『警鐘』上下(リー・チャイルド/講談社文庫)
*結末まで触れています。
『警鐘』上下(リー・チャイルド/講談社文庫)
ジャック・リーチャー。元陸軍の憲兵。軍をやめてからは放浪の身。
最近は、フロリダのキー・ウェストでプールを掘る仕事をしていた。
そこに、ジャック・リーチャーを探している探偵がやってきた。見知らぬ男。
探される覚えは無い。ジャック・リーチャーなんて知らないね、と応えた
その後、探偵が殺されているのを見つけた。
誰が自分を探していたのか。何故人が死ぬようなことになってしまったのか。
リーチャーは手がかりを追う。
シリーズの3作目かな。シリーズはたくさん書かれているようだけど、
翻訳はあまりさくさくとはいってないみたい。この文庫が2006年刊行。
しかし書かれたのは1999年だそう。9.11の前なんだよね。世界貿易
センタービルが舞台のひとつなの。ああ、前の世界だ、と、不思議な気持ち
になる。ツインタワー。その描写があるたびに、そこに飛行機が突っ込み、
崩れてゆくビル、というのが脳内でオーバーラップする。このお話の中で
ひょっとしてそのビルが崩れることになったりするんだったらどうしようか、
と、読み終わるまでどこか不安だった。
リーチャーは39歳になるところ、くらい。
懐かしい恩師が亡くなったことを知り、かつて密かに恋したそのお嬢さん、
ジョディと再会する。家族のように、妹のように思っていた彼女。だが、
美しく賢く魅力的なジョディへの気持ちをごまかしきれなくなり、告白して
しまうリーチャー。ジョディのほうも実は恋していた、というメロドラマかよ~
というラブラブがなかなか微笑ましかった。
もう一つ、関係がなかなか見えてこなかった、ヴィクター・ホビー。
フック・ホビーのお話。わけありで、身を隠しながら生きてきた男。金貸しを
して、今、企業をのっとりそのオーナーのストーンの財産の全てを奪うところ。
彼が何故逃げ隠れしているのか。リーチャーがいかに彼にたどり着くのか。
そのへんもかなりひっぱられながら面白く読んだ。
ヴェトナムの時にヘリが墜落して、乗組員死亡、とまでわかれば、あー入れ替
わりか、というのは察しがつくけど。ジョディが狙われて、リーチャーは間に
合うのかっ、というの、ハラハラドキドキで面白かった!
リーチャーもジョディも賢くスマートで気持ちよく読める。
リーチャーの、撃たれたのに死なないとかの超人っぷりには笑っちゃうけど、
そこまでの銃の描写とか、いろいろそれなりに、まあ、そうかなあ? くらい
には思わせられるので、まあいっかと思う。
恩師リオンが遺してくれた家。家を持つことを想像して戸惑いおろおろ考えて
しまったりしてたリーチャーも可愛い。最後にはジョディと二人、家に戻った
みたいだけど、でも、どうなのかなあ。二人は続くのか? 続かないよねえ。
家を持って落ち着く、のは、リーチャーのリアルと程遠いわけで。
やっぱりダメでしたー、みたいに次のお話ではなっているのかどうか気になる。
でも翻訳されているのかどうかわからん。でもまあたぶんそうなんだろうけど。
ジョディが完璧な女性のように描かれているのになー。
面白かった。
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