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『刑事たちの三日間』上下(アレックス・グレシアン/創元推理文庫)

*具体的内容、結末まで触れています。

『刑事たちの三日間』上下(アレックス・グレシアン/創元推理文庫)

1989年、ロンドン。スコットランド・ヤードは切り裂きジャックの恐怖を
解決できなかった。市民からの風当たりを強く感じていた頃。駅でトランクが
発見される。その中に、殺された警官の死体が詰まっていた。

ヴィクトリア朝警察小説、とのことで。19世紀ロンドン。まだ警察組織と
いうものも途上。ようやく殺人捜査班というのが作られたところ。科学捜査
らしきものが始まろうかというあたり。法医学という概念を単独やってのけて
いるキングスリー博士。地方から抜擢されてきたディ警部補。自らの正義を信じ
貫くハマースミス巡査。他、警察のみんなが懸命にがんばってるお話でした。
三日間、というタイトルどおり、最初の警官殺害から三日間、その間にさらに
事件が、と、その、警察官殺害が連続になり、誘拐された男の子、煙突掃除中
死んでしまったらしき男の子の死体発見、顎鬚をそって男が殺される事件、と、
ディ警部の家庭の問題、ダンスマン、キングスリー医師の娘さんのこと、等等
いろーんなことがたっぷりで、みっしりの三日間でした。

メインは、警察官殺し。
まだ科学捜査なんてのがなくて、キングスリー博士が指紋というのが証拠に
なるだろうとがんばってるところ。
なにかにつけて、もどかしいことこの上ない。あああ~危ない~!とハラハラ
しまくり。連絡もねえ。電話もないわけで。
そんな中必死で捜査に取り組む刑事たち。まともに寝てないし、なんかボコボコ
にされたりもしてるし、いや、休んだら?ちょっと休んだら? と言いたくなる。
それが「三日間」という限定にしたところかな。無理しちゃうのも無理ないと
言えそうな。

犯人の仕立て屋が、素朴にどんどん自分からボロ出していくんだけど。まだ
この頃の犯罪者は、証拠がとか指紋とか気にしてないしそういうもんかなあ?と
なんとなく。始まりは子どもを亡くしたことからなのかなと思うと、やや同情の
余地はある気がする、けど。でも酷い。
組織とか科学捜査って大事だ、と、思う。もー。何もかも出来上がってないこの
時代、あとロンドンの暗闇っぷりに絶望で、途中読むのが苦しくて休憩。。。と
しばらく中断してしまった。
でも、三日目の半ばあたりからは、絶望的なことがどんどん好転していって、
ほっとするー。よかった。そのたたみ方お見事。お話なんだからすっきりさせて
くれていいんだよ!と、ほんとほっとした。

ちょっと気になったのは、重厚時代小説って感じはしなくて、喋りとかが軽い。
そーだよねーこれ書かれたのは今なわけだから、言葉遣いとかはこんくらいかな、
と思うんだけれども。それが読みやすいんだなと思うんだけど。ま、昔だからって
重苦しい人物作りしなくちゃいけないわけじゃないか。翻訳の人の匙加減なのか
原文の雰囲気なのかは私にはわからないけど。ディ警部の会話の感じとか、なんか
可愛いなーと思った。
あとハマースミスくんのがんばりっぷりが、可愛いかも。まっすぐで困ったもんだ
けどな。子どものことをほっとけない、というのは素敵だよ。
三日間の合間に、彼らの過去エピソードもちらほらあって、ほんと盛りだくさん。
それでもさくさく進む、読ませる面白さかなと思う。
あとダンスマンのキャラ。ありがちかもしれないけどでも、好きだったなあ。

著者は、小説としてはこれだ一作目だそう。このシリーズ?で、二作目もできてる
みたい。続きが出ればまた読みたい。

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