『無伴奏ソナタ』(オースン・スコット・カード/ハヤカワ文庫)
*具体的内容に触れています。
『無伴奏ソナタ』(オースン・スコット・カード/ハヤカワ文庫)
エンダーのゲーム
王の肉食
呼吸の問題
時蓋(タイムリッド)をとざせ
憂鬱な遺伝子(ブルー・ジーンズ)を身につけて
四階共同便所の怨霊
死すべき神々
解放の時
猿たちはすべてが冗談なんだと思いこんでいた
磁器のサラマンダー
無伴奏ソナタ
短編集。
「エンダーのゲーム」はこの短編が最初に発表されたのですね。いきなり
エンダーはもうバトル・ゲームを率いる指揮官になっていて訓練中。
ピーターやヴァレンタインのことはなし。バガーのこともほとんど言及は
なし。長編を読んだあとだとあらすじっぽい~と思ってしまうかな。でも
そっけないラストはいい感じかも。戦争が終わってグラッフとアンダーソン
が地上で雑談をして別れる。終わったあとの日常って、平和って、どこか
寂しいものかと思う。
全部がSFというわけではない短編たち。ファンタジーのような、世にも
奇妙な物語のような。
「猿たちはすべてが冗談なんだと思いこんでいた」
が一番わからない感じだったなあ。
アグネスという女性パイロットが、地球のあふれる人間を移住させるのに
ぴったりの謎の空間(星、ではないような、何かの人工物)を探査する。
何層にもなった閉鎖空間。豊かな大地、やさしい環境。人を移住させる船
を作るよう周りを動かした。
ヘクトル、という集団意識があって。それがその風船の意識?
ヘクトルが語る昔話はなんだろう。別の人類?うーん。
最後には破滅しちゃうんだけど、うーん。核を早く壊しておけばよかった?
すっきりしなかった。
「磁器のサラマンダー」
は、童話めいていて可愛かった。動き回る磁器のトカゲ。楽しい思い出の
ままで止まってしまうのが幸せ、かなー。
「無伴奏ソナタ」
は美しかった。
音楽を作る才能がある少年。彼は一切の音楽を聴くことを禁じられ、森の
奥深く、自然の音だけしかない世界で暮らし、自分の音楽を作り出す。
だが、禁じられていたほかの音楽を聞いてしまい、その後一切の音楽の
創造をやめるよう命じられる。それでも、音楽をやめることができない。
さまよい、自分の歌の幻をきく。
創作者である作者自身のことだったりするんだろうなあ。
創作をやめられない、という業。うつくしかった。
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