涛の終章ではもうずっと、泣きそうになりながら読んだ。別になにも感動を
かきたてるような描き方をしてるでもないと思うのに、淡々とそっけないのに、
ル・カレの小説には掴まれてしまう。目の奥が熱くなって、テディとサーシャが
可哀想で、辛くて。
学校が囲まれて、無防備な彼らに撃ち込まれるおびただしい銃弾。
最後までサーシャを助けに行くと叫んだテディ。
参った。

テロの制圧、とでっちあげの報道がなされ、真実は誰も知らない。知りようがない。
そんな事件として処理され消されたサーシャとテディ。
凄い。
参った。
 
もうさー。サーシャとテディはいっそ愛し合って二人で暮らす、ということに
なったほうがずっと簡単で二人の世界は平和で幸せになるんだよね。
もちろんそうじゃなくてそれぞれに色恋のいろいろはあるんだけど。
でも誰よりも何よりも、大切なかけがえのない相手。それを愛というんじゃないの。
それが愛なんじゃないの。君たち素直に愛し合いなさいよ。と、何度思ったことか。
でもそうじゃないんだよねえ。
出会ってから20年?30年? 学生運動に始まり、冷戦、スパイ。ともに戦った
二人。どうしようもなく純情だと思った。二人が愛しくて悲しくてたまらなかった。
やっぱ面白いなあ。すごいなあ。大好きだなあ。

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