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『ジェイコブを守るため』(ウィリアム・ランディ/ハヤカワポケットミステリ)

*結末まで触れています。


『ジェイコブを守るため』(ウィリアム・ランディ/ハヤカワポケットミステリ)

アンドルー・バーバーは地区検事補だった。51歳。一人息子、ジェイコブ。
愛する妻、ローリー。
ある日、ベンという少年の死がその街に影を落す。ベンはジェイコブの同級生
だった。14歳の少年の死。最初その事件を担当したアンディだったが、担当
を外れるよう言われる。
そして、容疑者として、ジェイコブの名前があがる。

著者の第三作らしい。前のは読んだことがないのだけれども、別に支障は
なさそう。著者は実際6年間検事補だったんだって。なるほど。

息子に殺人容疑がかかった時、家族はどうするか。
父アンディは、息子がやったかもしれないという疑いを持つことすら拒否して
かたくなになる。母は、自分の育て方の何かが間違っていたのかと自分を責め、
息子の力になるにはどうすればいいのか思い悩む。もしも本当に息子が犯人で
あったら? その疑いを父は共有しようとせず、一人思いつめてゆくローリー。

アンディはまた、自分の家系が、暴力的なものであったことを言えずに悩んで
いた。殺人遺伝子が受け継がれているのではないか。目をそらし続けてきた
その問題に苦しむアンディ。
そんな中、事態の重さをわかっているのかどうか、つかみどころのないジェイコブ。
14歳の少年らしい。あるいは、普通じゃない少年なのか?

アンディのかたくなさに腹が立つし、ローリーの心配ももどかしい。
でも、息子に殺人容疑というときには、たとえ地区検事という犯罪に近い仕事を
していた人間さえもかくも愚かになるものか、と、思う。

途中、法廷でのやりとりのシーンがはさまれるのだけれども、だんだんそれは、
ジェイコブの事件のことではないみたいだ、とわかってくる。では、アンディは
何故法廷に? 何が、起こったのか。
ジェイコブは犯人なのかどうか。法廷では何が行われているのか。ひっぱられて
やめられないとまらないになりそうなのを、なるべくゆっくり読んだ。

で。ジェイコブが犯人だったのかなあ。その疑いの重さ。確かに耐えられない
かもしれない。でも、でも。でも、疑いで。でも、母親というものにはわかるもの
なんだろうか。辛い。
アンディなんでしっかりローリーと話して支えて家族を守らなかったんだよっ、
とも思うけど、でも、アンディもいっぱいいっぱいで、というのもわかるしなー。
辛かった。

一度司法から自由になったから、もうローリーが自分で始末をつける、と思いつめ
るしかなかったのか。愛する大事な息子と共に死ぬしかないという心情。なのに、
生き残ってしまったらしいローリー。辛い。
そして、妻が息子を殺したという裁判の証人となるアンディ。辛い。
でも、どうしても私は、アンディがどんなに息子を愛してると書いてあっても、
アンディの愛は間違いなんだ、と、思えて仕方なかった。完全に正しく愛する
ことができる親ばかりではないとわかっているけど。アンディは本当にジェイコブ
を愛しているのか。アンディの愛情は自分勝手な、「よき父親」たる自分のための
愛情だったのではないかと思ってしまった。
だからってジェイコブが殺人者になっていいわけないんだけど。
すっきりもせず救いもなく、突き放された気分で読み終わる。凄い。
重かったです。

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